かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「専門知は意外と使われる?!」(第十回Wikiばなライトニングトーク)


「さすがに自分で自分のLTのメモは取れない」と言っていた第十回Wikiばなのライトニングトークについて、使ったスライドをMyOpen Archiveにアップしました。


なお、スライド中で実例として挙げている京都大学の機関リポジトリ、KURENAIへのリンクは以下です*1


ただアップするだけでは不親切かとも思うので、補足をいくつか。


LTの趣旨としては、第一部で非専門家とサイエンスをつなぐ話が色々されるだろうと予想して、まずは「でもつなぐって言ったって、興味を持っても非専門家は専門的な文献はアクセスできない/しにくいじゃん」的な話をしています。
具体例に『Nature』が1号約9,000円、というのを挙げていますが・・・さらに補足しておくと、この『Nature』の価格自体が不適切だ、と言いたいわけではないです。
よくNature Publishing Group自身が述べている通り、それに見合っただけの価値を提供しているとの同社の判断の結果であり、かつ多くの研究者・研究機関がそうした価格体系を承認しているわけで*2、研究を生業とする者やその集団である研究機関にとってのサービス価格としては(それでも高い気もしないでもないけど)妥当っちゃあ妥当。
逆に言うとそれを生業にはしない、「ちょっと面白そうかな?」と興味を持った人が読みにくい値段設定であることも確かでしょう。
それはもともとそういう読者を想定していない価格設定である、ということで、非専門家の方を科学コミュニティが向いていないことも露わになっているのかな、とか。


で、そんな感じで非専門家に「閉じて」いる専門的な文献、研究論文であっても、webでオープンにしてみるとけっこう非専門家からも使われるよ・・・という話が後半、自分の最近の本業であるところの機関リポジトリのログ分析結果の話です。
こちらについてはTwitter上で「アクセス=読んだ」と見るのは危険では、とのご指摘がありましたが、おっしゃる通りです。
一応、ボットの排除などは全力を尽くしていますが、最終的にダウンロードした人が読んだかまでは・・・まあアクセスの大半はGoogleの検索結果からPDFファイルに直で行っていて、検索結果画面からPDFを一度も閲覧せずにダウンロードするにはブラウザの設定いじってある必要がある気がするので*3、大多数の人は確実に1ページめは見ていると思いますが、その先の中身まで読んだかは現在明らかではありません。
これはログに基づく論文閲読(「読み」)行動の分析一般に共通の問題ですね。
修論ではここにあまり踏み込めませんでしたが、今後はそのあたりも含めてやっていきたいな、と思っています*4


話としては第一部の内容にもかなり絡んでいる・・・一方で、Wikiの話/ムダ知識の話は全然していなかったのでちょっと浮いていましたね(苦笑)
Wikiがらみで補足すると、機関リポジトリに対してはWikipediaからのアクセスはかなりあります。
そもそもGoogleやCiNii以外のサイトからのアクセスってそんなに多くはないのですが、その数少ない中ではWikipediaの占める割合は大きいです。
リポジトリの数もコンテンツの数も着々と充実しつつありますし、ウィキペディアンな皆様におかれても出典として使えるものはご利用いただければ幸い、とかなんとか。


リポジトリのログ分析については今後も引き続き発表等していく予定ですので、興味がおありの方は自分のResearchmap等もちょくちょく見ていただければ幸いです。
権利上、問題のないものはなるべくアップしています。


ちなみにこれまでのリポジトリ関連の発表・論文等は以下の通りです。


さすがに2年もやっているとけっこう貯まりますね・・・。
主にリポジトリに収録されている2009年の成果はまだ分析していないので、今後自分の研究も「意外に使われ」ているのか見てみたいと思います*6

*1:スライドへの利用を快くご了承下さったリポジトリ担当の皆さま、ありがとうございますm(_ _)m

*2:承認できん、と絶賛対話中の機関もありますが:400%の値上げか、88%の値下げを50%の値下げにするだけか?:カリフォルニア大電子図書館 V.S. Nature Publishing Group - かたつむりは電子図書館の夢をみるか

*3:あるいはAdoveではないソフトで開く設定になっているとか

*4:もっとも直接的にアクセスと「読み」の関係を見るよりは、なんかひねる必要がありますが

*5:今見たらなんかリンクがおかしくなっているところもありますね・・・頼むよつくばリポジトリ

*6:自分の論文を誰が読んでいるかは機関種別レベル以上は見ないのであしからず。それ以上は問題ありますし