かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

図書館系勉強会KLC 「お前は今まで述べた "今後の課題"の数を おぼえているのか? 」


id:humotty-21さんのブログに掲載されていた図書館系勉強会の今年度からの記録です。


図書館系勉強会@つくば、3学期の部が始まりました。
3学期は毎週水曜日、3時限に筑波大学図書館情報学図書館の春日ラーニング・コモンズで開催です!
興味がある方はぜひぜひご参加をー。


ちょっとアプロードが遅くなりましたが、2012年12月5日は[twitter:@min2fly]あるいはid:min2-flyこと私、佐藤翔が「お前は今まで述べた "今後の課題"の数を おぼえているのか? 」と題して発表してきました!

研究生活が長くなるほど積み重なる論文や学会発表。
その多くは最後に「今後の課題」を書いて〆ているのではないでしょうか?
あなたはこれまでに自分が書いた「今後の課題」の数、覚えていますか?
その課題、いったい幾つちゃんと後に解決しました?


皆さんはどうです? 覚えてます?
ちなみに僕は29個でした!!(詳細は以下で)

今回のスライド


当日の読み原稿

はじめに

今日は何か新しいことを勉強した、というよりは、過去の自分について復習した、というような感じの話なんですが。
「お前は今まで述べた「今後の課題」の数をおぼえているのか?」というテーマで、前から気になっていたことをやってみた、という話をしたいと思います。
あ、ちなみにタイトルはちょうどアニメもやっているジョジョの奇妙な冒険に出てくる、有名なセリフのパロディですね。

今日お話するのは「今後の課題」についてですが、これは良く論文や学会発表の予稿の最後の方に、このスライドでハイライトした部分のように書いてあるパートについての話です。
きっと卒論/修論でも最後に「今後の課題」を書くんじゃないかなー、と思いますが、院生生活をやっている中で他にも色々「今後の課題」を書く機会はあるわけで。
その書いた「今後の課題」、書きっぱなしで放置していない、というのが今日のメインテーマです。

背景・動機

なんでそんなテーマに興味を持ったか、ですが。

  • 背景・動機1:研究棚卸

この勉強会ではちゃんと報告していなかったと思いますが、先々月に無事、博論の予備審査も終わりまして、現在着々と修了の準備を自分も進めています。
就職できなくても、なんらかのかたちで環境は変えると思います。
そんなわけで、B4から数えて6年、本格的に研究をはじめてからでも5年分の色々を最近、整理しています。
というのも、どんなかたちであれ新天地にいってもまずは研究業績が求められるので、すぐにできそうなネタがあったら取り掛かれるように準備をしておきたいのですが、その時に一番使えそうなのは過去に述べた「今後の課題」なんじゃないかと思ったわけです。
しかし案外書きっぱなしで何いったか全然覚えていないので、そのあたりきちんと整理してみようか、というのが第一の動機です。

  • 背景・動機2:「今後の課題」研究

で、取り掛かる前にCiNiiや他のデータベースを調べてみて気づいたのですが、「今後の課題」のその後の研究、研究者は論文で述べた今後の課題をちゃんとその後も取り組んでいるのか、言うだけ言ってあとは放置しているのかというのは、意外にこれまでちゃんとは調べられていないらしいんですね。
分野としては科学社会学あたりの研究になるのかな、と思うのですが、これは研究者行動に関するテーマとしてはけっこう面白いんじゃないかという気もしています。
まず自分をサンプルにやってみて、方法論が確立できたらこれ自体を今後の研究ネタにしてみようか・・・というのも、今回の動機の一つです。

方法・対象

じゃあ実際にどういう風に調べるかですが、基本的には過去の業績リストと業績の現物を用意して、論文の最後で何を言ったか、別の論文の中でそれを実際に達成しているか、ということを調べていきます。

  • 対象とする業績等

ただ、対象とする論文等の中には一定の範囲を設けていて、雑誌等に発表した論文か、学会発表、あるいはシンポジウム発表のみを今回は対象にしています。
自分の研究成果を紹介するわけではない解説記事とか、この勉強会のような内向きの発表は今回は除いています。
それと、自分が第一著者か、そうでないにしても相当程度、論文の中身にまで貢献しているもののみを今回は対象にしています。
メインが他にはっきりといて、お手伝いをしたタイプの研究であれば、今後の課題もメインの人が主にやってください、というわけです。

  • 対象とする「今後の課題」

もう1つ、対象とする「今後の課題」はあくまで「研究上の課題」に限定しています。
制度とかサービスをこんな風に改善してはどうでしょう、みたいなことも「今後の課題」として書いていることがあるのですが、それを達成するのは自分の仕事ではなく、制度やサービス側の話になるので。
それはそれで研究で述べたことが社会にどれだけ受け入れられるか、という点では面白いんですが、今回は「自分が、今後こういう研究が必要だと思います」と言ったことについて、どの程度ちゃんと責任を果たしているのか、に限ってまずは見ていくことにしました。

結果

以上の方法で実際にやってみたところ。

  • 「今後の課題」の数
    • 過去5年の対外発表等数:29件
    • その中で述べた「今後の課題」:29件

まず、これまでに述べた「今後の課題」についてですが、過去5年間の自分の対外発表件数は29件、その中で述べた「今後の課題」の合計もちょうど29件で、平均して1回の発表で1つ「今後の課題」を生み出している計算になりました。
あくまで平均で実際には0〜3件の間で幅はあるんですが、だいたい業績を作るのと同じペースで新たな今後の課題も作っているようです。
で、もし毎回、前回の発表で述べた「今後の課題」を解決してから次に挑んでいれば、未解決の課題はほとんどない計算になるのですが、

  • 「今後の課題」のその後
    • 後の研究で解決していた件数:12件
    • 未解決のままの件数:17件
    • 半分以上は未解決のまま!

実際には過去に述べた「今後の課題」の中で、その後の研究で実際にやっていたものは12件、やらないままになっているものは17件で、半分以上の課題はクリアしていませんでした。
これはけっこう自分でもびっくりで、書くだけ書いた「今後の課題」をいっぱい残したまま研究科を去るんだなあ、というのはちょっと申し訳ない気もしています。

詳しく見ていくと、自分の過去の研究というのはだいたいここに挙げた4つに整理できるんですが。
一番ちゃんとやっているのは修論でも博論でも取り組んでおる機関リポジトリ関連の研究で、このテーマについては「今後の課題」の60%は後にちゃんとクリアしていて、残る40%も最近の論文等で述べた課題がほとんど、という状況です。
一方でその他のテーマはずたぼろで、比較的まっとうにやっているオープンアクセス関連の研究でもクリアしているのは33%、「その他」の研究にいたっては自分で述べた「今後の課題」を1個もやっていませんでした。

  • メインテーマと他のテーマ

当然ながら自分のメインのテーマは、前後の継続性を持ってちゃんと研究するので、「今後の課題」の積み残しはおきにくい、と。
一方で卒検でやって、学会発表・論文発表まではしたものの、その後別テーマに鞍替えしてしまった大学図書館アウトソーシングについては、述べた課題のほとんどは放置していました。
その他のテーマについては、「香川の学会でうどん食べたい」とか「台湾の学会で小籠包食べたい」とか不順な動機で、単発で作った発表が多くて、案の定その後は放置しっぱなしになっています。これは我ながらちょっと反省しています。

  • 未解決課題の中身

実際に未解決のままになっている課題の中身まで見ていくと、機関リポジトリ関連のものは、これも当然ですがメインでやっているテーマなので中身忘れるわけ無いですし、未解決のものでもほとんどはすぐに取り組めるネタで、来年度以降はここを重点にやっていこうかな、という感じです。
一方で昔のテーマや「その他のテーマ」で述べた課題ははっきりって忘れていたものが大部分で、かつ思い出してみても色々条件が折り合わずすぐに取り組めないようなのが多めでした。思い出してもネタにできないので、忘れたままでも良かったかも・・・という気もします。

結論

以上をまとめると、案の定というか過去に述べた「今後の課題」の半分以上は放置していました。
特にテーマ替えする前のものや、メインではないテーマに関する「今後の課題」は、言いっぱなしで全然やってないです。
ひどいもんです。言ったことすら忘れている課題も多いです。
しかし、これは整理してみてわかりましたが、思い出してもすぐに対処できるような課題はほとんどありませんでした。
もしかするともっと時間が経てばまた変わるかも知れませんが、当面は使えなさそうなネタが多く・・・
中高生の頃に考えていた創作設定ノートとかそんな感じの位置づけです。

「今後の課題」

さあ、「今後の課題」ですが。
今回使った手法は、業績リストと業績現物さえ揃えられれば他の研究者にも拡大可能です。
試しに図書館情報学分野あたりを対象に、「忘れられた”今後の課題”」の研究とか、研究者をちゃんと「今後の課題」をクリアする人とそうでない人でタイプ分けするとかいう研究をやってみるのは、これは案外おもしろいかもしれないな・・・というようなことを現在考えています。
・・・が、ここまでの例で行くと、これがメインの研究にならない場合、十中八九この「今後の課題」も積み残しそうな予感がしています・・・。

さいごに

皆さんは書きっ ぱなしにならない 「今後の課題」を 書いてね!>卒研生・修士2年の皆様へ




最後は盛大な「今日のお前が言うなエントリはここですか」なオチで〆。
今回は論文・学会発表に限定したから良かったようなもので、この数に当ブログで書き散らしてきた「今後は〜が必要そうですね」の数を加えたらさらに恐ろしいことに・・・。
「今後の課題」は用法・用量を守って計画的に使いましょう。

次回勉強会の予定

次回は直近ですが12/12日にid:satkapさんが「現代の労働環境と労働者の仕事観:産業社会学からのアプローチ」と題して発表予定です。
冒頭にも書きましたが、3学期は毎週水曜3時限に勉強会を開いているので、ここから参加してみたい、という方もお気軽にお声かけくださいー。

では、また・・・あさって??