かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「筑波大学を拡張する augmented campus - pingpong:行為の構造化を通じたデザイン」


一昨日のエントリでも告知しました*1、pingpongプロジェクトのシンポジウムに参加してきました!


シンポジウムの様子はustreamでも配信され(配信者はおなじみid:milkyaたほか)、Twitterではハッシュタグ#ppklcを使ってやり取りがされていました。


「こんだけまとまってたら自分もういらんのではないか・・・」という気もしつつ、一応記録を取ったのでいつものようにメモをアップしたいと思います。
なお例によって例のごとく、min2-flyの聞きとれた/理解できた/書きとれた範囲でのメモであり、(最近いつも言っている気もしますが)特に今回ところどころメモしきれなかった部分や自分がTwitterに夢中になって記録し損ねたところもあるので、その点ご了解のうえお読みいただければ幸いです。
参加者の方やUstream視聴者の方で、お気づきの点等ありましたらご指摘いただければ幸い。
なお、小見出しなどはmin2-flyの手によるものですので不適切なところなどありましたらこれまたご指摘いただければ幸いです。


では以下、シンポジウムの様子のメモです。



趣旨説明
  • 三津石さん(筑波大学知識情報・図書館学類4年生、春日ラーニング・コモンズ学生代表):6月に春日エリアでpingpongとラーニング・コモンズ*2が連携したワークショップを行う。春日エリア*3だけでなく参加者を募りたい、またゆくゆくは全学で行いたいと考え、説明の場を開いた。
  • 山本幹雄先生*4:2日前からの広報にも関わらずこんなにたくさんいらしていただいてありがとう。
  • 三津石さん:山本先生には場所を借りるにあたってお世話になった。では岡さん。
pingpongとは?
  • 岡瑞起さん:pingpongの概要とこれまでに行ってきたワークショップ(WS)を紹介しながら、プロジェクトについて説明したい。pingpongプロジェクトは東大・知の構造化センターを母体として行っている。メンバーは自分と李明喜さん、東大の橋本さん。ほかに学生メンバーとして多摩美の石山さん、はこだて未来大のWSに参加された学生さん、それから今回から参加された三津石さん他の方々。横断的な分野の人たちと一緒に、デザインの新しい手法や新しいデザインの在り方を考えて行っている。
  • 岡さん:背景として、webにおけるデザインがここ数年で変わっている。さまざまなソーシャルサービスが普及し、使われている。それらのサービスを通じて今までは何かを作ることが、ユーザと作る人が別れていたものから、オープンソースで作られるようになり、ユーザとして使っている人もバグを報告するなど開発に貢献できるようになってきた。ユーザと開発者の垣根がなくなってきている。さらにそれがwebサービスになり、ユーザがコンテンツやサービスそのものを作ることが加速している。さらにwebサイトのデザインを考える場合でも、Google Analyticsのような便利なツールが出ている。サイトのページビュー等の記録が残る。新規ユーザとリピーターの割合を表示したり、どういうキーワードでアクセスしているのか等がわかったりする。また、ページのどこをどのくらいクリックしているのか、ユーザのサイト内での動きが簡単に取れる。それを使って、レイアウトを考えるときにどこにボタンを置けばいいのか、ユーザのページビューで決めようということが行われている。例えばGoogleではどういう「青」を使うかを40数パターン考えて、ページビューで決定したりしているとも言う。サイトの作られ方が変わってきている。
  • 岡さん:新たなデザインプロセスが誕生しつつあると言える。見えなかった、人々の「行為」のデータが取れるようになってきている。最近はログのデバイスも開発されており、どんどん加速して行く。情報空間と物理空間を分けることなく考えるデザインプロセスが生まれるのではないか。それは今までに体系化されていないので、pingpongプロジェクトを通じて行っていきたい。それによってwebの世界で行われているようなデザインの仮説・検証のプロセスが実空間でも回るようになる。今までデザイナーと言われる人々がセンスなどでデザインしてきたものが、行為のデータを扱うことで新たな手法が提供できる。これまでの仮説・検証、あるいは作る場面と使う場面が連続的につながっていないものを「前期デザイン」とpingpongでは呼んでいる。pingpongは仮説・検証がうまく回るプロセスの実現を目指しており、これを後期デザインと呼んでいる。
  • 岡さん:実際にどういうことを行っていて、どのような技術が使われているのか。現実空間での行為データの収集・分析ツールを開発している。データ収集のためのアプリ、データ分析のためのエンジン、データ可視化のためのブラウザの3つを開発して利用している。
  • 岡さん:現在、多様なデータがwebにたまっている。Wikipedia集合知のいい例であるが、それと似た人々の集合による知識の例にwordnet*5というものがある。例えば英語のinstitutionがどのように使われているか、ということはコンテクストによって変わりうるが、Googleの研究者がwebデータを大量に処理することで単語に付随する属性値を自動的に付与する、ということを行っている。ネットワークや構造は誰かが固定的に作るものではなく、ボトムアップに抽出できる技術がwebの世界では開発されている。同様のことを我々は実空間で自動的に抽出する技術を開発しようとしている。
  • 質問者:「構造」という言葉を色々な文脈で使われているが、言葉を再定義して貰えないか? キーワードになるのだと思うが、岡さんがどう定義して使っているかを補足して欲しい。
  • 岡さん:「知の構造化センター」というところに所属しているわけだが、そこの文脈で言うと、今扱っている情報がどういうエンティティからなるか。後ほどのディスカッションの中でも触れたいと思うが。
  • 岡さん:pingpongマップアプリと可視化するブラウザ、抽出エンジンについてデモを見せながらご説明したい。
    • <以下、デモ>
  • 岡さん:データ収集も含めて、研究の実験環境としてワークショップをやりながら、3つの課題に取り組んでいる。1つは見えなかった情報を収集し、可視化することがデザインプロセスにどのような影響を与えるのか。2つ目は特定の環境におけるデータの量・質・構造化の方法と、効果の関係。3つ目はリアルタイムな情報が収集できるときにデザイナーの役割はどう変わるか。そういうことで、最終的には社会全体が拡張されるようなエコシステムが作れればいい。ワークショップの情報を結ぶことで拡張された大学のネットワークが出来る。あるいは公共空間での人々の行為がネットワーク上でつながるような環境を提供できると良い。
実際のワークショップの紹介
  • 岡さん:抽象的な話をしてきたが、ここからは実際のWSの話。多摩美大でのワークショップ、はこだて未来大でのWS、DESIGNTIDE TOKYO 2009について。WSの中では、先ほどのアプリケーションを使ってWS参加者がデータを収集し、それをもとに学生がグループになって空間で何が行われているか分析し、環境を理解する。次にデータの分析を行いながら、ディスカッションした結果をアイディアとしてまとめて、まとめたアイディアを実空間にプロトタイプした。WSの結果出てきたアイディアをちょっとご紹介すると、たとえばはこだて未来大の建物の吹き抜けある柱にTwitterのポストをリアルタイムで流すとか、pingpongマップを大学のインフォメーションマップとして表示する、その際つぶやきが盛り上がっているところを可視化する等。単にインタフェースの提案に見えるかもしれないが、どの場所に置くと有効か等を環境の中で試しながら行っている。3つ目は、学生の通る床に上からプロジェクションして先の空間で何が起こっているかを見せる、等。はこだて未来大のWSは4日間だったので実キャンパス内での実装までは行かなかったが、現在大学のスタッフの方と協力して実装に向けて継続して研究中。仮説と検証をサイクルとして回すと言ったが、デザイン提案をしてみて、それを実装した後にどう変わるのかも検証したい。そのためWSだけではなくその後のプロセスも追いたい。そのために行為を収集するマップを分析ツールとしても使いたいと考えている。
  • 岡さん:多摩美でのWSでも同じように、何が行われているかを可視化して、どういうことができるかのアイディアを出してもらった。最後にDESIGNTIDE TOKYOでは会場で作品から生まれる行為をリアルタイムで表示する。
  • 岡さん:話が長くなったが、このように現実空間と情報空間を分けずに扱ったときにどのようにデザインが変わるかを研究している。次回は筑波大学の春日エリアでワークショップを行うので、興味が御有りの方は参加していただけると嬉しい。日時は4日間にわたって行う。6/2, 8, 16, 23。授業終了後に行うことを考えていて、全学の学生・院生対象。参加者は20名程度を予定、大幅に超えたらこちらで選考する。ぜひ応募して欲しい。
  • 三津石さん:WSは4日間全部出ないと駄目か、と良く聞かれるのだがいかがか?
  • 岡さん:基本的には全日程参加いただけることを基準としたい。
  • 李さん:参加の仕方としては、能動的にWSに参加するほかに、来れるときだけ来てもらうこともありうるし、WSには参加しなくてもアプリを使って自分のログを投稿する、ということもある。皆さんのペースで参加のレイヤーを決めてもらえれば。
春日エリアでのWSについて
  • 三津石さん:今はpingpongプロジェクト全体の話だが、次は6月に春日で行われるWSについて説明したい。
  • 三津石さん:自己紹介を忘れていたが、春日ラーニング・コモンズの学生代表をしている。知識情報・図書館学類の4年生で、人と計算機を連携させる技術と、人と組織を動かす仕掛けづくりに興味がある。
  • 三津石さん:ラーニング・コモンズとはなにか。場所、設備、人と言う3要素からなるもの。場所:可動式の机や椅子があり、フリーに学習できるスペース。設備:教育用の計算機やプリンタ、ディスプレイ、図書館の学生向けコレクション等。人:図書館員や学生スタッフ、教員。利用者は主に学部生を想定する。海外の大学図書館を中心に発展した取り組みだが、最近は国内でも増えている。ちょっと検索すればいくつも出てくる。
  • 三津石さん:筑波大学のラーニング・コモンズは3年前から始まった。特徴は運営の中心が学生であること。これは世界的にも珍しいもの。しかし利用者は増えているが、学内での認知は不十分。また、図書館利用者との間に意識の差もある。各大学によって状況も多様であり、何より「人」は常に違うと言うこともあり難しい。筑波大生の気質、知識情報・図書館の気質というものがあると考えられ、ラーニング・コモンズというものを考えるにしてもその場所の特性を考えないといけない。pingpongは人々の行為を収集して、それによって場を作る。ラーニング・コモンズもトップダウンではなく、地域の人々の行為から最適なものを作って行く必要がある。pingpongとラーニング・コモンズは馴染むはず。2月に李さん・岡さんとお会いし、pingpongの話を聞いて、協力するに至った。李さんから補足があれば。
  • 李さん:春日ラーニング・コモンズの三津石さんにお会いしたのは、2月に筑波大学であったARGカフェ*6。もともとの共通項もあったが、三津石さん自身が新しい場を作ろうということを真摯に語っていたのが印象的だったことと、そういうものを学生が自主的に起こしていこうと言うのが印象に残った。一方で、ラーニング・コモンズというものについて調べてみると、一体なんなのか、図書館との結びつきの必然性、必然性はないのかもしれないが、そのあたりが考察されていないのか、されているけど表に出ないのか。場所に着目するのは当然と思うが、その考えが非常に素朴な、あまりにも純粋すぎる、その素朴さは良さでもあるが気になった。そういうことも含めて、一つの文脈ではラーニング・コモンズを定義できないのは間違いない。ラーニング・コモンズだけではなく、世の中は全部複雑で多様。それを自分たちのジャンルや産業構造、マーケットだったりで部分を拾って単純化する、還元主義的な方法によって方法論が確立され、それぞれが時代背景とも関わって成り立ってきた。しかしそれが実際の人々の行為やコミュニケーションのあり方と全く様相が異なっている。還元主義的なものでは捉えられない方向になっているのに、そういう風になっていない。pingpongだけで解決できるとは思わないが・・・今、間違いなく物理空間と情報空間を考えられなくなっている。物理的な空間のみで体験している、あるいはwebだけで体験していることを区分できる体験はない。それぞれを作るプロセスは別れていても、体験レベルで分けることは無理。情報空間と現実空間を一つで考えるための変換ツールをpingpongでは用意している。さらに言えば、これはラーニング・コモンズとも同じ指向だが、最初に与えられて「デザインしました」で終わりではなく、その後も関わって行けるような。はこだて未来大の場合も、ソースは全部公開していて参加者はいじることができた。だから大学のインフォメーションマップとして、pingpongマップを改造したりができた。吹き抜けの柱にtweetを流すアイディアも、マップのソースコードをいじってそれを現実空間にどう置くかを考えた提案。それが一つの情報環境と物理空間の変換としてpingpongが機能する例。それが筑波の春日ラーニング・コモンズだとどうなるか。正直それは予測できないし、色んな人がどうかかわるかで当然変わってくるが、そういうつながりとしてラーニング・コモンズとpingpongが出会って、今日の場がある。
学習とは?
  • 三津石さん:この後は自由討議と言うことにしたい。まず僕としてはTwitterの中で「学習とはなんぞや」という話があるんだが、学習に関するトップダウンの定義はもう意味はないのではないか。ラーニング・コモンズもトップダウンの学習を支える場ではなく、大学生の活動を支える場になってほしいと考えている。pingpongによって、勉強をしていないなら何をしているのかを拾っていける。それによって大学生にとって楽しい場を考えることができると思うが、そのあたりについて意見があれば是非お聞きしたい。常川さんなんかは?
  • 常川さん:(id:kunimiya)個人的には学習が堅苦しいものだとは思っていない。僕は堅苦しい勉強が好きな人間と思われているのだが、それは堅苦しいことや真面目なことが必要だからではなくて、面白いから。問題なのはそういう他の人にとって楽しい学習が人に押し付けられること。大学としてやって欲しいことはわかるが、バイトや遊びを学問っぽくするというような力も大学の文化として認められるべきなのではないか。
  • 李さん:三津石さんを中心に学生がやっていくと考えると、「学習」って言った方が通りやすいのかもしれないけれど、そもそも「学習」というのは教育制度としての言葉なので。僕らはpingpongを遊びだと思っているし、「学習」と言った途端に定常的な成果とかそういう話になりがち。もっと軽い感じで、「遊ぶ」ってくらいでいいんでは?
  • 会場:「学習」っていう言葉が使われているが、私の理解の範囲ではその意味が講義をして教科書の知識を覚えるというような伝統的な意味合いを引き継いでいる。ラーニング・コモンズで追及しているのは教育関係で「学び」と言われたり「研究」と言われるようなものを含むように思う。言葉の細かい意味合いがどういう行動を意味しているのかを意識して使う必要があるのではないか。たぶん、皆さんがおっしゃっているようなどういう知的活動をしているのかというのは、主体性、インタラクション、ネットワーク性が重要になってくる。そういう意味での学習、学び、遊びをする場を提案されているんじゃないかと思うが。議論が混迷している。
  • 李さん:(Twitterで自分で呟いてしまい記録取れず(汗))
  • 石山さん:多摩美大に所属しています。pingpongのWSは過去2回とも参加している。図書館にいる人も人を待っていたり、飲み物を飲んでたり会議をしていたり、違う行為をしていることが考察を通じてわかってきた。それをつながりを持って発展させたり、本来の目的が果たせていないならどうやって果たせるようにすればいいかとかを考えていた。最初から作りたい空間のイメージがあったりはしなかった。
  • 李さん:ちなみに多摩美の図書館では入力アプリはなくて、手作業でマップを出力して付箋で貼ると言う過酷な作業をやった。結果、ヒートマップがビジュアライズ出来たんだが、はこだて未来大のときにはアプリが出来ていたので。
  • 石山さん:多摩美では一人200個くらいのtweetを全部印刷して貼った。大変だった。
  • 李さん:ただ、場所を意識する意識付けとしては、実環境の中で場所を確認しながら貼っていくことで強くできた気もする。多様なものを工夫して、返還ツールを使うことで多少は複雑なものを扱えるようになっていて、それは何かを目標を持ってやっていくというよりは、実際にそこで何が行われているか、印象やインタビューなどから得たものとどう違うかわかることだけでも意味はあるし、それによってその空間が見えてくる。見えてくることでその空間を動かせてくる。
pingpongプロジェクトと建築
  • 李さん:全ての方法論が全てをカバーできることはないが、今までのやり方は想像できる。今、現在におけるテクノロジーであるとか、今までの知見を含めてこの状況の中での方法論としてわれわれはこのやり方を選んだ。これが全てとは思わないが、ネットワーク化することで我々がこぼしているものもつながるようなオープンさは持っていきたい。今使っているツールが絶対とは思ってもいない。Twitterを使うところも入れ替え可能と思うが、今はこれを使っている。選択性は重要と思う。クローズドするのではなくオープンに。
  • 常川さん:補完についてもシステム面で何か。TwitterAPIで補完できるので、ソフトウェア的にも何か。
  • 会場(id:SuzuTamaki):pingpongプロジェクトは自分の理解では、Google analyticsの現実空間での実現ということかと思った。ユーザの行為データの収集と、それをデザインに反映する2つのプロセスがあると思ったが、現実での構造物にどれだけ反映できるかはリアルタイムでは難しいと思う。行為データのリアルタイム収集はできるだろうが、リアルタイムでの反映も将来的には目指す?
  • 李さん:それはもちろん目指す。我々としては新たな建築物を作る場面でも可能性はあると思うが、それは建築の方と協力していけたらと思うし、会場にいる赤松さんや、建築家の藤村龍至さん*7とも何かしたい。しかしそれはすぐにはできないので、今ある建築物を所与の条件として取り入れたときに何が出来るのか。はこだて未来大の場合は、WSを通じて読み解きつつ、シミュレーションレベルでありながらわずか4日間で3つのアイディアが出てきた。実際の建築物の構造の主要素である柱、構造物でもありシンボリックなものでもあるが、これにフロアをまたいだ集合的コミュニケーションの経路として考えたときに、方法は色々あると思うがそういうことが実際に出来る。はこだて未来大では今、5月から始まった新年度のカリキュラムでこのWSに参加した学生と1つのクラスが実装のためのプロジェクトを展開している。大学に関わる出来るだけ多くの人が使っていくインフラになるにはどうしたらいいか。既存建築を所与の条件として、pingpongプロジェクトに重ねたときに何が出てくるか。筑波も、今の情報を初期設定として読み込んだ上で実環境でできることには可能性があると思う。ただ、それも皆さん次第。
  • 赤松さん(@mattsu):構造エネルギー専攻で建築の構造の研究をしている。pinpongが筑波でやると聞いて物凄く面白いと思った。過去のWSは新しいコンセプトでの大学校舎。この筑波大学は1970年代中盤に、当時の新しいコンセプトで考えられたもの。当時の新しいコンセプトは建築計画学によるもので、30数年たって「あれ?」という寂れ具合なときにpingpong。建築計画学のような「計画できる」ことが無効になっているときに、情報工学の方から空間のデータマイニング技術があがってきて、70年代に作られた空間の使われ方が瞬時に分かるということで。PDCサイクルではないが、すぐに回るサイクルが出来るのは面白い。
  • 李さん:建築の構造を研究される立場から、はこだて未来大の学生さんが考えたようなことはどう考える?
  • 赤松さん:あれも一人の大建築家がコンセプトを考えた空間なのだが、構造的には面白い設計がなされている。この筑波大は効率的ではあるが無表情的。そういったところでどう再解釈ができるかの契機になるのでは。
  • 李さん:一方で、多摩美/はこだて未来大、ともに建築家の物語性の強いもの。構造さえも物語に昇華されている。僕らがそういう物語として建築されたものを選んだということもある。僕も空間デザインをやっているので関心があった。なので、赤松さんがおっしゃったような70年代に作られたものだとまた全然違うものが見える気もする。もしかすると行為から、本当の意味での建築的な構造にも考察できることはあるのでは。
  • 赤松さん:「構造」の定義の話もあったが、建築を「構造化する」とは同じ言葉が使われていても面白いと思うのだが、建築の「構造」はどう壊さないようにするかという物理的な話。世界を規定する、という意味での構造の使い方は定義の問題かとも思う。うまくは答えられないが・・・
  • 会場:古いパラダイムで作られた建物に新しいプロジェクトを行うことで新しい発見が、というのは面白いと思った。それで思い出したのは、ヨーロッパやアメリカでは古い建物を改修して使う。日本では壊してしまう。それをpingpongプロジェクトを通じてどう文化的に波及する、効率のよい改修ポイントを見つけ出して居心地のいい空間を作れると面白い。もうひとつ、構造についてだが、私はもとは楽器音響をやっていた。楽器にも構造がある。例えばバイオリンなら横板、裏表の板、枠、指板が効率よくつながり、駒が弦を貼り、中にある魂柱が表と裏の板をつないでいてオーガニックに2つの板を振動させている。建築物は振動体だと私は考えている。力がかかってたわんだり動いたりしながら建物は微妙な変形をしながら振動している。情報ネットワークにもメタファーとしてそういう考え方があるのではないか。情報が行ったり来たりして空間情報を作っている、というのは面白い。動的な要素がデザインや建築の人はあまり考えないで議論することが多いが、ぜひそういう視点を取り入れてダイナミックに変わっていくようなものを提案していただければ。
  • 赤松さん:池上先生*8が情報空間と物理空間は頑健性が全く違うとtweetされていたが、振動という概念を取り入れると頑強に見える建築も中の人は常に入れ替わり、揺れている。その反映が情報データであり、建築も動かない、頑強なものでありつつ柔らかいものとして捉えるいいきっかけかも。柔らかさは手軽な実装だとインテリアの入れ替えとかになるが・・・振動体というメタファーは面白い。
  • 李さん:そこと情報とのかかわりが具体性を持って見えるといい。
「壁のない筑波大学」の「壁」
  • 会場:話が変わるが、過去にはこだて未来大、多摩美でやったとのことだが、筑波大はそれらと違って広い。僕は春日とか行ったこともないし、春日が変わっても行かないかもしれない。ただ、筑波大学は総合大学で、体育や芸術も含む色んな学生がいる。自分の分野の学問にはいい環境もあるが、せっかくなら他の学類等と関わるようなことがラーニング・コモンズのような場所で出来ればいい。広い範囲に影響を与えられるような、tweetという話もあるが体育の学生はTwitterとかわからないかも知れない。でも色んな価値観の人と知り合えることは価値がある。他の広い分野の人と出会えるような場所にするには?
  • 岡さん:今回がたまたまラーニング・コモンズだったが、そのディスカッションでも天久保とつながりたいし、ラーニング・コモンズ自体、中央図書館にも欲しいという話もある。ラーニング・コモンズでのWSがそのきっかけになれば。
  • 李さん:ARGカフェでもそうだし、その後の打ち合わせでも思ったが、この壁はなんなのか。(春日と天久保に)壁がある。それはpingpongの対象としては興味深いし、大学の視点からすれば勿体ない。今回は三津石さんたちとつながったので春日からスタートするが、地図は書き足せば増やせるし、本当は筑波全体で無茶でもやりたかった。最終的には筑波全体を視野に。Twitterについては、今pingpong的にやりやすくて研究対象としても面白いので使っていきたい。使ってない人への入りやすさの問題はあるが、それをTwitterをはじめるきっかけになれば。実際、多摩美やはこだて未来大でもTwitterをあまりやっていない人も多かった。それも含めて学生がネットワークを起こすきっかけになれば。
  • 人社研究所の方:体育や芸術の方と組んで、「知識とはなにか」ということをやっている。今日、こちらを紹介して下さったのは赤松さんだが、今日は大変興味深かった。
まとめ
  • 三津石さん:今後広がっていけばいいが、きっかけとして6月はまずは春日。議論も終わらないところではあるが、#ppklc で呟けばずっと続けられる。それも素晴らしいことと思った。最後に、山本先生から。
  • 山本先生:CSの教員として期待を。教員としてはLCを研究に使いたいが、研究とはいい学生にいかに場を与えるかが大事。TweetでCSなら研究室あるからラーニング・コモンズはいらないという話もあるが、それは外部の人にはタコ壺に見える。図書館情報のいいところは院生室があって、研究室の垣根がない。CSでもそういうものを作りたいと思っていたが、今日の話でそれが結びついた。いかに共有空間で研究なりを。そういう利用でいい知見があれば。


最後に三津石さんからいいまとめがありましたね、#ppklcで呟けば言い足りないこともずっと続けられる、と。
自分もまだTogetterの方は全然その後の議論をフォローできていないので(苦笑)、これから見ていきたいと思います。


春日エリアでのpingpongワークショップの開催はいよいよ来週からに迫りました!
今日のシンポジウムでも言われていたように、春日に限らず全学の学生の参加OKとのことなので、興味がおありの方はぜひぜひー。
また、アプリ等が公開されれば「WSには参加しないけどつぶやきが地図に表示されるのは面白そう」といった方も気軽にログを投稿できるようになるかと思うので、そちらも興味がおありの方は継続してフォローしてみると良いのでは、と思います。


自分もこれからログの投稿に参加してみようかとー。
・・・「研究室なう」と「PEPSI NEX飲んでいる」と「ニコニコ動画見てる」以外の何が投稿されるもんやらって話ですけどね、自分の場合・・・(大汗)