結局、大作家以外の作家にとって図書館は不利益になりようないんだって
ネタ元:聞くは一時の恥 キアヌはリーブス: HVUday
参照:
ネタ元での指摘は以下の通り。
本の印税は、売れた部数ごとに発生するのではなくて、刷られた段階でその部数に対して発生する、というお話をとあるところで聞いたのですよ。
(中略)
もしほんとなら、図書館が大量複本を貸し出すのはけしからんとプンスカしてはる作家先生団体のおっしゃってることは、なんかおかしなことにならんか、と思うのですが。
思わず「えっ?!」となるような話だが、ネタ元と同じ話は異なる複数の授業でmin2-flyも聞いたことがある。
確認のため日本大百科全書*1で引いてみたところ、以下の記述があった。
印税は普通、定価×発行部数×一定率(5〜10%)であるが、返品率の急伸のため、一定保障部数を設定したうえ、実売部数を算定の基準にする例もある。
というわけで、最近では実売部数に移行する例もありつつも、基本的には著者に払われる印税の算出基準は売上に関わらず発行部数の5〜10%だそうです*2。
仮に某大手週刊少年誌の出版社が実売部数ではなく発行部数基準のままだとすると、累計発行部数1億部の某少年漫画の著者は印税10%換算で
1億×410×0.1=41億円
貰ってる計算になるわけですね!
印税5%でも20.5億円。
所得税とかさっぴかれるにしても「どんだけ〜」って感じですな。
で、その話と図書館がどうかかわるかというと、売上に関わらず発行部数で印税が計算されるのなら、図書館の貸し出しで売り上げが減ろうがなにしようが著者の儲けとは関係ないじゃん、ってことだろう。
ただ、実際には増刷とか重版の可能性があるのでそうとも限らない。
売上が多ければ当然、出版社は増刷してさらに売ろうとするわけだが、この増刷分についても著者に新たに印税が支払われる場合が多い(当然だが)。
初版は発行部数/増刷分は売上部数で印税換算するところとか、増刷分は印税率を変えるところとかもあって色々と計算は面倒くさいわけだが(なので実際は某大流行漫画の印税も40億円とかじゃないかも知れない)、なんにせよたくさん売れて増刷されれば著者にまた金が入るわけで、そうなると図書館の貸出によって売上が減るとすれば、著者が反対する気持ちもわからんでもない*3。
ただなあ・・・実際のところ、増刷がどうこうとか、重版が云々、なんて話は、大作家ならともかく、ほとんどの一般的な著作者にとっては関係ない話なんじゃないのか?
重版童貞で知られた(最近はそうでもないが)佐藤友哉みたいなのが例外かって言えばそんなことは全然なく、むしろ日々大量に出版されるほとんどの本の著者たちはめったに増刷されないような本書いてるんだと思うが。
「そんなこと言って書店にある本は二刷とか三刷ざらやで!」と突っ込まれるかも知れないが、そもそも書店に置いてある本とか日本で発行される本のごくごくごく一部だし。
発行部数が1000だの2000だのの本が身近な書店にあることはめったにないと思うが、そんな本は世にいくらでもあるわけですよ。
年間出版点数7万強のうちどんだけが重版/増刷の対象なのか、って話。
これも実証研究はしてないからわからんが、結局、世の大半の著者にとっては増刷印税とかはそこまで関係のある話ではなく、図書館があるからどうこうなんて話もまるで無関係なんだろう、と。
いやむしろ図書館で買い支えてるからもってる出版社はいくらでもあるんじゃないのか。
騒いでるのがベストセラー作家ばかりで、出版社が騒がない理由の一つはそこら辺にあるんだろう。
・・・ただ、前述した「売上印税に変わりつつある」って話は若干怖いけどね・・・
これも1000〜2000レベルの著者なら関係ないと思うが、1万以上発行することのある作家、となると風向きが変わってくるのやも知れん・・・いや、ないとは思うが・・・