かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「機関リポジトリの新たなステージに向けて」その3「求められる基盤サービス」&パネルディスカッション(平成23年度CSI委託事業報告交流会(コンテンツ系)参加記録・2日目)


昨日*1に続いて今日もCSI委託事業報告交流会に行ってきました!


2日目の今日は個別事例にとどまらない、機関リポジトリの基盤となる、よりインフラ的なサービスに関する報告と、最後は「新たなステージ」に向けてのパネルディスカッションでした。
昨日の今日でさすがにタイピングの手が若干疲弊気味でしたが(苦笑)、しかしそれも途中から気にならなくなる盛り上がりでした!


以下、当日の記録(2日目分)です。
例によってmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書取れた範囲のものであり、ご利用の際にはその点ご留意いただくようお願いします。
誤字脱字・事実誤認等、お気づきの点があればコメント欄等でご指摘いただければ幸いですm(_ _)m


Session.6 求められる基盤サービス

コーディネータ:逸村裕先生 (筑波大学教授)

 

6-1. 広島大学図書館 濱知美さん:「機関リポジトリ担当者の人材育成」

プロジェクトの背景
  • 平成22年度以前の人材育成プロジェクトは2つ・・・
活動概要と成果
  • 中堅担当者研修
    • 機関リポジトリに特化した中堅者向け研修は初
    • 歴史〜現在、国内〜海外、身近な話題〜大きな話題まで幅広い討議
    • 2日で3回のグループ討議
      • 英語文献を事前課題として読み、議論の結果を発表するものも
      • まとめの宣言として各受講生が期日までにやることを表明するなど
    • ハードながらも達成感/充実感
  • 「技術課題解決のためのワークショップ」開催
  • 講師派遣事業
    • 7イベント、計11人を派遣
    • 地域のつながりを深める/新たな出会い
  • リポジトリ研修検討会議への参加
    • 英国・RSPとの情報交換
    • 詳細は昨日の発表参照*2
    • 研修事業実施形態改善に取り入れたい:
      • 中堅研修を合宿形式のサマースクールに
      • アンケートの形式等を参照したい
  • 平成23年度まとめ:
    • プロジェクトは今後の機関リポジトリをリードする人材、地域・分野の核となる人材を育成
    • いまや人材育成はDRFの主要事業の一つ
    • 大学図書館の現場における育成」の基盤づくり
課題と展望
  • 今後も人材育成事業を継続することが重要
    • JAIRO Cloudによって未構築機関からの需要が高まる
    • 構築機関でも担当者の異動/継承問題
    • 人材育成+コミュニティ形成の場
  • 今年度は?:
    • 新任研修の定着化
    • 中堅研修をより、機関リポジトリを意識した内容へ
    • 昨年度はなかった地域ワークショップ開催を
    • CSI事業終了後は・・・期限付きではない、持続的な発展を支える事業として継続する必要性

6-2. 千葉大学 武内八重子さん:「ROATプロジェクトがめざすもの」

  • ROATとは?
    • http://roat.ll.chiba-u.ac.jp/
    • 機関リポジトリアウトプット評価システム
    • 機関リポジトリのインプット・・・コンテンツ登録数等
    • アウトプット・・・アクセス数/ダウンロード数等
    • 機関リポジトリインパクトを測るにはアウトプット指標が重要=アクセス数の測り方を検討
    • 「的確な評価に利用するためのアクセス数とはどのように入手できるのか?」
      • 方法を検討
    • その方法を適用して各機関が統計を出すためのツール作成/ガイドライン公開
  • ROATプロジェクト
    • 平成18年度から活動継続
    • 基準の検討/適用できるシステム・ガイドライン作成
  • ログ解析結果を利用しやすくする工夫:
    • ログをアップロード⇒フィルタリング⇒JAIROのメタデータとログをマッチング・・・「このタイトルの論文が何回」と人にわかりやすく表示
  • 他に海外での利用統計プロジェクトの調査なども実施
  • 平成23年度にやったこと:
    • NIIのクラウドサーバへの移管準備中
      • 「各機関でできますよ」と言ってもやるのは大変。一箇所で処理できるのが簡単
      • しかし「千葉大学にログを・・・?」と抵抗を感じる人もいただろう。そこでより公共性の高いNIIのサーバに移す
    • すでに環境構築自体は済んでいる
      • 今年度の半ばには利用機関/未利用期間に案内を出せるようにしたい
  • 今後の課題:
    • 著者ID等、識別子の利用
      • 著者同定/複数リポジトリにある論文の対応
      • 著者ID/DOI活用を検討中
    • 利用機関増加
      • 興味がある方は連絡を!


 

6-3. 筑波大学附属図書館 情報管理課 真中孝行さん:「オープンアクセスとセルフ・アーカイビングに関する著作権マネジメント・プロジェクト(SCPJプロジェクト3)」

本プロジェクトについて
  • SCPJプロジェクトとは?
    • Society Copyright Policies in Japan
    • OAとセルフアーカイブに関する著作権マネジメントのプロジェクト
    • 機関リポジトリにコンテンツを登録したい時に、雑誌等のポリシーを調べるのが大変なので、学協会に聞いてDBに入れておく
    • 決まっていない学会とは情報共有/意見交換等を通じ支援
  • 「SCPJ」って言い難い??
    • 愛称については検討中
    • 来場の皆さんは御存知だろうが館内でも知らない人がいるかもしれないくらいの認知度。知名度を上げたい
学協会著作権ポリシーデータベースの現況
  • 2,542の学協会/3,022誌を登録(5月現在)
  • 「決まってない」ポリシーが最多/なんらかの版は登録OKが3割前後/不可は1割程度
平成23年度の活動内容
  • データ更新
    • Green, Blue(登録OK)の割合が増えている
    • 方針不明率は約67%⇒約59%まで落ちた
  • 機能拡張
  • 学協会との意見交換
    • NACOS学会センターとの意見交換/広報活動も
  • 講師派遣
新機能
  • 検索機能強化
    • NCIDによる検索ができる/API連携も可能
    • CiNii Books書誌とのリンクも取りやすくなったのでSCPJ内に表示できるように
  • 「Gray」方針の細分化・・・
    • "「検討中」と「未回答」が一緒は気分がわるい"という学会の要望を反映。お答えいただいている場合と未回答を区別
  • ポリシー連絡用webフォームの改良
    • webでポリシーを連絡できるフォームを作った
  • スタッフ専用機能追加
    • 学協会や図書館員にアカウントを発行して直接データを更新できる
今後の課題 
  • クラウド化:JAIRO Cloudに今年度中に移行したい
  • 学教関係者との意見交換
  • データ更新
  • 他システム連携:
    • 文献自動収集
    • 学会名鑑
  • スタッフ募集中!
    • 申請いただければ誰でもなれる
    • 今後はみんなで作るのが基本に


 

6-4. 九州大学 馬場謙介先生:「文献自動収集・登録ワークフローシステムの開発」

  • 一橋/三重/筑波/九州大の共同プロジェクト
  • 本プロジェクトの目標:リポジトリ登録論文数を増やすこと
    • 九州大のリポジトリ(QIR)の場合、登録論文は教員の論文の3割(多く見積もっても)
    • QIRの登録論文数自体は世界でも少なくないレベル
      • ということは、たいていの機関で似たような状況になっている?
    • アクセスログの解析や便利なインタフェース開発もしたいが、まずはコンテンツを充実させないと身にならない
    • 特に書かれたのに登録されていないのは学術雑誌論文
  • 問題解決のアプローチ:
    • 論文の著者に登録を促す
      • 現状:自発的な登録を待っている
      • 登録の手間を省くだけでは登録する気にならない
      • 研究者データベースからQIRの登録フォームにリンクを貼ってみたのだが、効果なし!
      • 一方でLibrary Scienceの学生がアンケートをとってみたところ、リポジトリに否定的な先生はいないが、登録は義務じゃなければしない、という結果に
      • 「催促すれば登録してくれるのでは?」
    • リポジトリ管理者の作業効率を上げる
      • 仮に工夫がうまくいっても、処理効率が上がらないと登録できない
      • 現状は個人の工夫に頼ってしまっている
  • 具体的に何を?
    • 論文の著者への登録促進
      • 外部データベースを検索して、研究者に論文登録を催促するメールを送信
      • 論文登録のトリガーを研究者に対し、リポジトリから打つ
    • 作業効率の向上
      • やっていることを定式化/自動化できる部分は自動化
      • 面倒なのは著作権ポリシー管理・・・そこでSCPJを活用することに
  • プロジェクト全体の計画:
    • 3カ年計画
    • 平成22年度には教員問い合わせシステムとリポジトリ投稿システムを開発
      • 論文登録作業フロー図も作成
        • 多くの大学のリポジトリ管理者にインタビューを実施(一橋大学が主体)
        • 著者/出版社両方の許諾がいる。著者/出版社はわけて考える必要
    • 平成23年度・・・著作権処理状態管理システムを開発
      • フロー図に対応して、著者ステータス/出版社ステータスがある
      • 著者のポリシー、出版社のポリシーごとの状態が管理可能
    • 平成24年度の計画:
      • システムの検証・評価の実施
      • 平成23年度までに作ったシステムを実運用・・・登録数/作業時間はどう変化する?
      • 他システムとの連携・・・QIR以外でも使えるように汎用化
      • 研究者DBとも連携・・・そこからとってきたデータの著作権処理状態を管理

6-5. 国立情報学研究所 准教授 山地一禎先生:「国立情報学研究所の基盤サービス JAIRO Cloud(共用リポジトリ)の例」

  • JAIRO Cloudの現状と今後を紹介
  • JAIRO Cloudとは?
  • サービス概要
    • ソフトウェアはNIIが容易。各機関はWEKOのカスタマイズをできる
    • それぞれの機関の環境は仮想化。そのまま商用環境に移行することもできる
  • 現状
    • 現在、70機関から申請。当初予想を大きく超えててんやわんや中。私立が多い
    • 既に14機関が公開。従来なら試行期間等を設けるところが多かったが、「いつ公開したいんですか?」「来月で」「えーっ」
  • WEKOとは?
    • NIIのCMS、ネットコモンズ2.0で動作
    • 他ソフトウェアとだいたい等価な機能
    • 現状では論文を扱う機能が充実
  • 今年度の主な改修予定
    • 8月までに次のバージョンを公開
    • ユーザインタフェース改善
    • Google Scholar対応・・・今までネットコモンズの制約でうまくいっていなかった
      • ネットコモンズもNII開発なので
    • ハーベスト機能・・・WEKOがデータ/サービスプロバイダに
      • WEKOのコンテンツをハーベストしてWEKOで横断検索
    • その他、様々な機能を夏までに追加予定
    • さらに統計通知機能/PDFカバー機能等も仕様は決まって開発中。冬の安定版には追加
  • JAIRO Cloudによる構築例
    • WEKOだけでなくネットコモンズの機能もフルに使って皆さん、運用中
  • 今後の開発方針:
    • リポジトリに求められる機能はほぼ充足
    • たまったコンテンツをどううまく見せるか?
      • API提供/連携機能
      • マルチメディアコンテンツのうまい扱い/ダウンロードしなくてもWEKO内で再生できるような機能
  • 今後に日程:
    • 申請は随時受付中。たくさんきているのですぐにはできないが担当が一生懸命作業中
    • すでに申請して下さった皆さんのために利用/システム講習会も夏にやる
      • ユーザ会なども開いて、欲しい機能のディスカッションもしたい
    • 対象機関の範囲拡大も検討中
      • 安定運用もできるようになってきたので、既構築機関からの乗り換えや、サブジェクトリポジトリの受入をどうするか
  • 会場への問いかけ・・・機能は固まってきた/サービスを広く捉え基盤サービスを考えたい
    • 私立大学が多い。何が必要は積極的に意見交換して方針を決めたい
    • 領域2で作られたものの利活用。標準化された統計データをどのように利活用する?
      • 既に使っているリポジトリとROATの関係をどううまく回す? 新規利用はどんなものが想像できる?
    • 著者版がよく入ってくるようになったらSCPJとの連携はどうする?
      • 費用対効果を吟味しつつ、連携について真剣に考えたい
    • マルチメディアコンテンツ
    • 業績データベース連携
    • 一個ずつの対応は大変
      • ReaD&Researchmapとどんな関係を持ちうる?・・・今後考えたい
    • JAIRO Cloudの機能拡張/サービス展開はコミュニティ内で育んでいきたい。よろしくお願いします

質疑

  • Q. 広島大学さんに。RSPとの連携の話もあったが、国際連携のメリットはどう考えられている?
    • A. 濱さん:DRFは国内の活動をリードしていると自負している。しかし国内だけでなく海外と肩を並べ情報発信することが大きな目標。そのために海外の団体と連携することで国内の認知度を上げたい。海外の事例を取り入れて国内にフィードバックしていきたい。

 

  • Q. 九州大学さんに。著者に登録を促すとのことだが、これは論文を送ることの依頼? メタデータもひっくるめて登録を依頼? 登録率が全論文の30%と言っていたが、いわゆるOA論文の投稿率は日本だと3%かそれ以下。そうすると、達成度かなり高いと思うが、その内訳は?
    • A. 馬場先生:まず教員の登録作業について。今回のスライドにはないが、教員への催促にはメタデータ情報が書いてあって、登録システムへのリンクがある。教員がそこをクリックすると本文ファイルがアップロードできるwebサイトへ誘導する。
  • Q. 論文を調べて、著者にメールして、そのメール内のリンクをクリックすると登録フォーム、と?
    • A. そう。で、もう1つの30%についてだが、九大の教員データベースに登録されている原著論文の数を分母、QIRの数を分子にした割り算。教員データベースの登録論文が実際の論文全体ではないので分母を小さめに見積もっている。共著者の論文の重複がありえるので、論文タイトルで一定基準は重複と判断している。また、必ずしもQIRの登録数がデータベースの登録論文に入っているとは限らないので、分子は多めに見積もっている。とにかく多めに見積もって3割。これは紀要も含んでいる。
  • Q. NIIさんに。これだけ共用リポジトリをやることで、リポジトリ導入期間が増えたということは、リポジトリを使ったOAに興味があるがシステム的なハードルで参入できなかったのか、コストやシステムのハードルが低いと参加したくなったのか。今後の予測等も含め分析があれば。
    • A. 山地先生:OAにどれくらい参加機関に興味があるかは難しい。現状ではそこまで意識は高くない様子。ただ、それは、我々の持って行き方次第でもある。機能提供次第。すくなくとも、DRFをはじめとする皆さんの活動で、私立大学は捕捉率があがっていなかったがやりたい気持ちはくすぶっていた。私立はビジネスを第一に考えなければいけないのでハードルが高かったのだろうが、JAIRO Cloudでどんと増えたのはやりたい気持ちが大きかったのだろう。現状では紀要リポジトリ的でもあるが、今後雑誌論文等も入っていくかは、うまく活用しない手はないと考えている。現状では新規構築機関にサービスを提供しているわけだが、先行大学ともうまく連携し、コミュニティとも連携し、うまいコンテンツを載せる戦略を相談したい。
  • Q. 1つはSCPJに。スライドの中、平成23年度の新機能にNCIDで検索できるようになったとのことだが・・・細かいことだが、NCIDでCATデータを引っ張ってくるとなると、書誌にプリント版とEJ版がある場合はどちらを? そうでないと異版の問題があると思う。
    • A. 真中さん:NCIDによる検索は、今は原始的な方法で、SCPJに登録している雑誌データとの結びつけは人手。そのときに結びついているのは冊子が多い。ただし、電子の書誌があればそちらに結ばないとあまり意味が無い場合もある。電子があればそこは結んでいるが、実際のところ、NACSISのデータに電子版がないこともある。その場合はどうしても冊子に結びついている。
  • Q. 九州大に。開発後は他の大学も使っていいスタンス? 論文数やリポジトリ管理者の作業時間の調査はもう公表された? このシステムのフィールドは増やしたりできる?
    • A. 馬場先生:開発システムは他の大学でも使えるよう、汎用化に向けて作業中。まだやっていないのでわからないが、使えるようにできていると思う。作業時間については、詳しく調べているところ。手元に数字は持っていない。ざっくり言えば九大の場合、1年の登録数が2,000件くらいで、作業時間は・・・確か100万円相当のアルバイト分くらい。時給でわれば・・・1,200円とかそんなもんなので割ってみると・・・後で計算してお伝えします。現在、週単位くらいでもう少し詳しい時間を見ていきたい。システムのフィールドの追加は確かできない。開発は委託したので、その場合は会社と話し合って欲しい。




休憩タイム


Session.7 パネルディスカッション「機関リポジトリの新たなステージに向けて」 

コーディネータ:竹内比呂也先生 (千葉大学附属図書館長)

 

パネリスト:

 

  • 竹内先生:

このパネルディスカッションは・・最初に言い訳から始まりますが、具体的な結論を出すことは期待していない。議論が発散してもいいわけできるようにしておきたい。
お手元のレジュメにもあるが、学術情報流通の動向を視野に今後を議論する。問題提起の場ということである。具体的には・・・というキーワードをかいつまんでいうと、博士論文の登録・公開義務化、電子的学術情報資源の基盤構築の中での機関リポジトリOpen Access Mega Journalも出てきた中でのOA出版と機関リポジトリCSI委託事業終了後のNIIの考え、についてパネリストにご発表いただく。ばらばらだと過剰に分散するので、あとで論点は絞りたい。
では最初に神埼先生から。

  • 神埼先生:

義務化について少し話したい。学位論文は1年以内の公開が学則で規定されている。そうである以上はwebで公開できないことはあるまい、ということで学長に公開表明のお願いをし、昨年11月の会議で公開義務化が決まった。
著者が面倒である、ということだったので、学位申請時に許諾確認書を出してもらった。理由もなしに確認とれないものは博士論文として通っていない。通ったものは必ず公開することになっている。昨年度は途中であったが、許諾確認書は40件出て、さらに先月の部局で「これが出てない=事務がサボっているということ。恥ずかしいですよ?」と言い、どうして駄目なのかもあわせて出すようにということを求めた。公開は大学、組織としてやるもの、として学長は許諾したのだ、として進めている。
学位論文からは離れるが、組織として行なっているプロジェクトについても、そこで発表したものは機関リポジトリ登録を義務化した。載せていいかどうかの判断は図書館がしている。というのが岡山大学の現状。

  • 竹内先生:

では次に逸村先生から.

  • 逸村先生:

今年3月に出た『電子的学術情報資源を中心とする新たな基盤構築に向けた構想』(http://www.nii.ac.jp/content/archive/pdf/content_report_h23.pdf)について話す。電子コレクションの構築をどう考えるか。その推進体制の確立、今後について提案・まとめがなされている文書。
これは日本の機関リポジトリ、日本のという限定はいらないかもしれないが、それとも大きな関係がある。OAに基づく学術雑誌論文の可視化と、私立大学等による日本語文献の搭載・可視化が、CiNiiなどからも探せるようになって学生も勉強に使えるようになって・・・という話もあった。電子的学術情報資源をどう扱い発展していくか。その点に関し、図書館員も先を見つつ議論する必要がある。

  • 竹内先生:

だいたいコーディネータやると時間のコントロールが心配なのですが、今日は時間が余るかも?
次は杉田さんから、OAメガジャーナルについて。

  • 杉田さん:

CSI7周年、本文コンテンツ100万件、おめでとうございます。
CSI開始時には北大でリポジトリ担当をしていて、当時、OA出版を知った。著者が30万円払えばオープン。機関リポジトリ等のGreenに対しこれはGoldと聞いた。当時は論文を出すのに30万円も払う人がいるか、そんな馬鹿げたことが広まるものかと思ったが、今は成功しつつあることにびっくりしている。
当初は専門出版社のみだったが今や普通の出版社も参入している。それから、PLoS ONEという今「メガジャーナル」と呼ばれている雑誌や、安めの投稿料と軽めの査読で年間14,000の論文を出していた、そんなものもある。他にもいろんなバリエーションが出つつある。
こんな状況で、Gold roadが発展する中で、私たちは機関リポジトリを今後もやる必要があるのか? 私はもちろん、有料モデルがある限り機関リポジトリのモデルはなくならないと考えている。ただ、Goldの動きは無視できるものではない。大学/図書館はどうこれをウォッチするのか、どう対応するのか、しなくていいのか、考える必要がある。
OA出版は従来、図書館が資料費で学術情報を支えていたところが、研究費から出るようになる。お金の流れが一本増えた。

  • 竹内先生:

最後にCSI後の方針を、尾城さんから。

  • 尾城さん:

これから考えなければいけないこと、やらないといけないことをいくつかあげたい。課題はたくさんあるが、5点ほどにまとめた。
まず定着。これまでの10年間の活動を踏まえ、定着しないといけない。それは図書館事業としてではなく、大学の戦略的な事業としての定着が必要。そもそも「機関」リポジトリ、「図書館」リポジトリではない。大学の事業として位置づける努力がいる。そのためには研究者や大学の執行部、経営層への働きかけは必要。それに当然、ふだんの人の育成や確保も欠かせない。
2つめ。上位レイヤーという話。蓄積してきた機関リポジトリコンテンツは100万件ある。その上位レイヤーのサービスとして、付加価値のあるサービスを展開したい。苦労して100万件のコンテンツを蓄えたのだからちゃんと果実を収穫したい。
3点目。効果の可視化。大学の教育・研究、社会への貢献にどれくらい機関リポジトリが貢献しているか。なんらかの数字で示せれば。なんらかの見える形で効果を世の中に示していく必要がある。
次に拡張。これはいろんな方向性があるが、セルフアーカイブ/電子出版/学習支援のための電子教材基盤。
最後に連携力。図書館とNIIの連携によって課題への取り組みを続ける必要がある。

NIIの第3期は今年度で終了、一区切りつくが、NIIとしても機関リポジトリ支援は今後も大きな事業の柱と考えている。どう支援するか、その方向性をいま探っているところ。スライドに示したこともわたし個人の考え。
日常的なコンテンツ収集はもう図書館の定常業務にしていっていいだろう。
独自構築が困難な機関にはJAIRO Cloudを活用して欲しい。
機関リポジトリを下支えする基盤、具体的にはSCPJやROATのような取組は大学図書館とNIIの連携で継続したい。
実験プロジェクト・研究プロジェクトも組み込んでいく。特にこれから考えなければいけないこととして効果の可視化をあげたが、そのことや上位レイヤーでの付加価値サービスの提供には研究・実験プロジェクトがいる。
ほかにコミュニティ活動の支援、DRFや地域のリポジトリ活動は貴重な財産と考えている。DRFには一部、否定的な意見もあるが、個人的にはこのような面白いコミュニティは絶対になくしてはならないと考えている。従来の図書館協会等とまったく異なるコミュニティ。そういった多様性を保つことは今後の大学図書館の発展に絶対に必要。なんとか育てて行きたい。

まとめると、平成22年10月に国公私大学図書館協力委員会とNIIが交わした協定書の中に機関リポジトリの強化も入っている。協定書の下の委員会の中に機関リポジトリに関する委員会、あるいは本部機能をおいて、そこを中心にNIIと大学図書館でリソースをもちよって活動していきたいと思っている。


登録義務化について
  • 竹内先生:

ここまでの話を整理したい。逸村先生はうまく逃げて中身がなかったが(笑)
神崎先生と杉田さんのお話はオープンアクセス、コンテンツの公開の具体方策に関わってくる。義務化=強制公開。OAMJ=出版自体がOA化。そのときリポジトリがいるのかということだが、OAMJ自体には問題はないのか?
まず義務化について。神崎先生のお話では学位論文と学内資金を得たもの限定のようだが、その他の義務化はどう考えている?

  • 神崎先生:

私は理系なので理系によるが、例えば知財。むかしは自分に属したが今は大学に属し報告の義務がある。雑誌投稿も大学のお金でやっているので義務化は当然と思うが、マンパワーと"機関"のリポジトリ、ということから考えると全部いるか。できることから、ということなら大学がアピールできること。学位論文はやっていること、人材のアピールだし、大学でどこかとどこかが融合してやっていることも、当然やらなければいけないことと言えば上位層も納得する。

  • 竹内先生:

上位を取り込む戦略としても有効なのだと思う。
逸村先生は、義務化をどうお考え?

  • 逸村先生:

経営層の理解があれば当然だろう。横並び意識もあると思う。
一方、学位論文も雑誌論文も、テニュアを持たない、あるいは持っていても動きたい研究者に、リポジトリに載せたものがうまくキャリアに活きるとなれば、義務化に下から賛同の声も上がってきうるのでは。

  • 竹内先生:

私の理解ではこれまで日本の機関リポジトリコミュニティは必ずしも義務化に積極的でなかったようだが、杉田さんのお考えは?

  • 杉田さん:

私自身はあまり関心がない。機関リポジトリの仕事の一番面白いところは先生のところに出向いて話を聞き出すところ。結果として論文集めはするが、先生とのインタラクションが面白い。
義務化は海外でもわーわー言われているが、制度を作っても罰則なしで本当に動くのか。平成18年に一緒に働いていた人がオーストラリアのクイーンズランド工科大学に行って聞いたところ、「制度は作ったが草の根のアドヴォカシーもやっている」と言っていた。なら義務化なんてあってもなくても。

  • 竹内先生:尾城さんは?
  • 尾城さん:

義務化にも色んなレベルがある。それこそ罰則を伴う本当の義務化から、もっとゆるい、推進のレベルまで。義務化について考える大学・図書館はどのレベルが自分にとってふさわしいのか考えたほうがいい。
義務化は10年くらい前、機関リポジトリ当初から話題になっていて、当時は「飴と鞭」という話で盛り上がっていたが。登録を促すには飴と鞭を適度に混ぜるのが一番有効だろう。それは今でも変わらない。飴=効果、有効性、メリットの地道なアピール。それにある程度の義務的な要素を交えることが、王道のような気はする。

  • 竹内先生:

最初の神崎先生のお話は学位論文と大学のfundingしたもの限定で全部の義務化ではないことは確認しておきたい。
その上で、4名のお考えは多種多様で、こんなにバラエティに富むとは思っていなかった。
このトピック面白くて皆さん色んなお考えをお持ちと思うので、フロアからも、ややジェネラルな視点から、義務化についてご発言いただきたい。

  • フロア:

義務化に関してはJISCのレポートを読んだことがあるが、杉田さんのおっしゃるとおり、実効性のある論文投稿に結びついていない。有効性は疑問と言えそう。
一方で、インフォーマルな打ち合わせの場で少し言っていたのだが、日本で個々の大学で論文を増やすためのアドヴォカシーとは別に、目に見える形での行政や研究者集団のOAと運動は日本にはない。内側からの個別努力と、外側からの雰囲気づくり、行政や研究者イニシアティブ、その外側の方では義務化の話も当然ありえる。他に大学執行部とも義務化について議論することは個別努力を盛り上げる雰囲気作りになっていく。義務化は議論の対象としてやっていくべきではないか。

  • 竹内先生:どなたかパネリストからリアクションを。
  • 神崎先生:

当然、図書館員が人数少ない中で研究者のところに行くのもいいだろうが、研究者は消極的。忙しいので自分で論文を書いて好きなことをしていたい。私も図書館長になってはじめてリポジトリの理屈がわかった。学長等も当然わかっていない。誰がそこの間に立つの、となると図書館の事務部長等になるのだろうが、図書館のことをわかっている教員も声をあげないといけない。ユーザとも仲介できるような、コーディネーションのポジションが大事。図書館、研究者、管理者がフレンドリーに会話できるといいが、皆さん忙しいので・・・どこかで吸収して言っていかないといけない。

  • フロア:

義務化と言う話から、そういえばうちは義務化ということを考えていないな、と思った。
うちはリポジトリはやるもんだよね、と思って「やるから」と。ただ、研究者には負担はかけない、機関内刊行の雑誌はすべて載せます、いいですよね、でやってきた。誰も義務化は意識していない。
ただ、過去に遡って許諾をとったときに「ここは削って」とかがあったくらい。これでいいのかな?

  • 竹内先生:

機関リポジトリを推進する立場と論文生産者がお互いをどう理解しているかがポイントなのではないか。そこに乖離があるとトップダウンで無理やり、というようなことになる。お互いが「そういうものだ」と理解していれば適切なコミュニケーションによって論文蓄積が進んでいく。そういうさまざまがあって日本はコンテンツ登録がうまく進んだのかもしれない。


オープンアクセス雑誌との関係
  • 竹内先生:

次の論点へ。オープンアクセスジャーナルの話。オープンアクセスジャーナルは機関リポジトリとどういう関係か。杉田さんの問題提起はOAJが増える中で機関リポジトリはいるのか、ということ。パネリストからご意見いただきたい。まず逸村先生。今後の基盤構築の中でOA雑誌と機関リポジトリはどう考える?

  • 逸村先生:

報告書の中ではライセンシング、契約に関して述べている。JUSTICEとの連携で合理的な契約を結んでいくことがいいだろうと書かれている。出版社と大学図書館の共同事業をJUSTICEでやることに・・・

  • 竹内先生:

論点を戻すと、OA雑誌が発展したときに機関リポジトリはいるの? じゃあ尾城さん。

  • 尾城さん:

冷静に考えてみて、いくらOA雑誌が急速に増えても、10年後にすべての雑誌がOA雑誌になるとは考えにくい。購読料モデルの雑誌もかなりの数、残るだろう。そうなると機関リポジトリの役割も残るだろうと思っている。OA雑誌、特にOAMJは、基本的に査読を簡素化してコストを下げて著者の支払い料を下げ、できるだけ多くの論文を掲載しようというもの。ということは、ひょっとすると、機関リポジトリもOAMJと近いこともできるのではないか。その辺はどう、杉田さん?

  • 杉田さん:

JAIROをOAMJと言ってしまえばいいのかもしれないが、向こうは軽いとはいえ査読をしている。リポジトリが似たものになろうとするなら査読をしないといけない。今のところリポジトリは出版社サイドで一定の評価を得たものを載せる、ということになっているので、そこで大きく一歩あるなあ、と思う。

  • 逸村先生:

で、先ほどの話に戻って、機関リポジトリがOAMJの中で何をなすべきか。標準化や著者ID等々について、大学は著者の他の出版状況のデータも持っている。ResearcherID等に載せるだけでなく大学の中でも活動は必要。それはメタデータ標準化にもなるし、NIIに期待される部分でもあろう。

  • 竹内先生:

神崎先生に、研究者の立場からお聞きしたい。同じOAでもOAMJと機関リポジトリでは基本スタンスが大きく違う。どうお考えか?

  • 神崎先生:

あまり論文を書いていない立場では難しいが・・・身近にもPLoS BiologyやPLoS ONEに書いて「自分はインパクトが高い」と言っているのは若手が多い。彼らはなんらかの数字を残さないといけないので、本当に研究をしているのか疑問。新しいOpen Journalがいいと思う人もいれば、伝統誌や国内の学会誌でやっている、ユニークな研究者もいる。それを世界に発信するには機関リポジトリがいるのではないか。

  • 竹内先生:

OAMJと機関リポジトリ、似ているという話もあったが、大きな違いとして、OAMJは著者が支払う。機関リポジトリは機関が負担するのであって、手間はあってもお金はかかっていない。そこも違うポイントとしてあると思う。私は著者支払いのOAには危惧を持っている。どなたかパネリストで発言はない?

  • 逸村先生:

危惧って?

  • 竹内先生:

図書館は雑誌価格高騰にあえいでいるが、横の連携、コンソーシアムでかなり強い交渉力を得た。出版社の立場からすれば、publish or perishの中にいる著者の方が御し易いのではないか。いくらでも投稿料を払ってしまう。その点に危惧を抱いている、果たして持続可能なものになるのか。

  • 逸村先生:

OAMJが普及すると・・・という議論はSPARC Japanの2月のセミナーで、当時PLoS ONE、今はPeerJの大立者のPeter Binfieldさんが来て議論になった。当時、OAMJが増えると価格は下がるか上がるか、という点の議論があった。それとも絡むと思う。どう言ったらいいかわからないが、情報の共有化をいかにするか、だと思う。OAに携わり、機関リポジトリに携わり、研究者とかかわるグループとしてどう情報を共有して求められたら出せるか。

  • 杉田さん:

答えにならないと思うが、機関リポジトリを始めた頃、盛んに言っていたのは20世紀後半からのビッグサイエンス⇒流通すべき論文が増えて・・・という流れが終わっていないのだろうと思う。相変わらず流通量は増え続けている。その受け皿となるメディアの1つとして生まれたのがOA誌、OAMJ。それが生まれるのは資料費からは搾り取れないから、資料費を原資に新たなメディアは作れないから。発表される論文数が増える限りは止まらないのではないか。Publish or perishを改めない限り、亜流は今後も増えるのではないか。

  • 竹内先生:

確かに図書館はできあがったものの流通・利用にいて、研究コミュニティにいるわけではないので。突き詰めると研究・成果がどれだけ増えるかとも関わるのだろうが。
一応、まとめてしまうと、増え続けるであろう研究成果をコミュニケーションにのせる仕組みとしてOAMJも機関リポジトリも両立して残っていく、と。
この問題についてフロアから。

  • フロア:

利用する研究者の立場としてコメントしたい。OA雑誌とリポジトリ・・・研究者の立場としてはリポジトリは「なんでパブリッシュされたものしか載せないの」と。できれば生データや削る前のものを見たい。自機関ではテクニカルレポートにパブリッシュ前のものも載せていた。そういうものを載せるのもリポジトリの役割では。OA雑誌とは全く別個の機能になりうる。
もう1つ、OA雑誌と有料雑誌があって、後者が本当に必要なら研究者は自腹を切る。

  • 竹内先生:

OAに関しちょっと論点が違うのでは、という利用者の立場の話と思うが、リポジトリにはリポジトリなりの付加価値の付け方がある、というのは重要と思う。OAのためのリポジトリか、学内にあって従来流通していなかったものを公開するためのリポジトリか。私はどちらかといえば学内で生産された非流通コンテンツに注力しては派だったのだが、我が国全体の学術コミュニケーションの中での基盤構築と機関リポジトリの位置づけとも関わっていると思う。


学術情報基盤整備とリポジトリ
  • 竹内先生:

と、いうところでそこに話を戻したい。逸村先生の話とも尾城さんのお話とも関わる。機関リポジトリの上位レイヤー、上位の付加価値サービスとは、という話があった。リポジトリには独自のコンテンツがあると考えると、その上位の付加価値群とは? なにが求められている? 尾城さん、具体的なお考えがあれば。

  • 尾城さん:

安達先生のお話にもあったと思うが、分野別ポータルとか色々考えられる。それはいったいどういうサービスが求められているかによる。
あとは、7年間の委託事業で、研究開発プロジェクトの中で思いつくことはだいたいやっている気もする。それをきちんと再評価して、本当に使えるものは何か考えて、きちんとしたサービスにするための投資はありうる。どういうことをやっていったらいいかは皆さんで考えるのがいい。

  • 竹内先生:

では考えて下さい、杉田さん。研究者と熱心に話してきたことを踏まえて。

  • 杉田さん:

まだ付加価値を考える段階じゃないと思う。100万件といっても初期構築の紀要がどっさり入っただけ。日々の論文を着実に入れることに力を注ぐべきで、「こういうことをその上に〜」にはあまり興味がない。初期構築が終わったところ。このあと、目の前の先生の今の論文をどうキャッチするかが。まずコンテンツと思う。コンテンツが全部集まったところで最終的に欲しいものの話もできると思うが、まだ弾が少なすぎる。

  • 尾城さん:

杉田さんのおっしゃることは正論と思うが、地道な活動を続けるには学内や国の理解がいる。コストが必要で予算もいる。そのためにはある程度の成果を常に見せていかないといけない。活動資金を得られない。両方同時にやっていかないといけないと思う。

  • 神埼先生:

岡山大学のダウンロードベスト10を見ていた。1位は医学部の先生で、症例紹介なので医学生自身が見たり講義に使われているのだろう。2位はヒヤリハットについての論文で教材にも使われているよう。学習・教育支援の話になるが、教員が書くものの中にはマニュアル的なものもあり再利用されるし、教科書でなくても論文が教育に使われてダウンロードされることも。そういう論文を教育担当理事が表彰するとかもありえるだろう。そういうものを書く先生は教育に意義を見出していたりもする。機関リポジトリをそのように研究・教育面からバックアップ、というのもあると思う。

  • 逸村先生:

機関リポジトリ7年の活動の中で色んな取り組みがあった。CSIの報告書に落ちているものも多い。安達先生の基調講演にも色々入っていて、過去を振りかえることも重要。一方で、中小の私立大学の方からは、機関リポジトリをたちあげて何に使えたのか、発信して欲しい。「機関リポジトリはこんな役に立つ」という提言を期待したい。

  • 竹内先生:

ほぼ時間なのでこれでディスカッションを終了したい。例のごとく極めて雑駁な、あっち行ったりこっち行ったりではあったが、今後の機関リポジトリを考える極めて重要な論点は感じることができたのでは、と思う。
確か尾城さんが、これからを考えるのは皆さん自身とおっしゃっていた。今日のディスカッションはそのためのネタとお考えいただいて、それぞれの機関が自身にあったことをお考えいただいて、それを図書館リポジトリではなく真に機関のリポジトリとする方向で活動していただきたい。


閉会挨拶(尾城さん)

2日間、さまざまな成果をご発表いただき、それに関し議論いただいてありがとうございます。
今回も大変有意義な報告交流会になったのでは、と思います。

機関リポジトリはこの10年、大学図書館にとっても、NIIにとっても最もホットなトピックで、大きな成果をあげてきた。
この事業において特筆すべきは、これが国の政策・施策ではなく、それを先取りする形で図書館の皆さんが主体的に進め、それをNIIが下支えしてきたこと。
こうした機関リポジトリのこの1〜2年の様子を大局的に見ると、皆さんくたびれてきたかな、と思う(笑)
階段で言えば踊り場で腰を落として一休みしている時期という印象。
これをどう、次のステージに引き上げていくかが、図書館にとってもNIIにとっても大きな課題。
その課題を乗り越えて次のフェーズに押し上げていく、推し進めるためには、若い人達の力がどうしても必要。
今日、会場を見渡すと、この10年で機関リポジトリを担っている人の顔ぶれもだいぶ様変わりした。世代交代は着実に進んでいる。わたし含め何人か、出がらしのように10年続けている人もいるが。
そういった新しい世代が十分に力を発揮できる環境を作ることが、これまで引っ張ってきた我々の役割と思う。

パネルディスカッションでも少し話題にしたが、第3期の終了で委託事業は一区切りつくことになる。しかし機関リポジトリの支援は変わらず重要な柱の1つ。その支援の形として、どのような活動をするのが適切か、よく考えて、皆さんの意見にも耳を傾けながら次につなげたい。
いずれにしてもNIIの事業は大学図書館の理解がなければ成り立たない。改めて皆さんのご協力をお願いしたい。

最後に、いろいろな成果の発表をいただいたみなさま、会の進行にご協力いただいた皆様、パネリストの皆様に感謝を申し上げて閉会挨拶としいと思います。ありがとうございました。



大ボリュームなので全体に関して言及するのは大変ですが・・・(汗)


インフラ整備系のお話はどれも面白くてたまりませんね!
時間切れで聞けなかったのですが気になった点として、

  • 九大の件・・・著者版でなく出版者版登録OKのポリシーのところは、著者にファイルを挙げてもらうのではなく図書館側でファイルまで用意して許諾だけもらうほうが登録増えるのでは?
    • Twitterで何人かの方から「うちはそうしている」とのリプライをいただきました
    • その後馬場先生のところにうかがってお話してきたのですが、今のところはポリシーチェックの自動化とデータベース検索のところはまだ結んでいないのと、データベース検索も今はScopus対応のみとのことでした。そうなるとポリシーを探すべき対象がSHERPA/RoMEOになるので、SCPJとはまた違った工夫がいるのかな、と。
    • 検索対象DBにCiNiiが入って、出版者版登録OKポリシーをSCPJから自動で取ってこれるようになると、和雑誌掲載論文についてはJ-STAGEなりNII-ELSからコンテンツ取得⇒著者許諾⇒公開という流れになって登録数にブーストかけられそうな気がします
  • SCPJの件・・・これ、スタッフには大学院生でもなれるんですかね??
    • 超なりたいです
  • JAIRO Cloudについて
    • 発表でそこまで言及なかったのですが、WEKOは著作権ポリシーも明示できる(各論文メタデータクリエイティブ・コモンズ・ライセンスが表示可能)な優れ物です
    • ところで今はまだ直接(ブラウザ内で)PDFファイル開けないようなのですが、Googleのクローリングは問題なくっていますかね?


ディスカッションについては帰りにたまたま竹内先生と一緒になったので、乗り換えで電車が別れるまでお話していたのですが・・・やあ、こちらも本当、面白い。
今回のCSI全体を通して、一方にOA/セルフ・アーカイブの話があり、他方で中小規模大学等での設置増や多様なコンテンツの話があり、という二大路線の存在が(それは今回に限らずリポジトリに関してずっとある二大路線ですが)いつも以上に強く感じられた、ような。
それはやはり大規模大学に限らずリポジトリが多く存在し、コンテンツも多様・・・という状況が実現してきたが故のこと、という気もします。
この先、JAIRO Cloudには申請があってまだ公開されていないものが56件はあるそうで(70-14)、さらに申請が伸びていって400機関(つまり日本の大学の過半数にはリポジトリがある)という状況ができあがるとどうなるのか・・・
(これは会議本体中ではないですが)「(機関リポジトリが)最初は100件できれば上出来といっていた」というようなお話を聞くに、400件というのも非常に現実味のある数字なので、この先もまだまだこのあたりに関しては注目していきたいところです・・・・・・

・・・・・・なのでもっと研究している学生さんとか来てもいいと思うよ!(去年は院生がけっこういたのに今年学生としてはぼっち気味だったので)(もっとも学生と言っても既に若手の図書館員さんよりかなり上になってきているのですが・・・)