「萌えるリポジトリ」(国立情報学研究所平成22年度CSI委託事業報告交流会「クラウド時代の機関リポジトリ」参加記録 part 1)
毎年この時期の定例イベント、国立情報学研究所で開催されたCSI委託事業報告交流会(機関リポジトリについて、国立情報学研究所から委託されて事業を行なっている各大学が報告・交流を行うイベント)に行ってきました。
最先端学術情報基盤(CSI)構築推進委託事業として、各機関が平成22年度に実施した研究開発及び調査等の結果について情報共有を図るとともに、その成果をCSI構築のために活用する方策等を検討するイベントです。
大学等図書館関係者、学会関係者、出版関係者以外のお申し込みは、お断りさせていただきますのであらかじめご了承ください。
今年のテーマは「クラウド時代の機関リポジトリ」、その第1セッションは「萌えるリポジトリ」。
セッション名が公開されたときには一部Twitterが騒然となったりもしていましたが、「萌える」と言っても最近できた方の意味ではなく、その言葉の通り芽生えたばかりのリポジトリについてのセッションです。
では以下、例によって例のごとくイベント記録です。
今回は長いのでセッション単位で公開していきます。
あくまでmin2-flyが聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲でのメモですので、ご利用の際はその点ご理解のほど願います。
間違い等、お気づきの点がありましたらコメント欄等でご指摘いただければ幸いです。
「新潟県地域共同リポジトリ」(新潟大学・山城光生さん)
- はじめに:新潟県地域共同リポジトリの概要
- 県内大学の研究成果の保存・公開/地域の学術情報の受け皿となることを目的とする
- 平成20-21年度に参加の呼びかけ/ガイドライン作成などの土台作り
- 平成22年度から運用開始
- 平成22年度の取り組み
- 参加機関/コンテンツ増加を目的とした
- 各大学に訪問・・・担当者/教員レベル説明会を開催
- 共同リポジトリをテーマとする研修会の実施
- 参加機関が前年度から7機関増加(21機関に)
- うまくいった要因は?
- 説明会/研修会の効果:
- 各大学担当者、図書館長など責任者の不安/負担を解消
- 新潟大学が全面的にサポートすることを明言
- 説明会/研修会の効果:
- 今後の課題:
- 参加館が持続的に・自分たちで運用できるようにすること
- 勉強会等による情報共有体制/各大学の業務体制確立/サーバ費用等
- 今後の展望:
- 結局は各機関の負担を減らすこと/業務の効率化が重要
- 新潟大学の支援なしでも相互にできる体制がいる
- 情報共有による体制の確立を目指す
「長野県の独自性:『信州共同リポジトリ』」(信州大学・遠藤豪さん)
- 発表の概要:
- 活動状況
- システムの中身・コンテンツの内容
- 今後の展望
- 活動状況:
-
- 長野県:広域圏
- 県下の大学が一同に会することは負担になる
- テレビ会議システムを使った遠隔参加可能なWEKO講習会を実施
- 長野県:広域圏
- システムの中身/コンテンツの内容:
- WEKO・・・小規模校でも参加しやすい/知識がなくても使いやすい/労力・お金のかからないシステム
- 各校独自にトップページのカスタマイズが可能
- WEKO・・・小規模校でも参加しやすい/知識がなくても使いやすい/労力・お金のかからないシステム
-
- 参加校:長野県18大学中12校
- 必ず出てくる質問・・・予算、システム、メリット、人員負荷
- WEKOならすべて答えてくれる
- 参加校:長野県18大学中12校
- 方向性:独自性を強める
- 信州大学の理念でもある
- 弱者の兵法・・・他のところがやっていないことをやる
- 長野県にある面白いコンテンツで勝負
- 今後の課題と展望:
- 一層の普及とサポート活動
- 県内機関相互の図書館ネットワークを構築・・・これまでなかった県内図書館のネットワークへ
「JURA城西大学機関リポジトリ:コンテンツ拡充の取り組み」(城西大学・若生政江さん)
- CSI委託業務の成果:
- コンテンツ拡充
- コンテンツ収集方法の確立
- 学内への認知度
- コンテンツ拡充:
- 紀要・年報:541件(当初900件を予定していたが、許諾の問題や「ふさわしくない」という意見などによってこの件数に)
- 科研費報告書:49件
- 学位論文:53件(NDLによる電子化対象=1991-2000年度のもの以外)。連絡のどうしてもつかない1件以外は登録
- 学術雑誌論文
- コンテンツ収集方法の確立:
- JURAの背景・・・埼玉県の地域共同リポジトリに参加しながら独自並行
- 今後の課題:
- 業績DB連携
- 古書についても実施予定
「リポジトリ構築のその後:コンテンツ収集と継続を目指して」(聖学院大学・菊池美紀さん)
- 聖学院大学について:
- 継続的な運用のために:
- 学内認知度の向上・・・活動の基盤
- 継続できる仕組みづくり
- コンテンツの継続的収集
- 以上につながると考え・・・広報活動を実施
- 学内認知度を上げる要因:
- 継続できる仕組みづくり:
- 運用指針制定
- 他部署との連携=図書館だけの仕事にしない
- コンテンツ収集:
- がんばれるコツ?
- 学内の理解・・・担当者の励みに
- 図書館業務への組み込み・・・担当者以外の図書館職員も協力
- 学外での活動・交流
- 委託事業報告書・・・報告書を書くためには活動しなければならない
- 今後の目標:
- 研究者情報との連動・・・各種活動報告書情報の集約
- 網羅的なコンテンツ収集体制づくり
- 最終目標・・・聖学院の情報はSERVEにある/研究発表をしたらSERVEに入れなくては、と思ってもらうこと
「『たまたま』できたリポジトリ:奈良大リポの『片手間』日記」(奈良大学・磯野肇さん)
- たまたまできあがったリポジトリ・・・
- リポジトリを動かす:
- データの入力:
- 入力マニュアルは作成/公開
- そんなに難しくないだろう、ということで公開
- 説明責任。仕事/やっていることが説明できるように
- 入力マニュアルは作成/公開
- CSIでできたこと:
- 奈良大でもできたことは「どこでもできる?」
- 学内他部署連携も進んでいる
- 講義動画配信も検討中
- リポジトリは「片手間」
「広島県大学共同リポジトリなう」(広島工業大学・森保信吾さん)
-
- ミニ登録講習会@広島市立大学
- 自主的な呼びかけで行われた教えあい/和気藹々
- ミニ登録講習会@広島市立大学
- 特徴的コンテンツ
- HARPのアクセス統計
- HARPの今後の活動/課題
- 最近の問題・・・進捗管理が難しい
- 担当者体制が取れなくなったらどうするか?
質疑応答(質問者の所属等はメモしないよ!)
- Q. 聖学院の方へ。学内理解が励みに、ということだったが、データ入力は教員もしている? 図書館員だけ?
- A. データ入力は教員もできるようにしているが面倒なようで、実際には教務課や国際共同センターなど、学内部署で冊子を発行しているところでしてくれている。
- 図書館員ではない事務員もしている、ということ?
- はい。学内説明会も実施している。
- Q. HARPへ。アクセス統計に使っているツールは他のところでも使える? 埼玉の共同リポジトリにも適用可能だろうか?
- Q. 新潟県地域共同リポジトリと、関連してあれば他の方にも。ご苦労されていると思うのだが、うまく言った話だけではなくご苦労した話も。地域リポジトリだと国公私で事務等の体制も違うと思うが、そこでの苦労は?
- A. 規模の違い。単科大学等もあり、やりたいがそれだけの人員があるか怪しい、やる気があっても手が回らない、というところがある。そこで新潟大学がサポートする形をとった。そこが独自リポジトリを持てるようなところとは違うかと思う。
- 核融合研・力石さん. 運用ルールは委員会で作っている。最初にそこで問題になったのはなにを載せるか。教員によって差がある。「核融合研」の名があるのだからオフィシャルなもの以外のせるな、という人とオープンにしよう、という人がいた。温度差がある。最終的には公開済みのものなら、というところに落ち着いたが、他のところではどうネゴシエーションしているのか。
- 城西大学・若生さん. 埼玉県地域共同リポジトリに参加しているときにはやはり遠慮してしまうコンテンツもあった。独自リポジトリなら載せられるのに、と思うこともあった。
- Q. 城西大学に。コンテンツ拡充で紀要や年報を541件登録されたとのことだったが、大学にふさわしくないものと言われたもの、とは? 紀要・年報に載っているものが「ふさわしくない」と言われるというのはどういうものなのか?
- A. 紀要はもうほとんど載っていて、過去の学科のものや短大のものを載せようとしたのだが、そうすると「そのときはそう思って書いたが今はもう思っていないし」という方がいた。
- 主には書かれた方の意向?
- 最終的には個々の先生方に許諾書をお送りして得られたものは載せるようにしている最中。
- Q. 共同リポジトリに関する質問。複数機関が参加するということで難しい問題とあると思うが、その中でも費用について。複数機関が参加する中でどう運用していくのか?
- 新潟:現在のところ、費用徴収はしていない。新潟大学の中でリポジトリに使える予算と、地域貢献に使える予算が出ている。そこからサーバ費用負担等をしている。今後はどうなるか、まだ検討していないが、リポジトリを運用する部会が県内の図書館協議会にあるので、お金が厳しくなればそこで検討することもあるかも。
- 信州:信州大学では委託事業で受託しているのでそこから出している。切れた後どうするかは最初のキックオフミーティングで話した。先のことはわからないが、お金がかからない方法を考えることはできる。信州大学のリポジトリにコンテンツを移行してトップページは維持する、など。それでもデータ移行にお金はかかるかもしれないし、お金を負担してもサーバを維持したいこともあるかもしれない。それはその時に考えよう、ということになった。
- 広島:HARPはサーバ設置費は委託事業費としたが、他は最初から一校あたり3万円、それに広島県大学協議会からも年3万円徴収して積み立てている。機器更新などに役立てる予定。
- Q. 城西大学に。コンテンツ収集方法確立の中で、学外論文は学務課に投稿料を申請するときに・・・ということで、義務化のように読めるが、オプトアウトはできる?
- A. 制度化したので全部出すことになっているが、実際に載せられないものはいっぱいある。
- 出版者や学会の方針で出せないもの以外は義務化、ということ?
- そのとおり。
- Q.皆様に。一言ずつでお願いしたい。これからリポジトリを構築する機関に向けて、現在採用したシステムの良かったところと困ったところを。
- 核融合研:DSpace。 計算機システムに興味がある人を巻き込めれば勝ち。そうでないと自前は難しいかも。
- HARP:DSpace。良かったのは色々情報があるので自前でやるにはいい。共同リポジトリを想定したものではないので機能は不足。
- 奈良大学:XooNIps。個人的に共同リポジトリは芳しくないかと思う。私立は独自性がすべて、独自構築をがんばってする方は質問を受け付ける。XooNIpsは手もかからないしすぐ作れる。
- 聖学院大学:XooNIps。バージョンが古いのとカスタマイズしすぎて使えない機能が出てきたのが失敗。他に使っているところに聞けるのが利点。
- 城西大学:インフォコムのシステム、InfoLibを使っている。人手が少なくてシステムがわかる人がいなくても、Excelの表さえ作れれば誰でもできるので採用した。簡単でいい。
- 滋賀大学:DSpace。近畿の大学に聞いて、多く使われていたので採用。
- 信州大学:DSpace。カスタマイズのせいでバージョン移行しづらいのが問題。
- 新潟大学:地域共同リポジトリはNTTデータ九州のNALIS-R。インタフェースが1件ずつの登録しかなく、一括登録は新潟大学でしかできない。他の大学でもそういうことができるような環境にできないかと考えている。
感想は最後にまとめて!