かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「アカデミック・リンクは何をめざしているか:高等教育における図書館を基盤とした新たな学習環境の構築に向けて」(第11回情報メディア学会研究大会参加記録)


今年ついにオープンし、多くの大学/図書館関係者の注目の的となっている千葉大学アカデミック・リンク。

アカデミック・リンクは,千葉大学において「生涯学び続ける基礎的な能力」「知識活用能力」を持つ『考える学生』を育成するために,附属図書館,総合メディア基盤センター,普遍教育センターが協力して立ち上げる,教育・学習のための新しいコンセプトです。これは,平成20年12月の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」において提示された,知識基盤社会,学習社会における市民の育成,高等教育のグローバル化の中での質の維持・向上,職業人としての基礎能力、創造的人材の育成といった,大学に向けられた社会的要請に対する大学からの一つの回答でもあります。

アカデミック・リンクとは?|知る|千葉大学アカデミック・リンク・センター


皆さんもう現地でご覧になったでしょうか?
・・・僕はまだ行けていませんorz*1
そんなアカデミック・リンクに、もともと興味のあった方はさらに興味が湧き、興味がなかった方でも大学関係者なら誰しも注目せずにはいられなくなるであろう、千葉大学附属図書館長/アカデミック・リンク・センター長の竹内先生の講演「アカデミック・リンクは何をめざしているか:高等教育における図書館を基盤とした新たな学習環境の構築に向けて」が、7/7の第11回情報メディア学会研究大会で行われました!

自分もいずれ行く日に向けてテンションを上げて臨むべく、参加してきました。
午後に行われたパネルディスカッションとも見事に接続していて、エントリ末尾にあるとおり竹内先生が午後、いらっしゃれなかったことがつくづく残念でした。


日曜日はダウンしていたこともあってアップロードまで日が開いてしまいましたが、以下、例によって当日のメモです。
min2-flyが聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲の内容であり、ご利用の際はその点、ご注意願います。
誤字脱字、事実誤認等、お気づきの点があればコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なお、午後のパネルディスカッションの記録については別エントリでのアップを予定しております。




基調講演「アカデミック・リンクは何をめざしているか:高等教育における図書館を基盤とした新たな学習環境の構築に向けて」(竹内比呂也先生、千葉大学附属図書館長/アカデミック・リンク・センター長/文学部教授)

    • 各所で話す機会をいただいていて、「この間も聞いた」という話もあるかも。広い心でうけとめて。
大学と図書館の歴史的関係
  • 中世の大学におけるテキストの配布
    • ステーショナリー」が学習のための教科書(オーセンティックなテキスト)を供給
    • 大学教員が認めたテキストを写本原稿として提供する。後に大学出版会へとつながる流れ
  • グーテンベルク革命
    • 実は大学は衰退した?・・・face to faceでなくても知識を入手する機会の実現
    • 共同組合としての大学(学生・教員の共同体)が資料を求めて歩き彷徨う必要がなくなる/定住できる環境の実現
  • ドイツにおける大学改革(フンボルト理念)
    • 文献購読演習+卒業論文の重視へ
    • 研究と教育の一体化
    • 大学の設立
      • 初期においては大学図書館による教科書貸与が行われていた(北大の資料室に展示あり)
      • 東大でも洋書のリユース・教科書としての使用の記録
    • 当時の授業スタイル・・・「筆記主義」
      • 教師が話したことを学生は写す
      • 新渡戸稲造のノート・・・まず下書き⇒清書まで
    • 京都帝国大学では原書購読、演習、卒論重視
      • 東京帝大との高文試験合格者数競争に敗けて方針転換
    • この時期の帝国大学図書館
      • 東京帝国大学・・・明治21年で15万冊の蔵書(教員は貸出もあり、学生は館内利用のみ)
        • 永嶺『東大生はどんな本を読んできたか』などが参考に
        • 図書館は学生であふれるが勉強場所? 参考図書は必ずしも利用されず・・・
      • 京都帝国大学・・・教員だけでなく学生にも貸出実施/参考図書も使われる/明治末にはレファレンスサービスも!
    • 大学令」(大正8年=1919年)
      • 図書館整備を大学設置の条件としていた(法律には明示なし/当時の書類を調べるとかなりの量の蔵書がないと認めなかった)
      • 私立大学の多くは開学時に図書整備に苦慮。ほとんどが開学時点で十分な整備ができず
      • 高価な洋書を一定数、短期間に揃えるのは困難だった
      • 一方で大正時代は大学図書館には見るべき動きなし?
    • 大きく変化するのは・・・新制大学設置
      • GHQによる教育改革・・・1948年に一部私大、1949年に国立大学設置法(図書館設置義務化)で国立大学発足
      • 法の内実・・・南原繁らの努力で教養主義排除/教育機会均等化の方向性で確立=旧制高校のエリート主義の排除
    • 戦後新制大学では・・・ICU慶應義塾でレファレンス・ルーム設置
      • 戦後の大学図書館発展を考える上で大きなこと
      • 学習支援リソースとして使われるようになった
      • 東大も1960年代の岸本改革でレファレンス・ルーム設置
      • アメリカ型の大学図書館サービスを日本の大学に導入すること
    • 東大「岸本改革」
      • 岸本英夫図書館長による東京大学附属図書館改革
      • 改革の内容:
        • 1. 全学総合目録編成
        • 2. 附属図書館体制の確立
        • 3. 指定書制度の強化
        • 4. 中央図書館の改善(レファレンスルーム設置、閲覧席拡張、院生用キャレル設置、地下書庫設置)
    • 岸本改革は成功したのか?
      • 大学図書館の近代化の観点で、レファレンスの充実を今日、どう評価するか?・・・難しい
        • 図書館内としては評価すべき/教育・学習に与えるインパクトはあったのか?
      • 逆の面での教訓・・・
        • 例えば指定書強化は教育と一体という形では動いていなかった。文部省が各大学に予算措置するもある時期で打ち止め/残滓・残骸が残っているような状況
      • レファレンスについては一定の影響
        • レファレンス職員配置など、定着に影響した⇔直接的な影響のほどはわからない
        • 「東大の改革」という印象?
    • その後の大学の状況
      • 1970年代以降、文化系を中心に私大数増加
      • 文系教育が私学に重点を移したことで、図書館整備は軽視された?
      • 私学における学生運動も何も変えなかった
      • 今日では私学の図書館は委託が進む・・・
    • 一方で・・・1970年代以降、文部省の答申で大学図書館が出てくるように
      • 1973年の第3次答申以降、研究支援の流れ
      • 1980年審議会答申はじめ色々出ている
      • それらの政策文書間の連続性には疑問?
        • 言葉の概念自体、文書ごとに違ったり/言葉は同じでも同じことは議論されていない
    • 教育・学習に関する言及は2010.12の「審議のまとめ」までほとんど出てこない
高等教育政策における大学図書館
  • 日本の高等教育・・・アメリカの強い影響/事前・事後学習を前提とする単位制度
    • それを支える図書館の役割は論じられるべき/言及があってしかるべき
    • しかし学習・教育サイドでそのような言及は少ない
  • 文部省で大学教育を管轄するところと大学図書館を管轄するところが違うことの影響?
    • 1998「21世紀の大学像と今後の改革方策について」のなかでは大学図書館へも言及
      • 閲覧席数や開館時間など、施設・設備利用が中心
  • 1990年代になってようやく教育改革の気運高まりとともに図書館への関心が高まる
    • 2000年代、教育GPで図書館を取り上げたものが脚光を浴びる・・・図書館関係者だけでなく教育関係者にも知られるように
    • ex: ラーニング・コモンズ
  • 大学教育における考え方の変化
    • 中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」(2008)
      • 学士力:課題解決能力重視
      • 単位制度の実質化:事前・事後学習重視
      • 教育方法の改善・・・アクティブ・ラーニング
      • 初年次教育の配慮
  • アクティブ・ラーニング
    • 今や猫も杓子も・・・
    • 知識習得だけでなく知識活用能力を習得する(溝上)
      • ペアであることが重要。知識活用能力だけでもいけない
      • 後者にだけ目が行き過ぎてもいけない。知識の習得があってこそ知識活用能力はいきる
    • 学習・授業スタイルも変化
      • 出席・聴講のみ⇒質問・与えられた課題の実施⇒自ら課題を発見、解決
      • 今の日本/アカデミック・リンクを見ていると、上の2ステップ目まではできているが、第3段階はよくわからない
      • 多くの図書館でアクティブ・ラーニングのためのスペースは賑わっている。しかしだから学生はアクティブ・ラーニングをしていると考えるのは早い
  • 「学士力」
    • 専攻分野の基礎知識の体系的理解に加え・・・
    • 汎用的技術(コミュニケーション・スキルほか・・・)
    • 態度:リーダーシップ、倫理、社会的責任
    • =総合的な知識、技能、態度の活用と創造的思考力
      • 「はあ。わたしは学士力ないなあ」(竹内先生)
    • このラインはずっと引き継がれている
      • 例:2011の中教審の審議まとめ「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ」や2012.6の「大学改革実行プラン」
      • 大学の変化への期待+1行だけだけれども大学図書館の機能強化に言及(実行プラン)
  • 一方で・・・知識を得るという意味で、大学の役割は?
    • 知識の入手先としては大学・書店の重要性は同時並行的に低下(吉見俊哉『大学とは何か』)
    • 「その両方に関わっている大学図書館はどうなるんだろうと愕然とする」(竹内先生)
      • 「いずれ使われるだろう」という前提の下の記録メディアの蓄積の重要性が相対的に下がる
    • 一方で大学図書館の持つ、知識の蓄積機能を廃れさせてよいのか?
  • 学生にとってGoogleで見えないものは存在しない?
    • 何かを探すときに使うのはGoogle
    • 電子化されていないコンテンツは存在しないのか?? そんなことはないはず/電子化されていない重要なものもあるはず
      • 著作権の切れた世界の出版物でGoogleが電子化したのは4分の1程度
  • その中でコンテンツ提供環境をどう変えていくのか?
    • なにもしなくていい、という人はこの学会では少数派と思う
    • そこで千葉大は何を考えたか・・・?
    • 「長い前置きですいません」(笑)
千葉大学アカデミック・リンク
  • 千葉大学におけるこれまでのとりくみ
    • 突然、アカデミック・リンクと言い出したわけではない
    • リエゾン・ライブラリアン・プロジェクト
      • 授業資料ナビ(パスファインダー
        • 図書館資料と授業をいかに結びつけるか
        • 図書館が選んだトピックでパスファインダーを作るのではなく、ある授業をとっている学生に有益な資料群を教員・図書館員で連携して作る
    • ポッドキャスティング
    • 機関リポジトリ:CURATOR
      • 図書館員が常に教員と接する機会を持つ
    • これらの成果は絶大・・・「教員から見た図書館員が匿名ではなくなった」
      • リエゾン・ライブラリアンとつきあいのある教員はリクエストをその図書館員を介して伝えてくれるように
      • 自分の担当の図書館員、といった印象を持つようになる/リエゾン・ライブラリアンを通したプロモーションも成果あり
    • 授業を切り口に図書館員と教員が向き合うモデルは成り立ちうる、ということがわかった
      • この考えがアカデミック・リンクの礎に
    • 総合メディアホール(仮称)構想
      • 1998当時から構想は出ていた/図書館基盤とネットワーク基盤の融合
      • 当時、ネットワーク基盤は不十分/図書館もコンテンツを流すにはネットワークセンターの協力が必要だった
      • 今日ではその側面は大きく形を変えた
  • アカデミック・リンクによる千葉大学の教育改革・・・「大風呂敷」
    • 目的:「考える学生の創造」
    • 生涯学び続けることができる/知識基盤社会を生き抜ける学生
    • 図書館内部でいくらやっても、教育サイドにアピールしなければなにも動かないという意識から大風呂敷を広げる
      • 「風呂敷は広げ慣れると大きなものも小さく見えるようになります」
    • アクティブ・ラーニング・スペース=空間、十分なコンテンツの提供、コンテンツを使って学習を進めるための人的リソース
      • 3つの有機的な融合がアカデミックの基本
      • その場として図書館をベースにするのがもっともふさわしいと考えた
    • 建物構成の説明:(min2-flyメモ:ここはスライドを参照しないと説明困難)
      • 建物に手を入れるきっかけは旧館の耐震改修/耐震改修だけで済ませず新しいものを作る・・・6000平米増築
      • アカデミック・リンクのコンセプトと新たな学習環境構築が認められて
      • 図書館の一角に書店を入れることも計画。日本の大学では初?
        • 厚生施設工事の関係。今年秋には書店が図書館へ
  • 「コンテンツ」を活用する新しい学習環境・・・その特徴は?
    • 特徴1:プレゼンテーションスペース
      • 外部とのしきりをあけて外とつながることができる
      • ふらっと入ってはふらっと出ることができる場で、色々な人が様々なことを話す
      • 見る/見られること。相互に刺激を受ける、知的な刺激を受ける
      • 「知的刺激満載の場」(読売新聞報道より)
        • 何かに気付いた学生がコンテンツを使ってさらなる学びを得る仕掛け
    • 特徴2:ブックツリーという「見せる」書架
      • 展示的書棚。NDCとは異なる排架
      • RFIDで手にとった回数のカウントも
    • 特徴3:ラーニング・コモンズ機能
      • これは多くの大学で既に取り入れられていること
      • 可動式の設備
      • よく使われる。時間帯によっては完全に満員
      • 今の学生はゆったり座るだろうかと思ったら、小さい机にいっぱい学生が座って机が余るように
        • 50脚椅子を追加
    • 特徴4:多様な学習環境の整備
      • 自由に使ってもらうことをポイントに
    • 特徴5:学習支援・コンテンツ活用の促進
      • 授業資料ナビも継続
      • 「1210あかりんアワー」(アカリン=アカデミック・リンク。消える主人公の方ではないよ!(min2-fly注))
        • 教員が自らの研究を語る。その際、関連著作物を紹介してもらう。そのコーナーは毎回設置+ずっと残す
        • 話を聞いて面白いと思ったら、教員の紹介した文献をすぐ手に取れる
      • 様々な刺激を受けられるようにする+刺激を受けたらすぐコンテンツが手に取れる
    • 人的支援・・・分野別の大学院生+図書館員、教員のオフィスアワー
      • 一つの空間に教員、図書館員、大学院生がいて、いつでも質問を受けることを見せる
    • 特徴の整理:
      • 学生に対し知的な刺激はいっぱい・・・授業/セミナーもその1つ
      • 面白そうなことに気付いた学生には多様なコンテンツを提供する。紙もあるが電子も。学生がほしい形で入手できるように
      • 学習については、スキルが十分にない学生にはオフィスアワーや情報資源の使い方のサポート、学生による学習支援などのハイブリッドな人的支援
  • アカデミック・リンク・センター・・・図書館と別組織として立ち上げ
    • 図書館は国立大学において教育研究施設ではない。教育にものがいいにくい。そこで別に立ち上げ
    • 図書館系、情報系などの教員が兼務として研究開発部門を持ち、図書館員、特任教員がアクティブラーニング推進部門を持つ
    • 7つのプロジェクトによってアカデミック・リンクの目指す学習環境構築へ
  • プロジェクト紹介・・・「隠れた資源を「みせる」」
    • オンライン・クラスルームプロジェクト
      • 授業そのものの電子化
    • レガシー・コンテンツ再生プロジェクト
      • 価値ある資料の電子化/再生
    • デジタル・コースパックプロジェクト
      • 教材の電子化
    • 学生が学習時に使いたいスタイルでいかに提供するか?
      • 電子を望むなら電子、図書が良ければ図書、望むならプリントオンデマンドも
      • プリントオンデマンド機械は図書館に入る書店に置くことを計画
      • 紙が欲しい学生には極めて有効?
    • 例:『児童文学事典』の電子化
      • 出版社として採算があわずもう出せないものを電子化・PODで新品も作れる
    • デジタル・コースパック
      • 既にある著作物を権利処理して使えるようにする
      • 学内でオリジナルのものを電子化して共有する
      • 「コースパック・トライアル」:地中海地域史b
        • 26点の読むべき資料が教員から挙げられる・・・
        • 雑誌論文16点は比較的処理容易
        • 書籍の一部10点・・・許可は3点、無回答6点、出版社が倒産1点
        • 許諾をとる部分がかなり大きな問題に
    • オンラインコース・・・YouTubeで10件公開
      • そんなに再生されるものでもない。セミナーによっては15回とか
      • 単に動画を出すだけではだめで、授業をとっている学生が欠席したときを見る/理解のために再確認するなど
      • このためにALSA-TTというチームを。録画やマニュアル作成など
  • プロジェクト紹介・・・「学生の力を高める」
    • 情報利用行動定点観測・・・学生の行動はアカデミック・リンクで変わるか?
      • アカデミック・リンク・センターは4年間の時限プロジェクト
      • その後は図書館等で実践を引き継ぐ、としている
      • なんらかの効果/成果は測定しないといけない
      • 2011年度は質問紙、2012年度は質的調査を実施予定
        • 空間利用については工学部、建築系の教員と協力して進める
    • 「参加する学習プロジェクト」
      • 学生が教える側になることで、自らの学習を深める契機となるものとして実施
      • 院生が学習支援デスクに/情報共有も行い自身の実践に活かす
      • 2012.1-2に施行、4月下旬から本格実施
      • 施行から見えた課題・解決・・・
        • 午前中は来ない/物理といっても理学物理と工学物理では違うので分野を考える必要がある、など
      • 同じ空間で仕切りなく、学生・教員・図書館員が学生の相談に応じる
    • 1210あかりんアワー
      • 火曜日・・・教員が研究の楽しさを語る
      • 金曜日・・・千葉大人の意外な一面を知る(教職員が弦楽四重奏とか謡曲とかしたり)/働く大人が学生に勧める一冊の本(職員も参加)
  • この中で図書館員はどういう役割を担うのか?
    • 大学図書館の整備について」(2010.12)
      • 「学習支援および教育活動への直接的関与を求められる」
    • 学習支援:ラーニングコモンズ、自学自習支援、上級生等の組織化・・・
      • その中で図書館員の仕事は?・・・「絶対にこれだ」というものは思っていない
        • アカデミック・リンクの取り組みの中で、今は教員・学生・図書館員のハイブリッドで支援体制を組んでいる
        • 図書館員+アカデミック・リンク・センターの教員でやっているが、これを教員なしでできるか?
        • 大学図書館の図書館員はどう変わっていくのか?・・・未だ手探り、様々なところで様々な取り組みをしている
        • それぞれの大学にあった解が求められていく?
何が実現を阻むのか・・・これまでに直面してきた問題
  • アカデミック・リンクで考えること・・・コンテンツの活用が最も基礎に
    • 地下鉄を歩いていたら読売新聞の「知らなければ戦えない」というコピーが目に入った。「知らなければ」を支えるのが、コンテンツ
    • しかし・・・教育に使いやすいコンテンツが電子化されていない=学生に届かない、見えない、存在に気づかないから買わない、売れないので出版されない
      • 『児童文学事典』も有用性は認められていたのに事業にならないから出なくなった
    • 負のスパイラルをどこかで断ち切らないといけない
  • 図書の電子化・提供は想定以上に時間がかかる
    • 東大のセミナー動画も権利処理に半年かかっているという
    • 半年待っていたら学生はもう終えているのでリソースになりようがない。時間がかかるのは大問題
    • 「授業資料ナビ」にあげるものも電子化をお願いしているが、出版社が提供するのは20%程度
      • 出版デジタル機構によって電子化は進むかも知れないが、それは個人に向けて売る、ということ
        • 電子ジャーナルのようにライセンシングの下で自由に使える環境には程遠い
    • 教材作成は動いているが、図書館が提供していた「図書」を学習に使えるものにするハードルは高い
  • アカデミック・リンクの目的・・・コンテンツを使い続ける人間の育成でもある
    • 本屋にしてみれば将来、ちゃんと本を買ってくれる人間の育成なのに、なかなかコンテンツが提供されない・・・
  • 現時点でのアカデミック・リンクの評価
    • 1日利用者は平日2000人以上、土日でも500-600人
    • あかりんアワーもうまくいっている/人的支援も定着
    • なのに本来、もっとも図書館の強みであるはずのコンテンツ提供が十分でない
  • 引き続き実現にむけ努力すべきこと
    • 多様なフォーマットでのコンテンツ提供
    • 貸すことだけを考えているわけではない。書店も図書館に入る。学生が購入することも視野に入れている
    • 品切れ/重版未定など、使いたいものが使えないことを改善したい。著作権法改正で国会図書館が絶版本を提供できるようになるなど、図書館サイドの努力で進んでいるかと思う
    • 教育・学習における利用障壁の除去/大学間共有
    • 合理性のあるビジネスモデルとは?・・・各者にとってメリットのあるモデルとは?
    • 午後のディスカッションも関係するが・・・ディスカバリー・ツールの必要性
      • 使えるものが色々ミックスされている状況。ただのOPACでは完全に足りない
      • 何があるのか/どのフォーマットでどこにありどう入手できるかの情報を提供するようなツールの提供
        • その中で学習者はもっとも欲しい形で入手できる、としなければ、学習環境としての図書館は十分機能しないのでは
      • 海外製ディスカバリー・ツールはコストもかかり千葉大では使えない
        • 国内製のもの、NDLサーチのようなものもある中でどう考えるか
  • 最後にアカデミック・リンクのユニークさ:
    • コンピュータリソースだけでなくコンテンツ提供環境+人的サポート
    • 授業は学習を促す有用な契機、と捉えて授業資料ナビのようなものを提供している
    • 単なる本のデジタル化を超えて、授業というコンテクストの下での利用を考える
    • 単なるタブレット端末を超えて、様々な形態でのコンテンツ提供を実現する
    • 単なるLMSでなく、コンテンツを密接に連携させる
    • 図書館内部で改革するのではなく、教育・情報基盤・コンテンツ提供部門との融合
    • 単なる千葉大学の教育改革を超えて、我が国における、学習とコンテンツ利用を融合させた新たな学習環境構築の先導的モデルとなる
質疑
  • Q. 筑波大・宇陀則彦先生:

午後のコーディネータでもある。竹内先生は午後、いらっしゃらないそうなので聞いておきたい。
まずラーニングコモンズが賑わっているからアクティブラーニングがなされているわけではないというのは重要な指摘と思ったら。しかしどうなったらアクティブラーニングがなされていることが観測できるのか?

  • A.

難しいが・・・質的調査、インタビューをやりたいと考えている。昨年度、質問紙をやったときに協力者は募っているので、そこに丁寧に聞いていく作業をやらざるを得ないかと思う。

  • Q. 筑波大・宇陀則彦先生:

2つめ。やはり図書館だけでなく大学全体を巻き込んでいるのは凄いことと思う。「本部」ではなく「全体」を巻き込むのが重要と思うのだが、なぜ千葉大ではそれができたのか? 偶然? 必然?

  • A.

(ここはあまり流してほしくない、とのことなので一部オフレコ)各学部のリソースだけではできないことが多い、全学的にやることが必要という意識を持っている人が多く、全学的にやるということが理解を得やすいし、リソースは出せなくても使いたい、という要望があった。
もう1つは、タイミングが絶妙だった。中教審の答申直後で、審議のまとめや大学改革実行プランに取り上げられたことが大きい。遅くても早くても駄目だったろう。
3つめは事務当局の理解がすごくあったこと。プロジェクトを出した時に、千葉大学からの概算要求第1位にしていただけた。

  • Q. 立命館・安東さん(午後のパネリスト)

午後いらっしゃらないということで残念。
私が午後に発言したいと考えているのは、授業そのものを変えないと、教材・コンテンツを活用した学習が進まないのではないかと思う。図書館が授業周辺に一生懸命取り組んでも、どこまで効果が出るのか難しいのではないか。一方で授業そのものを変えるのは一般的に難しいと言われているが、なぜ難しいのか腑に落ちない。なんでなんだろう?

  • A.

その問題は共有しているが、部局長として先生方に変えろ、とも言えない。
ただなにもできないわけではない。授業も外から見える教室で行われるようになってきている。嫌でもそういうところを見てもらうしかないだろう。積極的に「変えないと駄目です」と言われても、私もそうだが教員は他人に言われると反発する。外堀を埋めるのが大きなポイントで、授業が変わらなくても外堀が埋まって学生の意識が変われば学習が変わる。我々が変えたいのは授業ではなく学習。授業はその切り口の1つ、そうであって構わない。そこで学生が「おもしろいな」と気づいたことを自分で勉強してくれるようになればいい。授業が変わらなければ学生は変わらないということに私は懐疑的で、そこは4年間でやってみていきたい。



講演後、お昼休み・昼食タイムで散っていった各参加者の皆さんが、テンションも高く講演内容について語り合っていたことは言うまでもありません。
やはり現地で見たいなー、アカデミック・リンク・・・それも1回、数時間ぱーっと見るとかだけでなく、長期滞在して色々観察できたらとても楽しそうです・・・。
博論が・・・博論がなければ・・・(涙


この講演の後で「ラーニング・コモンズ×ディスカバリー・サービス」という午後のディスカッションのテーマを聞けば、そこが非常になめらかにつながっていることが伝わってくるのですが。
ただ、当然ながら事前に講演内容を知らなかったパネリストの皆さんにはそれぞれご苦労があったそうで・・・?
そのあたりについては引き続きアップロード予定のパネルディスカッション記録をお待ちください(笑)

*1:オープン前には通りすがったのですが、とか負け惜しみにもなっていない負け惜しみ