変わる科研費研究成果公開促進費と、学会に求められる対応:「平成25年度 科学研究費補助金(研究成果公開促進費)改革」(第3回SPARC Japanセミナー2012)
学会出版関係各位については当然、お聞き及びのことと思いますが、平成25年度から科学研究費補助金の研究成果公開促進費(学術定期刊行物)のありようが大きく変わります。
電子ジャーナル支援/オープンアクセス支援が打ち出されるということで自分も当然、注目していた一方、具体的にどうなるのか、それによって日本の学術情報流通がどうなりそうなのか・・・というところまできちんと把握できていたわけではなく。
そんなときに大変参考になる有難いセミナーが、SPARC Japanセミナーシリーズの第3回として開催されました!
科学研究費補助金公開促進費(学術定期刊行物)が,国際情報発信力強化を目的として,平成25年より大きく変革されます。 本セミナ−では,日本学術振興会から今回の変革についての概要説明をいただいた上で,11月の申請に向けて,新たな活動を展開することで,自らのジャーナルの立ち位置を強化し,また学術情報をさらに拡大しようと模索する学会の講演を予定しています。ディスカッションでは,参加される学協会の皆様が,現在,抱える問題や悩みを取り上げ,科研費申請に少しでも役立つ情報を共有できるような場にしたいと考えております。多くのみなさまのご来場をお待ちしております。
会場にはまさに科研費の担当である小山内優さんがいらして説明があったほか、改革のきっかけとなった文部科学省 科学技術・学術審議会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会の土屋俊先生も会場にいらしていて、ディスカッションの中では背景や意図に関するお話も。
ディスカッションの時間が足りなくなるくらい、参加されている皆さんも熱く、盛り上がっていました。
さて以下、例によって当日の記録です。
いつもどおり、あくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲の内容であり、専門用語や固有名詞など取り切れていない部分も多々あるかと思います。
ご利用の際にはその点、ご留意いただければ幸いです。
誤字脱字、事実誤認等、お気づきの点がありましたらコメント欄等へのご指摘をお願い致します。
まずは司会、林さんから今日の趣旨説明と、STM系の日本のジャーナルに関する事例説明から!
開会挨拶と概要説明(林和弘さん、科学技術政策研究所)
- 現在は科学技術政策研究所(NISTEP)勤務ですが、前職は日本化学会ジャーナルマネージャー
- 今日の司会はその立場の方が強い
- 今回のセミナーの背景と趣旨説明
- 科学技術・学術審議会〜・・・学術情報基盤作業部会で都合1年、議論されてきたこと
- 「学術情報基盤の整備はいつでも不可欠」
- 「ITインフラ、電子ジャーナルを前提とする」
- 「オープンアクセス対応の重要性」
- 科学技術・学術審議会〜・・・学術情報基盤作業部会で都合1年、議論されてきたこと
-
- 日本の研究レベルと情報発信レベルの乖離
- 電子ジャーナルの遅れ/世界をリードする国際発信が遅れている
- 戦略的/哲学的な背景を持ったオープンアクセス対応も遅れている
- 日本の研究レベルと情報発信レベルの乖離
- これまでの日本の学術情報流通支援体制
- 本日の目的:
- 「国際情報発信力強化」なのに、理工医学系の話が今回は少ない?
- 林さんの前職関係で見えてくる、日本の学会の看板英文ジャーナルの例
- 日本ではトップで世界でも知られていてもトップジャーナルではない
- 日本からの投稿には偏りが多い/海外からの投稿は増えたが採録されるものは少ない
- 刊行事業で収入を得られているところは稀/場合によっては出版社にお金を出して作ってもらっているところも
- その中で「国際情報発信力強化」と言えそうなこととは?
- 得られるアウトプット
- オープンアクセス
- 実質的にはGold OA(雑誌自体が無料で見られる)ことへの支援
- Gold OAのビジネスモデル・・・収入としては著者支払い(APC)、会費、広告くらいのモデル
- 支援期間内の活動/支援後の事業性の担保
- 購読費モデルからの転換はどうする?・・・非常に大変と考えられるが・・・
-
- OAメガジャーナル化*1の道はないのか?
- すでにあるOAメガジャーナルプラットフォームへの参加はあり?
-
- 支援を受けるためのOA化は本末転倒/なぜOAにするのかを念頭に置きながら・・・
「学術定期刊行物助成制度(科学研究費補助金:研究成果公開促進費)改革の方向について」(小山内優さん、日本学術振興会)
- 自己紹介
研究成果公開促進費
- 昭和22年度にはじまる古い制度
- 国民の税金をいただいている関係で様々な制限も
- 平成24年度までの区分・・・平成11年度に国際的な発信を、という提言があったため
- 平成23年度実績・・・採択件数110件、採択率約80%
-
- 区分別で見ると・・・
- 特定欧文総合誌・・・いくつかの学会で共同で出す欧文誌/数は少ないまま今に至っている
- 区分別で見ると・・・
-
- 最高配分額・・・2,000万円程度
以上を受けた文科省・審議会*2での提言
- 3本の提言:
- 日本の学術情報発信強化の必要性=日本の学術コミュニティを基盤とする国際的ジャーナル刊行の必要性、その必要経費の助成を
- 国際発信力強化の取り組みに対する助成とする
- 印刷媒体の存在を前提とするとは限らない、ということに
- 基本的には英文100%(カテゴリ1)推し。人社系向けの100%未満のもの(カテゴリ2)も残すが規模が小さい
- 日本の学術情報発信強化の必要性=日本の学術コミュニティを基盤とする国際的ジャーナル刊行の必要性、その必要経費の助成を
-
- 研究成果公開促進費(学術定期刊行物)の課題
以上を受けた学術振興会からの改善案
- 科研費に関する非常勤研究者100人くらいのセンターの中で組んだタスクフォースで、具体案を詰めた
- それをもとにさらに現在、計画調書の様式や審査員向けの評点基準を作成中
- 平成25年度から実施予定なので本来なら財務省/国会のOKを待つべきなのかもしれないが、そうなると来年度に入ってしまうので間に合わない
- ある程度は事前に各学協会でスタートしておいて、今年11月の〆切に間に合うように計画を作ってもらわないといけない。なのでかなり早めにスタートした
-
- 具体的な対象経費について・・・何が入るか
-
- 応募総額によって応募区分を「国際情報発信強化(A)」、「〜(B)」に分ける+オープンアクセス刊行支援
-
- 審査体制について・・・データベース/ジャーナル/図書をまとめて従来は審査していたが、ジャーナルについては別に小委員会を立てる
- 研究者だけでなく出版社等の経験者を加える
- 6〜9名くらい?
- 審査体制について・・・データベース/ジャーナル/図書をまとめて従来は審査していたが、ジャーナルについては別に小委員会を立てる
公募内容のイメージ
- 応募総額・・・5年で2,000万円を超えるもの=A/それ以外=B
- 和文誌は全部B
- OA刊行支援・・・OA誌の「立ち上げ」の支援
- 立ち上げを計画中/ごく最近OA化したもの(以前から存在したものの、最近OA化したもの)のいずれかのみが対象
- 一度このカテゴリで助成を受けた場合、以降は他の2区分でしか取れない
- 重複公募・・・OA刊行支援とそれ以外は重複しても良い
- 従来制度下で既に内諾を得ている場合、経費の重ならない範囲で重複公募可能
- 複数団体で1ジャーナルを作る場合には重複公募可能
- 区分Aと区分Bの重複は不可
- 公募要領作成時までに重複可能/不可能を表にして公開予定
- 審査時の評価項目
- 特にジャーナルとしての目標がはっきり示されているもの/体制の国際化がはかられているもの/十分に練られているかどうかなどを審査
- 具体的な指標・・・調書の記入例を作成中。どんな目標を立てれば良いかもある程度は書く
- 例:外国人レフェリーの比率/海外からの投稿率/全体としての投稿数/場合によってはIFも・・・?
- 採択のイメージ・・・いきなり5年一括でとることはしない/平成25年度でいっきに勝敗がつくわけではない
- 1年目に5年分いっきに内諾するのは一部とする
- 5年後から、5年ずつの内諾をとることにし、毎年一定数を更新していく
- 小山内さんからは以上・・・残りは質疑応答で/この場でもいくつか取って、残りは最後に
- ちなみに一度、学協会向けに説明会をしたことがあるが、そこで出た質問例:
- 紙媒体での発行も続けていい?⇒OK。ただし電子での発行をどうするか、が前提になる
- ちなみに一度、学協会向けに説明会をしたことがあるが、そこで出た質問例:
質疑
- Q. 1年目は1年限り採択が多いとのことだったが、5年間分で応募して1年間採択となった場合、2年目以降も再応募できる?
- A. 1年目に単年のみの採択だった場合、2年目も敗者復活として5年分の計画で応募できる。さらに落ちても3年目に応募できるし、そこで5年間で採択されれば基本、5年間は安堵される。ただし中間評価もあるのでそこに落ちることも。落ちなければ、5年後にまた5年間分で応募・・・となる。
- Q. 採択は単年度か5年間?
- A. そこは議論があった。2−3年分の採択もありでは、とか。ただ、とりあえずはわかりやすさを優先した。ひょっとすると財務省で何か言われて変わるかも知れないが。
- Q. 応募〆切は11月とのことだった、OA誌の場合はヒアリングもあるという。その時期は? また、採択されたらいつから使える?
- Q. 対象雑誌のカテゴリに医学は入る?
- A. 和文については・・・英文じゃないものについては、人社の場合のみ必要だろうということで入れてあるが、基本的には英文誌ならどの分野でもOK。
- Q. 今回の改革で国際発信力を高めるためのアクティビティなら人件費でも出せるわけだが、発信力を低めるアクティビティはないので、ほとんど全ての経費がこれでまかなえてしまうのでは?
- A. ある雑誌の改善の取り組み、その雑誌の出版に必要な取り組みに限定されるので、他の雑誌や学協会そのものの運営とは区分してもらう必要がある。人件費や事務所の家賃を計上するのであれば、その雑誌のための事務所、という経費を学協会の中で切り分けていただく必要がある。そこが他とごちゃごちゃしていると後で面倒なことになる。国費なので、あとで検査が入る。
- Q. 学会事務局で雇うスタッフが全く雑誌にかかわらないことはないので、なんとでも書けるのでは?
- A. なんとでも書けるということは、会計検査院もなんとでも解釈できるので、「その分の金は返せ」ということもできる。そう言われないように、ちゃんと切り分けておいて下さい、ということ。
「学会ジャーナルのプロモーション活動:報告とこれから」(山下和子さん、化学工学会)
- 内容:
- 化学系ジャーナル合同プロモーションとは
- 日本動物学会、日本数学会のプロモーション活動の紹介
- プロモーション活動の重要性について
- これからの展開
- 化学系合同プロモーション
-
- プロモーションの目的:
- 海外研究者に日本のジャーナルの認知度を上げる
- まず存在を認知してもらう/良い論文を出して貰う
- 複数誌でブースを出す相乗効果・・・
- ひと目につく/多くの分野をカバーできる
- 海外出版社の動向をつかむ
- 対象は国際会議に参加している研究者
- 海外研究者に日本のジャーナルの認知度を上げる
- プロモーションの目的:
-
- 来場者からの質問
- 日本のジャーナルの情報・・・まず知らない
- ジャーナルのインパクトファクター(IF)
- 投稿方法/掲載料金/審査期間/投稿資格
- 会員になるには?
- 各論文誌のカバー範囲は?
- 来場者からの質問
- 日本動物学会のプロモーション
- UniBio Press6誌をまとめてプロモーション
- 2010、2011年と国際会議で出展
- 会場での反応・・・
- 「日本には自分の扱う、独自の生物がいるので論文を読みたいのだが、和文誌は読めない」=英文誌をプロモーションする意義
- 「日本のジャーナルは知らなかった」など=プロモーションの意義
- プロモーション活動の重要性
- なぜ、プロモーション?
- プロモーション活動を毎年するのは簡単なことではない・・・ジャーナルを発行する片手間で他の学会と共同作業をするのは大変
- 実際に行くのも大変。だいたい1週間潰れる。なぜそれをしないといけない?
- 日本のジャーナルは思うほど知られていない。会場でも知られていない。まず認知を。
- 海外の著者へのアピール
- 良い著者を捕まえて良い論文を投稿してもらう努力
- 海外研究者の声を直接聞く/フィードバックする努力
- 海外出版社は毎年大きなブースを出している、その状況をつかむ/他の学会出版との情報交換
- なぜ、プロモーション?
-
- プロモーションの成果は?
- 海外出版社は大きなブースで積極的なプロモーション・・・日本もやらなければ差は開く一方
- 毎年、同じ会場でブースを出しプロモーションすることで初めて、ジャーナルのプレゼンスは上がる
- ぽつぽつ、色々な学会に出るだけでなく、同じ大会に出し続けることも重要
- 数値化できる効果が出ているのかは掴めない
- アンケート回答者がトレースできればわかるのかも知れないが・・・「こんなにいいことがあったよ!」を言うのは難しい
- 当初目的以外での効果・・・プロモーション参加学会同士の情報交換
- 従来、多くの担当者は学会内でぽつぽつ仕事をしていて同じフィールドの他の担当者との交流がなかった/そこができたのは重要
- プロモーションの成果は?
- 来年度以降の新たな取り組み・・・
- 国際情報発信力強化とも関連/複数団体による活動なので重複公募も可能?
- 化学系、数学系、生物系+医学系なども加えて連携したプロモーションを行う?
- 複数学会で取り組むことによるノウハウ共有
- 情報・労力の集約・・・申請書作成や事務など。別々にやるよりまとまった方が作業は楽
- 参加学会間の情報交換・・・化学系以外とも情報交換できれば、今まで以上の意味を持つはず
-
- 海外の学会出版担当者との交流?
質疑
- Q. この科研費はジャーナル単位で出すもののようなので、複数学会で出している「ジャーナル」の場合ならまた違うだろうが、今回の場合は各学会が申請した上でとりまとめる? また、このプロモーションに参加しているのは誰? Editor in chief?
- A. 参加しているのは事務局職員。海外の学協会の方と交流を持つときにはEditor in chiefに会う場合も、事務局に会う場合も含まれると思う。
- Q. その手のプロモーション活動で、3年後の中間評価に耐える成果をどう見せる? お話の中でなかなか成果は出ないとおっしゃっていたが、どういう指標を出す? 人材養成なんて3年じゃ成果が出ようがないので、通らないのでは?
- Q. それはやったことであって成果ではないのでは? お金を貰えば人も呼べるしなんかはできる。でも何回やった、ってのは成果じゃなくて、成果はジャーナルでしか見れないのでは?
- A. そこはすぐ見えてくるんじゃないだろうか。すぐにジャーナル運営に活かせるので、結果として投稿規定が変わった等は出せるのではないか。
- Q. それは発信力強化の成果として出せる?
- A. 出せると思う。発信力はアクセス数や引用数だけで測れるものではない。
- Q. じゃあ何? どういう数値を出すの?
- A. 今までの投稿規定の不備がわかり、それに伴って投稿規定を書き換えられれば成果といえるのでは。
- Q. ふつうに考えればさらにそれにともなって投稿数が増えた、まで言えて成果。審査する人の考えにもよるだろうが、普通に考えると難しいのでは。
- 司会・林さん:そこは後半の議論のポイントにもしたい。
「科学基礎論学会における欧文誌刊行の現状と問題点」(菊池誠先生、科学基礎論学会/神戸大学大学院システム情報学研究科)
- 自己紹介:
- 人社系の事例紹介。私自身のバックグラウンドは数学で、純粋な人社系ではない
- 数学基礎論/数理論理学など哲学に近いところをやっているので、哲学系の学会に参加している
- 人社系の事例紹介。私自身のバックグラウンドは数学で、純粋な人社系ではない
- 科学基礎論学会・・・典型的な人社系ではない?
- 人社系も幅が広い。理工系に近いところもあれば文学のようなところもある
- 必ずしも人社系の代表ではないし、私の話も学会を代表するものではない。そこはご留意を
- 科学基礎論学会とは?
- 欧文誌刊行の問題点
- 投稿が少ない
- 日本人は英語で哲学の論文を書くのがしんどい
- 日本人の哲学者はみんな日本語で書くので、わざわざ英語で書く必要はない
- 欧米人はわざわざ日本の学会に投稿する必要がない。なるべく地元の範囲でいいところに出したい。島国の雑誌にわざわざ投稿しないし、存在も知られていない
- 科学者・数学者は哲学的な議論を嫌う
- 本来は面白いことを考えていて、お酒の場では面白い話も聞けるのだが、公の場では控えられることが多い
- 哲学的な議論をする人はキワモノ扱いをされる。「哲学的な議論をはじめたら数学者としては終わったね」と思われる
- 「数学できなかった奴が哲学に興味を持つ」というイメージ
- 物理学の世界でも若手に対して量子力学の哲学論争をするな、とのお触れ。「哲学をしていると物理学が進まないから若手は物理学に専念しろ」
- 投稿が少ない
-
- 読者が少ない
- いい論文が一流の雑誌にいってしまう
- 日本人/学会員ですら欧文誌は読んでいない? 哲学のようなややこしい話を英語で議論するのはわかりにくいし、まして日本人の英語の論文となれば・・・
- 海外の人はそもそも存在を知らないので読んでいない
- 読者が少ない
-
- お金がかかる
- 会費の使途の3分の1が出版経費
- かつてはもっと多くて財政を圧迫していたが、TEX化で編集費用は削減できた。それで赤字にはなっていない、という状況
- お金がかかる
-
- 簡単な解決策・・・「やめてしまえ」
- 書きたい人も読みたい人もいないんだから単純な解決策はやめること
- しかしやめるべきではないと思うし、多くの人もそう思っているはず
- 簡単な解決策・・・「やめてしまえ」
- 欧文誌刊行の意義
-
- 対話の促進
- 発表することで研究内容自体変わるはず。その場が要る
- 日本語で発表する限り、論文の形で英米の研究者と論争をすることができない。一方通行
- 欧米の研究を日本語で研究している限り先方には絶対に通じない。発言内容を向こうに伝えられれば、向こうの考えも変わるかもしれないし新しい問題も見えるかも
- 日本の研究はどこかに特化する。欧米は裾野が広い、数学を深く理解した哲学者などが新たな議論を起こしたり。専門分野では欧米に劣らないが、裾野が負けている
- 数学がわかる海外の哲学者と日本の・・・などが議論する場があれば変わるかも
- 対話の促進
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- 主体的な主題の設定
- 日本は流行を追いがちだが、国や地域によって問題は異なるはず。社会的にも、数学・哲学の中に限っても
- 中心地から見ると「なぜそんなところを議論する」ということでも、そこをやることが世界的な多様性にもなりうる
- 主体的な主題設定は欧米一流誌を狙うだけではできない。日本人が議論を設定出来る場が要る
- 主体的な主題の設定
-
- こういう理由から、苦労してでも欧文誌を出し続ける必要がいる
- 改善策・・・そうはいっても今のままでは・・・
- 「特集」の充実
- 海外の研究者を招いてシンポジウムを開催/従来は日本人を中心にしていたが、テーマを設定してそれにあった研究者を招く
- そのテーマに基づいた特集を設定、欧文誌で刊行する
- 投稿してくれそうな日本人/海外研究者に個人的にお願いも。海外から2本、国内から2本の投稿を得る
- シンポジウムに参加したわけではなかったのだが、プリンストン大学の一流の研究者から得られた
- 国内からはナシで海外から3本得られた、という年も。「その筋では驚き」の結果が「こんな雑誌に」と驚かれたことも。「電子化されてるからいいのでは・・・」と回答
- お金はかかる。この時はこの分野を研究している方の科研費を回してもらってできた。協力があってのもので、定期的に開催できるわけでは・・・
- 手間もかかる。何週間かは拘束される
- 「特集」の充実
-
- 日本における研究の紹介
- 雑誌の基本目的は原著論文の掲載だが、日本で欧文誌を出す場合には必ずしも原著に限る必要はない。日本語で書かれたものを英語にして出すことは大きな意義
- 日本語で書かれた本の中身を海外の研究者から聞かれたこともある。英語以外の言語でどんな本が出ているか調べているプロジェクトも立ち上がりそうだった(結局は潰れたが)。需要はある
- 日本の中で何が行われているか、どんな研究がなされているかの紹介も十分な意義
- 過去には「ここ10年のsurvey」もあったが、それも手間や利害の衝突がある。surveyから漏れた人が怒ったり。手間をかけて注意深くやらなければいけないこと。コストもかかる
- 日本語で書かれた論文を英訳する場合、訳者と著者の間で議論が起こる。訳をしようとすると意味不明の部分がでてきて、著者に問い合わせることも珍しくない。翻訳作業自体が著者(ベテラン)と訳者(若手)の対話も促す
- 雑誌の基本目的は原著論文の掲載だが、日本で欧文誌を出す場合には必ずしも原著に限る必要はない。日本語で書かれたものを英語にして出すことは大きな意義
- 日本における研究の紹介
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- 関連する学会との連携
- シンポジウム・特集や翻訳などをやろうとすると単独ではできない
- 専門分野の近い日本科学哲学会・応用哲学会・・・雑用は科学基礎論学会でやるので実質的な作業の協力を呼びかけ中
- 関連する科学・数学・心理学・社会学などの学会との連携・・・単行本や新書で面白いことを書かれている数学者や物理学者を抱えている学会と共催することで、科学基礎論学会に参加するのが変わり種ではなく本流にいる人になれば
- 海外(韓国、中国など近く)の学会との連携
- 非欧米圏からの情報発信の試みは日本以外でもあるので、そこと連携できれば価値のあることができる?
- 関連する学会との連携
-
- 財政的裏付けの確立
- 以上のためにはお金がかかる
- 今は赤字ではないが余裕もないので新しいことができない/個人的に手伝い等をお願いしているレベル
- 雑誌発行費用の補助を受けることができれば、浮いたコストで雑誌にいい論文を載せるための活動ができるのではないか
- 場合によっては翻訳を依頼する際に翻訳料を出せれば、職がなくて悲惨な状況にある若手の哲学者に対する奨学金のような役割を果たしうるのではないか。雑用ではなく翻訳であれば研究内容そのものにも反映されうる
- 今でも英文誌投稿者は20-30代の若手。今は難しくても、どんどんいいものに出来るかもしれない
- 財政的裏付けの確立
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- 雑誌のプロモーションの重要性
- この分野なら・・・ICSUのディビジョンの集会が3年に1度ある。そこに参加して欧文誌を配布した
- 反応は? 予算の都合で行けず・・・会議の運営者が配ってくれたらしい/たくさんの人が持っていった? もっとシステマティックにやれば・・・
- 紙での出版の価値
- プロモーション時に、そこに置いてあれば手に取る。URLだといちいち見ない。機械損失の大きさから、紙はお金がかかってもやめるべきではない
- 雑誌のプロモーションの重要性
-
- 電子化の影響・・・OA化に伴って投稿の質が変わった
- もうestablishされた人なら、IFのついてないような雑誌でもいい、ということでここに投稿してくれる
- OAでインターネット上にあれば名もない雑誌でも探されて読まれるので大きな意義となる
- 電子化の影響・・・OA化に伴って投稿の質が変わった
質疑
- Q. (申し訳ありませんがあまり聞き取れず・・・査読の話?)
- A. 査読に関してはかつてはほぼすべて日本人が行なっていたが、ここ数年は海外の研究者にお願いしている。そこでわかったのは、執筆してもらうことより査読の方が大変、ということ。「投稿して下さい」といえば一流の研究者でもしてくれるが、「査読をして下さい」は断られる。査読は手間のかかる雑用で後回しになってしまうらしい。査読者を見つけるのには苦労しているが、苦労しつつ、ここ2−3年は割合はまだ少ないものの海外からも査読者を得ている。特に海外からの投稿については受けてくれる場合も多い。編集については、海外からの編集者を入れることで認知度も上がるし、雑誌の信頼性も高くなる。科学基礎論学会ではなく数理論理学分野の話だが、シンガポールで新規創刊された雑誌で、査読者を欧米の一流研究者を揃えることで出版と同時にトップジャーナルに踊り出た。有名な方がいればいいというわけではないが、欧米の研究者に編集に加わっていただくことは考えている。分野などの調整が大変だが、特集時のguest editorについては比較的簡単である。他に雑誌の名前に「Japan」をつけるのは・・・という意見もあって、結局変わっていないのだが、新たな科研費はインパクトがあったらしく、出すにあたって「変えよう!」ということにもなるかも知れない。
休憩タイム
質疑応答/ディスカッション
- 林さん:
議論の拡散を避けるため、あえて論点を絞りたい。今日の目的は科研費の制度改革に応じてどう有効活用するか、その情報を得ることだと思う。その制度設計に従ってしまおう。
論点は2ないし3つ。まず自身が単独で出す場合、規模の大きいA、規模の小さいBのいずれに出すか、加えてオープンアクセスを申請するか。さらに分野も加わる。
もう1つは雑誌間の連携での応募を想定した場合。念のため小山内さんに確認したが、「このようなものは通りますかねえ」という、項目出しをするなら今が最後のチャンス。
最後に質疑でツッコミもあったが、評価のされ方。定性的なものだけでは駄目で、定量的なもの、それも指標がないと行政の説得は困難。
それぞれ15分ずつくらいになると思う。まずは単独誌の応募を想定しての質問をお願いしたい。
単独で出す場合に関して
- Q. 配布資料に関する質問。改善案中の「同一タイトル」の意味は?
- 小山内さん:今の制度は「学術定期刊行物」を対象とするものだった。しかし不定期に刊行される場合もある・・・
- 会場・審議会の議論に参加していた土屋俊先生:「定期刊行物とは何か」についての哲学的な議論があった。PLoS ONEのような、OAメガジャーナルは、毎日更新されている。そういうものを従来の定期刊行物のカテゴリに入れて良いか、といった議論があった。「定期刊行物」という概念自体が検討対象となり、研究部会に提言する際に「定期刊行物」というカテゴリの名前の変更もありうる、ということを申し上げた。「同一タイトル」というのはその苦肉の表現。PLoS ONEのようなものもジャーナルだよね、と言わざるをえない時代にどうするか、ということ。学振における議論では、そこを議論するよりは国際情報発信強化、としちゃえばいいじゃないか、となって、「定期刊行物」という表現自体変わった。どこまで入るかは、調書を審査員がどう読むかによる。形式的な門前払いの可能性は非常に低くなっている。ただ、これは作業部会の中での議論。制度としては小山内さんの定義に尽きるし、今後も微調整はあるかも知れない。
- Q. もし雑誌名を変更したら、というのは特に・・・
- 会場・土屋先生:それはジャーナルとは何か、という定義を書いているだけの部分なので、名前を変えることが国際情報発信強化につながるのであれば優れた取り組みと言われるかも知れない。「Japan」を取るとか。
- Q. 過去に変更したものも特には関係ない?
- 会場・土屋先生:今までみたいに細かく「ああ書け」というのがない。「ちゃんと書いてね」という指示しかなくなる。「ここはこうです」と説明して、審査員が納得してくれればいい。ただし複数人で読むので、皆が納得するかはわからない。
- Q. この事業のポリシーは、今日のお話を聞く限り、底上げというか、今まで知名度のなかったところが知名度を出すためのように見える。一方で、日本の学会誌の中にはトップジャーナルに追いつこうとがんばっているところもある。そういうところが競争力を失わない、強化するための情報発信もあるだろう。とんがっているところを後押しする、というか。そこもやっていく、ということで良い?
- 小山内さん:基本的には各学会の出した数値目標がアピールするかどうか。例えばIFが3だったのを5にするとか出せばアピールするだろう。投稿件数や被引用数も評価するだろうし。とんがったものを出してもらえば審査員の目は光るだろう。
- Q. 提案の方向を限定するようなものはない、ということ?
- 小山内さん:そういうこと。
- Q. 国の方針としてはできるところにより突っ込もう、ということが多いが、今回のお話はそういう流れの1つ? 全体の底上げも考えている?
- 小山内さん:世の中にはたくさんのジャーナルがあって、たくさんあったからって財政を圧迫していることはないので、勝ち負けをはっきりつけようということではない。ただ、学術関係者の中でお偉い方の中には日本のトップジャーナルを作るべき、という声もある。方や、巨大なジャーナルを作った方が国際的に受ける、という考えも。色々あるが、言えることは、OAは1つのやり方。それ以外はあまり取捨選択する意図はない。
- 林さん:議論に参加していた立場で。リーディング・ジャーナル育成は議論されていて、国際情報発信Aはそれに相当するだろう。けっこうな規模の金額を支援して育てる、という意図。
- Q. 最近は新しい雑誌は国際的な枠組みで発行される機会が増えている。Natureとかも日本の先生を巻き込んで新しい雑誌を作ったり。そういう国際的なものにも科研費は出されうる? 間接的には海外出版社の支援になるわけだが。
- 小山内さん:必ずしもそういう意図はないし・・・調達ルールでいえば、お配りした資料にもあるが、調達に関するルールを団体等の中で定めなければいけないことになった。役員の属する機関の調達ルールに依るか、国の基準にしたがって定めるように、となっている。大きな機関であれば第三者も入れたなんらかのコンペティションをするルールがあると思うので、それを準用していただければ、単に安いということにはならず、各学協会の意図にそった出版者や業者が選定されるのではと思う。多くの学会がそれに基づいて海外出版者と契約しようとすれば、おっしゃるとおりになるが、私どもとしては・・・やむなし、ということかも知れないが・・・明確な意図ではない。
- 土屋先生:基本的に、可能な限りは競争性の高い調達を行なっていただきたい、という原則は変わらない。色々な工夫はあるだろうが。審議会、基盤部会の中では、結果として海外出版社との契約になることへの危惧は確かにあったが、個人的にはいいのではないかと思う。国内に使える出版社は皆無なので、海外と契約しても結果として国際情報発信強化になればいいだろう。国内で海外よりうまくできる、というところがあればやればいいし、うまくパートナーシップが組めればいい。工夫の余地はいろいろある。
- Q. ジャーナルを伸ばすために様々な施策をしてきた。資料に「新たな取り組み」というのがあるが、「新たな」というのはこれまでやってきたよりも大規模なことをするとか、オンラインジャーナルのシステム更新等は「新たな取り組み」として評価される?
- 小山内さん:底上げだけのものではないので、既存の、ある程度競争力のある雑誌がさらにがんばろうというのも採択されると思う。全く次元の違う取り組みをせよと言っているのではない。調書上の見せ方、書き方の問題。これまでの取り組みを越えたことをやっていただく、ということ。それによってさらに上の数値目標を達成できるなら良い。
- 林さん:今までは自分たちでできたことにプラスすることでどれだけ良くなるかうまく作文されれば、ベースは既存でもいけるだろう。あとは評価する側がどう読むか次第。はじめての制度改革でわからない部分もあるが、向こうを想定しながらやっていくことになるだろう。「やれることはやっているのにこれ以上どうしたら」という場合でも、既存の取り組みにさらにお金を投じたら・・・というのでもいけるんじゃないだろうか。通るかどうかはわからないが。
雑誌連携/オープンアクセス関係
- 山下さん:オープンアクセス刊行支援について。2,000万円以上の支援となっているが、うちの場合は既に投稿料をとっているので、+αでOA化できそうなのだが、2,000万円以下での申請は可能?
- 小山内さん:公募要領が固まっていないのでなんとも言えないが、2,000万円以上がOA支援といまのところはなっているので、そこまでいらないのであればOA刊行支援ではなく国際情報発信Bで出すといいのではないか。この枠が取れる可能性ってある?
- 会場・担当の方:今は取りまとめの段階で、現行では2,000万円以下でも、という話は出ていない。
- 土屋先生:2,000万円以下でOAプロジェクトを作ることにはなんの問題もない。国際情報発信B小規模の中でOAをやっていけない、とはなっていないので。ただ、何か大きいことをやろうとすると今はOA以外は無理、無謀というのが作業部会の結論だったので、OAは別枠で支援しないと、となった。国際情報発信Bは何をやってもいい。そこでOAにします、といったものをカテゴリが違うと拒絶することはない。
- 小山内さん:お金のかからないOAをしたければBで申請する準備を、ということ。テクニカルなことを言えば、文科省の方から財務省に予算要求する際に、OAは特別枠、新たな枠で、新たにまとまった額を要求する。ある程度お金がかかる前提で要求するので、お金のかからないOA化は考えていない。なのでこういう形になっている。
- Q. コンピュータ科学で、ほそぼそ、長い間OAでがんばってきた和洋混在誌を出している。人文科学以外は100%英文ということになっていて、何かしら差し伸べられる手はないのか・・・と思うのだが。(英文率)50%が100%になった経緯とあわせて、ご説明を。
- Q. OAをずっとやっていたが、和洋混在で、ただ国際的な情報発信力はこれから強化したい。
- 林さん:今の割合は? 和洋。
- Q. 50%くらい・・・
- 小山内さん:国際発信BはOA化の有無と関わらず残るので、申請するならBへ、としか言えない。
- 土屋先生:使用言語に関しては、事情がある場合には特記せよ、と書いてある。特記されて、「確かに日本語が入った方が国際発信力が強化されているんだ」と納得させられれば評価されるだろう。何がなんでも日本語が入っていないと、というのを断固主張して調書を書くという手はある。
- 林さん:門前払いではなさそうなので、ご検討いただくということで。
- 菊池さん:紙の印刷は助成の対象になる?
- 小山内さん:ありうる。ただ、例示のところで紙媒体の費用を入れようかと事務局で書いたところ、例示としては出さない、ということになった。発信のために必要となれば申請段階で書いていただいて問題ない。結構です。
- 菊池さん:紙で印刷するものをプロモーションに使うのは発信強化だろうが、学会員への配布や国内外への販売は、助成を受けたものを・・・それも情報発信の一環と考えて良い? 販売して利益を得た場合には、この助成と関係のない利益として良いのか、利益が上がったら会計報告時に差し引きされるのか。
- 小山内さん:雑誌全体の予算を書いていただくところが調書にある。そのときに、かなりの収入が上がっていて、科研費の助成と自己収入をあわせた額が経費を越えて黒字になる、という際には助成は圧縮する。そこは書いてもらう欄を作らざるをえない。黒字になる場合にはtax payerに申し開きがいるので。販売収入だけでなく、OAならば投稿料、掲載料で収入がある場合も考えられる。収入/支出欄は書いてもらう。
- 菊池さん:全体費用と、助成で賄う部分を明記する、と。例えば助成を受けた分、学会費を削れば・・・とかもできるが、やってもいい?
- 小山内さん:テクニカルな話になるが、会費を安くして、その分、収入を雑誌で上げる、と。それで雑誌にかかる負担を軽減する、という場合には、学協会全体としての日頃の予算/決算で同じポリシーを貫いていただかないと。団体としての予算・決算は考え方が違うのに、学振に出される資料と団体の財務諸表の一貫性がないと・・・必ず、両方見る人がいるので、辻褄があわないとどちらかが貰いすぎ、と突っ込まれる。方針が一貫していればいい。
- 土屋先生:そんなことをごちゃごちゃ聞かないでよ(笑) AとOAにはヒアリングがあるので、そこではそういう話しも議論になる。Bは書類一発勝負で、「ここはやばい」と思われたら一発アウト。
- 林さん:現在の制度でも補助金を貰うためにいっぱい、わざと刷っていたのがあとでバレた例もある。そういうことはしないほうが。
- Q. 今までの方針は紙で刷れ、ということだったので、同じ研究室にいる人達に何冊も紙が配られたりしていた。それを変えようというのが今回の改革だと思うが、その変えた後の方針が見えない。なんでもいいからプレゼンスを上げればいいよ、ということなら、全てのジャーナルのプレゼンスが上がるわけはないので促進するところは促進する、淘汰されるところは淘汰される、というが裏の意図なのだと思っていた。そういう場合、複数学会でまとまったらお金を出すよ・・・というようなメッセージがいるのではないか?
- 小山内さん:確かに10年前の改革時に特定欧文総合誌を新たに作ってなるべく一緒にやって下さい、日本版Natureとまでは言わないけど・・・というのはやったが、今回は特にそこを前面に出したわけではないし、淘汰の意図もない。複数団体で出すことはウェルカムだし、複数団体の方が評価もされるだろうが、その方針を強めたわけではない。
- Q. うちの学会も海外出版社と共同でやって国際情報発信も強化してきた。今回の改革は、これまでは紙媒体、継続的な学会誌の支援だったのに対し、5年間で完了して、そのあとは自助努力で・・・と性格が変わっている。今回、その話が出ていないが、そこをはっきりしないと、取り組んだはいいが補助金が切れたら終わり、となるのでは。なんらかの補助なり支援はあるのか。
- 小山内さん:先ほどのご質問とも関連しますが、過去10年間の交付状況の推移から、最盛期は9億配分していたのが、今のところ3億円代に落ち込んでいる。科研費全体が増えている中で、ジャーナル助成が減っているのは、自然なことではない。これを復活させる、できれば20億円くらいまで持っていくのが作業部会の先生方のご意見。で・・・OA支援は、5年限りですが、国際情報発信強化に関しては、5年ごとに更新あり、という考え方。5-10年先に制度は変わるかもしれないが、基本的には更新ありで考えている。OA支援は5年でも、そのあと国際情報発信強化に乗り換えていただければいい。ただ、1協会は1誌のみしか更新できないので・・・
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- 土屋先生:更新ではない。同じ雑誌を支援する違う取り組み、として出すことになる。別途の審査対象。
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- 林さん:10年計画を立てないといけない。国際情報発信強化のネタをすべて出してしまうと5年後に・・・。この5年で淘汰も進まざるをえない。定常的な経費に回しにくいので、定常的な経費を別にまかなえるところしかここには出せない。その選択がはたらく可能性はある。
- Q. 次、もし5年後に出すには新たな事業をやらなければいけない、それまでの事業は5年で学会自身ができるようにならなければいけない、というメッセージはよくわかった。単なる更新じゃない、ということ。
評価のされ方について
- 日本動物学会・永井さん:どうしても定量指標、数値目標、という話になるが。心配なのは、今までの科研費の逆バージョンになっている。今までは数値的根拠なく審査されていた。うちはお陰様で取れてきて、自助努力で申請額は1,000万円くらい下げてきているが、ほとんどなにもしていないようなところもお金を貰っていた。それが全く、真逆になるのが心配。菊池先生のお話を素晴らしいと思っていたのだが、ああいうお話、非英語圏のジャーナル、日本で国際誌を出すことの一番の基本と思う。「なんでもあり」と説明があるとおり、自分たちのdisseminationを上げるには何をやってもいいと思う。数値目標は税金を使う限り仕方ないのだろうが、調書をどう書くかでもあるんだろうが、そこのところをどうされるのか。なかなか大きいのではないか。数値が書ければとおるのか。また、このタイミングでOA支援というのは、この先の5年はどうなるのか・・・ということになる。日本はわからないが、国によっては研究成果はOA誌に出せ、というところもある。うちの学会ではあらゆる計算をしてOA誌にできないか検討しているが、購読モデルからの転換は本当に難しい。そのタイミングでこの改革はいいタイミングと思うが、とても苦しくもなっている。ぜひこの科研費が日本のジャーナル、学協会を変えていけるといいなあ、と思う。
閉会のことば(安達淳先生、国立情報学研究所)
- 学術出版関係の方が多いので、NIIがコミットしているSCOAP3の話をしたい
- 日本の雑誌もこの中に動いている、ということは極めて重要
- 他に中国の雑誌も入っている
- 今後、各パッケージの価格がその分だけ安くなるかの検証は行う。入札参加者は安くすることを約束している。そうなるかどうか
- OAはダイナミックに動いている
- SCOAP3は3年間で動いている。ここで色々な新たな問題も出てくるだろう
- 研究者にとって重要な雑誌をOAにしたことは画期的だが、同時に問題も誘発するだろう。そこはコンソーシアム内で解決していくことになる
- 例えば・・・APSのPhys. Rev. Lettersをどうするか。そこがOAにならないと最上位ジャーナルはどうした、ということになる。
- そこは継続協議になる
- 国際発信、国際的な話は一方で動いていて、3年後には違った姿になっているかも知れない
- その中で日本はどうするか? 日本物理学会のうち1誌はこの場に出た。
- OAは昨年くらいから大きな動きになっている。ぜひそうした点にも注目し、今後の雑誌発展へご尽力を
閉会後もところどころで人がたまって議論や質問応答が続いていて、参加されていた皆さんの意欲の高さが感じられました・・・って当然ですね、なにせ今年の秋には書類作成に入り、来年度からすぐ運営に関わってくる話なわけで(汗)
通常の科研費ももちろん、年度に入ってから当落がわかるので大変・・・ということはあるわけですが、学会誌運営の場合は「貰えなかったから出しません」ていうものでもないのでますます厳しいところかと。
「だから定常経費に関するよりも国際発信力強化の新たな取組に出すわけで」とは終了後に伺ったお話。
最後、時間が足りなくなってしまいましたが、やはり気になるのはいかにして「成果」を示すか(それもできれば数値として示せるもので)、という部分でしょう。
大学等の場合も同様の評価の必要にさらされているわけですが*3、最後の林さんのまとめにもあったように自分たちの「売り」「価値」を考え、それが生かせるような「成果」の基準を設定する、というのは、最初から項目が定められている場合に比べてかなり考えなければいけないので困難が伴う一方で、創意工夫の余地が大いにあるのは面白そうでもあります。
測れないものを、測れないとあきらめるんじゃなくて「こういうものを見ればわかりますよ」とか出せれば、インパクトファクター偏重の問題が指摘される中に違った流れを提示できるわけで。
もっともアクセス数、被引用数、投稿数などと違った指標ってなるとぱっとは思いつかないわけですが・・・Altmetricsだってアクセス数と同じ穴のムジナではあるわけですしね、うーん。
特定のジャーナル/そこでの新規な取組に応じた「国際情報発信力が強化」されたことを示す(説得力のある)指標とは?
考えるとわくわくしてきますね・・・!*4
*1:参考:"2020年には世界の論文の90%はOpen Accessになり、そのほとんどはPLoS ONEのようなOAメガジャーナルに掲載される?"「OAメガジャーナルの興隆」(第5回SPARC Japanセミナー2011) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*2:文部科学省 科学技術・学術審議会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会
*3:参考:筑波大学図書館情報メディア研究科FD研修会「最新データに見る筑波大学の教育研究水準:情報学教育の新たな方向」(土屋俊先生/大学評価・学位授与機構) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*4:もっとも、最終的にはやはり投稿数/被引用数等に結びつくのが良い、ってことになるのかもですが・・・