かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

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『聞き書き震災体験 東北大学90人が語る3.11』


聞き書き 震災体験―東北大学 90人が語る3.11

聞き書き 震災体験―東北大学 90人が語る3.11


前説

前回、数えてみると実に4年ぶりにこのブログに「書籍感想」タグのエントリを挙げたのですが、続くときには続くもので今回もいただいた本に関するエントリ。
と、いっても今度は「下さい!」って手を挙げてもらってきたものですが。


先日、図書館総合展in仙台のために東北大学に行った時のこと。


5/27のフォーラムの方が終わった際に、MULU : みちのく図書館員連合の吉植さんから、「実は今回の配布資料にはある細工がしてあって・・・それに当たった方にはこちらの本をプレゼントします」と呼び掛けがあったのが、今回紹介する『聞き書き震災体験 東北大学90人が語る3.11』でした。
で、自分はそもそも配布資料をもらいそこねていた(記録スタッフだったので)ので応募資格がなかったんですが、たまたま当選者のうち1人が名乗り出なかったそうで、余っていた分を「欲しい人!」と言われた瞬間に大きく手を挙げていただいてきました。
ただし条件があって、「まわりの人にすすめること!」とのことだったので、こうしてエントリに挙げている次第。
いや、でも例えその条件がなくても、これは人に紹介したいし図書館だったらぜひ所蔵しておくべき本かと。

内容紹介+感想

東北大学で2011年の5月から、教員・学生ら有志が始めた、東北大関係者(学生、教員、職員、留学生はもちろん出入りの業者や当時、たまたま東北大に出てきていた方まで)に、2011.3.11の震災直後からしばらくの間の経験について語ってもらい、記録する・・・というプロジェクトの成果をまとめた本です。


話の内容をテーマごとに大きく編集したりすることなく、語った人の属性(学生か、教員か、職員か、さらに学生の場合は学内被災か市内で被災したか当時別の場所にいたか・・・等)ごとに各々の話した(あるいは当人が自分の語りに一部、記述を加えた)内容がそのまま記されています(加えていくつかのコラムや論文も掲載)。


留学生や出張中だった人、それに職員の体験記まで含まれていて、本書中でも述べられていますが、震災時の経験は、人によってぜんぜん違うんだ、ということがよくわかるし、引き込まれます。
特に職員の方は、図書館員の方の経験もそうですし、施設部の方は震災直後から泊まりこみで作業されていた話があったり、あるいは生協の方が翌日から在庫を売りに出した話もあったり・・・つくばもそうですが、自分が仕事から離れて生活にかかりきりのときでも回っていたのは、そういうときでも動いている方あってこそだったんだよな、とか。
その他の方の経験も、どこにいたか、どこが自宅か、どういう立場かで全然違って(「仙台には絶対帰ってくるな」と学生に伝達した教員の話の後に、出張中で「仙台になんとかして戻るぞ」と同僚に伝えた教員の話があったり)、似ているようでも誰もが違う体験をしていた、という当たり前のことを実感します。


自分だったらどうするだろうと思うのはもちろん、当時、別の形で(当時自分は仙台ほどではないにせよ被災し混乱している東京⇒つくばにいて一時は帰宅難民になっていたり)震災と向きあっていた自分の経験をもう一度、思い出したりもしましたた。
しかしさすがに1年以上前、ということでかなり忘れている部分もあって、Twilogを見て「あー、そうだった」とか思ったり・・・
そうやって少しずつ忘れていく前に、あるいは何か語りたいものがあったり語って楽になれたりもするであろう時期に、これだけの人からの聞き語りをまとめられた、というのは本当に凄いと思うし、今後(考えたくないことではあるけれど)同種の災害・事件があった場合にできることの一例の提示としても素晴らしいと思います。
つくばろくとか。
かなりの部分はTwitterのログでカバーできるにしてもやってない人もいますし、出向いて、語ってもらって、記録に起こすことの意味/意義がよく伝わって研究の上でも大変おもしろいです。


ここで紹介する本はいつもそうですが、ぜひ多くの方に手にとってもらいたい+各図書館に入っていて欲しいと思う本でした。
ありがとうございましたm(_ _)m >吉植さん+MULUの皆様