かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

JUSTICEの概要とWeb of Knowledge 5新機能:「図書館員のためのWeb of Scienceキャッチアップ・セミナー」参加記録


またも前回記事をアップしてから1ヶ月以上間が空いてしまいましたが・・・(汗)
7/27(東京)、7/29(大阪)に開催されたトムソン・ロイターによるセミナー「図書館員のためのWeb of Scienceキャッチアップ・セミナー」で、ユーザレビューについて発表してきましたっ。



これはもともと公私立大学図書館コンソーシアムとトムソン・ロイターで例年開催されていたセミナーだそうで、今年は大学図書館コンソーシアム連合:JUSTICE発足に伴って、JUSTICEの説明と、さらに7月に新バージョンに移行したWeb of Science 5についての説明・レビューも行われるという、ホットトピック×2の組み合わせセミナーでした。


今回は僕自身、一ユーザであり、新Web of Scienceでの検索結果上限廃止に「我が世の春が来たあ!」と叫んだ者の一人として、ユーザレビューとして発表もさせていただいてきました。
他の方が皆さん真面目なお話をされている中で一人受けを取りに行っていてかえって汗をかいたりもしましたが・・・


以下、いつものようにイベントの記録です。
今回は東京/大阪でそれぞれ開催され、スピーカーの顔ぶれも違いますしお話の内容も違っていたのですが、東京編の方が発表が1つ多いこともあり、メモについては東京編の内容に基づいたものとなっています。
例によってmin2-flyの聴き取れた/理解できた/書き取れた範囲の内容であり、かつ最近怠け気味でうでが落ちていることもあって不正確なところも多いかと思います。
お気づきの点があればご指摘いただければ幸いです。


では、まずはJUSTICEのお話から!




「JUSTICEの発足、目的、今後について」(国立情報学研究所学術基盤推進部 図書館連携・協力室(JUSTICE事務局) 今村昭一さん)

  • 4月に発足した大学図書館コンソーシアム連合、通称JUSTICEの、設立の背景・経緯、現在の活動状況についてお話する
    • 時間があれば今後の活動と将来の方向性についても話したい
    • PULCとWeb of Scienceのコンソーシアムが2002年に立ち上がったことを契機にPULCとトムソン・ロイターは様々なWSをしてきた
    • 4月にJANULとPULCのallianceによってJUSTICE発足。今日はその説明の機会
  • 背景:電子ジャーナルと大学図書館
    • 1980年代以来の学術雑誌価格高騰
    • 1990年代後半からの電子ジャーナルへの対応
    • 3月まで・・・国立大/公私立大の2つのコンソーシアムが存在
      • 共同購入は大きな成果をあげる。この5年くらいの間で利用できる電子ジャーナルタイトルはほぼ倍増
      • 情報格差の是正・・・かつて単科大学と大手総合大学で洋雑誌購読タイトル数は1:10の格差があったが、現在は1:3程度に
      • コンソーシアムによる電子ジャーナル積極的導入による解消
    • 電子ジャーナルなしではもはや我が国の学術研究は成り立たない(2007 SCREAL調査)
    • コンソーシアムは様々な活動をしてきたが・・・問題点もある
      • 組織の問題:活動組織が弱い。活動の中心は幾つかの大学の図書館長・図書館員のボランティア(兼務)に依存している
        • コンソーシアム間の連携・・・2つのコンソーシアムが、部分的には連合しても全体的な連携が弱かった
      • 契約モデルの問題:ビッグディール(包括パッケージ契約)の維持が毎年困難になってきている
        • 価格上昇に対応・維持するだけで大変/離脱するとアクセス可能タイトルが激減する
      • 交渉の問題:価格交渉の限界・・・例:国大図協のコンソーシアムの場合、94機関すべて入っているのでもう増えない/PULCは私大を中心に伸びシロはあるがまだ導入に至らないようなところ
    • 図書館外からの提言:大学や国レベルで議論/話題になってきた
      • 審議会等からの提言
    • そこで2010夏以降・・・話がとんとん進んでいく
      • JANUL、PULC、NIIの関係者間で連携強化の模索
      • 2010.10.13の国立情報学研究所と国公私立大学図書館協力委員会の間での連携・協力の連携に関する協定書締結
        • 喫緊の課題・・・バックファイルを含むジャーナル確保/恒久的アクセス保証のために連携組織の立ち上げを模索
  • 現在のJUSTICEについて:
    • 当面の基本方針:
      • JUSTICE・・・運営委員会と事務局によって運営する
      • 2つのコンソーシアムの活動は今年度中に完全に以降/安定的・持続的運営のために組織、財源、人材確保のROADMAPを作成
      • 4月からスタート
    • JUSTICEの基本体制:
      • NII+国公私立大学図書館協力委員会
      • NII・学術基盤推進部の下に図書館連携・協力室=事務局を設置
      • 運営委員会と協力員・・・委員会は運営方針を策定。大学図書館の部課長級+協力員・・・現場担当者、直接実務にあたるもの
      • 事務局は室長1名、室員2名。いずれも大学からの出向
    • 世界有数の大規模コンソーシアム
      • 487機関参加・・・世界的にも遜色が無い
    • JUSTICEの使命と業務
      • 使命:電子リソースにかかる契約、管理、提供、保存、人材育成などを通じて、我が国の学術情報基盤の整備に貢献する
      • 業務:電子リソース共同購入、コレクション拡充、電子リソースの管理と提供、・・・
    • 今年度の活動スケジュール・・・4月開始なので若干厳しいが・・・
      • 出版者交渉、各大学の契約状況調査などに取り組んでいる
      • 1年間かけて2つのコンソーシアムを統合する
    • 具体的な出版社交渉について:JANULとPULCの提案を突き合わせると・・・
      • 35+αの出版社、45+αの製品が対象・・・優先順位をつける
        • 規模が大きい/契約数の多いところなどにまず着手
      • 9/12, 14の版元提案説明会(コンソーシアム提案内容を説明する会)までに100回以上の交渉が必要(!)
    • 出版社交渉の共通課題:
      • 新たな交渉カードを考えないといけない
        • スケールメリットでもできないではないが、次の策
        • One Invoice, One paymentの検討
        • 利用状況データの集約
      • 新たな契約モデルへの対応も考えないといけない
        • 出版社はビッグディールの提案からデータベースモデルに移ってきている
        • 大学をbandに分けて価格設定する。そのbandをどう設定するか・・・図書館がどう作るか?
          • 研究規模、FTE、利用、予算規模・・・
          • 公平さ+透明性が必要
      • タイトなコンソーシアムの可能性
    • タイトなコンソーシアム?
      • JUSTICEのもとに小さなコンソーシアムを作って予算を修復して取り組む・・・例:スコットランド
    • 交渉の限界:
      • 現在の学術情報システムの機能不全
      • コンソーシアム交渉の限界
        • 状況に対処してるだけのモデルだがやめるとアクセス出来ない
      • 非購読モデルも検討する必要がある?
        • 購読モデル、OAモデル、Self archiveモデルの三位一体
  • JUSTICEの目指すもの:購読クラブを超えた電子リソースの総合的ユーティリティ
    • ナショナルコレクション拡充
      • 先進事例等も見ながら日本がどうあるべきか検討していく必要がある
    • 電子リソースの管理と利用提供
      • NIIによる調査・・・商用ERMSの導入例は少ない/ディスカバリサービス、リンクリゾルバ等も導入館は半数にみたない
    • 長期保存とアクセス保証
      • 所蔵からアクセスへ・・・図書館は所蔵せず外部サーバに行く
      • 長期保存とアクセス保証が重要な問題に・・・CLOCKSS等で対応?
    • 人材育成
      • NII実務研修生募集・・・OJTによって、実務を実際にやる中でコンソーシアム交渉やライセンシングの技術をみにつけてもらう
      • 在籍機関と相談して是非とも応募を
  • JUSTICEの立ち位置と安定的な組織に向けて:
    • JUSTCIEはどこを目指すのか?
      • 会員制組織
      • アウトソーシング?・・・各国の事例も見ながら
      • 組織強化、ガバナンス、資金確保、専任事務職員確保
  • まとめ:
    • JUSTICEは世界有数規模のメガ・コンソーシアムとして誕生
    • 当面・・・スケールメリットを活かした出版社交渉の強化を目標に置く
    • 中長期的には・・・電子リソースの総合的ユーティリティを目指す

「Web of Scienceの基本概要」(トムソン・ロイター学術情報ソリューション カスタマートレーニング 矢田俊文さん)

  • Web of Science(WOS)を購読していない人にも向けて、WOSについて案内する
  • WOSの概要:どう作られているのか?
    • 3つのコンセプト:
      • 選択的:世に10万タイトルはある雑誌を全ては入力できない/どんなに大きな出版社でも全部はインデックスしていない
        • WOS・・・各論文の引用文献として頻出する雑誌を選ぶ
        • 「研究者が選ぶのだから重要な雑誌に違いない」
        • よく引用される雑誌は一握り。コア・ジャーナル12,000タイトルを選定
      • 中立的:「出版社ではない」ため中立的な立場でジャーナルを選択
        • 出版社がやっているとそこの雑誌が優先的に出てくる
        • 小さなところでもよく引用されるなら重要と判断、公平に採用
        • 雑誌選択は日々行われている。引用が増えてきた雑誌なら採用する/推薦された雑誌も議論してから導入を検討/排除する際も中立的に判断
      • 網羅的:引用文献は一つの分野にとどまらない・・・その世界を忠実に、広く把握する
        • すべての著者名/研究機関名を収録しているところもユニーク
        • 研究者の機関名をすべて入力しているのは現在でも少数派。第一著者等に限らない。100人著者がいればすべて入れる。ユニーク
        • 引用文献はどんなものでも入れている
    • 画面込みでの説明:ある論文が引用されたら通知する、アラートを作れる
      • 「〜論文/〜という研究者の論文を引用している」ものを検索せずに入手可能
      • 著者自身があげたキーワードの他、引用文献に頻出するキーワードも表示される・・・Keyword Plus
      • Researcher IDを持っている著者ならば・・・それも検索結果画面に表示される/プロフィール・文献リストが見られる
    • Cited References:Cited referencesから引用文献を辿る⇒それを引用している=同じアイディアを持って研究した論文が探せる
  • WOK5:移行の注意点とURL変更について
    • 移行スケジュール
      • 2011.7.17にアクセスURLが変更・・・図書館はリンク先の変更を
      • 緑色の旧バージョンも当面利用可能
      • 利用統計管理者には別枠でURLを用意
  • WOK5の新しい機能の概要
    • 検索機能の変更
      • ストップワード廃止・・・「A」とか「C」とか「The」等、以前は検索しないでいた語も検索されるように
      • 複数形/英米の綴り変化にも対応できるように
      • "carbon fiber" or "carbon fibre"・・・どちらでも対応可能(綴り変化)
        • 複数形などもなにも心配せず検索できるように
      • 後方一致検索(前はできなかった)ができるように・・・現在バグ中(汗)
        • 近いうちに直る
      • 近接演算子(NEAR)が使えるように・・・例:NEAR/10(10文字以内に2つの語が出てくるもの)
        • " " で囲めばフレーズ検索(これは前から?)
    • Researcher IDの搭載/フルネーム検索
      • 京都大学・椿先生の例・・・文献リストだけでなく何回引用されているかも見られる/買ってない人でも見られる(!)
        • 引用レポートもWOSを持ってない人にも見せられる
        • ここまでは去年まででもできたこと
      • フルネーム検索の実例
        • フルネームで著者名を検索できる!(ただし2007年以降出版分)
        • 2007年以前にも対応できるもの・・・Researcher ID
      • Researcher ID・・・持っている研究者の論文については、書誌画面にプロフィールへのリンクが出てくる
        • それをクリックすればWOS収録分以外の論文なども見ることができる
        • WOSを利用する他の研究者に自分の文献リストをアピールできる
        • Researcher IDで検索すれば、2007年以前のものも出る
          • Orkidによってどんな出版社でも使えるようになる?
  • Citation Universe
    • WOSだけでなくBIOSIS(生物学を網羅)やChinese Science Citation Index(中国のインデックス)等、他のものでの状況が見られる
    • さらにWOS内部で、どの分野で(自然科学、社会科学、人文学等)引用されているかもぱっと見られる
    • バージョンアップで細かく検索できるように
  • 今回のバージョンアップ・・・7〜8年で最大のバージョンアップ
    • ぜひ使い込んで今後の研究に役立てていただきたい



休憩



新しいWeb of Knowledge 5のレビュー

「Web of Knowledge 5ならできること:図書館情報学大学院生の視点から」(筑波大学図書館情報メディア研究科 佐藤翔)

  • 自分でメモを取れる領域には達してないよ!
    • ということで、以下に当日のスライドをそのままアップしておきます。フォントがずれているのはSlide Shareの仕様です。

  • 要点:ストップワードがなくなった(検索できるようになった)+検索結果上限設定10万件がなくなったので色々できるようになったよ!(という話に30分もかけたのか・・・)
    • 補足:日本の論文数がESIで分析したときに比べて減ってない件についてはいずれ詳細に詰め直します

東京大学の利用者向け講習会におけるWeb of Scienceについて」(東京大学 情報基盤センター 学術情報リテラシー係長 成澤めぐみさん)

  • 講習会担当。WOK、中でもWOSは一番良く使われるデータベース
    • その受講者は初心者が中心。新バージョンでできることを話す機会はあまりない
    • 今日の主な内容はWOSと利用者教育に関わる話。ご承知おきいただきたい
    • 普段使っているポータルサイト「GACoS」・・・「gacos」あるいは「ガコス」とGoogle検索すると出る
  • 東大の利用者向け講習会
    • 月平均15回開催、多い時は月20回以上
    • 留学生向けガイダンス・・・英語/中国語/韓国語で文献探索の基礎を実施。外部講師、大学院生ネイティブ等に講師を依頼
      • 教材の翻訳もあわせて依頼している
    • データベースユーザトレーニング・・・専門性の高いものについて企業から派遣を募る
    • 秘書さんのためのはじめての論文の探し方・・・8月に実施。大人気。柏キャンパスでは追加開講も
    • テーマ別ガイダンス:
      • 国内の新聞記事/学位論文/RefWorks等々・・・「はじめてのWOS」も
      • 「はじめての論文の探し方」や「文献検索早わかり」でWOSも対象にしている
      • Endnoteの使い方などでもインポート元としてWOSを扱う
    • オーダーメイド講習/個人講習・・・WOSへの要望は多い
  • WOSに係る講習会
    • 全体の4割程度(回数/受講者数とも)でWOSを対象にしている
      • EndNote Web, RefWorks講習会等は含んでいない数字。含めばもっと多い
    • 「WOS + EndNote Webを使うには」を自然/人文に分け開催。好評
      • 内容・キーワードをそれぞれにあわせて変更
  • WOSの「講義ポイント」
      • あくまで初心者、初心者に近い人向け・・・高度な検索等は扱わない/名前は知っていても詳細は知らない人も多い
    • 全分野が対象なのでどの分野の研究者にもおすすめ
    • 「網羅的な」検索ではなく「主要な学術雑誌に掲載された」論文の検索であると必ず話す
    • ゼミ内講習/部局講習など、特定の分野対象の場合・・・専門分野特化型でないこと、シソーラスはない、ということは話す
    • 核となる論文を見つけて、引用/被引用、関連レコードをたどる、ということは必ず時間をとって説明
      • 受講者も必ず興味を持つ
    • 自然・人文科学対象の別によって説明内容を多少変える
      • 自然科学系・・・論文の被引用数や雑誌のインパクトファクターの見方も触れている/人社系では触れない
      • Cited Reference Searchの説明・・・人文系では図書を例に説明している
  • 新WOSの「講義ポイント」
    • 6月の講習会から新画面による講習を先立って実施
      • 教材も新画面(ただしβ)で作成
      • 初心者が多いので「前バージョンと比べて・・・」ということはそれほど言わない
    • 新機能で6月以降ポイントとして強調したこと・質問が出たこと
      • 後方一致検索・活用語処理機能
        • ただしフレーズ検索では活用語処理機能はオフになることも合わせて伝える
      • 近接演算子NEARによる検索
        • やや応用的な内容として触れることも。ただSAMEとの違いについては触れない
      • 一覧画面での抄録表示
      • 引用文献検索の検索条件追加機能・・・Natureには巻・号を追加することもできる
        • ただしバリエーションがあるので条件は追加過ぎないほうが良いとも触れる
  • まとめ
    • 利用者講習会におけるWOS・・・代表的学術情報DB、講習会主戦力の1つ
    • 引用・非引用・関連レコードを「たどる」検索
    • WOSは今後も多くの研究者に使われる/期待も大きい
      • noblesse oblige」・・・ますます期待したい/応えて欲しい
      • バージョンアップの日程がなかなか確定しなくて困った・・・先に情報を貰えればよかったのだが
        • 日程情報等はなるべく早めに!
      • マニュアル・画面修正の対応もなるべく早めに
        • 細かいことだが、講習会受講者は初心者だけにかえって本筋以外に疑問をもつことも多い。早めの対応を
        • 「後方一致ができない」とかいうのも画面でも指示してくれれば有難い
      • 苦言めいたことも述べたが期待のあらわれ。これからも活用したい

「Web of ScienceはPubMed利用者行動を変えられるか:研究者の立場から」(トムソン・ロイター 学術情報ソリューション ソリューション・コンサルタント 高杉友さん)

  • 研究者のニーズを知る
    • なぜ大学でよい研究をする必要があるのか?
      • 大学のプレゼンス向上・・・良い研究者・学生が集まる
      • 国内外の研究機関との共同研究が増える
      • 外部からの研究資金獲得がしやすくなる
    • 良い研究をするために図書館員ができることはたくさんあるはず・・・学生・研究者支援
      • 文献探索・・・高杉さんの場合はMEDLINE, PubMedを専ら利用
        • それが正しかったのか・・・やはり足りなかったのではないか、と思う
        • 授業でMEDLINEを使えと言われ、わからなければ図書館員に聞けとも言われたが・・・やはり時間がない
        • 文献管理・・・学生時には使っていなかったので手書きでリストを作成⇒間違いがあり減点
      • 学生・研究者に網羅的な文献探索・管理について正しく伝えて欲しい!
      • それを外部に発信する方法・・・日本の研究者・学生にも海外の雑誌に投稿して欲しい
      • 自機関の研究テーマの伸長状況の察知
    • 今日はこのうち文献探索・管理にフォーカス
    • 研究の進め方/フロー:
      • 高杉さんの場合について例を示しながら説明
    • 研究計画書の書き方
      • タイトルは重要:notはインパクトがあるのでいい、等。レポート段階から指導される
      • 研究テーマ:解決を試みる課題・・・ケニヤの村で、community health workerとして一般人が家庭で聞いてまわるボランティアにモチベーション調査を実施
      • 研究の意義:
        • これまでなにがわかっているのか?・・・先進国の医療従事者のモチベーション調査はあるが途上国については少ない
        • なぜ、この研究テーマが重要か etc…
      • 研究デザイン:似たような論文を洗う・・・FGIの採用を決める・・・と決まっていく
    • よい研究テーマの5つの基本的条件(FINER)
      • Feasible:実施可能性・・・時間とお金は限られる。それに沿ったものを選ぶ
      • Interesting:興味・・・興味が持てないと論文を書き終えられない
      • Novel:新規性・・・過去の類似文献と比較してどこが違うか書けないといけない
      • Ethical:倫理性・・・医学的な研究やインタビュー等
      • Relevant:必要性・・・社会に貢献できる研究であることの必要性
      • 出典:「医学研究のデザイン 研究の質を高める疫学的アプローチ第2版」

医学的研究のデザイン―研究の質を高める疫学的アプローチ

医学的研究のデザイン―研究の質を高める疫学的アプローチ

  • 作者:ティーブン・B.ハリー,Stephen B. Hulley,木原雅子,木原正博
  • 出版社/メーカー: メディカルサイエンスインターナショナル
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 単行本
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    • 論文の構成
      • Introduction・・・ここに文献検索の結果が入れ込まれる
      • Methods
      • Results
      • Discussion・・・文献検索結果と自分の結果を比較して書く
    • 論文の盗作・盗用(Plagiarism)
      • 学年当初の授業の中にPlagiarismについての教育
      • 論文の引用の仕方等についても冒頭で時間が取られる/正しく引用が行われていないと受け取ってもらえない/盗用は発覚すれば退学も
  • 研究者が必要とする研究ツールとは
    • PubMed・MEDLINEを専ら使っていた・・・どういうDBを使ったか、検索語、検索結果等もレポートに書かねばならない
      • WOSを使えばもっと時間を短縮できたのではないか?
    • 1つのDBだけですまそうとするのはナンセンス? それぞれの強みを学生・研究者に教えて正しく使ってもらうよう指導して欲しい
    • WOSの分野網羅性・・・魅力
      • 公衆衛生は色々な分野にまたがる。PubMed・MEDLINEだけでは探せないものを見る必要がある
  • ケーススタディ:Swine Influenzaについて
    • PubMedとWOSを使って検索をしていく
      • WOS:2,247 / PubMed:2,829
    • WOSの引用レポートを見てみる・・・いつ頃、論文が書かれたのか?
      • メキシコでの新型インフルエンザ発生後は論文数が急増している
      • より長期的なスパンで見ると、1970年代後半にも頂点がある。1976-1978の3年間で100本の論文
        • うち被引用数が一番多かった1本を見ると、WOSでは175。PubMedでは42。WOSの方が多く把握している
        • 関連論文がすぐ引っ張ってこられるのは便利
        • 引用文献の内容もすぐわかる+WOS未収録文献(WHOのレポート等)が引用された回数や引用した論文もすぐわかる
    • 主題分野も特定できる
      • ワクチンの有効性の論文の属する分野の中にBusiness / Economicsもある
        • 狭い分野⇒考えもしなかった研究テーマが思いつく可能性
    • 分野の変化も容易に確認できる
      • 1970年代後半のピーク・・・内科が多かった/2000年代後半・・・ウィルス学としての論文が多い
  • まとめ:
    • 研究者はデータベースを知らないことも多い・・・「口コミでDBの使い方を知った」など
      • 文献探索は重要/不可欠。誰もが情報を欲している
    • ツールを1つに絞る必要はない
      • 選択肢をいっぱいあげてほしい
    • 網羅的な検索の重要性
      • ツールをたくさん教えることで「こんな検索もできる」ことを研究者・学生に伝えて欲しい

ディスカッション in 東京

  • 司会・松下さん:どんな講習会に院生として行ってみたい? どんな講習の告知法が良いか?>佐藤、成澤さんへ
    • 佐藤:研究者になりたい院生に絞った大学院共通科目の中でWOSを使っていて、受けが良い。専門特化のDBには自身があっても網羅的なものはかえって使っていなかったりもする。詳しい誰かに教えて欲しいニーズはあるし、あとは発表場所選びや研究評価が絡むと俄然、熱心な人が来る。
    • 成澤さん:ターゲットを絞ると反応がいい。「人社会系のための」とか「医学生命科学系のための」といったように。「秘書さんのための」もそのひとつ。広報については私たちも手探り。広まり方はキャンパスによっても違う。本郷キャンパスでは「webサイト・ポスター・ちらし」が多いし、柏キャンパスは「メーリングリストの案内」が増える。本郷以外のキャンパスは回数自体が少ないこともあるが、なにで知ったかをアンケートの中に必ず入れて分析するようにしている。指導教員からとか、口コミ要素も大きいようである。あとは文献管理ツールはまだ認知度が低いのでそこを。
  • 会場:WOSについてと、利用者教育担当として成澤さんに2つ。WOSについては、先生方はあまり学校に来ないこともあると思うが、移動中にアクセスしようとするとスマフォやiPadとなると思う。その手の端末からのアクセスってどれくらいある?
    • 今はデバイスの利用が多くなってきていると思う。WOK 5.3からリモートアクセスに対応している。VPNをしなくても、サイト内でIDとパスワードを作ればモバイルでのアクセスも可能。フルブラウザでは当然アクセス可能だし、モバイル端末用の画面も用意されている*1
  • 会場:成澤さんに。自分の大学はまだWOS契約していないのだが、講習参加者としてはどんな層が多い? 図書館員が講師をする際にはどうやってスキルを上げている?
    • 成澤さん:受講者層は・・・身分? であれば、様々としか言えない。2010年には175回の講習会があったが、オーダーメイド講習会や共済の回は依頼先や連携先が受講者を連れてくる。事前予約に近い。しかしそれ以外は基本的に事前予約不要、当日来た人を対象にしている。アンケートで身分を見てもかなりばらつきがある。教員も来るし、研究員・研究生、客員研究員をしつつ企業にも勤めているような人も来る。比較的多いのは大学院生と研究者、研究員・教員。
    • 図書館員が講師をする際のノウハウについては、私自身4月から講師を始めたが・・・講習会に関して言えば、東京大学から私は一時NIIで、図書館員対象の研修担当をしていた。その中でいわば松下さんのように司会や人前で話すことの経験は積んでから担当になった。最近は人前で話すことに抵抗のない図書館員も増えてきていると思うが、まだ苦手意識のある人もいるようである。まずは身も蓋もないが経験を積むことから始まると思う。それから、なるべく記録を残しておくこと。ポータルにも教材は公開しているし、ローカルにもある。記録を残して、それを使ってどう話すかは担当者や他の講師を見て覚えていくことになると思う。
  • 最後にもう1つ:講習会は3−4年生以上を対象としている?
    • 成澤さん:1−2年生は駒場キャンパスで講習会を行っているが、そこではWOSを使うようなものは回数は少ないと思う。すぐに回数はわからないが。ただ、先月駒場キャンパスで自然系・人社系の講習をやったときには1年生の受講者の申込もあった。ただ、ついこの間まで高校生だった人ということもあり、DBやそれを使ってreferences listを作ることの実感は持てないようであった。
  • 会場の方2人目:質問というかコメントだが。WOSはPubMed利用者行動を変えられるかということについて、アプローチとしてWOSを使って分野を指定したり被引用数順を見るというのはアプローチとしていいと思う。結果的にもいいと思うが、必ずしも被引用数が多い順が医学的にevidenceの高い順ということではないとも思う。スライドp.12のPubMed・Medlineの特徴について、システマティック・レビューに絞ってエビデンスの高いものを選ぶ、というのがPubMedに関する言及に抜けている。医学図書館に勤めているので気になった。

ディスカッション in 大阪

  • Researcher IDについて:WOSを買っているが使いこなせていないのでR IDについて詳しく知りたい。先生がR IDを自分で申し込んで初めて貰える? 最初から振ってある? 広報以外になにに使える?
    • 矢田さん:登録について簡単にお見せする(デモ)。WOSのトップページ、右メニューバーの中にリンクあり。注意点としては、自分の論文でないものをR IDにおもしろ半分に登録すると著者に迷惑がかかるのでやめて欲しい。
    • トムソン・ロイター:古林さん:R IDについては無料ツールなのでWOSを買っていない機関の人でも作れる。Googleで「Researcher ID」と検索するとサイトが出てくるので、そこからR IDを作ることができる。ただしWOSを買っていないとWOSとリンクさせて被引用数の動向を表示させたりはできない。また、機関単位で所属者全員にRIDを付与しているところもある。そのときは先生方のプロフィールデータをExcelでもらって、トムソン・ロイター側でバッチ対応して作成した。
  • iPad, iPhoneでも使えるとのことだが、学内環境から最後にアクセスして半年間は使えるとのことだった。EndNote Webは卒業後1年間使えるのだが、iPad / iPhoneは半年になってしまうということ?
    • 今のところ半年間になっているが、長くするか短くするかは今後変わる可能性もある。EndNote Webは文献管理のためのものだが、WOSはデータベース自体が外から触れるということ。EndNote Webは1年間使えるが、WOSやJCRは最終アクセスから半年とした。リリースしたばかりなので今後また要件が変わることもあるかも知れない。現時点では、という話。
  • WOK5とInternet Explorer 9との不具合の解消はいつ?
    • 正式サポートはIE8までになっている。バージョンを下げていただければ全機能使えるが、画面が出なくなったときにIEの機能で「互換表示」にチェックを入れれば通常の検索結果は普通に出る。いつIE9をサポートするかは・・・リクエストとしては出しているが時期は明言できない。




・・・あらためて、一人ネタにはしった内容だったと反省しないでもないです・・・(汗)
ただまあ、メモは取らなかったのですがクローズドの挨拶をされたトムソン・ロイターの渡辺さんから、評価や研究戦略にかかる分析に関する問合せも増えているが、実際のところWOSに一番詳しいのは図書館員ではないか・・・というお話もあり、こちらの方面の話(結果の分析や引用分析)についても今後、図書館の方が関わる機会は増えていくのではないかなあ、とかなんとか。
バージョン4⇒バージョン5で操作感はそう変えないまま色々な機能が向上してるのは本当、有難いです。
なんかこれだけで色々楽しくなってしまう感じ・・・スライドには入れなかったのですが、口頭だけで会場でした話としてはタイトルに前置詞の「on」を含む論文はイギリスの著者よりも日本・中国の著者の論文のほうが多くて、おっとなんかこれは前置詞の使い方にクセがあるんじゃないか・・・とか見えたりもしたりとか、そういうことを検索して時間を費やしていたり(笑)


と、僕がデータベースできゃっきゃ遊べるのも契約を担当してくれている図書館の皆様あってのものであり。
それをさらに支えるJUSTICEでは、この夏だけでのべ100回の交渉の場を持たれるというのは・・・(大汗)
皆さんの苦労に支えられているのだよなあ、と再認識した次第です。
・・・認識したから欲しいDBやジャーナルの要望を抑えるかといえばそんなことはないわけですが。
『Learned Publishing』も欲しいし『医学図書館』を図書館情報学図書館にも欲しいー。



閑話休題
今日はこのまま大阪に一泊します・・・8/1には京大図書館にて、ku-librariansの勉強会で発表予定です。

先ほどスライドも完成したので、なんとか発表できるかと思います。
「かたつむりの発表なら行かなくてもあとでネットに上がるだろうー」とか思われるかも知れませんが、今回はクローズドにできるらしいということを聞いてネットにまだ出せない話盛りだくさんでお送りする予定です。
ブログも更新せず最近なにをやっているのか興味がある方は是非ご参加いただければー。




・・・とりあえず7月もなんとか1本は記事をアップできた・・・

*1:iPhone, iPad限定。Androidは未対応。7/29大阪会場より補足