かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

コミュニティの力:図書館の学内外における役割の変化(国立情報学研究所平成21年度CSI委託事業報告交流会(コンテンツ系) C-1 成果報告)


承前。
ということでCSI委託事業報告交流会記録、午後の部その1です。
なお記録内容はmin2-flyが聞きとれた/理解できた/書き取れた範囲のものなのでその点、ご理解願いますー。


では午後は今年、小樽商科大学から北海道大学に移られた鈴木雅子さんのご発表から!



機関リポジトリコミュニティの活性化:DRF2年間を通じて(鈴木雅子さん、北海道大学

  • DRF: Digital Repository Federation
    • 現在118機関が参加. 順調に増えている
      • 第2期末時点では108
      • 参加はいつでも受け付けている
  • 第2期の活動概要
    • 情報共有・意見交換
      • 公開メーリングリスト・・・563のアドレスから参加
      • Wiki
      • 国際会議
      • 全国WS/地域WS/主題WS/技術WS
      • のべ1,498人の参加
    • 調査・研究
      • DRFの下で10の課題に取り組む
    • 国際連携の推進
      • COARの中にNIIとDRFが創設メンバーとして参加
      • 副議長に当時北大(現・小樽商大)の杉田さんが就任
      • DRFIC2009国際会議. ロチェスター大学のギボンズさん来日
    • 将来のコミュニティの持続性確保のための検討及び連絡調整、立案
      • もしCSIがなくなったらどうするか検討
      • 2/5に新体制発足。逸見委員長の下で活動を進めている
  • オープンアクセスは図書館全体に
    • CiNii
    • Springerトンネル(電子ジャーナル包括契約
      • リポジトリ担当だけでなく図書館員が一緒になって考えないと
    • SCOAP3
    • BRII
      • 図書館だけの話ではなくなっている
  • 質疑
    • NII・杉田いづみさん:月刊DRFのご紹介で様々な活動が世界的に起こっていて、リポジトリや図書館外のこともあり、月刊DRFの想定読者は? 図書館以外にどう広げる?
      • 月刊DRFのターゲットはリポジトリ以外の図書館員全体、研究者へのアプローチも考えている。
    • 研究者へのアプローチ、ということでは出版側、学会さんとも連携できるといいのではないかと思っている。明日、SPARC Japanセミナーがあり、そこでは学会の発表をいただく。そういったところともDRFが密に連携できれば。
      • ありがとうございます。来月号はCSI特集にして、裏面でSPARC Japanの記事も掲載する予定
    • 筑波大学・逸村先生:国際連携について。特に今、DRFとしてコミットすべき、あるいはコミットにあたっての課題について具体的にお話しいただければ。
      • COARの中にいくつかWGがあって、その中にDRFの人間もメンバーとして入った。WGの1つが、世界的な規模でDRFのように情報共有したら、というもの。日本の情報を発信したい。
    • 杉田いづみさん:NIIは技術面のWGに入っている。DRFの人が入っているWGは?
      • 情報共有と、人材育成。研修方法については教えてもらったものをこっちでもやってみたいと考えている。

国内学協会のOA方針の公開と共有のために:SCPJデータベースの新機能紹介とSCPJスタッフのススメ(斎藤未夏さん、筑波大学

  • 平成21年度のSCPJの活動と今後の展望を、新機能の紹介とSCPJスタッフの紹介を兼ねて発表する
  • SCPJ・・・「オープンアクセスと瀬古・アーカイビングに関する著作権マネジメント・プロジェクト」
    • 学会のオープンアクセスに関する方針についt絵調査する
    • 調査結果かに基づき「学協会著作権ポリシーデータベースを更新する」
    • 学会を対象としたプロモーションを行う
  • 学術雑誌掲載論文をリポジトリに登録するには・・・
    • 出版者に著作権を譲渡している場合が多い、許諾が要る
    • SCPJ・・・学会にあらかじめ方針を尋ねデータベース化。著者やリポジトリ担当者はそれを見て作業
  • SCPJの特徴
    • ほぼすべての学会を対象としてデータ修主
    • 国内学会のOA方針にたする対応状況を俯瞰
  • 新機能
    • http://scpj.tulips.tsukuba.ac.jp/
    • 雑誌ごとにポリシー検索・表示
    • API公開
    • 統計情報表示
        • ポリシーのグラフ表示
    • 詳細検索
      • 雑誌、学会の詳細検索がトップページから
  • 課題
    • 総メールは1,702通
    • アドレスを公開してしないところには電話・郵送
    • 学会からは困惑の声多数
    • 学会がOA方針を定めるサポートが必要?
  • 今後の活動の方向性
    • 学会に有用な情報をサポート
    • 学会が自分のOA方針を定めるサポート
      • 学会自身を知る必要がある
      • SCPJスタッフが足りない
      • 4大学で2,000学会以上を相手にすることに
        • 多くの機関が参加すればもっと接点が広がる。各構成員の論文を登録する際に一言、学会にも声をかけていただければ。
  • SCPJスタッフ特典
    • 自分が得た学会ポリシーを自分でSCPJデータベースに登録できる
    • データをエクスポートして自分で楽しく使える
  • そしてSCPJ Nextへ
    • 手間がかかると思われるかもしれないが、手間と言うよりはオープンアクセスへの貢献
      • 学会ポリシーを他の方へも還元する心意気を
    • SCPJの次のステージ
      • 基本は正確かつ迅速なポリシー情報の提供
      • 学会自身による共同構築体制の確立
      • スタッフ・ポリシー管理の充実
      • 機関リポジトリ担当者のためのものから、日本の学術情報流通についての基礎データを提供できるものに
  • SCPJの開発については株式会社しずくラボの力を借りた
  • 質疑
    • 名古屋大学・伊藤先生:前にまだ私が館長のときにも議論したが、学会は意志決定が複雑。そもそも機関リポジトリのこともわかっていない。学会の理事は大学の先生なので、館長など学会の理事になっている方を動かして許諾を取りに行ってはどうか。そのような動きは? 公式に学会に行くと、学会は組織だってないが、中から行くと動きやすい。
      • 身近なところで本学の教員の方に所属学会に行っていただいたり、役職に就かれている方にも働きかけているが、すぐに答えが出ず「検討する」とのお返事をいただくことが多い。双方から活動する必要があるかと思う。
    • そこで相手がいるので居丈高に言っても仕方ないとはいえ、本来は著者個人が持っているべき著作権を学会に持っているのはおかしい、というような話はしている? 許諾をするのが本来の著者の権利で学術のためにもいい、という信念を持っていかないとただ単に許諾を、と言っても。
      • そういうスタンスは持っていなかった。決断するのは学会、必要な情報を提供するという方向で進めている。ブルーにして、とは言っていない。
    • 東北大・ヤナギサワさん:しかし学会は人間が作り上げたものなので・・・

118 < 1 (118回のコピーより、1回のスキャン。絶対。)(杉田茂樹さん、小樽商科大学

  • IR cures ILLプロジェクトについてご報告する
    • 参加者のほとんどの方が図書館職員かと思うが・・・
      • 多くの仕事の中で、機関リポジトリはオンラインで論文を読みたい人へ届ける。一方、文献複写も読みたい人に論文をコピーして郵送して届ける
      • 読みたい人に文献を届ける、という点でこの2つは本質的に似た仕事ではないか?
      • 一方で機関リポジトリで無料公開、一方で文献複写は経費を取る。そうではなく、大学の先生の論文をより多くの人に読んでもらうことが目的なら、ILLも無料で読んで貰えばいいのではないか?
    • IRとILLの連携
      • 実際にILLはどう動いているのか調査
      • IRの担当者、ILLの担当者が近づく必要があると感じるように
      • 利用者も含めて状況認識を共有する必要
  • 北大紀要へのILLの減衰
    • 平成17年度くらいをピークに、機関リポジトリを作った年からリポジトリ側の登録数・ダウンロード数の伸びに応じて複写数は減少
  • ILLは依頼があるたびにコピーする
    • 著者所属機関がリポジトリに掲載すればILLは終わるはず
    • 全国でコピーが繰り返される状況をなくせるのでは?
    • ILLの需要があった論文をリポジトリに載せて見よう
      • 2008年、1〜2週間でILLのリクエストがあったうち、北大・小樽商大の著者のものをリポジトリに載せる実験
        • しかしなかなか上手くいかない。ILLがあったがもう載っていた、古すぎて著者の連絡先がない、出版者がもうなく権利関係が不明
        • 結局11件、あった事例のうちリポジトリに載せられるものはなかった
  • ではどんなものがILLされているのか?
    • REFORMの調査をさらにミクロに、タイトル単位ではなく流通している論文を調べて見る
    • 看護・心理学系の単語が良く出てくる。
    • 同じ論文がどれくらいILLされるか。1番多いのは年間に98回、全国各地でコピーされる
      • ばらばらの数十大学が依頼し、応じていた
      • 2番目は78回コピーされている。1機関で全てに応じていた
      • 久留米大学を訪ねて見ると、既にこの論文が何部もコピーされて箱に入れてある。専用の台帳もある。人気があることを誇りにしている
    • 当初分析は2007年だけでやっていたが、2006年、2008年も分析して長期の推移を見て見ると・・・
      • 2007年のトップは2006から、2008も2位。そのほか、トップ5はずっとトップ5にいる。気まぐれで人気が出るわけではない
    • この人気論文をオンライン化してしまえば需用を抑えられるのでは?
      • トップ30論文の著者に公開の意志を聞いたところ、回答のあった16/19が公開したい、との回答
        • しかし人気論文の著者の所属機関にはリポジトリがないことが多い
          • 著者所属:○○クリニック、○○センター・・・誰が彼らのオープンアクセスを支えればいいのか?
  • 機関リポジトリ・ILL担当者向けアンケートから
    • ILL担当者の半分弱はリポジトリと全く接点がない
      • 「ILLを現代にやっていく上で、オープンアクセス文献が増えているのは喜ばしいが、それがわかっているのは図書館だから。オープンなものでもILL依頼は来てしまう。依頼が来たが探すとオンラインにあることがある。利用者にもオープンアクセス文献の意識喚起をしていかないと」
      • 利用者、図書館員への意識喚起
        • 2009年のOA weekでILL利用者向けのポスターも作製、国内大学図書館に配布
        • ILL依頼者向けにもビラを作成
        • 全国150人以上からポスター掲示の報告
    • 機関リポジトリ、ILLの兼任者やどちらかの担当者からなるチームも設立
  • 今後の展開
    • オープンアクセスを機関リポジトリ担当者だけにまかせておいていいのか?
    • DRFによる課題意識の継承
    • 専属司書制度@小樽商大・・・先生ごとに担当の図書館員を置く、機関リポジトリにとどまらずオープンアクセスについての意志共有を先生方と図書館員で
  • 質疑
    • 民博・高橋さん:ポスターうちに送った?
      • 送りました。探して下さい。まだあるので、10枚くらい送りましょうか?

共同は力なり!(岩井愛子さん、千葉大学

  • リポジトリ、あなたの悩みの種ですか?
    • 気になるけどいろいろ悩み・疑問があるあなたを助けたい
  • 平成20年度調査報告書より
    • 検討段階では実体験ができることが求められる
    • 担当者の育成については慣れていないユーザをフォローする仕組みが求められる
    • コミュニティサイトがあれば相互に助け合いやすい/初めてのユーザでも参加しやすいことが必要
    • 「共同は力なり。だから、UsrCom」
  • 平成21年度・・・UsrComが形になる
    • コミュニティサイト+体験用サーバによって正式公開
    • 気軽に書き込みができる掲示
    • コミュニティサイトはNetCommons2を使用
  • お試し1週間リポジトリ
    • 6種類の実際に動いているリポジトリソフトを試せる
    • 1週間ごとに設定がクリアされる。元に戻せるから安心して触ってみて
    • 管理者としてログインできるので見るだけではわからなかった部分も試せる
  • これまでの利用状況
    • オープンから現在までに139人のユーザ登録あり
    • アクセス数は3, 4月には減少しているが、それ以外の期間はコンスタントに利用があり
    • 国内シェアを反映してか、DSpaceサーバへのアクセスが多い
  • これからの展望と課題
    • 体験用リポジトリの研修利用
    • 6月に多人数同時使用の負荷テスト実施、テストは成功
      • 研修での利用に一歩近づいた
    • 機関リポジトリの教育用サーバになれるか??
  • 質疑
    • 北海道大学・逸見先生:139人の登録者はこれまでリポジトリを使ったことない人? 分類するとどうなる?
      • 登録ユーザの所属や既導入/未導入、ということはプロフィールに入力いただいているが、オープンにはしていない。
    • 東北学院大・佐藤先生:大学関係者だけ?
      • 限っていない。
    • 企業でもOK?
      • はい。
    • NII・米澤さん:ユーザからのフィードバック、意見、要望は?
      • コミュニティサイト部分を作っているが、アンケートフォームがあって、掲示板かアンケートで感想を伝えられるようになっている。
    • NII・杉田いづみさん:答える側の方はどれくらいで、質問したい側は何人くらい、登録者の中にいる? さまざまなアプリケーションを使えるようにされているので、「これは知っているがこれは知らない」という人も多いと思う。「なんでも聞いて下さい」と言えるその体制はどうなっている?
      • 現在のところ、回答者として固定されているわけではないが、UsrComの担当になる大学は回答にまわることが多い。ただ、各々自分の使っているシステムとそうでないシステム、分野でも得手不得手がある。目的はお互いに教え合うことだが、初心者は聞く側に回りがち。割合としては・・・数えてはいないが、既導入館にも参加いただいているし、答えられるものは飛び込んで欲しい。まだ動き出して日が浅いのでそれほど稼働はしていないが、今年活発なるようにしていきたいと思う。
    • 研修で使われる予定とのことだが、NII主催の学術ポータル担当者研修でも7・8月に30数名ずつ使いたい。よろしくお願いします。
    • 大阪大・前田さん:スタッフの方に回っている。答える側に回っているのはDRFのテクニカルチーム10数名と、UsrComの母体10人くらい、合計20人くらい。さまざまなプラットフォームがあるので答えるのは大変ではないかとのことだが、UsrComのもともとのスタッフもDRFのテクニカルチームも腕に覚えがあるので、わからないことを聞かれたら問題環境を自力でインストールして再現するなどして解決している。今のところ無事にいっている。

みんなで作るリポジトリ:共同リポジトリプロジェクト-ShaRe-(濱知美さん、広島大学

  • 発表内容は共同で執筆した報告書に基づく
  • プロジェクトの背景
    • 機関リポジトリは国立大学を除くと未構築機関の割合が多い
      • 理由:人的余裕がない、構築のノウハウがない、費用がない等
    • 複数機関で共同で使えるリポジトリ
      • 費用を抑える、ノウハウの共有ができる
      • 中小機関のリポジトリ導入の障壁をなくし、オープンアクセスのすそ野を広げることが目的
  • プロジェクトの成果
  • 活動の概要
    • システムモデルの開発・改善
      • 1.共有型:1システムを複数機関で共有する
        • 経済的・管理負担が少ない/画面上でも連携感
        • カスタマイズが全機関に影響/システム管理の負担集中/独自性は出しにくい
      • 2.独立側:参加機関ごとに独立したシステム
        • 参加機関が独自性を出せる
        • システム管理の一元・分散でそれぞれの特徴
        • 見た目や一括検索に工夫が必要?
      • 平成20年度は独立型を構築、21年度には共有型のブラッシュアップ
        • 複数機関の混在したログから機関ごとのログを取得する/そのログからアクセス数を集計して著者にメール
        • 広島で実装、他でも使える
    • 担当者育成・コミュニティ形成
      • 全国各地で計19回の事例発表。知識・情報共有、参加機関の新規獲得に貢献
  • 共同リポジトリの現状分析
    • リポジトリのある機関のうち、公立・私立大学では約半数、短大・高専では100%が共同リポジトリ
    • 共同リポジトリ構築機関は年々増加傾向にある
    • 運営主体は県大図協などの既存団体であることが多い
    • 運用資金はCSI依存。委託終了後はどうやって資金を確保するかが課題
  • 共同リポジトリの評価
    • 参加機関・・・コストが安い、導入が簡単、知識獲得が容易、他機関との連携ができる/良くなかった点は「ない」が最多
    • 参加機関の期待・・・サポートの継続、連携強化、大学の知名度アップ
      • 不安なのは業務量、サポートの継続、運営体制
        • ホスト機関は人員が一番不安
  • ホスト機関はすべて国立大学
    • 国立大学が牽引役、さまざまな役割を果たす
    • 持続可能性のカギはホスト機関のモチベーション
      • 地域貢献、新しいチャレンジ、地域での顔の見える関係の構築
      • モチベーションをどうやって維持するか?
    • もう1つの鍵はホスト/参加機関の役割分担
      • 負担を集中させない自立が重要
  • 課題と展望
    • 多様化するしくみ・・・どのような仕組みが適切か?
    • 普及活動の継続・・・研修会・WSによる担当者育成、コミュニティ活性化を支援する
  • まとめ
    • 共同リポジトリは単なるシステムの共同利用ではない
      • 地域レベルのサポートによる活発なコミュニティと図書館活動全般の活性化
    • 共同リポジトリのコミュニティは
      • 担当者がいつでも帰れる、ホームグラウンド
  • 質疑
    • 東北大学・ヤナギサワさん:先ほど病院の論文がアクセスしにくくILLが多いというような話があった。そういう感じで、病院は医局を通して各大学にもつながっているはずであり、リポジトリへの掲載も含めて病院についても共同リポジトリへの参加を誘う動きはないのか? ないなら提案したい。
      • 今、病院をターゲットにした活動はないが、是非そのような文献がたくさん利用されることを願って、そのような活動を地区を巻き込んで広げていただけたら。病院同士の主題リポジトリというのも面白い。
    • NII・米澤さん:共同リポジトリは非常に素晴らしいと思う。一方でこのプロジェクト自体は共同リポジトリの構築・普及にどう貢献したかのエビデンスがもう少し明らかなら。各地でWSを行った結果、その地区で新たな動きが出てきたとか、まとまりつつあるとか。
      • 全国的にWS、事例発表、研修会をして、担当者も育成出来ており、既にリポジトリのある地区同士の連携も強化される。
    • 金沢大学・内島さん:病院の連携について、青森県立保健大学さんが地域の病院の刊行物の電子化を企画されているらしい。で、1つ質問。私は石川県にいて、年に1回国公私の大会があって交流もあるが、うちで2月にやったWSには私立は1人しか来なかった。地域で図書館の連携活動に人を注ぐ力がないケースもあると思うが、一番最初に火がついた要因はなんだろう?
      • 広島地区の例について、詳しい方がホールにいるので。
      • 広島経済大学・西川さん:火をつけたのは広島大学の尾崎さん。尾崎さんたちが国立大学で最初のCSI委託事業を始めたときに、どこでもいいから共同リポジトリとぶち上げて、2〜3館集めようとして広島の中堅どころに声がかかった。そこで始まったのが最初で、ここまで広がったのは人間関係による。研修会で飲まなかったことはない。それと、たまたま広島工業大学にDSpaceの実験サーバを立ちあげられる技術のある人もいた。そういう偶然もあってここまで伸びてきた。

ディスカッション(コーディネータ:佐藤義則先生、東北学院大学

  • 佐藤先生:情報共有や相互サポートについてのご発表だった。図書館は協力・連携を長らく重視し、大学の他の部門に比べるとそういう意味で先進的。そこでいろんな、例えばDRFの国際協力、国内連携等規模の問題がある。どういう協力をどういう規模でやるのか。広島のface to faceの付き合いが重要とのご発言なども含めて、じゃあ国際的にはどういう点、国内的には、地域的には、というようなことで発表者の5人の方々でお考えのところがあればご発言を。それに対してフロアからコメントなり、ご意見なり。
  • 小樽商科大・杉田茂樹さん:すいません、もう一度。
  • 佐藤先生:機関リポジトリの関係でいろんな協力・連携がはかられてきて、ただ規模が大きな問題になる。協力の規模が大きいほどスケールメリットはあるが、何をどういう規模で行うのが最適なのか。そこが必ずしも了解できていないのではないか。例えば国際的な協力ではこういうことを、国内的にはこういう側面、地域としてはこういうことを、という。杉田さんには、DRFあるいは個人としてどう考えられているか聞きたい。
  • 杉田さん:ぱっとは出てこないが、印象として、DRFの発表の中で国際連携についてCOARへの参加があった。そこの印象としては、国際組織と言うと凄く立派な各国代表が勢揃いのイメージだが、そうではなく、各国で既にコミュニティ形成が進んでいる。それに傘をかぶせようとしている。例えて家は、HiRPやゆうキャンパスリポジトリのようなコミュニティがまずあり、その上にそれらをつなぐような関係を作ろうとしている。基本は顔の見える関係で強固なコミュニティがあるのが前提かと思う。一方で、午前中に発表のあったAIRwayのようにメタデータの標準化がなされていない。国内にはjunii2があるがローカル・ルール。こちらの方は各地域ありきではなく、地域を超えて国際的にかちっとした、譲るところは譲り合わせるところはあわせる標準化が絶対必要。Machine-readableなところでは。
  • 北大・逸見先生:今日の報告の中でリポジトリの課題の担い手がどう広がっているかについて、NIIからの発言もあったが、凄く広がっている。そこをもう少し確かめたい。もう1つは去年の横浜の図書館総合展で研究者の方にご登壇願ったが、去年の横浜で初めて登録者がどう考えているかのお話があった。コミュニティ、と言う話の中に登録している人、利用している人までは行かないが、登録している人をどうコミュニティに引き入れるかはテーマではないか。それと、佐藤先生は難しいことをおっしゃるが、身の丈にあったことをするしかない。予算のことも重くのしかかる。図書館の職員と研究者、研究者に限らず登録している人。それから北大の山村先生のお話では地域と彼もつながっているとのこと。リポジトリ作成者、登録者だけでなく読者まで。色んな視点で切る、捕まえることはできる。それぞれのコミュニティの広さの中で質が上がっていることを確かめられている。ほらを吹く必要はないが、ここまで来ていることは共有してもいいのではないか。
  • 佐藤先生:SCPJの話もそうだが、コミュニティと言ったときに何を指すのか。SCPJの場合は図書館側だけではなく研究者、それに学会も含めたコミュニティを作って行かないと今後立ちいかない、ということ。今の逸見先生のお話のように、コミュニティを固定的に捉えるのではなく柔軟に、どのように拡大して行くか、視点をどうしたら共有できるのかも大事。それから、そういった場合に国際的・国内的なDRFや地域連携が柔軟な考え方を与えてくれるのではないか。これが私の印象。ただ、この先、色んな形での、先のメタデータの話なら出版者であるとか、異業種、場合によっては敵でもある味方でもあるところとの連携も含まれてくるだろうし。ますます皆さんのコミュニティについての活動が発展することを願っている。最後に何か質問あれば。
  • 一橋大学・サカグチさん:SCPJについて。日本の学会誌でも商業出版者が出しているもの、本学にもあるが、こういった場合は商業出版者にも許諾を得る必要があると思う。SCPJとしては商業出版者への許諾はどのようにお考え?
    • 斎藤さん:メインは学会だが、データの中には出版者さんのポリシーもある。ただ、名称が学協会と入っているのでほとんどは学協会だし、商業出版者さんは問い合わせると明確に回答できない、と言われることが多い。なのでターゲットとして狙い撃ちはしていないが、方向性の一つとしてはある。
  • 実は一橋大学の事情で日本の商業出版によく原稿を書いている。許諾の問い合わせもしているのでそれをフィードバックしようかなと個人的に考えている。そういったことがシステム的・運用的に可能か?
    • 具体的なプランは申し上げられないが、出来れば進めていけるといい。



自分が機関リポジトリ研究をしているせいもあるかとは思いますが、機関リポジトリ界隈は本当にコミュニティががっつり出来あがって来てますよね。
逆に自分が大学図書館業界に関わり始めた頃には最初からこのようなコミュニティの存在が当たり前のようになっていたところもあるわけですが、今大変仲が良かったり連携していたりされるDRFやShaRe、その他の機関リポジトリ界隈の皆さんは昔から今のようによく交流されていたわけではないのでしょうか?


このコミュニティの力を図書館全体、さらに登録者としての研究者や利用者まで含めて広げていけると、日本の学術情報流通や高等教育において面白い力になりそうな、とかなんとか。


さて、これにて成果報告会部分の記録はアップ終了です。
次エントリは5人の先生方によるパネルディスカッション、「機関リポジトリは大学にとってキラーコンテンツになれるか?」についてですっ。