男性向けジュブナイルポルノ（美少女＆二次元ドリーム）は総合目録ネットワークで探せる図書館にはない。女性向けも実は一部にしかない。
ひそかに当ブログ歴代２位のコメント数になっている昨年末の大阪府の有害図書について論じたエントリですが。
自分のコメントが明らかに右往左往しているのは、自分自身の考えもけっこう揺らいでいるからです。
基本の筋は変えていないはずですが（図書館独自の年齢制限は絶対反対／有害図書ではないが過激な性表現のあるＢＬを置くべきか否かは自治体で話しあって決めるべき、等）。
図書館的にどうなのかってところは・・・資料／情報源への自由なアクセスの提供、って点では法に触れない限りにおいて一切の情報を提供すべき（ある情報を持っていると言うことはそれを適切に運用できる能力のあるものにとって持っていないということよりも不利に働くことはない、と考えているので）と考えますが。
一方で限られた財源をやりくりすることを考えると、そこに回すのとその分を他に回すのでどっちのがプラスになるのさ、と言うのはなかなか・・・いやまあ難しい上に一般論として語れないから各自治体で考えて、って話になるわけですが。
それはさておき本題。
同エントリのコメントのやりとりの中で「『美少女文庫』や『二次元ドリームノベルズ』みたいな男性向けジュブナイルポルノ小説だって有害図書じゃないはずなのに図書館には入っていないじゃないか」という指摘を受けました。
この点について堺市立の所蔵状況についてはすでに調べられているエントリがあったのですが。
Ｌａｐｉｓ ｌａｂｅｌ：176件(1997-)
プラチナ文庫：49件(2003-)
美少女文庫：0件(2003-)
0冊・・・まあそんなんだろうとは思った・・・
しかし広い日本！
探せばどこかに『美少女文庫』や『二次元ドリーム文庫』はじめジュブナイルポルノが充実した夢の図書館があるのではないか。
そしたら最近『ふたかた (一迅社文庫)』を読んでハマって他の本も読もうと思っているわかつきひかるの本が読み放題じゃん！
ってことで早速探してみよう・・・と思うも、実は公立図書館を一切合財検索できる横断検索システム（大学図書館におけるNACSIS-Catみたいな）と言うのは現状では存在せず。
現在使えるものとしては、国立国会図書館および都道府県立図書館と政令指定都市立図書館の一部をまとめて探せる国立国会図書館サーチ（NDL Search）、愛称「ゆにかねっと」がありますが、それでもデータ提供館は61館と全国3,000館、設置主体数で言っても1,300*1を超える日本の公共図書館の一部しか探せません。
一部しか探せませんが、とりあえずは一部でも探せることは非常にありがたいことであるー、ってことで探してみた結果！
ゆにかねっとに登録されている美少女文庫：167タイトル。
うち国立国会図書館（ＮＤＬ）以外に所蔵のあるもの：0タイトル（ＮＤＬは167全タイトル所蔵）。
ゆにかねっとに登録されている二次元ドリーム文庫：81タイトル。
うち国立国会図書館以外に所蔵のあるもの：0タイトル（ＮＤＬは81全タイトル所蔵）。
・・・うん、なんかね・・・自分が総合目録を検索しているのか、NDL-OPACを検索しているのか後半わからなくなってきたよ・・・
いやまあ一部自治体では有害図書指定くらっていることもあるし*2、所蔵に慎重になるだろうことは予想がついたけど。
まさか一館もないとは。
やはり我々の約束された安住の地は国立国会図書館だけなのかー。
でもカバー外されているとかなり寂しいぜおい。
で。じゃあ、ＢＬの方はどうなのか・・・ってことでこちらもやはり調べてみることに。
id:Thscさんのところでも調べられているプラチナ文庫の、全タイトルだと数が多くてゆにかねっとの表示上限超えるので、2006年以降に出版されたタイトルに限定して調べた結果が以下。
ゆにかねっとに登録されているプラチナ文庫（2006年以降出版）：104タイトル（106件ヒットするけどうち2件は書誌が重複）
うち国立国会図書館以外に所蔵のあるもの：96タイトル。
っておーい。
90％以上はNDL以外にも所蔵あるじゃん！
なんというジュブナイルポルノ間格差・・・と、まあNDL以外での所蔵率だけ見るとそう思えなくもないのだけれど。
実際のところNDL以外にプラチナ文庫を所蔵しているゆにかねっとデータ提供館はＮＤＬを除く60館中３館、さらにうち１館は数冊所蔵がある程度。
なので実際にはプラチナ文庫もゆにかねっと加盟館の90%以上の館では全く所蔵していなくて（もしゆにかねっとで全ての所蔵が確認できているとすれば。漏れがあるとも聞くところなので）、ごく一部にNDLに並ぶくらいに所蔵している図書館があるってだけなんだよね。
大部分の図書館では男性向け女性向けわけ隔てなくジュブナイルポルノは所蔵していない、と。
もっともゆにかねっと加盟館は都道府県立がほとんど、一部政令指定都市立も含むって感じなので、都道府県立と市町村立の役割の違いとか考えるとこれが日本全国の図書館の状況を反映しているかはわからないけれど（実際、NDL以外でもっともプラチナ文庫を持っているのは某政令指定都市立図書館。都道府県立でも１館、割と強いところはあったけどそれでも某市立にはかなり水をあけられている。ちなみにその某都道府県立は美少女文庫も二次元ドリームもないけど『Kanon』や『君が望む永遠』等のパラダイムのギャルゲーノベライズは一部所蔵していたのでそっち方面から当たるとまた違う結果が見られるのかも）。
そう、「ゆにかねっと」に入っていないところを探せば、きっとどこか一館くらいには美少女文庫やら二次元ドリーム文庫が所蔵されている図書館もあるはず・・・！
実際、美少女文庫と同じフランス書院系でも旧ナポレオン文庫とか、特にジュブナイル狙ってない普通のアダルトなのとかはたまに所蔵館を見つけたこともあったので、可能性はゼロではない・・・はず・・・。
それを確かめるためにも公共図書館系のよりデータ収集範囲の広い横断検索システムを！
是非作ってもらいたいな、とか思ったり！
・・・まあ実際、ジュブナイルとはいえ「ポルノ」なんだから自重しろって言われりゃそうなんだけどさー。
ポルノとはいえ「ジュブナイル」なんだし、『フランス書院美少女文庫総解説』*3とかによれば割とストーリーが面白そうだったりするのもあるので、なんも鬼畜凌辱雨あられのやつ置けとまでは言わんからちょっとくらいこう、キスより後の展開に主眼の置かれたラノベ置いてあってもいいんじゃないかとか・・・思う人が少ないからこそのこの結果なんだろうなあ・・・
