第57回日本図書館情報学会研究大会公開シンポジウム「情報検索サービスの将来像:情報提供機関のこれからの役割と課題」
すでにイベント開催から1週間以上経ってしまいましたが(汗)、11/1の日本図書館情報学会研究大会シンポジウムについてのメモ書きをアップします。
- テーマ:「情報検索サービスの将来像:情報提供機関のこれからの役割と課題」
- 趣旨:
インターネットの普及、情報技術の進展により、Googleをはじめとする検索エンジンやWebデータベースを活用すれば、かなりの情報をエンドユーザが検索することが可能となってきた。情報へのアクセス手段が多様化し、図書館が必ずしも情報流通の仲介者ではなく、さまざまな情報源の1つとして相対化されつつあるなか、図書館あるいは情報提供機関はどのような情報検索サービスを展開すべきなのであろうか。
このテーマについて、本学会では『図書館情報学のフロンティア』No.9として『情報アクセスの新たな展開:情報検索・利用の最新動向』*1を発行予定である。本書では、情報アクセスを取り巻く環境とその現状について、情報検索サービス、情報検索システム、利用者、図書館員などの各視点から論考を寄せていただいた。
本シンポジウムでは、同書で提示したテーマについて、(1)情報検索を支える技術・サービス、(2)情報検索サービスのコンテンツ(学術情報)、(3)情報検索サービスを利用・提供する図書館、という3つの視点から、それぞれの専門家を交えて意見交換、討論を行い、学問的視座から情報検索サービスの将来像を探りたい。
例によって例のごとく、自分の聞き取れた/書き取れた/理解できた範囲でのメモですので、利用される際にはその点ご理解いただければ幸いです。
また、間違い等にお気づきの方はコメント等を通じてご指摘いただければ有り難いです。
では以下、メモ書きです。
- コーディネータ・小山憲司先生(三重大学)から「情報学のフロンティア」最新刊について紹介
「学術情報検索を支える技術・サービス」(国立情報学研究所・大山敬三先生)
- 学術情報システムを取り巻く環境の変化
- 検索システム技術の向かう方向:サービス提供者の視点から
- 検索アルゴリズム:Effectiveness(どれだけ質が良い)⇒Efficiency(大量の情報から効率よく)へ
- ランキング:内容の関連性⇒多様な尺度が要求されるように
- 検索・表示補助機能+パーソラナイズ:Google等に慣れ親しんだユーザが同様の機能を学術検索システムにも要求するように
- キーワードの推薦、関連する記事の推薦など
- リスト表示⇒類似性の高いものをまとめたクラスタ表示/引用や時系列に基づいた表示
- 個人の利用の履歴やプロファイルに基づいて、カスタマイズした提供
- システム間連携:一つのシステムですべて⇒個々の機能に特化システムをオープンに、複数のシステムの組み合わせによるサービス提供
- データ組織化:テキスト+属性⇒データリンケージ(レコード内・間の情報を関連付ける)
- コンテンツの変化
- 利用者の変化
- 利用側の変化〜目的
- 研究者は新しい順、引用順で使う/既知の文献を検索する
- 学生・一般は類似検索やキーワード推薦を求める
- 関連研究の調査
- 研究業績収集や研究評価からの需要
- 被引用数やダウンロード数も求められる
- 検索システムへの要求
- 2〜3桁高い検索処理能力と3〜4桁多いデータ供給(表示)能力
- 件数増大、フルテキスト対応
- API経由等で利用頻度が増大する・・・慎重にやらないとシステムがダウンすることも?
- 異種情報間のナビゲーション
- 2〜3桁高い検索処理能力と3〜4桁多いデータ供給(表示)能力
- 個別システムからつながるシステムへ
- システムとシステムがつながる:システム連携
- データとデータがつながる:データリンケージ(この著者の論文は・・・)
- システム連携
- 基盤技術
- まとめ
- 利用者志向、ちょっと気の利いたランキングなどの付加価値サービスをモジュールとして作れる:図書館が得意?
- 自分たちでやることと人に任せることを区別、「いかに他の人の力を借りるか?」
「利用者・コンテンツの側面から考える情報検索サービスの将来像」(筑波大学・松林麻実子先生)
- できるだけ具体的なデータに基づいて話したい
- 医学研究者の情報行動と利用コンテンツに話を限定したい
- 研究者と情報検索
- 検索対象コンテンツ
- オープンアクセス状況/オープンアクセスの担い手
- PubMed収録論文について、PubMedCentralとGoogleで全文にたどりつけるかを調査(倉田ら2008)
- 2005: 1/4がOA⇒2007年: 40%くらいがOA
- 圧倒的多数は雑誌側がOA状態で提供している。PMCは26〜28%. 政府系等のプラットフォームでの提供は増えつつある。機関リポジトリは少数
- OAは商業出版社と学協会が実現している。公的なアーカイブとしてはJ-STAGEによるものも一定の割合。
- PMCはある程度発展する?
- PubMedで検索⇒現物、という行動が加速する
- Googleでも文献を探せるようになる
- それで利用が増えるのか?
- 日本の情報提供機関の関与は出てこない
- オープンアクセス状況/オープンアクセスの担い手
- 日本の情報提供機関はいつ出てくる?
- 人社ではCiNiiが有効
- 大学紀要の電子化が使える
- これらは情報検索の基本的な想定(自然科学)から外されてきた領域・・・対象としてとらえるか否か、発想の転換が求められる?
- 研究者は今の行動を変えなくても便利になるなら喜ぶ
「図書館運営の視点から」(鶴見大学・長谷川豊祐さん)
- 情報検索サービスの変化が図書館にどういう影響を?
- 紙(冊子体・パンチカードなど)〜公衆回線〜CD-ROMサーバ〜インターネット
- メンテナンスが複雑化
- 館内での利用⇒構内での利用⇒遠隔利用/利用場所とサービスの拡大
- 従量課金と代行検索⇒固定料金で利用者自身による検索へ:図書館員の技能低下と当事者意識の消失(図書館員が検索しないから)
- 対象範囲の拡大
- 有料のみ⇒無料も・・・セルフ化の進行、サービス把握が困難に
- 学術のみ⇒教養・娯楽・・・」サービス提供の範囲拡大
- 少品種⇒多品種・・・蔵書構築の変容(でも医学はPubMedしか使わない?)
- 全文提供が楽に
- 運用から契約
- 変化のまとめ
- 図書館は検索の最前線から後退
- 業務量が増加し技能習得も困難に
- 予算の拡大や組み替えが必要に
- 紙(冊子体・パンチカードなど)〜公衆回線〜CD-ROMサーバ〜インターネット
- 背景:図書館運営の変化
- 大学図書館の効率化=人の減少、専門職の減少
- 「探す」ことの一般化による図書館機能の喪失
- 利用者自身がインターネットを探すので図書館を使わない/偏った知識の利用者も多い
- 使いやすいところにみんな流れる・・・図書館の差別化の困難
- 図書館の専門性も仲介機能も消えてしまった
- 要求とサービスのギャップ
- インターネットにおける全文入手の状態化と新しい検索システムの機能向上
- OPAC2.0以前に、基本サービスの主題分析が要る?
- 背景のまとめ
- 図書館員の喪失・不安を払拭するような将来像はないか?
- 効率化を契機に業務の見直しと資源の再配分ができるのでは?
- サーチの一般化・・・図書館がサーチのスペシャリストなら、仲介業としての役割を取り戻すチャンスなのでは?
- 図書館機能の希薄化・・・再構築する?
- 何を優先するか? 図書館のサービスとは何か、という問い
- 情報検索サービスの将来像
- 業務改善
- 全メディアの蔵書構築・DBシステムも選択する
- まだ紙ベースで動いているもの・・・学内なら事務便で送る(図書館に来なくても)など物流再構築:学内他部署とも連携する必要
- 発想の転換
- 仕事を効率化して楽にしたい・・・サービス領域が拡大したのだから「効率化すればいいだけだ」と考える
- 大学の教育目標達成との一致、資料提供より教育支援を軸に
- 「提供」から「セルフ検索支援」への転換
- 待ちの「プル」から「プッシュ」へ
- 一つの例としての授業連携
- 授業の演習科目とくっつけると効果的な支援ができるのではないか?
- 先生が授業で「使いましょう」と言っただけで利用率は上がる
- 図書館がやりたいときではなく先生がやってほしいときにガイダンスを:ex)レポートの前の週とか
- ネットワークだけじゃ解決できない課題にあたって、紙やマイクロフィッシュを見ると学生も興味を持つようになる
- 将来像のまとめ
- 検索サービスと活用支援を統合していってはどうか?
- 授業にあった使い方の支援
- 使いやすいDBに作り変えるためのベンダとの協力
- 大学との連動が一番大事・・・ex) 鶴見大では学修環境支援を考えるシンポジウムを大学で開催する
- 「今後の図書館サービスに、情報検索サービスの可能性を活かす!」
- 最終的には人間の問題
- 業務改善
パネルディスカッション
まずはパネリスト同士でディスカッション
- 大山先生:私のメッセージがうまく伝わっていなかったかも知れないので補足。サービス・システムがモジュール化できるということを申したが、メタデータをたくさん集めて力仕事で検索を提供するのはCiNiiのようなものがあるが、そこに流し込む紀要等のコンテンツの整備は大学に作っていただく、それに付加価値をつけるのがNIIの役割。さらにそれにユーザインタフェースを再構築することもできるような技術的状況になってきている。
- 大山先生:他の方について。松林先生の最後のスライドで、紀要の存在感についてお話があったがコンテンツは大学図書館の方や学内の出版関係の人の作ったもので、大学とNIIの連携によるもの。今後は誰も単独では学術情報サービスを提供できない。サービスを提供しながらどこに特化できるのか、ユーザや提供者にメリットの大きいものを皆で構築できれば。それから長谷川さんの情報検索サービスと活用支援の統合については、図書館内だけではやり切れない部分もあると思うが大学であれば学生も含め色々なスキルを持った人が学内にいるはず。そう言う人の力を如何に組み込んでいくか。
- 松林先生:補足から。人文社会についてちょっと誤解を招いたかも知れないが、NIIやJSTだけでなく大学図書館も主要なものであると話したつもりでいた。
- 松林先生:大山先生に質問。クラウド技術の話があったが、コンテンツがweb上に上がる話とクラウド技術の進歩は深くかかわるのではないかと思うがそちらの進展はあるのか? 長谷川さんについては、極端なことを言えば大学図書館は利用者教育+アクセス支援に力を入れてという考え方もできると思うが、そうではなく全体的な底上げを狙うのがいいのか?
- 大山先生:クラウド技術というのは計算パワーを稼ぐ手段という意味だが、サービスのクラウド化もあり得るとは思う。日本では進んでいないがアメリカでは機関リポジトリをクラウドに乗せるようなサービスも進んでいる。その場合、そこで作られたコンテンツを集めていいことがあるかはギャップがある。どちらかと言えばクラウド的とは、例えばCiNiiなら色々なデータベースを集めてやっているが、今後それをさらにやっていくとミニGoogleのようになり処理量が必要なのでクラウド化を考えている。2つをつなぐのは今後の課題。
- 長谷川さん:利用者教育・アクセス支援と並列して全体の底上げも。深く考えていない、深く考えていると内側から足を引っ張られるので考えないでやってしまっている。底上げか支援かと言われれば両方やりたいし、簡単にできることならやってみたい。〜支援とか言い出したのは大学がそういうのを「やったらどう?」と言ってきたのでそれに乗っかっただけ。ただ、全体的な底上げは必要。何かをやるときに図書館員のマンパワーが強くないと、やりとげるスピードも質的なものも違う。図書館の底上げ以上に大学全体の底上げが必要とも思う。まあ、できるところからやっていけばいい。
- 小山先生:大山先生に。現在のCiNiiの様々な仕組みをモジュール化して色々なところでやろうという話? NIIの中でやるけど別々の計算機リソースを使うという話?
- 大山先生:クラウドという言葉の定義がいるが、私が言っているのはたくさんあるリソースを効率的に使うということ。NIIのリソースもクラウド化すれば外部の人でも使えるかも知れないし、逆に言えば従来のクラスタ技術だけでは硬直化してくるのでシステム的な面でやることもあるかな、という。私見。それから機関リポジトリのクラウドについてはNIIも向かう準備があり、バックヤードのクラウド的なものが重要になる。やがては目に見えるサービスになるかも。
- 小山先生:ありがとうございました。では最後に長谷川さんから。
- 長谷川さん:自分の発表の補足。呼ばれてやってきて、自分がどういう話を出来るか悩んで付け焼刃で勉強して話、お2人の話も聞くと、具体的にやることは違っていても目指す方向は同じかと思う。情報検索サービスがあっても、検索を広くとらえれば開発も利用者行動も図書館も協力していけばよりよいシステムができるかと思う。今後、これを機会にどういうシステムがいいかを具体化できればいい。
フロアからの質問タイム(質問は紙で提出、小山先生が読みあげ)
- 小山先生:一番多かったのは長谷川さんの主題分析について。技能の習得方法など。
- 長谷川さん:データベースを使ったり情報検索を使う上で、図書館自体の所蔵資料をもっと活用せねばならない。図書館員は新しいものが出るとすぐ使ってしまうが、そうすると本に対してのこだわりがどんどん少なくなっていく。しかし学習支援を考えると本を提供しなければならない。学生も図書館の中にある本をぱっと探せればそれでいい。本を探せることは重要。LCSHが非常に使えるという経験をしたことがあり、あるメーリングリストでメンデルの法則が当初顧みられなかったのが後に有名になった、そのきっかけになった論文をLCSHを使ってやったらすぐ出てきたという。それは論文の書誌に入っていない「スイートピーの実験」を主題として付けていたから。こういう時代、インターネットがいいのは電子であることでなくすぐ手に入ること。紙もすぐ手に入ればいい。『パスファインダー・LCSH・メタデータの理解と実践』という本と、主題分析について詳しく書いた本が愛知淑徳大学の図書館から出ており、それを読むのが主題分析を知るにはいいのではないかと思う。主題分析は、よくよく考えてみるといいんだなあ、という。これを機会に主題分析を考えていっちょう入力しよう、となれば。
- 小山先生:主題分析に基づくメタデータにより色々な構想が立ち上がるかと思う。そういったメタデータそのものについて大山先生に質問が来ている。FRBRで異種情報間のシステムができないか?
- 大山先生:FRBRについては困ったところだが、実際の情報機器の状況に基づいて作られたものではないのでシステムに応用するには自動的にシステムに対応することが必要で、実験段階。まだまだ実用に使えるものではない。一方で単純に連絡するだけならAPI、OpenSearch等でかなり自由自在に検索インタフェースが作れるのではないかと思う。データの組織は難しいが、ユーザインタフェースである程度ごまかすことはできる。
- 小山先生:以前CiNiiのデータをGoogleに公開したら皆さんにご迷惑をお掛けしたことがあった。サービスを担保するためのリソースの確保が凄く重要だと思う。日本の大学図書館はその点でNIIにおんぶにだっこという面があるが、私たちも何ができるかというのがある。
- 小山先生:松林先生に。医学研究者に1) PubMEd(厳選された雑誌)、2) PubMedCentral(検索できるが収録が少ないのでは?)、3) Google(アカデミックに耐えられるのか)、4) 機関リポジトリ(日本語中心)のアカデミックな価値とは?
- 松林先生:医学研究者にはPubMedの利用が一番基本的なところ。PubMedだけ見ていればいいんだという研究者もいる。が、その先のPMCまで行くかというと、あれば見るがジャーナルを大学で提供してくれていればそちらの方が確実。PMCにPubMedほどの重要性は感じていない。Googleについてはアカデミックな利用に耐えられるのかと言えば、研究者が自分で検索した結果について判定できるという自信を持って検索をしている。Googleだろうがなんだろうが使えれば使うという話。PubMedの時は出てきた結果を信頼しているのに対して、Googleは自分たちが使いこなしているという感じ。使いわけ・住み分けができていると言える。最後に機関リポジトリは医学分野に限定すると使えるものがなく、医学研究者に限定すれば意識としては非常に低い。何か価値あるものとして位置づけられてはいない、存在自体意識していない。
- 小山先生:Googleと他DBは相補的でどちらかというものではない?
- 小山先生:コンテンツを見つつどう利用しているのかということで医学分野の話に比重があったが、最後のところで人文社会系の話もあった。「人文社会科学のための具体的な方法や計画はどのようなものがある?」
- 松林先生:シンポジウムのテーマではなく研究上の姿勢にまでつながるが、私は経験的に知っているとかエピソードを持っているという点では大学図書館員でも研究者でも、エピソードの一つや二つは持っていると思う。だから全体を・・・という話をしてはいけなくて、全体的な傾向を調査してその結果をもとに何かを言わなければいけないと考えている。私が手元に持っているのは医学研究者のデータのみなのでその話をした。特殊性はどこの領域にでもあるわけで、それを一般化することはできないと考えている。人文社会科学系については今の段階で調査・研究がされていないので今後。ただ医学研究者ほどに頻繁に検索をしているかと言えばそれよりは緩やかなはずで、それをどう捉えるかはかなり難しい話。情報提供機関としても自然科学系の研究者の今までの成果を応用してという話にはならないだろうと考えている。具体的に何をやるつもりということは今、この場ではできない。
- 小山先生:SCREALでは研究者を対象にした調査でCiNiiがよく使われているというデータもある。分野ごとの性格はどうしてもあるので、一つ一つ丁寧に見ていくことが必要かとは思う。その上で使えるリソースを考える必要があるかと思う。
- 小山先生:大学図書館・研究図書館が中心で公共や学校での話がなかったが、そのあたりのご意見を全員にいただきたいというのが来ているが、何かあれば。公共はDBが使えたり使えなかったりすると思うが。
- 大山先生:公共図書館とのお付き合いはあまり深くないが、最近は民間でもベンチャーが公共図書館を使うという話もある。公共だから需要がないということはない。一般の人により広く窓口を開いて、学術情報であっても一般の方が使うという局面が出てきていることがGoogle公開でわかってきた。提供側の想定とは違うことが起こる、しっかり事例を見ながらGood Practiceとして多くの人に知ってもらうという努力が必要と思う。
- 長谷川さん:公共図書館も大学図書館のいいところを真似して貰えればいい。具体的には無料のデータベースで地域情報を探す仕組みを作ればいいだけの話、どちらかと言えば公共図書館より多いユーザ数を抱えているわけで、うまいシステムができれば爆発的にブレイクすると思う。一つでできるわけではないので、技術のある大学と一緒になって地域情報を公開するというのはすぐにできること。
- 松林先生:公共図書館に専門的な情報を必要とするという話はあるが、研究者が一般の人にもわかるように書いているわけではない。そこのすり合わせは難しいと思う。どちらがどうとは言えないが、今の段階では利用者や公共図書館の側で必要としているものを探して有効活用していただくしか、研究者や大学図書館でただちに何かができるという話ではないのかと思う。
- 長谷川さん:公共図書館の研修会でお話しすることがある。一般の人に図書館の使い方を話す。その時、NDLから個人で文献を取り寄せられることを知らない人も多く、そう言う人は学術的な論文を使う人。私たちが学術的とかいうよりは、調査をしている人たちに使い方を説明していく、そう言った場面で支援するネタはいくらでも公共図書館にある。
最後に一言ずつ
- 大山先生:繰り返しになるが、現在の情報検索サービスは誰も単独では使い勝手のいいサービスは提供できない。これを克服するにはコンテンツを作成する人、発信する人、収集・整理・検索する人、さらにそれをユーザの立場に立って使い方を指導する・そのためのツールを整備する立場の人が協力しながらサービスを構築することが必要。今日の議論でそれをより痛感した。今後ともNIIはそう言う図書館、研究者、学会と協力しながら情報提供というものを進めていきたい。
- 松林先生:研究者の狭い空間と、サービスの実践の現場で話をするとどうなるかが大変勉強になった。利用者がどういう行動をしているのかを調べて研究成果を提供することがなんらかのお役にたてればと思う。
- 長谷川さん:ここでお話をしているうちにいろいろ考えがまとまってきた。情報へのアクセスということを考えると、図書館で蓄積した数億円分の本の有効活用が必要ということがひとつ。で、教育の場面において、図書館がもっと良くなろうとするなら本へのアクセスを良くしないと、電子媒体に比べてあまりに弱すぎる。鶴見大学では3年ほど前からカバーを残すようになった。こういうことから始めればいける。図書館が自分の資料をちゃんと整備することではじめてNIIや松林さんのような研究と協力していけるのかな、と思う。
・・・1週間の間に色々ありすぎて感想の大部分を忘れてしまっているのですが・・・(汗)
思ったことをすぐブログに書いておくって大事だなあ、とこう言うとき実感。
最初、テーマを見た時は「なぜ今情報検索?と思ったのですが、『情報学のフロンティア』シリーズの最新刊に合わせてのことだったんですね。
実は(これも忙しさにかまけて)まだ同書を読めていないのですが・・・読んでた方が楽しめたのかな、どうなんだろう。
あらためてメモを読んで当時の感想を思い起こすと大山先生の「単独では使い勝手のいいサービスは提供できない」、他サービスと如何に連携するかと言う話は全くその通り、と言う感じ。
そしてその点から見ると松林先生のお話の中にあったJ-STAGEによるオープンアクセスの評価は微妙かも、と思ったり。
J-STAGEは(プラットフォーム側の意向なのか学会側の意向なのかわからないのですが)本文ファイルのアクセス権限が「アクセシビリティのための内容抽出」も含めて一切コピー不可(つまり全文テキストデータを持っているのに外部のサービス等には一切使わせない)設定になっていることがあったり、かつその設定がコンテンツによって一貫してなかったりで・・・メタデータ連携等の点でいろいろやられているのになぜそっちは放ったらかしなのか・・・
まあそれは機関リポジトリでも同じなので、そもそもみんなあんまりファイルのアクセス権限とか見てないのかも。
「つながりが大事」な時代に「つながれない」ものを作ってアップするってかなりの自殺行為な気もしますが。
「Googleで上位に出るものを信用するのはけしからん」って言う前に、自前の「信用できる」コンテンツをGoogleやほかのサービスでちゃんと見えるようにする努力をもう少ししないといけない。
それは長谷川さんの本や図書館の話にも通じるところで、「使いやすいところにみんな流れる」ときに「使いにくいけどこれは大事なんだよ!」って言って無理に使ってもらおうとするよりはちゃんと大事なものは使いやすく(アクセスしやすく)しておけよ、と言う。
「図書館がもっと良くなろうとするなら本へのアクセスを良くしないと、電子媒体に比べてあまりに弱すぎる。」と言う、これはまさにその通りかなと。
おー、そうしてあらためて見るとこのシンポジウムはけっこうすっきり方向性を示しているような・・・。