「2020年の学術情報流通と大学図書館を展望する」(第60回日本図書館情報学会研究大会シンポジウム)
いささか間が開いてしまいましたが、前回に引き続いて日本図書館情報学会第60回研究大会参加記録。
今度は2日目午後に行われた公開でのシンポジウムの様子をお伝えします!
学術情報流通のあり方は近年めまぐるしく変化し,OAメガジャーナルの登場,商業出版社によるOAジャーナル創刊など,オープンアクセスを推進する動きが強まっている。7月に公表された科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会の報告書『学術情報の国際発信・流通力強化に向けた基盤整備の充実について』では,機関リポジトリを通じてのオープンアクセスの進展,機関リポジトリの機能強化に向けた図書館の積極的な関与の必要性,さらには研究者情報システム等の他システムとの連携の可能性などが述べられている。
2004年に国立情報学研究所による機関リポジトリ構築ソフトウェア実装実験プロジェクトが実施されてから8年が経ち,現在では多くの図書館で機関リポジトリが構築・運用され,機関リポジトリそのものは定着してきたといえる。しかし,学術情報流通のあり方が急激に変化し続ける中で,機関リポジトリにとどまらず,大学図書館には今後新たな役割が期待されているのではないだろうか。本シンポジウムで,こうした背景をふまえて意見交換,討論を行い,学問的視座から「これからの学術情報流通のありかたと大学図書館の役割」について検討したい。
パネリスト:
コーディネーター・司会:
- 逸村裕先生(筑波大学図書館情報メディア系)
九州開催ということで池田先生がいらっしゃるのでは、とは思っていましたが、さらにこのブログでもたびたびご登場いただいている轟先生、図書館プロパーからは慶應の田村先生もパネルにご参加ということで、当ブログ読者の皆さんであれば気になる話題満載のシンポジウムだったのではないかと!
・・・途中何度かこのブログへの言及もあって驚くやら照れるやら・・・(汗)
なお、シンポジウムの様子はUstreamでも配信されていました。
以下、例のごとく当日のメモです。
例によってmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書取れた範囲でのものであり、ご利用の際はその点ご理解いただければ幸いです。
誤字脱字/事実誤認ほか、お気づきの点があればコメント欄等にてご指摘いただければ有難いですm(_ _)m
はじめに/趣旨説明(コーディネータ:逸村裕先生、筑波大学図書館情報メディア系)
- 2020年・・・なんで?
- オープンアクセス:学術成果をインターネット上で誰でも無料でアクセスできるように
- オープンアクセスジャーナル:インターネット上で無料で利用できる学術雑誌
- 中でも話題なのはオープンアクセスメガジャーナル・・・PLoS ONEなど。
- 年間12,000以上の論文公開/軽い査読/著者が出版料を支払う・・・APC
- Natureは年800-900論文。PLoS ONEの大きさがわかる
- 2020年とOAジャーナルについて・・・2020年には世界の論文の90&がOAになる、それもメガジャーナルに載るという説がある
- 世界に7,000以上のOA雑誌がある。急速な普及
- 中でも話題なのはオープンアクセスメガジャーナル・・・PLoS ONEなど。
- こういう様々な変化があるという前提の上で・・・2020年
- 要件はいろいろありうる。そのあたり、パネリストの皆様とディスカッションしていきたい
- 最初は轟先生。アウェイ、研究者の立場から議論いただく。お願いします!
「研究者の投稿行動は兵糧攻めに遭ったかの如くOpen Accessに流れると見る」(轟眞市先生、物質・材料研究機構 先端フォトニクス材料ユニット 応用フォトニック材料グループ)
- 普段からOAやろう、やろうと言っていたのが目に止まって読んでもらえたよう。嬉しい
- 今日の問題提起・・・物理/光の立場からOAについてどう見えるか、紹介したい
- 発言要旨に「妄想」と書いたのは図書館情報学者でもなんでもない、データの裏付け等はなく、皮膚で感じた話なので
- 「もっと別の見方」「エビデンス」多々あると思う。ディスカッションの場でもコメントいただければ
- 今日の問題提起を一枚にまとめると、研究者はインパクトファクターを信仰している。一方でシリアルズ・クライシスの問題がある
- そして若い人がどんどん入ってくる、電子媒体ネイティブが来る。そうなると、OA雑誌に投稿する流れが出てくると思う
- 後半では電子ネイティブに関連して。昨日もMendeleyのCEOが機関版のアピールに来ていたが、図書館にとって大事なツールになると思っていた。研究者ではなく図書館の面についても、深めてお話したい
- その前に・・・OAの問題認識について、第5回SPARC Japanセミナーでの、電気通信大学・植田憲一先生のコメントから:
- これも詳しくはこっちへ:
- OA Green(雑誌はどこでもいいけど、著作権上問題ないものを機関リポジトリ等で公開)歓迎、OA Gold(そもそもOA雑誌に投稿)は品質低下を招く
- 物理学的な立場からの発言。そのこころは、植田先生はいろいろな立場を経験された上での発言だが、Goldの収入は査読が通らないとこない。いい雑誌にしようと却下率を上げると収益が落ちる。その綱渡りのせいで品質が落ちる。この意見は私も同意する
- OA化:総資金保存則の下の再編成(例:SCOAP3)
- SCOAP3・・・素粒子物理分野の、研究者自らお金を集めて出版社に入札をかけて出版する、という試み。入札も終わって向こう3年の雑誌OA化開始予定
- 理想的なOA化とはこれ。総資金は保存する。現状のお金の周り方を変える、というのがいいと言っていた
- すべての学術分野に有効な統一策はない
- 素粒子には「ないものは自作する」文化がある。はたから見るとめんどうなこともやった。同じやり方が通用するとは限らない
- ステークホルダー同士が身銭を切らなければ未来はない
- 学者自身が自ら動く/出版社は入札に応募し効率化する/資金供出のために図書館がお金を集める・・・みんなが汗をかく構想
- 以下、私自身の話。植田先生にはなかった視点をちょっとずつ示したい
研究者の高IF振興
- 研究者はIFが高い雑誌に出したい
- IFは雑誌の評価だが、研究者は自身の評価と結びつけて考えざるを得ない。評価・評価の世界
- 任期つき⇒任期なしになるには業績がいる、いいポストにも業績・評価、予算を貰うにも評価、予算を貰っても運営の評価・・・
- 目にみやすい評価としてIFが一番簡単。バイオには「CNS症候群」、Cell、Nature、Scienceに病的に縛られるという状況もあるという
- あるいは一流の国際会議に採択される
- これはもうしょうがない。評価構造が変わらないと変わらないこと
- その中で、論文流通はどうなる?
- 研究者はまず論文を投稿する・・・その際、なるべくIFが高いところに出したい
- 購読料ベースの雑誌であれば図書館はアクセス権利を買って研究者がアクセスできるようにする
- 一方でGold OAや機関リポジトリもある
- OAか否かは関係なく、研究者はなるべく高IFをねらっていく
- 研究者はまず論文を投稿する・・・その際、なるべくIFが高いところに出したい
-
- バイオの世界ではOA雑誌が多い。PLoS ONEもそうだし、eLifeもそう。別に理由はないという。
- PLoS ONEはCNSに落ちた論文の書式を変更しないでも受け付けてくれるので喜ばれている
- OAの理念はともかく「OA格好いい」とバイオの世界ではなっている、らしい
- バイオの世界ではOA雑誌が多い。PLoS ONEもそうだし、eLifeもそう。別に理由はないという。
-
- しかしシリアルズ・クライシス
- 今はどこの機関も台所は厳しい。お金は減る。そうなると使わない雑誌は購読中止に
- アクセスのパイプが減っていく。
- そうなると・・・研究者は論文を出すだけではなく査読もする。そのとき、査読対象の中で引用している論文が所属機関で手に入らなかったらどうするか? あるいは購読中止した雑誌の査読を頼まれたら?
- 本来なら万難を排して査読をするのが求められる姿だが、実際には査読実行に障害が生じる
- 読めないだけでなく、学術活動にもけっこう影響する
- 今はどこの機関も台所は厳しい。お金は減る。そうなると使わない雑誌は購読中止に
- しかしシリアルズ・クライシス
電子媒体ネイティブ
- 8年後なら・・・「タブレット端末で読めない論文って、あるんですか?」になるかも?
- 電子論文が当たり前。見かけ上、フリーな電子媒体でなければ読めない世代が出てくるのではないか?
- 教育で「そうじゃない」というのが教員かもしれないが、この流れは抗いにくい
- 電子論文が当たり前。見かけ上、フリーな電子媒体でなければ読めない世代が出てくるのではないか?
- 最近、CiNiiが停電で停止したら、「ギャー」という声がいっぱい上がった
- 8年後にはこの流れは火を見るより明らかに拡大している
- 電子媒体で当たり前に論文を読んでいる
- Mendeleyのような文献管理ソフトも普及している。昔はEndNoteもあったが、クラウドを使ったMendeleyでファイルを管理するように?
- 論文の読みの態度も変わる
- 英国RLUKの調査・・・電子媒体で読めないものがILLされる割合が少ない、という調査*2
- 紙でまで読もうとする人がいるだろうか? 電子媒体ネイティブはそこまでする? 「紙ならいらない」、雑誌も購読中止されるしILLもされないし
- そうなると・・・「自分の論文はフリー/電子媒体にしたい」が自然では?
- OAが増えるのではないだろうか
- 最初からOA雑誌で出す、という人が増えてくるのではないか?
- 雑誌の立場から・・・購読中止の流れが早まると、読めない雑誌には投稿しない、が増えてくるのではないか
- CNSはIFがとんでもなく高いので存続するが、それより低いあたりからシフトが起こり出すのではないか?
Mendeleyについて
- Mendeley・・・見かけ上は研究者が自分の論文PDFファイルを整理する、文献管理ソフト
- 図書館との関係は? なぜ関わりが深くなる? 図で説明
- かつて論文は紙で流通。図書館で読んでいた
- 今や電子化・OA化。PDFで読む、図書館に脚を運ばなくても図書館がアクセス権を買ってくれているので読める
- 図書館に来ないので、図書館側は研究者がどういう文献を欲しているかわかりにくい
- 図書館がMendeley機関版を買うと?・・・所属研究者のMendeley利用、どういう論文を読んでいるかがわかる
- サービス向上のヒントに使えるのでは、とのことだった。なるほどな、と思った
- 研究者から見たMendeleyは?
- 登録してIDを作るとCVが出る画面ができる
- 光ファイバ研究者でのMendeley利用者は?
- Mendeleyではユーザがなんの論文を読んでいるかの記録が見られる。そこで私が書いたOA論文(書籍収録)の読者を見ると・・・読者は3人いた!
- 一方、同じ論文へのアクセスは245回。3/245・・・少ないなあ?
- もっと細かく見ると・・・国際会議で発表した論文で引用した、その国際会議のときにアクセスが増えていた
- 引用元の論文は6人がMendeleyで登録。うち3人がOA論文まで来ていた、とかがわかるのは嬉しいが、Readershipは小さい
- なんで少ない?
- Mendeley登録論文を分野別に見ると・・・バイオや化学は強いが、電子工学はまだ少ない
- もっとユーザが増えないと魅力がないなあ
- でも8年後はどうなるかわからないし、機関版を唯一購読した農林水産研究情報管理センターがどう使うのか楽しみ
- Mendeley登録論文を分野別に見ると・・・バイオや化学は強いが、電子工学はまだ少ない
「情報システムの観点から」(池田大輔先生、九州大学大学院システム情報科学研究院)
- ホームなのかはわかりませんが・・・ネクタイする学会だったんですね(笑)
- アウェイ感がありますが、先にそれを知っていてもネクタイをしたかは・・・
- 情報システムの観点からお話したい
- ちょっと前に土屋先生のREFORMで先々のインターネットを予測するとか無茶もさせられたが、具体例を交えつつ根源的なところから話したい
まず自己紹介
- もとは物理学科⇒いくつかの偶然で情報へ
- 現九大総長・有川先生のところに大学院から
- その後、計算機センター⇒附属図書館専任教員
- 今はシステム情報科学研究員で情報の研究
- 研究室紹介:
-
- 研究室のミッション・・・上記の実現
- 九州大学図書館での貸出履歴に基づく推薦とか
- 民主主義的なデータの利活用を可能にするシステムの基盤を構築する
- 研究室のミッション・・・上記の実現
-
- 研究内容は大きく2つ:
- データの利用・・・マイニング等。もともとやっていた
- Twitterやゲノム等テキスト、ログ、時系列、マルチメディア・・・
- データ基盤・・・もともとはやっていなかったが、キャリア上はじめた
- データベース/情報検索/認証/プライバシー保護・・・
- 今日の話はどちらにも関係
- データの利用・・・マイニング等。もともとやっていた
- 研究内容は大きく2つ:
情報システムの特徴
これまでの取り組み
- SarabiWekoの開発
- アクセスログ解析
- アクセスログのリファラに検索語が残る。「原発」で探した論文にきた、等が探せる
- 検索エンジン経由のアクセスは非常に多い。5割前後(QIR)。逆にいうと機関リポジトリはもともとハーベスタを仮定していたがそっちからは来ない
- メタデータはまり検索の役には立っていないが、それはまた別の道で
- さらに検索クエリがどのデータに一致しているか見てみると?
- 圧倒的にタイトルに一致している
- 専門家が使うDBでは著者検索が圧倒的に多い。リポジトリに来るのは専門家じゃないのでは?
- もっと調べた。タイトルとの一致率は?
- 3割以下が多い。たまたま一般語で探していたら一致した?
- 一般語の定義は難しいが・・・ログ中のキーワードをYahoo!に投げたときのヒット数を見た
- ヒット数の上位/下位を見ると、一般ごと言えるものが8割くらい。もちろん一般語で探している専門家もいるだろうが、研究者以外の利用者の多さが示唆される
「学術情報流通・大学図書館の変化の予想」(田村俊作先生、慶應義塾大学メディアセンター所長)
- 最初、話が来た時、どちらの立場で話せばいいかわからなかった
議論の前提
- 大学と研究者コミュニティ・・・研究者にとってどんなものか?
- 研究者によるコミュニティへの発信
- メディアは最近は本当に多様
- メディア間の秩序もある・・・しかし固定したものではなく、メディアの使い方によって変わってくる
- 出版社と図書館
- 図書館は学術情報流通の中でどういう立ち位置?・・・基本は大学の中にある一部/研究者にいろんな資源を提供する立場にある
- 伝統的には資源=文献あるいは文献へのアクセス
- 教材など、図書館があまり扱わないものも。図書館で扱うのは出版されたもの中心
- 出版社も文献、本や雑誌を扱ってきた
- 図書館が大学の中にあって、構成員としての教員・学生にサービスしてきたのに対し、出版社は学術情報流通に近いところで活動する学術系出版社が、研究者・学会と密接に関わりながら、教員をサポートするような活動をやってきた
- 図書館は学術情報流通の中でどういう立ち位置?・・・基本は大学の中にある一部/研究者にいろんな資源を提供する立場にある
- グローバルにエクセレンスを競う
- 日本語になっていないが・・・競争させられている。大学も、研究者も、雑誌も。特に逸村さんのお話であった作業部会の中で、日本の学術雑誌の国際発信力を高めるという話もあってとりわけ意識させられているのかもしれないが。大学内では文科省の政策もあるし、少子化のこともある。国際的にも、競争する環境の中に、特に今は置かれている
- 特に文部科学省が資金配分を競争的にしよう、ということもあって、大学も優れているところを競うことが求められる
- 研究者は研究者で、有期教員のこともあり、自分なりに実績を上げないといけない。理工医学は特に。質の高い雑誌掲載を目指す必要がある
- 雑誌は雑誌で、少数の、CNSのようなものは別として、日本の学術雑誌なんかだといかに国際競争力を高めるかが課題になる
- 大学は競争することが目的ではないし、ある大学にいるのも、慶應に競争力があるからそこにいるわけではない。楽しいからいる。本末で言えば末にあたるのが競争なのだが、お付き合いしないといけない状況
- よりよいチャンスがあったときにはそれを目指すように行く仕組みができている
現状認識:学術情報流通
- 大学図書館関係、それも研究大学図書館の方は今更だと思うが・・・電子ジャーナルは年々、年々、値上がりしている
- 図書館予算を食いつぶしている。複利で値上がりするので数年で耐えがたくなる。なんとかしないといけないが・・・もう保たないだろう
- 今まで何回も大手大学図書館が電子ジャーナルのBig deal、包括契約から離脱しようとしたが、全部うまくいかなかった
- 何回も繰り返すうちにもうダメだろうな、という感じが出てきている
- その代替として期待されるOA・・・
- OAも動きが早い。そんなに何年も経っていないのに、にわかに「けっこういけるかも」という感じになってきている
- 押し上げる要因はいくつかあると思う。ひとつはビッグディールを基盤にしたやり方では保たない、ということ。もう一つはOAの理念的なもの。それを裏付けるものも登場してきた
- 政府による支援・・・米国・NIHやイギリス、欧州
- メガジャーナルの登場・・・PLoS ONEなど。査読はあるがゆるく、どんどん論文が掲載される
- 商業出版社によるGold OA雑誌刊行・・・著者がお金を支払う代わりにオープンにしてね、と
- SCOAP3・・・個々の著者ではなく、大学の単位で、あるいは国の単位でまとめてお金を払ってオープンにする
- どちらにしても、図書館がお金を払って契約して自身の研究者・学生が読めるようにするのではなく、大学全体あるいは個々の研究者かの差はあれ、図書館を通さずお金を払い誰でも読めるようにする、という話になりつつある
-
- 自発的に情報流通を行うことも隆盛・・・arXiv.orgなど
- 研究者の自発⇒機関サポート⇒全世界サポート、と制度化されていく
- みんなで支える&オープンアクセス
- 自発的に情報流通を行うことも隆盛・・・arXiv.orgなど
-
- OAが盛んになったことで・・・うまく仕組みが作れれば、公共図書館等を通じて一般に向けて知が開かれる可能性も
- ITHAKA Library Survey 2010から*3
- 我が国での呼応する動き:
- 研究・教育・学習支援は単独ではできない/ニーズを聞きつつのサポートが重要
- 今だと教育・学習支援について教員等と連携する試み
- 図書館員の側で・・・図書館員は定型化された業務をずっとやるのが得意で精度の高い仕事もするが、それだけではなくて、交渉・調整業務が増えてきている
- 電子ジャーナルについての出版社交渉
- 機関リポジトリについての教員との交渉
変化に向けた動き:学術情報流通
- 競争環境は変わらない?
- ルール/ツールはどんどん新しくなるので変わっていると思う
- 評価と個人の文献管理等の関連/評価のためのツール・指標もOAと共に変わる?(NISTEP・林和弘氏より)
2020年の学術情報流通
- Big Dealは終わっているのでは?
- 希望的観測
- OA誌がかなりの割合になり、購読誌と併存
- あまり議論に出てこないが、知的なアメニティとしての図書館
- そこにいると休める/なんでもできちゃう場所が大学にはなかなかない
- 公共図書館も同じ。本があっていろんなことができてしまう場所。そういう場所になるのが基盤としてある
- もう1つが知識インフラとして、教育・研究支援の一翼を再編しながら担うのでは?
- 逸村先生:ではここでいったん、休憩へ。後半は15:45から。質問、Twitterでの質問はそれまでに!
休憩タイム
質疑応答+パネルディスカッションタイム
- パネリスト:
- コーディネーター・司会:
- 逸村裕先生(筑波大学図書館情報メディア系)
- 逸村先生:
本来であればパネリスト間でのディスカッションを考えていましたが、まずは質疑応答に応じつつ、追加コメント、という進め方にしたいと思います。
たくさん質問いただいたので、まずは田村先生から。
- 田村先生:
- 研究支援について。「新たな役割が求められるとすれば、既存のどこを整理すればよいでしょうか?」。これははっきりしていて、紙の出版物の処理に関わる部分しかない。既に、実際には払い過ぎとも思うが、慶應の予算の中では電子の占める割合は5割を超えている。しかし人手は紙の本の整理にかけている。予算にみあった形で電子サービスを伸ばすなら、紙の本の整理にかかわる部分を減らすしかない。
-
- 「図書館員の能力とメンタリティはどう変わっているべきか?」。他の人、図書館の外で、図書館以外の教員や他の部門職員、例えば教育支援なら、慶應でも話題になったが、教務と共同で。授業の教材に関わる話を図書館がやろうとすると、教務とつながらないと絶対に無理。そういうところに出かけて交渉できないといけないし、それを嫌がらないこと。それをむしろ面白いと思えるようなメンタリティが求められるのではないか。公共図書館でも同じ。中で定型化されたことの熟達を目指す人の重要さも伝える必要はあるが、基本はほかと一緒になって仕事を作り上げる能力。もう一つは、新しい業務をデザインする能力。そういうことを面白いと思えるような、日々いろんなことが起きる世界を面白いと思えるメンタリティが求められる。
-
- 「学術情報の求めに応じた購入について。論文単位での購入であるPPVが学術情報流通と大学図書館に与える影響は?」。PPVというのは電子ジャーナル契約の一手法であるし、よりお金がなくなったときのやり方。PPVは今の段階ではものすごく割高で、Big Dealの方がはるかにいい、というモデルを出版社が提供している。将来的にPPVがどうなるかは私にもわからないが、現時点ではPPVのことを考えるのは、使っている皆さんにある程度納得いただいた上で、「これだけ不便になります」をわかっていただくしかないと思う。
- 轟先生:
- 「OAメガジャーナルに対する研究者コミュニティの評価は? CNS以外のその他大勢の一つ?」。OAメガジャーナルについては、図書館の会合と研究者の会合で温度差がある。研究所の研究者は誰もOAメガジャーナルを知らない。材料科学・物理の場合。PLoS ONEはバイオの世界の話。SPARC Japanのセミナーでバイオの方と話した感じだと、バイオであれだけ伸びたのはCNSでリジェクトされたのがそのままいけるから。OAの理念に賛同しているわけではないという。ではなぜバイオでOAメガジャーナルが生まれたかは、私見だが、Mendeleyのユーザもバイオと医学・薬学が多い。電子媒体で論文をやり取りする、それも大量にやり取りしているので整理しないと追いつかない分野が、商売として参入するときに魅力的なターゲットだからではないか。そういう観点だと、本当に分野異存。分野の振る舞いがそれぞれ違うので、OAメガジャーナルに対してもそれぞれ変わるのが自然。純粋な学術流通の理念と別にいろいろな思惑がある。SCOAP3は研究者自体が積極的にやっているので理想的だが、あれが全分野にいくとも思えない。あそこはOAメガジャーナルがいらない分野でもある。
- 池田先生:
-
- データの利活用について。特に貸出履歴についての質問があった。これについては2007年に論文も出していて、プライバシーについて、図書館にいたころに「履歴を管理したい」というと「出歯亀だ」と言われる。法律の研究者と喧嘩のようなやり取りをしながら共著で書いた論文。図書館が決めて、舵を切るというのではなく、データをどうするかは利用者が決められるようにしよう、と言っている。消すのも利用者ができるように。今までデータベースは同じような使い方をするものを集めていたが、これから非一様になっていくと、図書館が開示だの活用するのではなく、利用者が活用する、そういう世の中になってほしい。そう思っている。
- 逸村先生:今の質問の答えに関連して追加質問はある? 新たな質問の前に先にフロアから募りたい。どうですか常川さん?
- フロア・筑波大学D2・常川真央さん:Twitterで何度も質問もしていたが、そうですね・・・貸出履歴等の利用履歴について、池田先生にお聞きしたいのは、利用履歴を活用すべき、というのはいろいろな人が言っているが、現実に2020年にそれがコントロールできて当たり前、となったとすると、どうやって利用履歴のデータが標準化されればいいか、という議論が始まるだろう。どういうデータが入っていてどういう条件が満たされれば利用履歴、といえるもの、他のソフトウェアで活用できると思う?
- 池田先生:難しいですね・・・。今の質問の根底には、サービス側が決めることが前提にある、「これが利用履歴だから」と扱いを決めなければ、というのがあるように思う。データの扱いに関して確かに一種の合意みたいなのは必要になる可能性はあるが、うまくいくかは別にして、ボトムアップな方が望ましいのではないか。図書館が「こう決める」よりもボトムアップで合意形成されていく方がいいのでは、と思う。図書館とは違うかも。いろんなメタデータスキーマセットがあってその中で広く使われるものが・・・というようなやり方でもいいかも。何が履歴かを根底から考えなおさなくてはいけなくて、利用者が決めることになるかも知れない。
- 常川さん:プライバシー等の点の問題というよりは、利用履歴をダウンロードしてMendeleyに読み込ませるときに、IDがリポジトリ固有だとMendeleyでは読み込めない、とか。その標準化がいるのでは?
- 池田先生:それはそのとおり。リポジトリの中でもユーザや文献IDはあるが、不十分で、今はIDをつけた人が使い方を決める主権者になってしまっている。ユーザベースで使い方を決めるには識別子から考えないといけない。Twitterでも書いたが、フォーマットはXMLでもJASONでもなんでもいいので、IDや識別子がかなり重要。図書館がそれを決めるから、図書館のコンテンツは図書館のものになる。同じデータがいろんなところにあるとき、今はユーザがそれを別々に管理しないといけない。名前をつける権利がユーザの権利だと思う。それは今、利用者にはない
- 逸村先生:IDについては重要だけれど、この場ではじめると長くなるので打ち切りにしましょう。
- 逸村先生:この場でTwitterを見ている人は? Twitter上だけでの発言の扱いはあとで考えましょう、かたつむりの記録と関係させるとか・・・
- min2-flyコメント:(え?! や、記録とってるので僕自身Twitterまったく見ていないですよ!?)
- 逸村先生:「研究者コミュニティに属さない人と2020年の学術情報流通との関わり方はどうなっているか?」との質問が。これは全員で。
- 田村先生:
今までは一般の人は学術情報にアクセスしない、アクセスしてもわからないことが前提。間に仲介者・翻訳者が入って伝える、という形だった。その形を技術でどう解決できるかはわからない。なんらかの仲介するものがあればいい。無責任な放言になるが、研究者コミュニティの中でそういうことが好きな人がゲリラ的にいろんなことをやるんじゃないか。誰でもアクセスできちゃうと、「俺はこんなふうにやってみよう」という人が出てくるかな、と。もう1つは、そういう風にわっと色々な形で流れる。それを公共図書館のことをあたまに描いて話すと、そういう部分と、インターネットにアクセスすることを想像もつかないような人にどう伝えていくか。そういうものを伝えるコミュニケーションチャンネル。昔なら新聞だろうが、本当は図書館もそうだと思うが・・・。
-
- 池田先生:
一般の人のアクセスを強く示唆するデータがある。九州大学だけでなく、リポジトリ担当者の中でも実感としてそういう話がある。その上で、2020年を考えると、本当にできるかは別にして、eガバメント、直接民主制に近いものができるのではないか。それには情報、factが重要で、その最先端が研究者のデータ。それを直接読みこなす必要はないんだけど、一般の人も見られる。そうなるんじゃないか。学術情報流通を促進する側がそれに対応するような仕組み。図書館の人がなんとかコレクションを作るようなことが必要なのではないか。一般の人がそういうものを作ってもいい。もっと積極的に関わってくる世界になるのではないか。
-
- 轟先生:
一般人との関わり、となれば一般の人でもわかるような素材をかませることが必要。広報室に元*6NHKのディレクターに入ってもらって、そこにムービーライブラリという、敷居の低い素材を置くことが敷居を下げることになる。ほかにもNIMSの研究者ライブラリ・SAMURAIというところでは研究者やその論文、研究者要覧があって、DOI等もあって論文もひける。研究者自らがそこまではできないが、組織としてそういうものを準備することがひとつの方法ではないか。そこに図書館・機関リポジトリに至る道があることが重要ではないか。
-
- 逸村先生:
私も関わりがあることなので言わせて欲しい。2年ほど前に卒論で調べたことがある。インターネット調査で800人に聞いたところ、OAを知っているのは約16%いた。何を知りたいのかといえば、知的好奇心。単に知りたい。それが機関リポジトリのコンテンツと合致して、というのが多い。他にもいろいろ聞いたが、男女で知りたいことは全然違う。
- 逸村先生:これも絶対あると思った質問。「2020年には大学図書館の情報サービスはどのようになっていますか?」
- 田村先生:
2020年・・・そんなに変わっていないかもしれないし、人社系がどうなっているかが大きい。私立大学の図書館は人文社会系中心。それがどうなっているかはわかりにくい。ただ、情報サービスという点でいうと、これはコンテンツにアクセス可能にするためのいろいろな手立てが本質と思う。そのかなりの部分は、アクセスする仕組みに関連する。仕組みをデザインする方に行くだろう。教育支援・研究支援の一部に行くと思う。カウンターでどうこうではなく、コンテンツ・DBへのアクセス支援や業績管理や。それから、さっき知的アメニティとも言いましたが、それに関連して千葉大のアカデミック・リンク・センターで試みていることはこれから先に貴重な経験を教えてくれると思う。各種サポート。その中にコンテンツアクセスサポートもあるはず。教員による支援と学生・院生による支援と図書館の支援、その3つで学生を総合的に支援することを考えていると思う。そういうものの中から次の情報サービスの、対面の情報サービスの形は見えると思う。
- フロア・川瀬さんの質問:(図書館とほかの連携による支援はどうなるのか? ごめんなさい、Tweetしていて聞き逃し・・・ぜひご本人、コメントで補足を!)(コメントで補足いただきました・・・見逃す方もいらっしゃるかも知れないのでここにもコピーします:「私の質問は確か「田村先生のお話では、図書館の一部が教務や研究支援に行く、というような矢印に聞こえたが、逆に図書館が教務や研究支援を取りこむような方向性はないのか」という趣旨だったと思います。あとこれも逸村先生の無茶ぶりだったことが分かるようにしていただけると大変ありがたく(笑)」)
- 田村先生:一緒にやることになるのでは。図書館が教務に口を出せないから、とかで実際には技術的には実現できるのにできていないことが多い。例えば教務システムで教員と学生が読書リストについてやりとりしていたりするのに、そこに図書館が入れない。入る権限を貰うのがひどく面倒。そういうところを変えないと、大学のシステムの使い良さは実現しない。
- 東工大・横井さん:そういう話がまさに東工大でもある。東工大では学位論文の電子公開をこれから義務化する。許諾書を必ず回収しなければいけないので、許諾書を学位論文を認める書類の中に含めた。これから飛躍的に公開数は伸びると思うし、やはりこれは図書館だけではできないと思う。
- フロア・元愛知学院大図書館・作野さん:ずっとやろうとしていたができなかった。お互いの独立意識が高すぎてできない。図書館に移ってから、教務会議にいくら出させて、といってもダメだった。事務長レベルじゃダメ、館長レベルがやってくれないと。
- 逸村先生:話を戻して、大学図書館に期待するもの、あるいはもういらないものがあれば。
- 池田先生:話す前に少し関連して。情報システムの側から見ると、システムはいったん作るとかっちりしていて改変しにくい。これは非常に問題。人事や教務のデータは誰でも使えるものではないのでアクセス制御はいるが、きちんとアクセス制御した上で使いやすいものにする、ということに情報研究者が応えきれていないのではと思う。情報システムとしても連携しづらい。計算機センターにいたときに身をもってなかなか連携ができないことを経験した。
- 轟先生:研究機関にいるものとして。SAMURAIというシステムが一番いい例かと思う。これは人事のシステムとマージすることで実現した。研究者としては普通に研究発表するために必要なフローは変わらないまま、自動でここに放り込まれるように、見えるようになった。非常にいいシステムができたと思う。さらにおもしろいのは、別のセクションが評価に使うとか特許検索に使うとか、運営側にも使いやすいものとして成長してきた。今、図書館で構築している機関リポジトリも人事のデータベースとマージすれば主役に踊り出るのではないか。そのためには汗水たらす必要もあるが、そういう方向性は理想的だな、と思う。
-
- 参照:SAMURAI http://samurai.nims.go.jp/
- 逸村先生:コストの話。誰がコストを負担するのか。現在の雑誌は図書館購読中心。図書館がお金を出して、学内であればIPアドレス管理の下、利用できるようにする。田村先生が慶應は50%以上が電子といっていたが、筑波はもう60%を超えている。対して、OA、Gold OAの場合は著者、正確には掲載決定時に著者が支払う。Article Processing Charge、APC。そうすると査読をゆるくすると収入があがる。他にもPeerJなどいろいろあるが、ここに関して轟先生のお考えをもう一度。
- 轟先生:これは本当にさじ加減と研究者の利己性がからむので、一概には言えない。APCは学生さんがたくさんいれば払いきれるのか、ということにもなる。一般的な話は難しいが、それでも少ない研究費をやりくりして、自身の成果を世に知らしめるにはなるたけフリーにすることがいいのではないかと思う。CNSとの対局だが、両輪でもゴールドOAのみでもいいと思うが・・・図書館購読についてはお金がおりてこないことには買い支えられない、その現状を研究者に知ってもらわない限りは研究者もかわらない。台所事情を研究者ともシェアして、そうすれば「これだけは残して」と研究者も言うだろうし。
- 池田先生:機関リポジトリの存在を前提にすれば最低限のアクセスを担保できる。2020年にはいろいろあってコンテンツいっぱいあるとしたとき、ただそれはwebをGoogleで探すようなもの、それ以上ではない。そこではオープンなアクセスとオープンでないものが並立するのでは? 良い編集には高いお金を出しても買いたい、という人もいるだろう。IFが高い雑誌は編集力が高いということでもある。機関リポジトリでもそれをやれたらいいな、と思うが、根源的には難しいところもあって、機関リポジトリにNatureに載ったものがあれば、わざわざNatureを買わずただで読むだろう。なので、コンテンツにデータをつけたりデザイン等の編集で価値を高めれば、高いお金がかかっても、研究者のモチベーションにそったお金の払い方なのでいけるのではないか。
- 田村先生:今のままの形は無理でもなんらかの形で購読モデルは残るだろう。出版社は雑誌自身の競争・・・価値を高める努力をずいぶんやっている。それにお金を払っている。学術の世界にマーケティングがないわけではなく、すごいマーケティングをした上で質の高い論文投稿の仕組みを作っている。それに見合う料金支払いの仕組みを求めるのは当然。そういう部分は残るのではないかという気がしている。ただ、もっと大きな制度のところで、国レベルで研究補助金を出している側が研究成果をOAにすることを求めてきている。その影響は大きいのではないか。制度自体がそういう形になる。その中で出版社も雑誌もやりくりすることを考えていくだろうと思う。投稿する側は、OAの場合だと投稿料、OA料金をなんらかの形で負担する。それを・・・私の考えだと、仮に雑誌の購読料金が下がらなければ破綻するが、それが下がったとすればAPCに回るのではないか。経費の付け替えの形で対処するのではないか。同時に、発表の機会に恵まれないものについてもなんらかの形で発表する機会をつくる、そういうふうに三重くらいになるのではないか。
- 逸村先生:今回は研究支援がベースにあったが、教育の関係も学術情報流通の一つだし逃げられない。この件に関し、2020年の大学図書館の教育との関わりは?
- 轟先生:私の考えに従って言えば、Mendeleyのようなものを自在に操り研究するスキルを早期に教育することが重要。「自分で」とやれば易きに走るのが学生。EndNote講習等は今もあるが、新しいものにもキャッチアップする必要がある。
- 池田先生:研究は比較的同じレベルの知識を持った人のコミュニケーションなので図書館を介さなくても、コミュニティの中のクローズドな世界で進む。Facebookのような、小さいところは小さいところで進む。だけれども、一般の方も好奇心等で学術情報にアクセスしようというときに、ものごとはいきなり高いところから低いところにいくんではなくて、仲介がいる。アルファブロガーが流行ったときに、彼らに企業が広告を頼んだが、アルファだけではダメでベータブロガーがフォローする事が重要という話があった。そういうところを図書館が担っていくのではないか。
- 田村先生:授業サポートの仕組みをどう作るかは、今は千葉大が刺激になって一生懸命考えている。図書館も相応の努力をしている。うまくこの努力が実を結べば、図書館が日本の大学教育の中でそれなりの役割を果たすものになれるのではないかと思っている。慶應なんかは電子学術書の実験もやっているが、教材の電子化に関する部分が図書館が関われる部分。教材自身には今まで図書館は関わって来なかったが、材料は図書館にいっぱいある。そこをどうつなぐか。それから、図書館が関わらない話はいっぱいあって。春先になるとみんなが買う教科書。電子になって契約して驚いたのは、キャンパス単位で契約しているので、大学の特殊事情は鑑みないで「〜が契約しているから」とか言ってきたりする。そういうところとやらないといけない。そういうことで、教材については材料は持っている。教科書も、基本は学生さんが買ってくれることを期待して対処していたのが、そういう期待を作り替えるみたいなことを考えないといけなくなってきているのではないか。教員の教材作成、教科書を使う授業をどうサポートするかが、図書館も絡む、「が」ではなく「も」絡む課題として出てくる。図書館が先鋭にそのへんのところで対処できるところを持っているのは著作権関係のところ。大きな問題だしそこをクリアするにはこちらも著作権の十分な知識がいるとかいうことに気がついてきているのではないか。教育について図書館がいろいろやる余地は大いにある。ただ、単独で、とはならない。
- フロア・元明治大の方:大学図書館員ができることについてお尋ねしたいのは、慶應では実施されていると聞くが、大学の先生の授業に役立つデータベースの紹介等をアメリカでは図書館員がアップしていて、学生がアクセスできるという。日本ではまだまだ広まっていないと思うが、2020年あたりにはそういうことは重要ではないか?
- 名古屋大学附属図書館・加藤さん:おっしゃっているのはパスファインダー・・・の電子化したもの? 私どもの作っているものは初年次教育、基礎ゼミの、社会と環境などの授業についてある程度自分で勉強できるように、こういう辞書があるとかDBがるとかいう情報の道標を先生方と相談しながら作ったもの。一つ問題になったのは、留学生が増えてきて、英語版を増やすこと。それから、先生方の前で申し上げるのは恐縮だが、なかなかご理解が得られない。FDなんかに行ってお願いしても・・・。それと、今までサービスのことをお話になっているが、それを支える職員の育成も大きな問題で、パスファインダーを作ったりリテラシーをやっていく人間、仕事をしつつかつ自分で自習したり、学位をとったり。教育に踏み込むなら「図書館にいるから教えられる」ではなく、きちんと教育をデザインする、インストラクショナル・デザインをわかっていたりしないと。今までの私どもは「図書館ががんばる」といろいろやってきたが、ユーザである教員・学生が本当に求めるものを作るためにも、私どもは教養教育会議に出て学年暦やFDがどうなっているか、から始めた。
- 逸村先生:最後にパネリストの皆さんから、2020年の明るい未来の為にエールを!
- 田村先生:加藤さんのお話がほぼ全て。大事なのは人的サービス。デザインするだけの能力、交渉する能力を持った人材をいかに揃えられるかで大学図書館のこれからは決まる。そういう機会を少しでも作れればいい。人が揃えば未来は明るい。
- 池田先生:学術情報とは、とプレゼンで言ったが、「大学図書館とは」を考えないといけない。ただ、それは図書館の中の人が考えなくていい。「こういうのもいいんだ」というのをやってくれれば、研究者の人たちが「これも図書館か」と思ってくれる。
- 轟先生:こういう議論の場に研究者は来ないし、皆さんの普段の努力も知らない。皆さんの研究組織にも私のような人間がいるはずなので、発掘して、いろいろ意見を言わせるのが、求めるものを実現する近道では。
Twitterと会場とUstreamとを行ったり来たりしつつのご司会で逸村先生は大変そうでした・・・お疲れ様でしたm(_ _)m
自分も記録とりに夢中であまりTwitterは見ていなかったのですが(1回、自分の論文の宣伝はしましたが(笑))、そちらも大盛り上がりのようでした・・・詳細は冒頭で紹介されていたハッシュタグ(#JSLIS2012)を追ってみてもらえれば幸いです。
でもシンポジウムの最中はもっと皆さん顔上げましょうね!(盛大な「お前が言うな」)
様々な大胆予想も出てきたシンポジウムでしたが・・・OAメガジャーナルがこんな隆盛するなんてつい数年までも考えもつかなかった自分には2020年の未来予想はかなり手強いです(汗)、先生方もその難題に言葉を尽くされていて、熱いシンポでした。
あとこのブログがいっぱい紹介いただけたので・・・記録とっておいてよかったです、便利に活用いただけているようで幸いでした(笑)
さて、最後は言葉少なですが、これにてJSLIS2012関連の記事はおしまい。
引き続いて第14回図書館総合展関連の記事も随時アップしていく予定なので、そちらもお待ちいただければ幸いですー。
*1:min2-flyコメント:BOAIは2002年では?
*2:参考:E1350 - 英国RLUKが設計したEJビッグディールへの代替案<文献紹介> | カレントアウェアネス・ポータル
*3:US Library Survey 2010 | Ithaka S+R
*4:参照:デジタル情報サービスへの移行についてのレポート「大学図書館を再定義する」の全文が公開 | カレントアウェアネス・ポータル
*5:大学図書館の整備について(審議のまとめ)-変革する大学にあって求められる大学図書館像-:文部科学省
*6:2012-11-21 追記。轟先生、ご指摘ありがとうございましたm(_ _)m