かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

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シンポジウム「米国情報公開法(FOIA)の現状と課題」@米国大使館に行ってきた


アメリカ大使館であった、大使館レファレンス資料室主催のシンポジウム「米国情報公開法(FOIA)の現状と課題」に参加してきました。

第3回シンポジウム「米国情報公開法(FOIA)の現状と課題」

米国の情報公開法(FOIA: Freedom of Information Act)は、開かれた行政は民主主義の発展の基本原則であるとの理念のもとに1966年に制定されました。FOIAが施行されて以来、米国内外から数々の行政文書開示請求がなされています。今回お迎えするメレディス・フュークス氏は、ナショナル・セキュリティ・アーカイブの法律顧問です。ナショナル・セキュリティ・アーカイブは、FOIAを利用して多くの米国外交文書を入手し、電子アーカイブの一部を無料で公開している民間の研究機関です。

(案内状より一部転載。Web等での広報は行われたなかった様子)


NSAは"National"とついてはいるけど研究者やジャーナリストによる民間団体だそうです。
フューリクス氏によれば「政府機関っぽい名前だったら情報が得やすいんじゃないか」ってことでこの名前になったとかで、初期には割とうまくいくこともあったとか(笑)
日本に30年先立つ1966年には情報公開法が制定されたアメリカで、それを利用して情報を引き出してアーカイブして提供している団体が活動している、ってのはなかなか頼もしい話で・・・
実際、質疑の際にも「NSAに問い合わせしたことがあります」とか「資料実際に送ってもらったことがあります」って人がけっこう居たり。


自分は普段は情報公開とか公文書管理等、政府情報系の話は(灰色文献を除き)あまり注視してないのですが、今回はNDLで米兵裁判関係資料の閲覧禁止が話題になってたりすることもあり、興味があったので参加して見たのですが・・・いやあ、面白かった。
以下、とても全部はレビューしきれないので特に面白かったところについて。

  • 請求しても行政がなかなか公開してくれない場合には訴訟で争う
    • 「訴える」って話が頻繁に出てきた。むしろ訴えないと情報出してくれないような状態になる場合もあったりとか。さすがアメリカ、紛争解決手段としての裁判が定着している。
  • 機密についての判断は完全に客観的なものとはならない
    • 全く同じ文書について、たまたま1週間置きに2回、請求して公開してもらったら、機密保持のために黒塗りされている行がまったく違った
    • 何を機密とするかは人によっても、状況に応じても変化する・・・完全に客観的なものとはならない
  • 「機密」というラベルを無闇につけるべきではない
    • 共有した方がいい情報もある
      • 特に行政機関内で
    • 機密にするのにかかるお金もある
      • 年何億と言う金がかかっている
      • 「National Security Agencyはサンタクロースを追っている」なんていう誤情報が機密指定されていたことも
    • なんでもかんでも「機密」にすると本当に機密にすべきものに対する敬意まで薄れる
  • アメリカは世界中の政府機関と関係を持っているので、各国で公開されていない資料がNSAにあることもある


ざっとおもしろかったのはこんな感じ。
特に「なんでもかんでも機密にするな」のところは本当にね・・・以前のエントリでも書いたけど、古本屋さんに流しちゃうような情報まで機密扱いにするべきじゃないし、機密にするんだったらもっと真剣に機密にすべきものとして厳選すべきものだけを厳密に管理しとけよ、と。
サンタの話は吹いたけど、ここら辺の話はアメリカでも問題になっているんだなあ、ってことで必ずしも日本だけの問題じゃいないことを再確認。


あと、「何を機密にするかの判断は客観的にはならない」ってのも・・・結局は、機密の閾値を下げすぎると出てくる問題、のような気もする。
スライドで実際の文書の例があったけど、2つの同じ文書で、それぞれ1/4くらいが黒塗りされてるんだけど、塗りつぶされている箇所が1行くらいしかかぶっていないという(爆)



そのほかの点についてはアメリカの進みっぷりを認識する内容でした・・・まあ、向こうで情報公開法が出来てもう40年以上、対して日本はまだ10年。
アメリカも制定初期はまともに回ってなかったというし、日本もこれから本腰入れてやっていけばなんとかなる・・・かなぁ(汗)