「基盤は進化する:WebcatからCiNii Booksへ 紙onlyから+電子リソース管理へ」(「大学図書館と共に拓く 新たな学術コンテンツ基盤の地平」 国立情報学研究所平成24年度オープンハウス ワークショップ)
毎年6月は国立情報学研究所のオープンハウスの時期ですよ!
ということで現在自分は特別会議室で開催中のセッション「大学図書館と共に拓く新たな学術コンテンツ基盤の地平」に参加中です(概要については上記リンク先参照)。
午前の部では「Part1:基盤は進化する〜 WebcatからCiNii Booksへ 紙onlyから+電子リソース管理へ」と題し、最近も新機能がリリースされた*1CiNii BooksとそのAPIの活用事例、プロトタイププロジェクトがはじまった電子リソース管理データベース(ERDB)構築プロジェクトとその可能性に関するご発表・質疑がありました。
既にTogetterがまとまっているくらいなので(汗)、自分があらためてブログをまとめる必要があるのかは謎ですが・・・会場からは「期待」って声もいただきましたし、アップしていく方向で!
幸い会場に公式無線LANも入れていただいていたので、午前の部については昼休みのうちにアップです(笑)
例によってmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での記録となっております、ご利用の際はその点、ご理解願います。
誤字脱字、表現の違い、事実誤認等、お気づきの点があればコメント等にてご指摘いただければ幸いですー。
司会:森いづみさん(NII学術コンテンツ課副課長)
ワークショップの趣旨説明(尾城孝一さん、NII学術基盤推進部次長)
- 会に先立って今日のワークショップの主旨、背景を少しお話ししたい
- はじめに・・・NIIの歴史を紐解くと昭和51年発足の東大・情報図書館学研究センターにまで遡る
- 東大総合図書館の上の方にあった。NIIはそもそものはじまりから大学図書館と切っても切れない縁があった
- その後・・・東大文献情報センター⇒学術情報センター(NACSIS)と変遷
- NACSIS時代が一番長く、組織としても急速に発展
- 平成12年にNACSISを廃止し国立情報学研究所(NII)へ
- NACSIS時代にも研究部門はあって、教員が所属していたが、コンテンツやネットワークの事業を担う部門よりも規模が小さかった
- 研究所に変わることで比重が逆転。現在では研究部門の方が大きい
- 平成16年に国立大学と同じく法人化。大学共同利用機関法人、情報・システム研究機構の一員に
- 組織形態の変化に伴ってネットワーク・コンテンツの事業関係予算がだんだん厳しく
- 一方、大学図書館との関係は?
- NIIと大学図書館の連携・協力の活動の場をいろいろ作って行きたい
- 情報・課題を共有しながら、一緒に取り組む事業を行う
- その場の中での活動を通じてこれからの図書館・学術情報基盤を担う人材を育てていきたい
- 本日のワークショップは今後の大学図書館・NIIの連携協力を進化させ、学術コンテンツサービスの未来を拓く第一歩。小さくても第一歩となれば、主催者としては嬉しい
- とはいえ、何はともあれ本日のプログラムを楽しんでいただきたい!
CiNii Books
「NACSIS WebcatからCiNii Booksへ」(関戸麻衣さん、NII学術コンテンツ課)
- CiNii Booksとは?
- NACSIS-CATデータをCiNiiで利用できる。従来出来なかったような検索もできる
- 特定の地域/図書館、所蔵一覧からの絞込み等も実現!
- 2011.11に公開。アップデートを重ねてきた
- NACSIS-CATデータをCiNiiで利用できる。従来出来なかったような検索もできる
-
- CiNii Booksは便利! ぜひ乗り換えを!
- リンクだけではなく名称の書き換えも!
- CiNii Booksは便利! ぜひ乗り換えを!
- CiNiiは日々進化し続ける
- ご意見・提案も受け付けている
- これからの図書館サービスを一緒に作って行きましょう!
「リンクリゾルバとCiNii Books API」(飯野勝則さん、佛教大学)
- 司会・森さんより:実際にサービスを作っているGood practiceが飯野さんからのご発表
- 前提:なぜCiNii Books API?
-
- 冊子体の雑誌・図書の所蔵がある場合
- 書誌情報/書誌へのリンクを登録することで解決
- OPACのURL等を登録すればいい。デフォルトではできないが解決
- ここまでは工夫をすればCiNiiがなくてもできたのだが・・・
- 冊子体の雑誌・図書の所蔵がある場合
-
- ネットワークがつながったのでデモを
- (実際の画面を見つつデモ)
- ネットワークがつながったのでデモを
質疑応答
- Q. 大学図書館員。飯野とはお付き合いもあって色々、アイディア使いたいとも思っている。ただ、飯野さんは私立大学の図書館員としては特殊。私立大学では図書館にずっといるわけではなく早ければ2-3年で異動する。腰を据えてプログラム開発、とはいかない。国立大学中心に出てくるアイディアを私立大学とも共有できないか。APIのソースは色々あるのだろうが、まるで積み木を重ねるように、「こういうものが欲しければこう」というライブラリを作ってくれると嬉しい。
- A. 飯野さん:実はまさに午後、そういう話をしようと考えていた。ネタを取られた(笑) 午後も詳しく話すが、APIの活用をNIIも願っている。敷居が高い部分はあるので、その水平展開の仕組みは必要。詳しくは午後。
- Q. 司会・森さん:NII中心のライブラリがいい? コミュニティ中心がいい? 関戸さん、どうでしょう?
- A. 関戸さん:自然にコミュニティができあがることは期待したいが、NIIでできること、景気づけみたいなこともできるといい。他のNIIの方のご意見は?
- NII・大向さん:API普及のために、Articlesではコンテストを2回開催したりもした。その載ったものはNIIでリスト化してほしい、とお話があったのでリストを出している。そういうことはこちらでやっていきたい。もちろん情報交換・サンプルコード共有となっていくとコミュニティの力によるところが大きいと思うので・・・という話をパネルディスカッション(午後)にしようと思っていたんだけど(笑)
- Q. 大学図書館員。CiNii Booksについて。学生に利用もさせているのだが、WebcatPlusは存続するということで、そちらとの使い分けへの意識をお聞きしたい。
- A. 関戸さん:WecatPlusは学術コンテンツ課はノータッチの別プロジェクトで、一般の方向けに幅広く本の情報を集める。CiNii Booksは学生・研究者向けにお使いやすいものになっていくと考えている。
- 森さん:NACSIS-CATのデータをうまく使いつつ、対象ユーザは違う別サービスと考えていただければ。
- 森さん:APIについて、皆さんどんなアクションをすればいいか、ピンと来ましたか? API、聞いたことある・・・人は多いけど会場、活用できる人は・・・ぐっと減りましたね(会場に聞いて)。飯野さん、どうしましょう?
- A. 飯野さん:僕自身活用しきれているとは言えないし、そういう部分はコミュニティの力なのかな、と思う。
- 森さん:図書館員が手作りでやることも難しいと思う。本日、会場の半分はベンダー。なにかできるサポートの話などない?
- 会場・ベンダーの方:開発者の立場からすれば色んなことができると思うが、図書館システムってけっこう大きくて、「こういうことだけできますよ」というのがどれだけ嬉しいのかよくわからない。コミュニティでメーリングリストとかがあれば、そこに「こんなことできますよ」と投稿するのは敷居無く出来ると思う。いきなりベンダだとお金の話になったりしそうで頼みづらいのでは、と思う。コミュニティみたいなものがあれば、空いた時間にベンダからコメント、なんてこともできるかと思う。
- 森さん:敷居を下げる、ということがキーワードかと思う。コミュニティによって敷居が下げられればいい。午後のパネルでも飯野さんに登壇してもらうので、その話もできれば。
ERDB
「電子リソース管理データベース(ERDB)プロトタイプ構築プロジェクト概要について」(田邊稔さん、NII学術コンテンツ課)
- 結論から言うと:NIIでこれから各機関、JUSTICE、出版社、ベンダと協力して電子リソース管理のためのデータベースを作る、という宣言をします
- ERDB:電子リソースの書誌情報・契約情報を一元的に管理した、電子リソースの総合目録
- 一言で言えば電子版のNACSIS-CAT。そういったものを作る
- 図書館・電子担当者の契約等の業務負担の軽減・支援
- 利用者のアクセス支援。各種情報源への最適なパスを導くことを支援したい
- 構築概念図:
- 今年度・・・そのプロトタイプを作る
- スケジュール:
- プロトタイプα版を作ってみんなで検証
- 段階的に良くしていく
- 年内には最終取りまとめをする
- 来年度以降への改善点をまとめる
- プロトタイプα版を作ってみんなで検証
- さらに詳しいシステム概念図を用いた説明
- (これは図なしでは記録しづらいので興味がおありの方はUstream映像の確認を)
- まとめ:
- 電子リソース管理・有効活用にはERDBがいる
- NIIだけではできないので大学図書館との連携がいる
- ERDBプロトタイプ構築プロジェクトは今後の学術情報システムの基盤を作る、息の長い活動の最初の一歩
- "図書館の「サグラダ・ファミリア計画」"。1-2年でできるものではない、みんなの思いでやっていこう
「九州大学の取り組みから見た必要な基盤構築」(香川朋子さん、九州大学)
- 紙から電子へ:
- 購読では紙と電子(電子の方が多い)の差はより広がってきている
- 利用面でも紙は安定しているが電子リソースのフルテキストダウンロードは伸び続けている
- 電子リソース管理のワークフロー:
- 紙と電子でフローは異なる。契約方法や管理項目が違う
- それぞれのリソースに適した管理が必要である
- そこで九州大学では電子リソース管理の基盤整備を進めてきた
- Serials solutionsのシステムを使って情報を一括管理
- そのシステムから出力したデータに書誌情報を紐付けてディスカバリサービスに取り込む
- 利用者はそのディスカバリサービスからリンクリゾルバを介して本文へ
- ERMシステムの利点
- さらにERMSを基盤にサービス拡充の可能性も:
- エンドユーザから見ると・・・一般的なサーチエンジンでは学術情報以外も出てくる/求める資料にたどり着けるかは・・・
- 必要な検索サービスを欲しい情報に応じて選ぶ必要
- ERMSでも、国内の電子ジャーナルや論文情報は管理できていない/単独では限界がある
- 対応1:ディスカバリサービスの提供
- 利用者はそこにだけアクセスすればいい
- 対応2:国内の電子コンテンツの網羅的収集の仕組み
- 対応3:ERDBとの連携による電子的なコンテンツのアクセス精度向上
- ディスカバリサービス
- 九州大学では今年から開始。うち1つがCute.Catalog
- さらにディスカバリ・インタフェースとしてのCute.Searchも運用
- 九州大学では今年から開始。うち1つがCute.Catalog
-
- ただし構築・運用にはかなりの労力と時間
- ディスカバリサービスへのデータ収集のプロセス・・・それ自体の構築にも時間がかかるし他にも色々な調整がいる
- 一大学でやるよりも大学の枠を超えて整備する仕組みがあればいい
- ただし構築・運用にはかなりの労力と時間
- 国内ナレッジベース
- 現状・・・国内各所に散らばる電子コンテンツは網羅的に収集されていない/大学によって収集・提供状況が違う/提供元によってデータ品質が違う
- 1つの仕組みで網羅的に収集することで、手間の重複排除/一元管理によるデータ品質向上が期待される
- さらに海外のグローバルなナレッジベースへも登録しやすくなり、国際的な国内電子リソースの価値も高まる
- NDL・JSTの取り組みも組み込めばさらに価値の高いサービスに!
- ERDBとの連携
- 今年度、NIIでERDBプロジェクト開始中・・・
- 電子リソース管理から利用者向けサービスまで応用できることを検討しているという
- そのメリット1:複雑な利用規定を管理することで各大学がコンテンツ情報入力の労力を省力化できる/JUSTICEによる全国調査にも利用できる/電子リソースの利用統計も収集できるのでコンソーシアムの交渉にも役立つ
- メリット2:単独では作りにくいディスカバリサービスが実現できるしみんなで作ることでよりよいものになる/管理コストの削減にも
質疑応答
- 司会・森さん:会場にはプロジェクト参加者も幾人かいますが、参加者の視点から何か補足は?
- 森さん:その点について補足があれば。
- 香川さん:海外製品は日本のコンテンツに弱くて、利用できるはずなのに使えなかったり、国内タイトルはデータの整備自体進んでいなくて、たとえば同じ名前のタイトルがあるせいでISSNが入っていないと違うものにリンクしてしまったり、ということがある。
- 森さん:我々、図書館は25年かけてNACSIS-CATを作ってきた。そこにも電子リソースは登録できる。しかし今回、別に電子の世界のNACSIS-CATを作るようなものだということであったが、そういう方向になった経緯は? 人に振ってもいいが。
- NII・高橋さん:色んな考え方があったと思う。CATに電子リソース情報を入れる考えもあったし、別物でやった方がとか、いろんな議論をする中で、今はCATは紙、ERDBは電子、という。ただ、一緒に検索できないとおもしろくないので、CiNii Coreのようなものを作って一緒に検索できるようにしましょう、ということを考えている。電子について弱かった部分を大学の皆さんと一緒にやりましょう、という状況。
- 森さん:コミットしたい人はこれからどうしたらいい? 見守っていたらいい?
- 田邊さん:今まではそういうケースも多かった。NIIだけ突っ走る。そういったことがないよう、スタート時点から大学さん、ベンダさん含めて巻き込みたい。国内ナレッジについてはNDL、JSTさんも巻き込んで、さらにはシステム連携も考えるならシステムベンダも巻き込みながらやるといいものができるのでは、と考えている。
- Q. 私立大学の方。ERDBの中に書誌があって、そこに利用条件や契約情報をリンクする形だったが、利用条件は大学によって異なることもあるのでは? 利用条件は一対他のリンク?
- 田邊さん:ここは概念図を曖昧に書いていて、基本的には一対他。
- Q. しかし条件については、参加機関によっては「この条件はうちだけ」みたいなものもあると思うがどうする?
- 田邊さん:「ある大学さんではこう」というような、所蔵情報のような見せ方になるかと思う。見せ方についてはこれから検討していく。
- 森さん:そういった具体の疑問に関する情報交換をしながら進めていきたい。お2人とも午後のディスカッションにも登壇されるので、続きは午後に。
Part1参加者の皆さんはそのまま午後にも参加され、パネルディスカッションに登壇される方もいらっしゃいます。
午後分のアップはおそらく夕方になるかと思いますが、そちらもぜひ、あわせてお読みいただければ幸いですー。
では、自分は記録作成作業に戻ります!