かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

U.T.図書館喫茶は図書館離れ対策なのか?


タイトルは某弾幕ゲーの神曲より。
UTは"University of Tsukuba"の略*1


卒研最終発表が終わった喜びに浸るのもつかの間、やらなきゃいけない作業がもろもろたまっていて一昨日は13時間、昨日は14時間くらいぶっつづけでPCに向かっていました。
いや、PCに向かうだけならいいんだけどさ、実際にほとんど休憩なしでそんだけ連続で作業したのは久々かも・・・どんなデスマだよ全く。
作業時間の見積もりを自分にできる限界値で計算するのは今後控えよう。


そんなこんなでブログ更新停滞している隙に、なんか毎日新聞の地方欄で筑波大学"附属"中央図書館の喫茶店がネタにとりあげられていたようです。


ブックマークコメントも多数寄せられているけれど、やはりまず気になるのはこの人目を引くタイトルと、

筑波大(つくば市天王台1)付属図書館に3月下旬、米国のコーヒーチェーン大手「スターバックス」が出店する。大学が学生の図書館離れを防ぐために誘致した。

という一節。
本文中でははたして学生の図書館離れだの活字離れ対策、ってのが実際には誰の発言なのか(インタビュアーが館長にそう誘導したのか、館長が自発的にそう言ったのか、あるいは館長以外の図書館員からそういう話があったのか)が読み取れないのでこれをそのまま附属図書館の真意と読むのは危険ですが・・・しかしこれで筑波大の図書館喫茶設置についてはまた新たな理由が浮かんできたわけですな。
今までに図書館喫茶設置の理由として挙げられてきたものの中には、

  • 1.「学生の憩いの場になること」
  • 2.「館内の飲食を止めて欲しい」

 (いずれもソースは大学新聞、自分のはid:humotty-21さんからの孫引き*2


というものがあって、ここで新たに

  • 3.「学生の図書館離れ対策」(1.と似ているが、単に憩いの場になることではなく喫茶店に寄るついでの図書館利用増を目論む、というより具体的な意図が表明されている)


という理由が加わり、図書館喫茶設置の理由として公けに言われていることはこれで3点になったわけですが。


ここでクエスチョン。
本当にこれらが図書館喫茶設置の理由か?
すでに図書館離れ対策、って点についてはid:miqueさんが

筑波大学附属図書館がスタバを誘致したのは図書館離れ防止のためってのが主な理由ではないんじゃないかなってこと。少なくとも,新聞の見出しになるほど大きな理由じゃない。
http://d.hatena.ne.jp/mique/20080204/1202162078

と考えを述べられていますが、自分には「図書館離れ対策」に限らず、「館内の飲食を止めてほしい」というのも喫茶設置を決定した理由の一つとしては弱すぎると言うか、近場に喫茶店があったからって館内飲食やめるわきゃあないだろう(もともと歩いて数分のところに学内喫茶あるんだし)ってことを考えると、「表向きの(わかりやすい)理由」としてそういうことを言ってるだけなんじゃないかと思えてきます。
そうすると1つめの「学生の憩いの場になること」という理由が残るわけだけど、これについても「図書館が憩いの場となることによって何を狙っているのか?」という、さらに先の目的については依然不明(想像はつくが公式見解ではない)なわけで・・・そのわかりやすい答えとして毎日は「図書館離れ対策」ってのを出してきたわけですが、さて、あの附属図書館がそんなわかりやすいことで動くか、という疑問も(まあ80人からの大所帯なんで誰がどう動くかわかったもんじゃなさそうですが)。


ここら辺についてはid:myrmecoleonさんが先のmiqueさんの記事へのブクマコメントで

直接の理由は,学生の学習環境整備とか偉いさんのパフォーマ(ry とかじゃないかなと。
(はてなブックマーク - myrmecoleonのブックマーク / 2008年2月8日)

と指摘されていて、これはかなりその通りかな・・・と思う反面、本当にそれだけなのか、っていう疑問もあり。
っていうか、これは図書館喫茶ネタが出てきた当初から全代会関係者とかにそれとなく尋ねつつ未だ答えがわかってないんだけれど、結局「図書館喫茶設置」を最初に言い出したのは誰なのか、と。
図書館内から出てきた提案らしいこと*3はわかっているんですが、より具体的に図書館内でどのような立場・役割を任じている人からどのような意図で出てきたものなのかがわからない。
立場だけから考えても筑波の場合、

  • 館長

植松先生。元図書館情報専門学群長。
図書館建築の専門家なので「国立大学ではじめて既存の建物にあとから喫茶店を敷設する」(設計段階からの喫茶設置でなく後付けの喫茶設置)ことや、喫茶店を設置した場合の利用行動の変化等には興味を示される可能性大。
学習環境整備の話も好きなはず。
よって誰かが提案したら乗る可能性は大だが、ご自分で言い出されたのかは不明。

  • 附属図書館研究開発室

図書館情報メディア研究科とその他の学内研究科の教員らによって構成される、兼任組織。
図書館で新しい試みをするときには最近だと一枚噛んでる場合が多いが、図書館喫茶設置でなんらかの役割を果たしているのかは不明。

  • 図書館員(職員)

教員の立場にない、図書館の主たる職員組織。
最近、学内では各事務方に新しい提案を行うことを求める雰囲気だの制度だのがあるので、図書館も当然それらの圧力は意識しているはず。
そういう意味では「まず喫茶設置ありき」、「新規提案のパフォーマンス」である可能性も否めないか?
一方で新しもの好きというか、ゲームバランスを考えない能力配分が好きそうな人の多い図書館でもあるので、表向きにはされていない真意がある可能性も考えられる。
それが「面白そう」とかなのか、「図書館の役割転換」につながるようなでかい話なのかは不明。


三者くらいを想定することができて、このうちどこから出てきた話なのかによって設置の真意は全然異なりそうというか。
ぶっちゃけ、前二者(教員組織)からの提案ならば「自分のところの図書館を使った壮大な実験」である可能性がある(そして研究を志すものとしてはそれは非常に楽しそうだと思う)し。
一方で図書館員からの提案の場合も、単に目先の「新しい提案をしないと・・・」的な意図なのか、それとも表向き語ってもついて来れる人が少ないから出していない裏の意図(図書館を人が集まる空間にすることでこれまではっきりしなかった筑波大学の「中心」を明確化させる、とか、あるいは「静かに本を読む場所」から「学生/教職員間でのコミュニケーションの場」に中央図書館自体を変質させるつもりなのか、とか)があるのか、とかいろいろ考えられる。


まあ、以上全部を図書館喫茶の設置にかかわる人のうちの誰かは実際に考えている可能性もあるけれど(笑)
それぞれがそれぞれの意図を持ってプロジェクトに臨んでいて、それらの最大公約数とか当たり障りのない部分をとったらこれまでに挙げられたような素っ気のない3つの理由になったんじゃないかな、とかなんとか。
「図書館」とひとくくりに呼んでみたところで所詮は人の集団、誰がどんな意図を持って行動しているかなんて表に出される情報だけだとさっぱりわからん。


・・・図書館喫茶設置にかかわった人たちに対する個別インタビューとか実施してみると面白そうだな・・・実際は誰がどんな意図を持って行動していたのか、とか。
組織の意思形成、って意味ではすでに研究している人がいそうなので研究として成立するかはともかく、学内/図書館内政治のケーススタディとしてはなかなか・・・

*1:定冠詞Theは正式名称にはつかない。The University of Tokyoに遠慮しているのか? あと、良く間違われるがTsukuba Universityでもない。

*2:目的と手段が違ってはいないか(図書館喫茶) - 図書館学の門をたたく**えるえす。

*3:図書館側から喫茶設置の要望が厚生会理事会に提出されている。大学当局(まあ「当局」と呼べるような意思決定機関が筑波で機能しているかはさておき)側から図書館へ働きかけたものではないっぽい