かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

2016年、京都から知的生産インフラの世界を変えていく!(総合資料館会館開館50周年記念トークセッション「新資料館に期待する」参加記録)


就職して以来、すっかりイベント記録のアップが遅くなった当サイトですが。
7/14(日)は京都府総合資料館で開催されたイベント、総合資料館会館開館50周年記念トークセッション「新資料館に期待する」に行って来ました!

50周年ロゴ京都府立総合資料館は、昭和38(1963)年11月15日に北山の現在地に開館して以来、今年で開館50周年を迎えました。
本年度は開館50周年記念事業としてさまざまなイベントを計画しています。
その第1弾として、7月14日(日曜日)にトークセッション「新資料館に期待する」を開催します。
このトークセッションでは、新資料館について、関西で活躍する若手の博物館員、図書館員、文書館員の方に、期待する機能や役割について自由に話し合ってもらいます。
みなさまふるってご参加下さい。


自分は今回のトークセッションがあるまで総合資料館には行ったことがなく、そもそも「総合資料館ってなんなの? 公文書館?」って思ってたような輩なのですが。
イベントに参加したことでどうもそうとう面白そうな施設が昔からあり、それがさらに府立大学と合築されることでさらに面白いことになりそうであるという事実を知った次第。
先日来の暑さといい突然の土砂降りといいそしてこの総合資料館といい、いやはや、えらいところにやってきたものだと。さすが都。


以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモであり、特に今回は自分の普段の専門と馴染みのない単語も多かったり、トークセッションという性格上、人の名前の記録が難しかったり刷るする*1部分もあります。
ご利用の際はその旨、ご理解の上、お気づきの点などあればご指摘いただければ幸いですー。


では、最初は我らが「偉大なるアーキビスト」こと、福島さんによる趣旨説明から!



趣旨説明(福島幸宏さん、京都府立総合資料館)

  • 本日の構成:
    • まず江上さん、兼清さん、松岡さんの順番で発話をいただく。皆さんにネタを振りまく
      • その後、いったんアイスブレーク
    • セッション1:関西のMLA機関・文化資源の状況
    • セッション2:総合資料館に望むこと
  • 本日のねらい:
    • 新館についてのいろいろな要望を聞きたい
    • いろんなバックボーンを持った方々が集結
      • 主には関西のMLA勤務者
      • 思った以上に関東からも! 全国の動向も踏まえて
    • 今の段階でいうのはただ! どんどん発言を!
    • せっかくの機会。アイスブレーク等を使って交流の場にしていただきたい
  • まだあと数回、イベントはあります
    • 9/29 地域史シンポジウム
    • 10/14 東寺百合文書シンポジウム
    • 11/16 開館50周年記念シンポジウム
    • 1/11 国際京都学シンポジウム
  • ほかに10月半ばから展示もいろいろ
    • 10月:東寺百合文書関連
    • 11月:50周年記念展示
  • 本日はまずはアットホームな場で、膝と膝を付きあわせて、当館への質問をいただきたい
    • ぜひ本日をきっかけに50周年、新施設にご意見をいただきたい

「新資料館に期待する:"図書館"の立場から・発話」(江上敏哲さん、国際日本文化研究センター司書)

  • 今日は図書館の立場から一言
  • まず国際日本文化研究センター日文研から
    • 世界(海外)の日本研究をサポートする
    • 海外で日本を研究する人たちに日本の資料・日本関係資料を提供する立場
    • 最近は『本棚の中のニッポン』という本も書いたり
  • そういう立場で・・・「図書館の現状と課題」を考えてみると?
    • あまり公共/大学全体を広く見ているかはわからないが、課題「めいたもの」
    • 今現在の日本の図書館を考えると・・・TSUTAYASTARBUCKSが目に入るし、当面トレンドは続きそう
    • 最近だと『知の広場』*2や『図書館に通う』*3無料貸本屋を肯定的に捉える論も
  • それらのトレンドをミックスすると・・・
    • エンターテイメント・アミューズメント/公共性・文教施設
  • 後者がファストフード的・エンターテイメント的な場所で何が悪いのか??
    • 1.消費への偏重?
      • 文化消費が悪いとはもちろん言わないが、消費だけを提供する場では良くない。次の知の揺籃・人間・社会の成長につながらないと良くないのでは?
    • 2.地域性・多様性の軽視
      • それらが欠けているところに成熟した文化・学術は生まれないのではないか?
  • しかしそれ(消費偏重/地域性・多様性軽視)は・・・従来の図書館だって全うできていない問題ではないか?
  • 従来の図書館が全うしていないもう一つのこと・・・ユーザ像を限っていたのではないか?
    • TSUTAYA・スタバに集まる人に真摯に向き合わなかったことは反省すべきではないか?
    • 想定ユーザ像だけに基づいてサービスを設計してきたことは反省すべき
    • 想定内だけのユーザ像という点では・・・CA「若手研究者問題と大学図書館界」*4
    • 大学図書館の専門的な知を必要とするのは若手研究者にとどまらない
      • 在野研究者もそうだし、何かしらの専門家、もっと言えば一般市民だって専門資料にアクセスすべき場面はある。そこに大学図書館はオープンであるべきでは?
  • そこで・・・公共性を持つ文教機関が文化資源・学術資源をもって"支援"するにあたり、ユーザ像を限定すべきか?
    • 大学図書館員は「公共図書館を整備せよ」というが・・・今の日本に公共図書館にそんな性格を重複して持たせる余裕が金銭的にあるのか?
    • あるいは・・・そんなに今の日本の公共図書館は使えないのか? 今の日本に知的生産インフラ・知の揺籃インフラは不在なのか?
  • 以上を踏まえて新資料館に期待すること:
    • 公共と大学・研究とをつなぎ、越境する存在であって欲しい
    • 公共と大学をつなぐ=府民・市民と専門知とをつなぐ知的生産インフラとして機能して欲しい
  • なんでそんなに知的生産インフラを強く推す?
    • 人類が今後、何かしらの社会・未来を築く上で、直感・盲信ではなく文化資源・学術資源に基づき理性的・科学的に思考・判断する上で必要と思うから
    • そういうものに新資料館にはなっていただきたい

「多様な資料の公開と博物館をめぐる関係」(兼清順子さん、立命館大学国際平和ミュージアム学芸員

  • 立命館大学国際平和ミュージアムの紹介から:
    • 私立立命館大学京都市内でやっている、世界初の大学立の平和博物館
    • 史料数4万。常設展・特別展・企画展を実施
    • 学生や授業内での活用もしているが、メディア資料室は大学図書館の一部となっていて、開館時間中はどなたも使える。逆に学生には貸出していない(ので、学生の評判はよろしくない)
  • なぜそのような公共性を持っているか?
    • 国際平和ミュージアムのオープン母体が京都市の、平和のための京都の戦争展で集まってきたもの
      • ほかの土地では自治体が受け入れていたが、京都では立命館が集めていた
    • 図書資料だけではなく収蔵全史料を申請すればどなたでも見ていただける。重文とかは全くないので、そういうのがある市内の博物館とは事情も違うが・・・
      • 被爆者の着ていた衣服など、痛みが激しい・もろいものもある。状態が悪いので閲覧できないこともあるが、原則としては一般閲覧可
    • 収集対象:20世紀の平和と戦争に関わるもの
  • 近現代史資料について:
    • 1. 数が多く種類も多いのが特徴。集める側にもとにかくたくさんのものがくる
    • 2. まつわる情報も重要なものに。個人の体験と深く関わった資料も多いので、1930年代の衣服、というだけではなく、どのような人が着てどんな体験と結びつくかも重要
      • これは歴史学等でも注目が高まっている
  • それらの資料を受け入れたときに、新資料館はどう対応していくのか、期待したい
  • 実際の現場では・・・受け入れた資料はまず整理する必要がある
    • 立命館大学国際平和ミュージアムの場合、大学は大きいが館の規模は小さい。資料の整理は学部学生のアルバイトのレベルでやっている
      • 日本史専攻ではない、どころか受験でも日本史を取っていない学生でも受け入れて、学びの機会と捉えてやっている
      • 大学の側の学生への教育提供の文脈では意義がある。そのおかげで学生に整理をしてもらえるというところも
    • 近現代のもの・・・一つの分類だけではなくさまざまな文脈が重要。どこまでつなげる?
      • 例えば戦時中の資料なら・・・植民地から銃後の家族に送られたものは、文面には植民地の状況が反映され、持っていた人の体験としては銃後の人々の生活の資料でもある。それをどう関連付けていくか?
    • 展示・普及時・・・保存とのジレンマ
      • 図書館でも貴重書はそうだろうが、立体資料はよりジレンマ
    • パッケージ化の要望・・・「全部見せられてもわからない」
      • 公立市役所からものを貸す際に「選んで」と言われたり、教材利用時のパッケージ化要望など
      • どれだけのものを公開するか/データベース上にのせるか/つなげるかが今のMLAでポイントだろうが、逆にあまりにたくさんあるとどうしたらいいかわからないので、パッケージ化したほうがかえって活用はされるという話もある
        • とにかく網羅するという考え方は専門家・研究者には有効でも、実際に専門知のない人の活用の場面ではパッケージ化がいるのでは?
  • しかしそうすると・・・資料収集/パッケージ化時に、誰の記憶を伝えるのかというところに戻ってくる

「新資料館に期待する:アーカイブズの立場から」(松岡弘之さん、大阪市史料調査会)

  • アーキビスト=つなぐ仕事
    • ただし兼清さんのような3Dの史料に比べるとじわじわっとくるもの
  • 自己紹介([twitter:@hiroyuki_1412]):
    • 近現代のハンセン病問題に関する歴史研究をおこなったことが興味をもったきっかけ
      • 個人情報との兼ね合い。なにがどこまで提供可能でどう共有知にする?
    • ふだんやっていること・・・大阪市史編纂事業([twitter:@siryo_net])
    • 2011年から・・・歴史資料ネットワーク広報チームを担当
  • 大阪市の状況:
    • 抱えている問題は全国共通のことが多い
    • 大阪市の場合・・・市史編纂事業から資料館へ、という流れにならなかった
    • 京丹後市では史料集も売れている。大阪市もそうならないと、と思ったり
    • 図書館の中での講座に講師を派遣したり、
    • ストックは膨大。その史料をどうするか?
    • 市史編纂事業はまだ公開機能はしっかりしていないが、そこも突き詰めていきたい・・・
      • 史料情報目録2011公開へ*5
    • 書籍流通の変化・・・図書館がどう取り組むかは個々にあるだろうが、そこでこそ一点物、地域にしかないものにどう取り組むか
      • 保存の基準は? 公開の基準は?
      • 寄託された民間史料をどう使うか? 図書館ともつながりながら
  • 市史はあくまで上澄み・・・
    • 地域に入っていって、「おじいちゃんがなんかやっとったらしいわ」みたいなものを、地域のかけがえのない記録として、歴史研究・地域研究の宝の山に変える仕事をしていると思う
  • 一方で大阪市は・・・
    • 都市間競争/上海や東京に勝つには?
    • 昼間人口と夜間人口の差が全国有数に激しい・・・都市内部でも競争が激化
      • グランフロントで北区に人口が移ったり、それで人口が取られたところも色々仕掛けたり
      • それによって地域内でも、新しい地域住民のつながり方が模索されている
      • 例えば北区長:個性的なまちづくりをぶち上げる一方、地域のまちづくり協議会のようなものは北区では他の区にはるかに遅れたり
    • 地域資料を支える余力は減衰している・・・もうすでに資料がなくなりつつある
    • その中で紙⇒デジタルへ
    • 市民の中にも古文書の読める人はすごいいる。その力を取り込みながらやっていきたいというのも今の課題
  • 新資料館への期待:
    • なんと言っても敷居を下げて欲しい。間口を広げて欲しい。勘弁簡便*6なやり方というと変だが、誰でもできる部分が増えることで資料館の活動の幅も広がる
      • 誰でもできる中で福島さんはなんのプロなんだ、ということもあらためて問われる。何が福島さんのプロフェッショナリズムなのか? あらためて問われる
    • 基礎自治体のサポート/人とモノのハブにも
    • 我々が何を為すかではなく、為そうという何かを相手がどう受け止めるかということが問われていく
福島さんからまとめ(?)
  • 江上さんからは知的インフラ
  • 兼清さんからは多様膨大な近現代資料にどう立ち向かうか
  • 松岡さんからは変化する地域にどう対応するかという課題が出された
  • このあとはしばしアイスブレークとしたい



アイスブレーク


セッション1:関西のMLA機関・文化資源の状況

  • 福島さん:

これからトークセッションの1としてお話していきたい。
そんなにがっつり準備してきたわけではないので、発話代わりに3分だけ簡単なお話をして、それをネタ元に先を進めたい。

関西の一つの特徴は、どこもそうだと言われるかも知れないが、資料の大きさや歴史の長さに比べて行政セクターの比重が大きくないこと。
大阪には府単位の歴史博物館はない。
京都府も国立の博物館はたくさんあるが、府や市の単位の博物館はない。行政セクターではないところが担ってきた。
現状では施設の維持が課題になることは実感されていると思う。行動成長期・バブル期に拡大したMLA機関をどう整理するか、という状況になっている。
例えば民間資本の余剰を文化的なことに使うとか、個々人の資産によって支えられてきたところが関西にはあるが、それがかなり厳しい状況の中で変化してきた。個人レベルでも団体レベルでも内部留保をどう使うかが変わってきた。

もう一つは、僕達が学生の時に比べて、大学のプレゼンスがここ20年で積極的になった。
図書館を外の人が使えるというのが土台、新しい状況だし、大学の博物館も整備され、公開講座も広がってきた。

一方、関西の文化資源の状況は、古代から現代まで圧倒的な量がある。人口比に比べても多い。
ただ、多くの場合の関心は中世、江戸時代の段階で終わる。
近代史の本の売れ方は考古学とは桁が2つ違ってしまっている。一般的な関心がない。

最近はそうではありながらも、新たな価値を発見することが・・・きっちりお仕事をされて、文化庁のお仕事を見ていただいても、残すべき価値や文化的景観、街並みに手を付けられている。
指定文化財についても映画フィルムや写真、京都府行政文書のような公文書を指定文化財にすることをしている。
今までは残ってきたものを中心に語ってきたが、これからはどう残すか。
「残」から「遺」へ。意図的に残す段階にしていくべきでは。

発話者からもそれ以外の方からも、自発的にもこっちから降ったりもしつつ、トークセッションして行きたい。
では・・・江上さんあたりに、文化資源やMLAの話を。

  • 江上さん:

そうなんです、今、福島さんからお話あった中で気になるのは・・・中世までが人気、という話があったが、「歴史資料=文化資源」という考えがある。
図書館の人間、歴史屋ではない人間の目では、歴史資料は文化資源のごく一部と思う。
文化資源・学術資源という言葉も使ったが、何かしらのものに基づいて科学的・客観的な判断をするならば、「文化」よりも「学術」という言葉を使いたい。
そこから考える。図書館なら図書館が持つべき、博物館が持つべき、文書館が持つべきものを住み分けしながら遺していくのではないか。

もう一つは、遺していくだけではなくて、勘弁であるけれどもオープンな目録を松岡さんが公開されているように、遺したければ目録をとるべき。
メタデータのないものは遺らない事が多い。
それを目に見えるところに置く、可視化することが大事と思う。

  • 福島さん:

たぶん、松岡さんのお話にもあったが、メタデータを勘弁でもいいからとって、というのは兼清さんのお話とどまんなかと思う。

  • 兼清さん:

私どもは歴史系施設なので、持っているものは歴史資料という認識。文化資源というよりは。
ただ、実際にはそのへんの、近現代史になるとまだ枠を設定する必要がないのかも、というのも日々、意識している。
歴史になってから、判断は歴史が下す、みたいな言い方もあるが、今はまだ現在進行形。
私どもは1931〜の出来事を中心に扱っているが、当時の記録で最近出版されたものも入ってくる。
特定の大学の、特定のミッションを持った館なので、そこから見て大事なら入れていく、という考え方。

  • 福島さん:

他にもやっている博物館もあるだろうが、業界的にはかなりユニークなことなので、そこが平和ミュージアムさんで大事なところと思う。
ものを遺していくならばメタデータを作って公開せよ、というメッセージ。
松岡さんのところでやられていることもそう。
情報を内部化せず公開していくことで遺す。
このあたり、フロアからご意見お持ちの方は。
古賀さんとか?

文化資源という話だが・・・どちらかと言えば歴史資料は遺っているものを考えることになるが、今あるものをどう遺すか、少し前。バブル前後をどう対処し、それで正負双方の遺産をどうするか、遺していくのかは考えておくべき。
特に近畿地区には国立国会図書館関西館があるメリットは大きい。電子的な情報について、関西でこういうことをやっているとか、webサイトには「関西でしらべる」というコーナーまで設けている。
現在進行形で、あるいは少し時代を下ったところをどう遺していくかを考える必要がある。

  • 福島さん:

関西館にキラーパスが飛んでいるw
この話は電子情報も含めての話と思う。歴史資料だけではないはずで・・・ただちょっと言い訳をすると、一般の方の関心はそこになる。
ただ別の文脈で、電子情報も含めて遺すべきものをどうするか。
これは関西館の関係者で誰にふるのか? ふってもいい?

振られたので逆に京都府に振りかえしたいが。
ちょっと話の流れと違うことを考えていたのでそっちに流れて申し訳ないが。
総合資料館さんは京都府の施設なので府の課題にどうサポートしていくかが重要と思う。
総合資料館は京都府の課題にどうリソースを使っていくのか。
総合資料館目線でいろいろやっているのはわかるが、府民として、京都府全体にどう活用していくのかが見えない。
どのようなレベルでどのような議論がなされている? 
おそらく今、古賀先生が言われた「関西」という視点もそれとセットになるべき。
府全域での施策にどう総合資料館を位置づけていくのか?

  • 福島さん:

ちょっと正面からお答えせずに・・・それはセッション2のネタと思うので。
そこの最初でお話することと思う。府全体の中で新館をどう位置づけるかはセッション2に持ち越したい。

もう一人、では若い人へ。考えているはずのw

完全に油断していたのだが・・・どういうことをお答えしたらいい? (福島さん:学術資源の保存と流通について、古典的な文化資源からどうはみ出すか)
授業中にあてられた生徒みたいで恐縮だが・・・電子情報にからめて?
文脈あっているかはわからないが、インターネット情報で出回っているものをリアルタイムでためることはしているし・・・

  • 福島さん:

もう1回、振り直すと。
ちょっとずつしゃべっているので自分のことと気付いてほしいが。
大規模館でないとできない話に振り替えそうになったが、おいでいただいている方の中には、本当に地域に入り込んで、文化資源をどう遺すかという課題に取り組んでいる方もいる。
京丹後市の小山さんい。

文化資源と歴史資料、=に「?」がついているが、ニアイコールくらいで今は考えている。
教育委員会部局にいるのでふだんは文化財に関連して仕事をしている。
「文化資源」ということであれば、今後の文化の向上に資する燃料のようなものということか。
ふだん、仕事をする中では私の浅はかな判断で意義付けせず、とにかく引っ張りこんで、専門の先生に上手くマッチングすることを考えている。
私はあくまでどこまでも地域の専門家。京丹後の専門家。
それぞれの専門家とのマッチングをするのが私の役割で、そこさえ間違わなければ資源をどんどん取り込んでいくことが仕事と思う。

  • 福島さん:

資料の意義付けを考えずに、それぞれの専門の人にマッチングさせる。
そのあたり、松岡さんは近いところと思うが、どうお考え?

  • 松岡さん:

大阪市の場合も、歴史博物館に学芸員もいるし、編纂部局にも人はいる。
一方で、司令塔をどう作るかというところにスケールメリットがいきていない。
文化財保護課は発掘業務の処理に手をとられていて、なかなか・・・市内の真宗寺院の未指定文化財などを少しずつ進められているところ。
発掘調査の専門家はどの自治体にもいるし、ネットワークは形成されている。
そういう方、例えば発掘系の方にまず出てきたところで、考古学をやられている方にどうアプローチしネットワークするかは・・・もうちょっとうまいやりかたががないかは日々考えている。

  • 福島さん:

出てくる課題はどこでの組み合わせでも似たような話になってくる。
そうは言っても3人の話者、この場の皆さんなりの角度でお話はあると思うのだが、もう少しだけ、現状やお気づきのところについて、関西のMLAや文化資源について、会場の方からお話があれば。
もう少し事例が欲しい。
田中さんあたりは?

京都学専攻の教員。
この流れで何を? 事例?
例えば小山さんみたいな方にお世話になっているのは、京都府の北部の教職員組合の資料を発見したときに、どうしたらいいかということで、地元で何とか保存したいと考えたが、京都府は教育行政と組合の関係がよくなかったせいで、資料はほとんど関係者の方しか興味を持たないようなものだった。
でもその資料はもっと色々な方に興味を持ってもらえそうなもので、なんとか地域に置きたいというときに、京丹後市史の編纂室で受け入れてもらって、今は目録を作る仕事をしている。
個人研究費を使うながら目録を作ってデータをのせて広く知ってもらおうとしている。

京都府は目に見えない形で放置されている資料が多く、それについて語れる方の年齢層も上がっていて聞き取りが必要なんだけど、若い研究者も含めて余力がなくてできない。
それに気づいた人がどこにつなげればいいかが見えにくい。
こういった場で話すことで、ネットワークをつなぐ価値があるのではないかと思う。

  • 福島さん:

出てくる課題を、どこへつないだらいいかは、何十年単位でずっと出ている話。
だいたいの認識としては、30分の短い時間でも、現状を共有しつつあると思う。
そのつながり、あるいはMLAの連携、あるいは情報のネットワーク化を阻害している要因があるとすれば、なんでしょう?

  • 江上さん:

MLAが連携をしないと文化資源が救えないんだったら何が連携を阻害しているか、と。
私は福島さん個人に会うまではアーキビストにお会いしたことがなかった。
というより、正直、府立総合資料館がなにをしているかも知らなかった。
今は問題まで考えることができるようになったわけで、互いにもっと知りあって、小さいノウハウでいいから共有するのがいいんじゃないか。
どうもMLA連携の話をこういう場ですると話が大きくなりがち。
日頃の事務レベルでお互いのノウハウを共有しないと、日々の業務の片手間でいいのでノウハウが共有できるネットワークがあればいいんじゃないか。
相手の領域をちょっと教えてもらうだけでもぐっと良くなる。
そういうことからやったらいいのでは。

  • 兼清さん:

大学博物館で働いていると、大学のどの研究機関とも連動していないので、学内でどんな研究があってどんな研究者がいるかもわからない。
シラバスを見てアプローチしている段階。
試行錯誤の中でやっているが、連携がうまくいかない理由としては顔が見えないことが大きい。
ノウハウを共有するためにはどこでどんな人が働いているかを知ること、とにかく目録化がいるというのと同じように、いる人間と資料の顔が見えるといい。
それができていない中で、博物館は残念ながら、倉庫・納屋・ゴミ捨て場のようなところと見られている。
「研究が終わったから置いておいて」と言われてしまって、成果と資料が有機的に連動しない。
それをどう乗り越えるかというと、一緒に働く、協働することが重要。
連携のためのプロジェクトでも、一緒に働くということがひとつの、と思う。

  • 松岡さん:

小さいノウハウの積み重ねも、顔の見える関係もそのとおりだが。
例えば僕達、図書館の中で仕事をしているが、関係者とは月一でごくごく簡単な情報共有をしている。
そういうことから始めるとか、お手元のケータイに相手の連絡先が入っているかということと思う。
あるいは、市史は大阪市公文書館といい関係を築けているが、担当者の雑談レベルでもいろいろやったり・・・
面白話からはじめればいい。つかまえて「どうなんすか?」というようなことをちょっとずつやっている。

  • 福島さん:

小さいノウハウの共有/人、資料の顔が見えることと協働/面白い話から協働へつなげる。
発話者3人からお話がありましたが、この話はだんだん振りにくくなっていきますが・・・実際にこういうのできてるよ、という話でも、こんなところで苦労しているよ、という話でも。
会場においでの方で、「ぜひこういう話しておきたい」という方があれば。

顔が見えないというのは大きなところ。
見えるように無理くりしたのは、職員として非常勤の方が多いのだが、図書館の人を「博物館で働いて、図書館のノウハウを教えて」というようなことをやっている。
図書館の資料部門のトップまでいった人を再雇用して、資料の山を見ていただいている。
各事務局の方から、「前の課長のこの法人文書を・・・」とか、「先生から預かったノートどうしよう・・・」とかいうところを、顔が見えるということで、どうにかしようとしている。

大学でポイントになるのは卒業生というすごく大きなネットワーク。
資料にあたりたくてもあたれないときに、人としてではなくネットワークを頼るときに手がかりをどう持っているのか。
地域とも職場とも違う人のつながりは、つながりをどう把握するのかが最初は難しかった。
それが見えてくれば人とモノはどんどん見えてくる。

  • 福島さん:

「いっそ雇用してしまえ、どうせなら一緒に働こう」という話かと思う。
今のは大学というのを中心としての人のつなぎ方のアイディアと思う。
ちょっとだけ今の話を聞いて振りたい方がいて・・・資料を収集するという意味ではなく、情報を収集して政策に役立てていくお仕事をされている方がいる。
まちづくりセンターの・・・

  • 京都市景観・まちづくりセンター・杉崎さん

わたしたちの大きな仕事は地域のまちづくりの支援。
そうすると、手がかりとしてまちの歴史から入るのが常道。
まちを歩いたり歴史的なものにふれたりをよくする。
そうすると、今はけっこうヤバイな、という議論がある。
語れる人がだいぶいなくなっている。今までは存命の、「この人に聞けばわかる」という人がいたのだが、昭和〜戦後を語れる人はいなくなってきている。
うちは資料を集める組織ではないが、ここは積極的にアプローチしていかないといけない、という話になっている。

明治くらいまでの・・・天皇が東京に行ってしまってからはかなり取り上げられているが、その後、戦後ちょっとまでは資料もない。
それで語れる人もいなくなると・・・という状態。歴史を遺すというだけではなく、現場ではまちづくりをどうするかというところでも出てきている。
門外漢としての話題提供。

  • 福島さん:

どこの時期を考えるかは、京都市の特殊事情ではなく、どこでも重要。
今も生きている方がいる戦後の時代も、遺す必要がある。
国会図書館にふったのもそこらへんの話につながる。時間軸をちょっとだけ過去にふったところ、本当に大事なのはそこ。
資料はあるが可視化・共有されていない。公文書含めてそうだろうと思う。

次のセッションでは新資料館への集中砲火を、と思うが、もう1人、2人くらう振ってから・・・松岡さん、少し。文化資源の話も。

アーカイブズの取材をずっとやっている。
危ないな、と思うのは、現在の記録が残っていないということ。
電子化で量は増えているのになにを遺すかも見えていないのは、やばい。今現在が一番やばいのではないか。

もう一つは、一般の理解はほとんどないと思ったらいい。
一歩、外に出れば誰も理解していない。担当デスクはわかっても、部長はすぐ「なんでこんなもの遺すんや」となる。
それが世間の常識。なんでもいいから目に見える成果をのこしていかないと、一般の理解は得られない。
ちょっとでもいい、なんでもいいから成果を遺す必要が絶対的にある。

  • 福島さん:

今のお話、さすが記者さん、と思うが、「現在が一番やばい」というのは本当にそうと思う。
「意図的に遺す」事が大事、といったのはそのあたり。

もう一つ、誰も理解していない。そこを打破するための目に見える成果、ということ。
今までのMLA連携や文化資源を遺す行為で取り残されていたのは、目に見える成果。
「遺す」ことの分担に話が集中していて、どう利用していくのか。
松岡さんは「相手が何を体現するか」と言っていたが、そこらへんのキーワードにつながってくる。
少しまとめになりつつあるが・・・発話者、行けます? 

いろんな事例を伺いながら勉強させていただいたというか。
図書館の方は司書さんが多いので、その中の雇用も問題も大変なんだろうと思いますが、顔付きあわせてこういう場を作るハブをやっていただいている。
僕もどうしても大阪の目先の書類ばかりやっているところがあるので、こういう場をいただいたのは嬉しかった。

最後に申し上げたいのは、何を出すか、どう体験するかというのは、精神医療の本の中で印象的だった言葉でもある。
「Mならこれを、Lならこれを、Aならこれを」という議論はあるが、それがそれぞれにどう受け止められているのか。
案件分析という単純な話ではなく、受け手側の生活体験・生活世界にMLAの体験をどう入れていくのか。
相互関係がすごく必要になっていると思う。
そのことを言いそびれていたので・・・どうしても、MLA連携というと連携しなければいけないことが前提のようにあるが、それぞれに文脈も強みも弱点もあると思う。
自分の仕事を振り返り、直すところを直しいいところを伸ばす、その中でこういう皆さんとのお付き合いをしていくことが必要なのでは。

  • 兼清さん:

京都大学ミュージアム連携、というのがある。
京都工芸繊維大学を中心とする、京都の大学博物館の連携事業。
2011年に最初にシンポジウムをやったあと、2012年は京都大学の総合博物館で合同展覧会をやった。
参加博物館は京都市内の国公私立の博物館で、仏教系の大学が多いので、そのお宝や芸術系の大学の美術品、京大・同志社大の資料も大事で・・・正直、私どもが一番地味だった。
古いもの・美術品・文書を組み合わせるとなると、それまで顔を合わせることもなかった関係者同士がはじめてお互いなにをやっているかわかるようになった。

それから、これは助成プロジェクトでもあるので、いかに大学の文化資源を京都のまちの活性化に役立てていくかが大きな事業。
大学博物館としてはそれを学生の学びの場としてどう役立てていくかということも。
今年も事業は続いていて、九州産業大の美術館に巡回展も行く。それから大学博物館のスタンプラリーもしている。

あと一言。
新しい体験として、MLA連携をおこなった際に新しい体験としてどう提示できるかがいまうまくいかないのを乗り越えるための課題ではないか。
学際的な取り組みが各分野では盛んになっている。枠組みを越えた専攻は大学の中でたくさんできているわけで、知的体系自体が変わる時代。
そこで遺そうとしている資料への向き合い方も、連携することで新しい向き合い方が見えてくるのではないか。
そこから新しい体験の提示が見えてくるのではないかと・・・具体的な答えは長い時間をかけて探して行きたい。

  • 江上さん:

日経新聞の松岡さんのいうとおり、世間の人に認知されていない、成果をアウトプットしないと、というのはそのとおりと思う。
われわれが・・・私は元は京都大学の図書館に勤めていて、自己紹介は簡単だった。
それが日文研に行ってから、なにをやっているか一生懸命、説明しないといけなくなった。
それくらい、何をやっているかは伝えづらい。
どういう風にしてアウトプットしたら皆さんに知ってもらえるかを考えるためには、我々がまずユーザのことをじっくり向き合って知るべきと思う。
目の前のユーザということではなく、社会一般にどれだけ真摯に向き合っていけるか。

例えば『本棚の中のニッポン』の中では、海外で日本研究をしているユーザがいて、知らないとサポートできない、ということを書いている。
自分たちのユーザが何を思っていて何を求めているのか、こっちから出向いて行って、どこに自分たちの情報を投げるのが効果的なのかを考えてピンポイントに投げることが必要なんだと思う。

  • 福島さん:

要するに、松岡さんは受け手との相互関係、という点。
兼清さんも新しい体験の提示の話と思う。
江上さんのお話は、我々が社会に向き合うことを具体的にどう作っていくかと思う。

たぶん、このお話は先程の積み残しのお話と一緒で、第2部、新資料館への期待にダイレクトにつながっていく。
2部は発話者のお三人+フロアの方からも資料館へのご注文を出していただきたい。




アイスブレークその2


セッション2:総合資料館に望むこと

  • 福島さん:

京都府立総合資料館の説明から。
1963年、最初からMLA複合館として建てられた。
もともと、British Museumをイメージしていて、現物資料の展示や古書資料の公開をやっていて、開館10年後から行政文書の整理・収集・公開もしだしている。
1988年に博物資料の公開を京都文化博物館に譲っているが、収蔵はいまもうちで、収蔵スペースのかなりの部分は博物。

統計データは省略

特徴・・・資料の貸出はやっていない。来て、調査研究していただく場所。
ただ、独特の作り方をしたので、組織的には各ネットワークにがっつり噛めているわけではない。
また、データベース化は遅れている。
ただ、京都の記憶を体系的に読み解ける研究拠点はここと思う。
都道府県の郷土資料室の超巨大版、といったイメージ。

2016年には新施設へ移る予定。
平成20年に基本構想を策定していて、4つのポイントを立てている。

    • 京都に関する資料の収集・保存と積極的活用
    • 公文書館機能の充実
    • 研究・学習・教育支援とネットワーク機能の強化
    • 北山地域のなかの総合資料館

特徴的なのは、府立大学との関係を他の施設に比べて強化していること。
新館では府立大学附属図書館と、府立大学文学部研究棟と合築することがすでに決まっている。
また、国際京都学センターの設置も決定している。
京都学の構築・研究のコーディネーター、京都研究の啓発・普及・支援活動の拠点。

府立総合資料館への要望
  • 兼清さん:

博物館としてはまず、資料を貸してください(笑)
それから、博物館同士、博物館と文書館の連携のハードルを下げるときにどうするかというのは、博物館ではモノの貸し借りでどうしてもハードルがあって、力のある館じゃないと展示ができない。
それほどでもないような館も含めて、色々な館の持っている資料を、府立の資料をどんな形で外に出せるかというのを検討していただけると大変嬉しい。

あとは、関連する所であれば、誰の記憶を遺すのか。
これは私達全員が考えるべきことかも知れませんが、棲み分けについて、具体的に出していただけると、それぞれがどうするか、見えやすくて連携もしやすくなると思う。
具体的な出し方を期待している。

  • 江上さん:

期待としては、スライドにも書きましたが、一般の市民・府民にオープンになりきれない大学等の研究書・図書館との橋渡し役。
府立大学の図書館と合築するというのはいい利点。日本ではなかなかない。ヨーロッパではよくあるが。
ぜひ、一般の市民が大学・研究所の専門知・専門資料に触れられる、越境するものとしてがんばっていただきたい。

もう一つは、海外から、京都に興味のある/学びたい利用者が、商売敵になるかもしれないが、一番に思い出す施設になってほしい。
京都の学の拠点になってほしい。

  • 福島さん:

え、日文研さんのしごととっちゃっていいの?

  • 江上さん:

かまわへんw

  • 松岡さん:

基礎自治体さんのサポートをして欲しい。
アーカイブズとして凄いのはわかるが、その上で、基礎自治体の、公文書館機能自体整備が立ち遅れているところを、広域行政としてサポートして欲しい。
また、関西広域連合のようなところでもきちんとした発信をしてほしい。
そのための人の手当、スタッフさんにどういうプロフェッションが必要かはこれから議論になるでしょうが、利用者のレファレンスにさらされ磨かれながらスキルを磨くには現場経験もいるし、そういうスタッフを育てるにな何年かかかる。
大学との関係もあるでしょうが、スタッフさんの充実もぜひ期待したい。

  • 福島さん:

かなりいろんな課題を最初からばしばしと。
うちの持っている資料はまだ伝わりきっていないと思うので、それをきっちり伝えてどう借りていただくかが問題になるし、アドバンテージを使って、専門知と一般、海外との窓口というのも。
それから松岡さんからは基礎自治体のサポートを、という話も、レファレンサーとしての強み、みたいな話も出た。
最初から色々言っていただいたので、みなさんのハードル下がったと思う。
色々ご注文をいただきたい。

昨年10月にできた組織で、ほぼ10年がかりのしごとでできあがった。
一般市民の理解がないのと同じように、学内でもこういう組織を作ろうとしてもなかなか理解は得られない。
新資料館は府立大学との合築とのことだが、府立大学にはLはあってもAとMはないと思う。
そこを府立大がメインになるのか資料館がメインになるかはわからないが、ケアして欲しい。

  • 福島さん:ありがとうございます。
  • ?・キタウラさん:

菅さんのお話とも関連して。アーカイブズに勤めた経験から、親機関の理解はアーカイブズの成否に関係する。
今回のイベント、「総合資料館に期待する」の主語はなんなのか。
親機関として、利用者としての京都府がおそらくあると思うが、そのへんはどう考えられているのか? これはどこの機関でも悩ましいところだと思うが。

  • 福島さん:

答えていいのかわかりませんが・・・答えられる範囲で。
府立大資料の話とも関連するが、いま、利用していただく方のかなりの割合は、府庁関係者。
全体の数で言えばもっと増やしたい。古い資料を、土木部門を中心に使っていただいているが、それをもっと近いところに・・・なかなかできていなくて、意識的にやらないといけないが、「知的生産インフラ」の一貫になるという議論はあって。
複合館であるうちはそれを図書資料と一緒にできるのが強み。もっとやらないと。

ひとつひっかかるのは京都学。どの範囲まで広げるのか?
かつての首都としての京都? 京都府
主題は? 文化としての京都? 産業? どの程度、「学」というところで捉えているのか?

  • 京都府立総合資料館・井口さん:

京都学を作れと責め立てられて8年。
もちろん、京都市内、旧平安京の範囲に絞る気はまったくない。府立なんだから府内はもちろん、関連地域全部視野の中には入れるべきと思う。
時代も現在までと考えている。
そんな学はあるのかと言われれば、定義はできていないし、定義を論争しても生産的にならないと思う。
一番大事なのは、現代の京都をどういう風に遺すか、記録していくか。
それを課題にしていきたいが、日経のマツオカさんのいうとおり、ここの皆さんはわかってくれても外では誰もわかってくれない。
それが切実に困っているところ、言葉の足りなさもあるだろうが、説明が下手くそで、上の方の理解はなかなか無いのが現状、

寺院資料のアーカイブと寺史の編纂という専門職をやっている。
ただそれとは関係ない話。
以前は農村資料をやっていて、総合資料館を使っていた。
ただ、非常に利用がしにくい。辛辣に言ってとの話にいうが、利用料が高すぎる。
利用したいと思うと、マイクロがないので複写しようとすると、複写料金の高い業者さんに、出張料金を払って・・・と、1コマ百何十円の価格。
そんなのは在野の研究者、科研費とかとれない人間には利用できない。
とても利用なんかできないし、本務もあるから通えないし、価格が利用を阻害している。
価格が行政の価格設定なので、調査によってコストが発生したからとかじゃなくて、開館当時のコストで決めた料金体制を今もやっているはずと思う。
それを今だったらデジカメで無料で撮影できるところ、撮影させてくれないところが利用を阻害していると思う。
MLA連携とか京都学の議論の前に、研究する側に利用しやすく資料を出して欲しい。

  • 福島さん:

公文書はちょっと手続きとお金がいるが、撮影は自分でできるようにした。
ちょっとずつ広げていかないといけないと思うし、今のようなお話は当然、出てくると思う。
デジタル化を進めることが次は大事だろうし、作ったデータを使いやすく公開することも大事と思う。

今のお話はすごく大事で、うちに入ったために資料が利用しにくくなってはいけない。

  • 京都女子大・桂先生:

新しい資料館のwebサイトはどうなるのか。
先々の話ではあるが、今回、インターネットで見て申し込みもしたが、現在の資料館のページは府のサイトの一部で、コンテンツが多く充実しているのに、見た目が・・・
府民の皆さんへのきっかけが持てない一つの理由はインターネットのサイトにあるんではないか。
県立図書館の郷土資料室の拡大版とおっしゃっていたが、それだけで終わってはいけない。
間口を広く、敷居を低くということでは、私達もそうですし、資料館のコンテンツを、自分たちの資料館なんだと、自覚を持って・・・仕掛けをどんどんしないといけない、その一つはwebであったりアーカイブであったりの関わり方があるんではないか。
北摂アーカイブのようなものがあれば楽しいし・・・。


<ごめんなさい、自分の調べ物のためにちょっと記録中断しています>

  • 大阪自然史博物館・佐久間さん

理科系の自然史博物館として。
今日の総合資料館の議論、文系の議論が中心、というのを切実に思う。
文化財の議論はなかなか自然史資料に広がらない。化石や標本に広がらない。
そういった過去の自然環境を知る、現在の自然環境を遺すというのは凄い重要。
いわゆる理科系の分野は、今の文化庁行政からスポーンと抜ける。
その体に従ってはいけない。環境みたいなことを考えるんだったら、ウィングを広げてほしい。
博物館屋としていうと、よその博物館の資料は自分が扱うか、誰かが解題してくれないと、見えない。
それを読み解くためのものは分野外の人間には全然わからないし、それをゼロから探すのはそうとうきつい。
他分野の参入は共同研究の枠組みがないとなかなかはかれないし、それがあれば他分野やアマチュアの参入にもつながるのではないか。

もうひとつ。自然系の博物館は友の会が大きくて、市民参加が進んでいるが。
そういうことをやろうというんであれば、いわゆるプロフェッショナルの連携が主題だと思うが、教育普及セクションはどうやっていくのか。
それが研究に基づいて、研究分野の魅力をどう発信するのか。
本体業務の中でそれをどうやっていくのか。
webはその一つの変化球かも。

  • 福島さん:

ダイレクトに自然史資料を持つことはないが、資料の情報レベルでは、よその情報を入れられるようにDBは作る。
あとは、うちの親の部は文化環境部だし、となりには植物園もある。
そのあたりがウィングの広げ方になるかな、と。

3点目は手段を考えようとしている所。
教育普及というところが・・・うちはセクションとして、あるいはそれを専門にする職員は持っていなかった。
新館機能の中で、第一セッションのときにも話になっていた、成果・・・魅力の発信に、つながっていくだろうと思う。
重い課題を2点、いただいたと思う。

このあと・・・min2-flyが京都でMLAつなぐハブになってや、と言いつつ関西館にも延焼を図る⇒みずりんさんができることはあると思うと回答⇒渡辺さんが連携すべきは地域全体であろうとセッション1の議論に戻す⇒福島さんから「最後の専門性は職員が常に地域に出ていることだと思う」とし、それが重要だろうとの回答+京都力の話
    • min2-flyコメント:ねー、MLAとかUIとかでなく京都関係でかかわりうるものはなんでもここがハブになったら面白いよなあ的な。
まとめ
  • 松岡さん:

市民参加について、教育普及セクションについて、市史部門にいて、どうやったらいいかはいつも考えている。
市民が思う資料と自分たちが考える資料のギャップを埋めるとか、被災資料の復旧とか、いろんな関わりがある。
資料の泥除け作業をしているうちに「なんて書いてあるんですかね?」と市民が興味を持つとか。
それは思わぬ形ではあるけれど、そういう意味では資料ネットのWSはどこでもお呼びいただければやりますので、
尼崎さんなんかはふすまの剥がし取りなんかもボランティアベースでやられていて。
資料との出会いをどうやるか、切り口は色々あると思う。
「これがあんなものとつながっている」というダイナミズムがまちづくりの中でも求められている。
そういう場になってもらいたい。

  • 兼清さん:

最後の方で教育普及、市民参加の話が出てきたが、参加の先は参画になる。
色々なところで参画を名目に空間をなんとかしたり。
私どものところでは常設展の一部は市民団体が情報発信の場として使っていただいている。

ただ、そこで問題になるのは貸ホール化だったり、小さな当初に怯えること。
誰の声を反映していくのかが、市民との関係を踏まえた上での新しい資料館のあり方を考える上で。
どうバランスを作っていくのか。
逆に、ダイナミズムという言葉も出たが、有機的なものを見れば日本の中でも新しいモデルになると思う。

  • 江上さん:

新資料館への期待というよりは、我々自身への期待・注文を述べたい。
第2部でのフロアの皆さんへの饒舌さは1部のあれが嘘のよう。
他者への注文はいいやすい、言葉も出やすいんだと思う。
今日、我々、新資料館に期待するといったことって、自身のできてなさの裏返しだろう。
他人に言いやすいなら、お互いに無責任でも言い合う場を作って言い合って、出たものを互いに持ち帰って自分のところの成長の糧にできたらいいんじゃないか。
とりあえず私はweb発信について、自分のあかんところを見直したい。

  • 福島さん:

あとで館内で反省会をするw
ただ、第一部あってこそ、発話あってこその第二部のお話と思っている。
たぶん、うちが大事なのは、自覚しないといけないのは、小さい京都府ではあるが、日本のモデル、日本だけではないかもしれないが、複合、大学・公共、MLAとの複合だったり、2013年から議論していって2016年に建つ大きなモデルに、うちはならないといけないし、それを自覚しないといけない。
資料との出会いということもおっしゃっていただいたが、そういう場を、情報もそうだし、物理的にも、いろんなレベルで、資料や文化情報を・・・言葉の議論もあったが、そういうものといろんな出会いを作ることだと思う。
僕も個人レベルでやるときには思うことで、この場の方、中継を聞いた方、事後的に見た方にも、今日の投げかけは共有して行きたい。
今日、ここに来た方は応援団と思っているので、いろんな情報発信をしていくので、今日にまさるご注文をいただきたい。




その後は皆さん連れ立って情報交換会⇒さらに二次会、と夜は更けていき・・・。
図書館系とはまたぜんぜん違う方も多くいらっしゃるわけで、そうとう面白がった結果、よった勢いで大先生にえらい口をきいた記憶が・・・(大汗)
そ、それくらい(自分にしては珍しく)興奮する会だったということで、ひとつ。なんとか。


記事本文も大概な長さなので感想はそこそこに(苦笑)
今後もイベントは続きますし、なにより新総合資料館については今後も動きがあり続けるわけで、引き続き注目ですな!
情報交換会の場ではここから日本、いや世界を変えていくという話にまでなっていましたが、実際そうできるだろうしそうなるだろうってことで、注目とか言ってないで応援団に入っちゃった以上は参加していかないといけないですな。

*1:2013-07-17 メールでの指摘を受け修正

*2:

知の広場――図書館と自由

知の広場――図書館と自由

*3:

*4:CA1790 - 若手研究者問題と大学図書館界―問題提起のために― / 菊池信彦 | カレントアウェアネス・ポータル

*5:AHREF

*6:2013-07-17 メールでの指摘を受け修正