かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「はてブ指数」徒然


そろそろはてブ指数につけられてたコメントに言及しようかな、と思ったらmyrmecoleonさんが言いたいことをほとんど言ってくれちゃってた。


つまるところは、その名の通りはてブ指数も数ある「指数」の一つに過ぎない、ってことだよね。
もともと自分がHatena-Indexを最初に提案したときも問題があることは承知の上で「指標のひとつ」くらい(もっと言っちゃうと「なんか面白そうな数字」くらい)に考えてたし。
myrmecoleonさんも言ってるが、あくまではてブ指数は生産性とimpactのバランスを取る上で出てきたh-indexを採用したものなので、記事は少ないがひとつひとつのブクマ数がえらいことに・・・みたいな人には不利な数字が出るに決まってる。
5本書いて、それぞれのブクマが124、124、124、123、5の人のはてブ指数は「5」だからね。
平均ブクマ数は「100」なのに。
一方で自分みたいに雑記兼用タイプの人(そもそもブクマのつかないこと前提の記事もよく書く人)には「はてブ指数」みたいな指標の方がノイズを排除できて便利な気もする。


あと、これもmyrmecoleonさんも言ってるが、「はてブ指数」で出るのはあくまで「impact=影響力的なもの」であって、「quality=品質」ではないんだよね。
これも計量書誌学において「impact」って言葉が良く使われるのと同様で、impactを図る材料として(それをなにで割るかとかなにをかけるかとかさておき)計量書誌学では論文の被引用数をよく用いるわけだが、じゃあ引用されない論文は質が悪いのか、と言えば必ずしもそうとは言えない部分がある。


一つには分野による差。
物理学みたいに引用がとんでもないことになる分野もあれば、数学のように論文数も引用数もそこまで多くはならない分野もある。
同じように、はてブでも当然よくブクマされる分野とそうでもない分野があることは考えられる(なんとなくIT系/プログラム系は多い気がする)し、そうであれば異なる分野の記事についてはてブ指数から質の高低を論じることはできない(たとえばLifehackとかそういうブログのはてブ指数と、個人のwebコミックサイトのはてブ指数を単純に比べても質の高低は論じられない)。


二つ目は内容の方向性の差。
論文だと分野の動向や先行研究を概観したレビュー論文はよく引用される傾向があるので他と区別しないといけない、みたいな話がある。
若干ニュアンスは異なるが、専門分野に特化した記事をよく書くサイトと、割と分野に関する知識がない人でもとっつきやすい記事をよく書くサイトでは「はてブ指数」の傾向に差が出ると思われるが、これも記事の質の高低とは別の話。
はてブ指数」あげようと思って専門的な記事から一般向けの記事に方向転換しちゃったりするのは「待て待て(汗)」っていう感じである。


三つ目はそもそも引用以外での影響の存在。
工学系あたりの論文が顕著だが、引用は少ないけどその研究をもとに開発された製品が社会に大きな影響を与える、みたいなことが存在する。
あるいは農学なんかでは研究者のほかに普通に農家の人も論文見て農法を変えたりすることがあるというし、そういう「研究者以外」の社会に与えた影響を無視して論文の質を語ることはできない(いや実際はよくしてるけど)。
同じように、「はてブ指数」はあくまではてなブックマークユーザに与えた影響であって、ブクマユーザ以外に与えた影響まで考えてみないと総体的な「質」を論じることは本来出来ない。


・・・結局、つくづく、myrmecoleonさんの「はてブ指数は(はてなブックマークにおける)「存在感」の指標である」ってことなんだなー。
っつーか一つの指標から論文の「質」を見るのは根本的に無理があります。
いくつかの指標を使っても無理があります。
最終的にはpeer review(査読。研究者同士の質の相互評価)がどっかで必要になるわけで、まあそれはブログでも一緒なんだよ、たぶん。


とはいえ他の様々な指標と見比べてみれば自分が次に打つべき一手を考える参考にはなるのだが、指標なだけに。
指標を評価に使うだけでなく戦略策定に使え、とは国立情報学研究所の根岸先生もおっしゃっていたことであるが、いやまさしくその通りであるなあ、とか。