かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「日本図書館情報学会誌」Vol.53, No.1


日本図書館情報学会誌の最新号が届いた。
今回は第54回日本図書館情報学会研究大会の概要も掲載されていて、割と読み応えがある。
以下、面白かった記事のレビュー。

学生の図書館利用と学習成果――大学図書館におけるアウトカム評価に関する研究――(戸田あきら、永田治樹)

「図書館の、学生の知識獲得や能力向上への貢献を明らかにする」ことを目的とした研究。
アウトカム評価を実際に行う前に、そもそも「図書館利用と学習成果の間に関連がある」ことをはっきりさせよう、というもの。
文教大学の卒業生約4000人を対象としたアンケート調査(有効回答は3割程度)で、図書館の利用(頻度・形態など)と、利用により得たもの、学習成果との相関係数を図っている。


調査の結果、図書館の利用により得たものと学習成果との間には割と相関があるようだが、図書館の利用と利用により得たものとの間の相関は(ないわけではないが)案外低かったとのこと。
とはいえ関連がなかったわけではない(=図書館の利用と利用により得たもの、学習成果には関連がある)ことは言えたわけだから、次は実際のアウトカム測定が望まれるところである。


ドイツにおけるインターネット情報資源収集の制度化――ドイツ国立図書館法――(渡邉斉志)

新たに成立したドイツ国立図書館法の内容紹介。
同法では納入義務の対象となる「公表著作物」の中に「無体の著作物」(=インターネット上の資源など)も含まれており、違反すると罰金が課されうることも明記されているとか。
実際にはドイツ国立図書館ではネットワーク資源についてはロボットによる収集(ハーベスティング)を行うことを想定しているので、それが可能な状況におくことで実際の納入に替えることができるとのこと。


それ自体はけっこうなことだと思うんだが、ちょっとひっかかったのは「情報提供義務」の存在。
納入時に必要に応じてメタデータの提供も義務付けられる、というものらしいが・・・webサイトとかでそれってどうなんだ? 
匿名性の問題とか。
文面だけだとそれすら守られないかのように読めるんだが・・・
まさかそんなことはないよなあ。
日本の国立国会図書館納本制度が実際には全然罰則を適用しないみたいに、これも実運用の段階で対応、ってことなんじゃないかと推測。
まあ実際にはわからないが。