この先にあるブック・ビジネスのかたち:持続可能な「知のエコシステム」の構築のために(第1回ARGトーク参加記録)
2009.8の第1回ARGフォーラムから約10か月。
ARGフォーラムのパネリスト間で起こった議論をきっかけに来月本が発売されるとのことで、そのプレイベントあるいは中間報告として開催された第1回ARGトーク「この先にあるブック・ビジネスのかたち」に参加して来ました!
- 場所:丸善丸の内本店 3F 日経セミナールーム
- 日時:2010年6月11日(金)18:30開場/19:00スタート 20:30終了予定
- 参加費:1,000円(事前申込が必要です)
- 定員:100名 ※申込多数の場合、抽選とさせていただきます。
- 主催:ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)
- 共催:実業之日本社、丸善
アマゾン、グーグル、アップルといった海外のプラットフォーマーによって、本のデジタル化が積極的に推進されていることを受け、日本でも昨年来から、電子出版関連のセミナーや勉強会が数多く開催されてきました。政府のいわゆる三省デジ懇の取りまとめも、この6月を目処に行われる予定で、電子出版関連の議論は一通り出尽くしたとの感想も一部では聞かれるようになりました。電子出版への興味や関心は、具体的で実践を伴ったものへと急速に移り始めています。
こうしたなか、ACADEMIC RESOURCE GUIGE (ARG) では、いち早くこの話題に注目し、2009年8月に第1回ARGフォーラム「この先にある本のかたち-我々が描く本の未来のビジョンとスキーム」 < http://sites.google.com/site/argforumsite/ > を主催し、その後も登壇者たちと対話を続けてきました。今回はその一つの区切りとして、『マガジン航』 < http://www.dotbook.jp/magazine-k/ > 編集人の仲俣暁生氏のファシリテーションのもと、本をめぐる多様なステークホルダーのなかから、ネットを積極的に活用している書き手である津田大介氏と橋本大也氏にパネラーとして参加していただき、新たな情報環境のなかで、持続可能な「知のエコシステム」の構築のために、いま何ができるのかをテーマに、既存のビジネススキームにとらわれない、建設的かつ具体的な提案を行っていただく予定です。(当日までに、もう一名、特別ゲストの参加をご案内できるかもしれません)。
それでは、当日、会場でお会いできることを楽しみにしております。
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
代表取締役/プロデューサー 岡本真
パネリスト(以下、紹介文は全て当日配布資料より)
メディアジャーナリスト。早稲田大学大学院政治学研究科非常勤講師、インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事などを兼任。
主な著書に『だれが「音楽」を殺すのか?』、『Twitter社会論:新たなリアルタイム・ウェブの潮流』など。
- 作者: 津田大介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2004/09/22
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 164回
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Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)
- 作者: 津田大介
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2009/11/06
- メディア: 新書
- 購入: 42人 クリック: 1,559回
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起業家。データセクション株式会社代表取締役会長、株式会社早稲田情報技術研究所取締役、株式会社日本技芸取締役、株式会社メタキャスト取締役。
デジタルハリウッド大学教授、多摩大学大学院経営情報研究科客員教授を兼任。
主な著書に『情報力』、『情報考学:WEB時代の羅針盤213冊』など。
- 作者: 橋本大也
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2009/01/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 橋本大也
- 出版社/メーカー: 主婦と生活社
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
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- 岡本真さん(twitter:@arg
アカデミック・リソース・ガイド株式会社代表取締役、プロデューサー。
京都大学情報学研究科非常勤研究員、国立情報学研究所産学連携研究員などを兼任。
インターネットの学術利用をテーマにしたメールマガジンACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)を刊行。
主な著作に『これからホームページを作る研究者のために』など。
これからホームページをつくる研究者のために―ウェブから学術情報を発信する実践ガイド (ACADEMIC RESOURCE GUIDE)
- 作者: 岡本真
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 301回
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ファシリテータ―
フリー編集者、物書き。本と出版の未来を考えるメディア『マガジン航』編集人。
武蔵野美術大学非常勤講師、横浜国立大学非常勤講師を兼任。
主な著書『極西文学論 West way to the World』、『ポスト・ムラカミの日本文学』、『<ことば>の仕事』など。
- 作者: 仲俣暁生
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2004/12/25
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 23回
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- 作者: 仲俣暁生
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2002/06/01
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 36回
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- 作者: 仲俣暁生,大野純一
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 56回
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イベントの様子はUstreamでも配信されており、録画映像を視聴できます。
また、イベントに並行してTwitter上で行われていた議論の様子もすでにTogetterでまとめられています。
それはそれとして(笑)、いつもの通り、当ブログでも当日のメモを公開します。
なお、毎度のことながらあくまでmin2-flyが聞きとれた/理解できた/書きとれた範囲でのメモであり、その点ご了承のうえお読みいただければ幸いです。
パネリストの方、参加者の方等で誤りを発見された場合にはコメント欄等を通じてお教えいただけると幸いですm(_ _)m
では最初に岡本さんによる本日の会の趣旨説明から!
岡本さん
- 今日の位置付けを主催者として
- 作者: 岡本真,仲俣暁生,津田大介,橋本大也,長尾真,野口祐子,渡辺智暁,金正勲
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2010/07/16
- メディア: 単行本
- 購入: 21人 クリック: 562回
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-
- 今日はここまでの議論について、公開で皆さんの前でお話ししたい。
仲俣さん
- 今日は中間報告を兼ねている
- 『ブックビジネス2.0』のきっかけ・・・ARGフォーラム
- 僕は参加できなかったが、当時からイベントの中身を本にするプランがあった。
- 1年たたない間に出版・本をめぐる状況は大きく変わった。
- 7月半ばに本が出るので、事前告知もかねて今日の話に。
- 今日は90分しかなく、メンバーの気心も知れているので、いきなりディスカッションをしたい。
- まずはこの半年ぶっちゃけどんな感じだったかを、まず津田さん。ARGFフォーラム以降どうだった
津田さん
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/01/18
- メディア: 雑誌
- 購入: 12人 クリック: 254回
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-
- それをきっかけにTwitterを使って部数が好調
[twitter:@diamondweekly]
橋本さん
- 僕は会社的にはITのシステム開発や口コミ分析をしている
仲俣さん
- 今回は電子出版、電子書籍に興味がある人が多いだろうが、去年の8月はまだ国内にはKindleも日本で売ってなく、iPadもない
- 電子出版がまだそんなになかったころにネットの環境で大きな変動が起きていた。
- この2〜3年は出版業界は大不況だったが・・・
- 岡本さんへ:図書館と言う話題がけっこうキーワードとして出てきている。図書館の役割について
岡本さん
- 来場の方は出版、IT関係が多いと思うが、昨年ARGフォーラムをやった大きな意識としては・・・私はもともと出版⇒ネット業界に転じて、出版からwebに移ったが、昨年の8月からさらに1年前を見ると、国立国会図書館の長尾先生がアクティブで、かつ本来出版から出てくるべき壮大な構想を話していた
- それを図書館にとどめたくない・・・ARGフォーラムへ
- 図書館の世界でも、長尾先生のビジョンは国立国会図書館だからこそ、という話で一般化はできない
- しかし長尾ビジョンは1つの突破口。だれしもが情報にアクセスできる拠点としての図書館から出てきた発想をどうビジネスの側が受け止めるかが重要では?
仲俣さん
- Kindleを持っている人は?
- けっこういますね。
- そういう方にとってどんなビジネスが可能か、具体的な疑問も聞いてみたいとは思うが、後半の質疑応答で。前半は端末を抜きにもっと先の話をしたい
- 例えば『ブックビジネス2.0』には「コンテンツ2.0」とか「著者2.0」という、もとはweb2.0からとっている2.0問題があるが。そのあたり、津田さん、橋本さんのご経験から、本の内容に触れつつどんな風に変わるかを。
津田さん
- 相当変わってきたと思うのは:
- しかし有料メルマガや情報商材ではなく・・・
- 電子書籍ではないが、俗人性、その人の周辺、その人を中心にしたある種のコミュニティビジネスが出来る
- 堀江さんのは有料会員はQ&Aできる権利が取れる
- 新しい形。本と言うよりテキストコミュニケーションとある種のファンクラブ
- 一方電子書籍は単体のパッケージとしての色が強くなる
- たぶん向き、不向きもある。堀江さんはそうとうマメ。自分でブランドを活かすことに自覚的
- 面倒くさいことを編集に任せてきた著者にはあそこまでこまめに出来ない。その役割分担。
- 橋本さんは自分でやってきたからwebで90%と言えるが、著者としては選択肢は増えたが自分の売りを自覚的に考えてない。そしてプラットフォームも定まらないので、足踏み状態
- でも世の中の趨勢が決まってからだと美味しい実もない。終わりが近い過渡期
仲俣さん
- 『ブックビジネス2.0』はちょっと変わったもの。
- 出版社、書店と言った紙のビジネスの中にとらわれている人の発言は考慮しない
- 遠い未来、どういう本の生態系が望ましいかを考える際に、考えられないこともある
- 自発的に行動する著者と、研究者に大胆な提案、提言をしてもらっている
- チラシの中には「印税90%」とかも書いているが・・・
- 橋本さんに2.0問題について
橋本さん
- 印税9割論は出版社不要論ではなく、著者重要論
- デジタルコンテンツの世界が広がると、著者は2つの道がある・・・
- 従来の出版経由の出版を選ぶ道
- まったくそれと関係なくパブリッシュする道、も開けた
- デジタルコンテンツの世界が広がると、著者は2つの道がある・・・
- 出版社、取次、書店を介さず個人が情報発信し、それでより多くの取り分を得られる可能性
- かつ、出版社や取次、書店はどうしても動きがかたい。既存の構造で「9割なんかありえない」という
- 一方でITやゲーム系、既存の枠組みに関係ないところは9割もあり得ると言う
- 新しいメディアの仕組みを作るならシンプルな方がいい
- 既存のものを改善するよりゼロから作ればいい
仲俣さん
- 出版社、書店、編集者にはぜひ今度出る本を読んでいただきたい
- 本の世界と言うのは・・・
- お金儲けの話と、本のある種の公共性
- 出版ビジネスの傍にある大きなクリエイティビティ。そこには図書館も関わるはず
- 図書館も出版も先がないからwebに行き、今また図書館に来た岡本さんから、広義の図書館について
岡本さん
- 一番の関心事は・・・
- われわれの情報や知識はこれからどうなるか?
- 編集者の頃、学術出版は確実に終わると考えた
- 研究者が自分で発信してしまう。でもそれは高い専門書抜きで優れた研究成果が見られる
- それは総体としては人類はハッピーになる
- そう考えるべきで・・・
- 図書館、出版の生き残りは本質ではない
- 〜的な役割、は残ると思うが、既存の各プレイヤーの生存とは無関係
- その上で
- 微妙に直していく、微修正して良くするアプローチと、すこんと入れ替えるアプローチは悩む
- なぜ図書館に肩入れするかと言うと・・・
- 戦後60年、日本は莫大な投資を図書館にしている。それを考えると、作り直すよりてこ入れする方がいいのでは?
- 戦後のようなドラスティックな改革ができる機会は今後日本にないし、歴史的にもそうでいい
- 今あるものをドラスティックに変えつつ、今あるものをバージョンアップする
- 最近は2.0はバカにされるが
- バージョンと言う発想、ちょっとずつ良くする、バージョンを改めて大きくリプレイスされることもあれば微修正もある、っていうバージョンの発想は大切
- 図書館についてもまだLibrary2.0を考えたいし、知のエコシステムの2.0ももう少し考えたい
- リプレイスorバージョンアップの論点の別れ
仲俣さん
- 2.0は馬鹿にしたものではない、というのは大事
- ここでお互い同士の質問とかもしたい。例えばGov2.0とか、今いろんなものに2.0がつく
- 最近、津田さんと岡本さんがワシントンであったそうだが・・・
津田さん
仲俣さん
- 岡本さんもお話を
岡本さん
- Gov2.0もティム・オライリーの言葉
- 図書館を見ていると、そんなに日本は遅れていないと言うのが感想。米英も凄いが、凄いのは大都市だけ。中西部の小さな町との落差は日本の非じゃない
- LAやNYの人は意識が高くても、小さな町の行政官は「どこの話?」と考えている。それは日本も変わらない?
- 図書館を見ていると、そんなに日本は遅れていないと言うのが感想。米英も凄いが、凄いのは大都市だけ。中西部の小さな町との落差は日本の非じゃない
- 日本で出てくるほとんどのサービスはアメリカで流行ったもののパクり
- Yahoo! 知恵袋は日本、台湾、韓国で共同で作ってアメリカに行った
- 本当にいいものならアジア圏から欧米にいける
- ナショナリスティックに考えるわけではないが、我々の文化から新しいムーブメントを作れないか?
- 本に関するデータは日本は整っている
- うまく活用すれば、目先の売り上げでなく、もっと面白い知的空間を日本から提案していければこんなに面白いことはない
- 50年、100年のスパンで面白い歴史に立ち会えるはず、面白いと考え、ヒントを求めてワシントンへ。そして津田さんに会った
仲俣さん
- 例えばこの本が出来る過程で、ウェブ学会が立ちあがった*5
- もうひとつ、日本が捨てたものではない話
- 本の内容に触れると・・・
- 長尾先生、津田さん、岡本さん、橋本さんの他に、慶應義塾大学の金さん、CCジャパンの野口さん、GLOCOMの渡辺さんが参加
- ネット環境の意味についての論考をお書きに
- IT系の方からも本の世界に関わる人が出てきているが、橋本さんが面白いのは一番ITど真ん中なのに紙の本も大好き。著者としての話はあったが、この先の読者について。
仲俣さん
津田さん
- 僕は単に本の中身を共有化したい
- その延長で言うと・・・
- 今日はビジネスの話をあんまりしていないが、避けて通れないのは『コルシカ』*8的なもの。媒体を買ったら電子サービスもついてくる、という
- 特に雑誌はあとでデータとして検索できるようになっていればいいものと、ものとして欲しい、両方欲しい、というのがあるが、そこで著作権問題でとまっているのはもどかしい
- 本の形で欲しいもの、本は要らないがデータとしてクラウドでもなんでもいいから取っておいて全文検索したいものの2種類があるし、その中間もある。出版社はそこにきちんと答えないといけないし、そういうニーズがどれだけあるかがiPadのようなデバイスで喚起されている
- ビジネス側がどれだけ積極的に仕掛けられるか。ビジネスがどうより意識の問題
- 新聞、テレビ局みたいに図体でかいと無理だが、出版社は小さいからできる。出版社にしかできないことはたくさんある
橋本さん
- さっきの「ほらほら」というので、僕は7年間書評しているが・・・
- 本を人に買わせるのは大変。ブログでは出来ても、日常会う奴に進めてもまず読まない
- 読んだ者同士で話すと楽しい。同じ本を読んだもの同士がたくさんできると、もっと本は面白くなる
- 電子的にはそれがやりやすい。誰か仲間が買うと皆で読める読書会のようなものがあると楽しめる
- 普通のパソコンは1人の世界、iPadは複数でも回覧しやすい
- 技術でできるようになったことでコンテンツの形、流通形態を変革するのがいい
仲俣さん
- それが新しいビジネスにも。『コルシカ』はすぐにサービス停止したが、今は手持ちの本をPDF化、データ化代行をしてくれるサービスがある
- 個人が買った本を裁断して電子化するのもネット上では話題に
- 本をもっと有効活用したい、読みたいニーズがある。
- これが図書館の問題、まさに国立国会図書館で行われている議論にもつながる
津田さん
- 今日ネット見てて面白かったのが、漫画評論の議論で、iPadに手塚治虫の全集を読んでいると言うブロガーがいる
- 手塚治虫全集はPDFをDVDに入れて売っていた。24Gくらいだが、それをiPadに全部入れて持ち運べる
- パソコンで手塚の漫画を見るのはリアリティがなかったが、持ち歩けることで、それが取りまわせることで10年くらい前のフォーマットが新しい価値を得た
- 手塚全集が入っているiPadが99,000円なら買うか考える。デバイスで息を吹き返すものがあるのは凄い意味
- 電子書籍でDRMの議論が出るのは取り回しのしにくさにも関わるし、デバイスが変わるときに、急に変わるときにいろんなものの組み合わせで電子書籍はブレイクするかもしれない。いろんな開拓されていないものがあるというところから。そこにある読者、著者のニーズに今、出版社は答えていない。そこにこの半年で答えないと、少なくとも舵を切る決断をしないと。
仲俣さん
- これまで何度も電子書籍ブームの話はあったが、今回の違いは読者の先行
岡本さん
- Twitterでずっとビジネスの話をしていないと突っ込まれているが、ビジネスあまり興味ないがあえてすると・・・
- ビジネスはエコシステムとしてまず捉えるべき
- もはやコンテンツそのものを売る時代ではない。私のメルマガは週刊で5,000部出ていて、そこからの講演依頼で食べていける
- パッケージで売ってなんぼの時代じゃないのは知っているはず。売るのは付加価値
岡本さん
- 昨年のARGフォーラムでご登壇いただいたのが長尾真先生。是非、館長に壇上の若者たちに忌憚のないご意見をいただければ
長尾先生
- NDLでは・・・現在出版されている書物、過去に蓄積されてきた書物も電子化して、うまく再構成する、そして読者にそれを提供することに力を尽くしていきたいと考えている
- コンテンツは、電子、あるいは紙、すべてにおいて無限に増えていく
- しかし本当に大事なものはなにか・・・それが新ためて問われる時代。逆に言えば何を読んで何を読まないか、捨てるものを問われる時代
- その中で電子書籍の電子図書館は内容分析によって、どういう書籍にユニークな内容があるか、例えば『ブックビジネス2.0』の自分担当以外のところは本当に素晴らしい。そういったものをうまく浮かばせながら、関連書籍、あるいは歴史的な思想の流れをいかに構築するか。組織化するか。それが電子図書館の場合は、やればできる。今すぐはできなくても今後の言語処理技術で出来る可能性がある
- そして・・・読者にその欲するところのものが、essentialに、本当に欲しいものがなにか推定して提供できる、そういうものを作って行けるのではないか?
- そうでもしないと情報がありすぎて何を読んでいいかわからない、そこで時間を使って無駄な時間を過ごす。そうならないように今後の世界を構成することが国会図書館の責任
- コンテンツは、電子、あるいは紙、すべてにおいて無限に増えていく
- みなさんの議論とかみ合わない話かもだが、思いついたことを
仲俣さん
- では会場とTwitterのTLから。先に会場から。もし長尾先生もありましたら。
会場の人
津田さん
- これ仲俣さんが答えるべきでは?
仲俣さん
橋本さん
- 日本語の使い方自体が変わってきたというのはある。あとはディスプレイ読みがメインなら、動く文字や変形する文字があってもいい。あとは文字が動いてインタフェースで読める、となると読む速度が速くなったり、印象に強く残るとか言う文字への感動の幅も変わる。だから、日本語の表現の幅がそういう方向で変わる可能性もある。Twitterやwebは前兆。2文字で1文字にするとか、「orz」とか。
仲俣さん
- ここでTL上の質問を、そらのさんお願いします。
そらのさん(Ustream配信を担当されている方)
- TL上の質問を代弁します。音声、動画の電子化やself publishingがyoutubeで行われている今、文字と静止画の本が電子化される意味は?
津田さん
- 検索。検索の有無で全然違う。意味がないなんてことはない。
仲俣さん
- 何かが出てきて何かがなくなる、と言う議論は意味がない。逆に紙の過去の本を電子書籍にして流通させるだけでも利便性がある。
岡本さん
- たぶん、無責任なことを言えばいずれ天才が画期的なシステムを作る。もう一つは、ソーシャルなネットワークをどう持つか。知り合いが進めるとか。橋本さんの書評ブログは参考にする。顔見知りのネットワーク内で進められる、個人的信頼に基づくリコメンデーションは今だってしていて、同じようなことが起こるのでは。逆に言えばパブリッシャーはそこを上手く提供できるといいのではないか。
津田さん
仲俣さん
そらのさん
- 今の質問に追加。となると、サーキュレーションが今後のポイント?
仲俣さん
会場の人・2
- 読者、ユーザー、本をコンテンツとして消費する人がプロシューマー的な領域に入る確率が高まるのではないかと思うが・・・
津田さん
- その時代になったときに、どのあたりがポイント? もうちょっと具体的に。
会場の人・2
- 要は、ライターとそれに対するコメンター、「こういう本が欲しい」と考える人と書く側の境界線が、見えにくくなってくる。相乗コンテンツ的な方向性は?
津田さん
- ブログ時代からそれは起き始めている。ブログから書籍化のような逆流現象は起きているし、Twitterのようなものでパーソナリティベースで面白い人も出てきてそれに書かせる動きもある。逆に言うと、Twitter時代で分散化、細切れになっているからこそ今は編集者が求められている。フローな情報の集積体であるTwitterでTogetterもあるが、あれは読みづらくてたまらない。サービス自体は悪くないが、まとめられ方は酷い。逆にあれが編集の重要性を見せている。逆説的にそう思っている。今こそプロが頑張るとき、と感じている。それくらい、ある程度の整形した形はTogetterでもいけるが、それを綺麗にして、500円は無理でも100円で売るコンテンツのようなニーズはあると思う。
会場の人・3
仲俣さん
- たぶん質問者の中にある種の仮説があると思うのでそれをやればいいと思うが、例えばreferencesをクリックしたらその本の目次を確認したりできれば、本と本の間にある関係はできてくるのでは。Kindleはガンガン試し読みするし、特殊なことはしなくても、本の中にあるreferencesが顕在がすれば。
橋本さん
- 図書館を持ち歩ければいい。全員が使った本を大学が負担するとか。教員としては採点・集計まで出来ると革命的かな、と思う。最近、デジタルハリウッド大学では出席から電子的に取っている。非常に便利なので次は全員iPad買わせたいが、教育の現場ではある。
津田さん
岡本さん
- ハーバード・ロー・スクールのライブラリの中では学生時代の教員のノートを読みにしのびこんだら自分のノートと変わらない、という落ちがついたり。図書館は既にそういう機能があるので、すでにあるコンテンツと組み合わせれば今までにない学習体験を味わえるのでは。教員の側も物凄い面白いと思う。
仲俣さん
- そろそろ時間
- 『ブックビジネス2.0』は7月17日発売予定。
ブックビジネス、と言いつつ電子書籍端末の話にはせずエコシステムの話をしたい、という全体の方向性はすばらしいものだったと思います。
「電子書籍端末すごい」話なら全然このメンバーでする必要はないわけですし、そういう話とはまた一線を画すものとして『ブックビジネス2.0』の内容への期待もますます高まるように思います。
最後の方の質疑で高等教育の話も出てきましたが、高等教育や研究活動が電子ジャーナル/電子書籍によってどう変わったか、というか変わっているのか、という話については近々発行予定の『カレントアウェアネス』に自分も原稿を書かせていただいていたり。
そっちは研究系メインの話を書いたのですが、日本の高等教育の軸は一つではなく、一方では電子ジャーナルばりばりで英語文献もガンガン扱う世界があり、他方では(そしてそちらの方が多数であると思いますが)研究べったりではなく学生教育主体、使うのも主に和書という世界もあり。
電子化の話題は圧倒的に前者で進んでいるわけですが、後者においてもそれを参考に今後どのようなことができるかを考えていけると、国内マーケット的には後者の方が(金額はさておきユーザベースでは)大きいわけでチャンスは色々ありそうな気も。
というような学術の世界の話もいいですが、ネットワークを介して皆で本を読むというような中盤の話が自分はかなり好きでした。
ブクログはじめてめっきり読む本が増えたこともあり・・・単にランキング等のシステム的な手法だけじゃなくて、あの手この手で人を介して本を紹介してくれるってのはやっぱりいいです。
ブクログ名言集とかがきっかけで買った本もけっこう出てきたし。
してみると、今は手打ちの名言集がコピー&ペーストで簡単にできるように、いやいやいっそTumblrのように面白かったところをさくっとどこかに投稿できて、それを見て興味を持った人がその本をデータ付きで買い・・・という展開は実に素敵にも思えます。
現在クローズドベータ実施中のShizuku2.0*9にも絡むところですが、人を介して本(情報)を、本(情報)を介して人を結び付けることは、今も色々やられていますが今後も継続して重要そうでしょうか。
イベント後には岡本さんにお誘いいただき懇親会にも参加させていただきました。
ご挨拶させていただいた/お話しさせていただいた皆さん、ありがとうございましたm(_ _)m
*1:第1回ARGフォーラム 「この先にある本のかたち:我々が描く本の未来のビジョンとスキーム」 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*3:Gov 2.0 Expo 2010 - O'Reilly Conferences, May 25 - 27, 2010, Washington, DC
*4:CiNii Articles - 日本の論文をさがす - 国立情報学研究所
*7: