「国立国会図書館出向報告:カレントアウェアネス-Eの編集経験を中心に」(京都情報図書館学学習会 #207 参加報告)
皆さん、カレントアウェアネス・ポータル読んでますか。
毎日最新の図書館、図書館情報学関係情報を更新するカレントアウェアネス-R。
隔週で適度なボリュームに図書館関係の動向をまとめて配信されるカレントアウェアネス-E。
季刊で図書館の動向を伝えるレビュー誌『カレントアウェアネス』。
年1回、様々なトピックを取り上げる調査研究。
四位一体で最強に見えるこのサイト、知らなければ業界のもぐりと言われても仕方ない感じですが。
さんざん煽りましたが、実はこの春から自分もこのカレントアウェアネス・ポータルの更新等を一手に担う国立国会図書館関西館、図書館協力課 調査情報係の非常勤調査員をやっていたりします。
たまに自分が更新したRも混じってるよ!
その調査情報係に昨年度まで出向され、大活躍されていた先輩、林豊さんがカレントアウェアネス・ポータル(その中でもメールマガジン カレントアウェアネス-E)の裏側と経験について語る京都情報図書館学学習会が、先週木曜日に開催されました!
- 京都情報図書館学学習会(案内・記録等もあり)
偉大なる、そして乗り越えるべき先輩のお話ということで、これはいかねば嘘だろうと、授業の狭間をぬって参加してきたのでした!
以下、例のごとく当日の記録です。
いつもどおりmin2flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での話であり、ご利用の際はその点ご理解いただければ幸いです。
事実誤認等、お気づきの点があればコメント等でご指摘いただけると助かりますm(_ _)m
「国立国会図書館出向報告:カレントアウェアネス-Eの編集経験を中心に」(林豊さん[twitter:@hayashiyutaka]、京都大学)
- 2011.4-2013.3まで国立国会図書館関西館に出向
はじめに
- 自己紹介:
- 就職7年目。最初は京大図書館中央館。目録⇒ILL
- その後、NDL関西館
- 4月から人環・総人図書館
- 人環・総人図書館の紹介
- 目新しいところ・・・[tiwitter:@jinkansoujinlib]
- 2013.2〜:黒板が目玉(林さんは書いてない):
-
- ゆるゆるわいわいやっている図書館
- 2年前の学習会で・・・ブログ・CA-Rについて紹介した
- その回の記録:京都・図書館情報学学習会記録
- 情報収集の仕方について:
"カレントアウェアネス"とは
- カレントアウェアネスサービス:
- 「最新情報を定期的に提供するサービス」
- NDLのサービス・・・「図書館関係の」最新情報を提供
- NDL:「私たちの使命・目標2012-2016」
- 目標の一つに協力・連携
- その中に・・・「図書館に関する情報発信」がある
- NDLのミッションとしてカレントアウェアネスが位置づけられている
- 目標の一つに協力・連携
- NDLの組織図:
- 全体/関西館内部の説明
- 図書館協力課(通称:ときょう)の説明
- その中に調査情報係
- 調査情報係の仕事:図書館情報学に関する調査研究・情報収集、その成果の提供
- ここからしばし画面を出して説明
- 利用者アンケート結果:
- CA・ポータルのようなサイトに相当するものは意外に海外にはない?
- LCもLCの取り組みは集めているが図書館ニュースは集めていない
- 意外に世界的には珍しい?
- アメリカにいる日本人の図書館員も読んでいるらしい>CAP
- CA・ポータルの旧画面・・・(会場から「懐かしいの声」・・・)
- さらに遡ると・・・外部のブログで勝手的にやっていた「CABlog」というものも・・・今はInternet Archiveでしか見られない
- このあたりをやっていたのが京大から出稿していた筑木さん
- 前史:図書館研究所
- 冊子の編集元・・・当初は総務部⇒参考書誌部⇒図書館協力部図書館研究所⇒後に現在に至る
- 図書館研究所の歴史の詳細はブログを参照:図書館研究所あるいは「図書館の頭脳を持ちたいという夢」について - ささくれ
- 立ち消えになった国立図書館研究所
- 関西館に持ってくることは能わず・・・図書館協力課に
- カレントアウェアネス・ポータルのチーム(2013.3まで/林さんがいたとき):
- 編集長=課長:現在は南亮一さん
- 調査情報係:3人
- 館内外執筆者:
- 館内の他部署:
- 館外・・・加藤信哉さん、江上敏哲さん、id:min2-flyなど・・・
- カレントアウェアネス編集企画員
- 館内職員/館外図書館員/館外研究者
- 林さんも今年からは編集企画員
- プラス、読者+フォロワーの皆さん
メールマガジン「カレントアウェアネス-E」の舞台裏
- CA-Eの概要:
- 過去の特徴的な記事:
- 過去のはてなブックマーク数ベスト10:
- アクセスランキング
- CA-E林さんセレクション:
- 10年間の歩みとCA-Eの変化
- 変化1:長くなった!
- 第1号・・・500文字くらい⇒現在・・・2,000文字弱
- 昔はメルマガしかなかったので短くても意味がある⇒CA-Rができて、500文字くらい書くので、差別化が必要に
- CA-Eが伸びたことでCA本誌との境界が・・・
- 複数メディアの差別化/ポートフォリオが悩み
- 変化2:トピックの広がり・やわらかいものも増えた
- ほっとしてもらえる記事も増やす
- 変化3:執筆者の広がり
- 館外執筆者の増加・・・2012年度には39%が係外、林さん担当の最後の記事は執筆者全員係外!
- 変化4:執筆者の署名が入るように
- 当初は係内の執筆者名なし⇒2012年度分からは切り替え。当該年度分は遡及して署名追加
- 変化1:長くなった!
- CA-E編集のタイムテーブル:はやしさんの1日
- 6:30気象⇒7:30出発⇒着くまでRSS・メールチェック⇒午前中はメールチェックとR⇒午後はRとCA-E等⇒夜:残業⇒22時過ぎに職場を出て23:30に自宅へ
- CA-Eは2週間サイクル・・・カレンダーを表示しつつスケジュール紹介。休みのない2週間インターバル
- 詰め過ぎ・おかしいが今更なおせない?
- CA-Eができるまで:
- 1. 企画・・・主担当は常になにが面白いか考える
- CA-R書く際に、CA-Eにしたいものは短めに抑えて後はEに
- 外部原稿ははやめの依頼
- 企画会議・隔週金曜日・・・係+非常勤調査員で30〜1時間で5〜7本選ぶ
- 基本的にCA-Rから選ぶ・・・書きたいもの/面白そうなものを抜く
- 多いパターン・・・報告書/文書解説、論文紹介、イベント報告、インタby−
- 企画段階で苦しむことが多い/面白そうなネタはあっても自分が書けるかは別問題
- 意見ではなく事実を書くには証拠が要る⇒情報がない段階では書けない。待つしかない
- 中には読みやすいもの、楽しんで読めるもの、ゆるい感じのものも入れる。そういうものは最初に入れて、徐々に難しめにしていく
- ネタを選ぶ眼・・・笠間書院へのインタビューから:「マニュアル化できない部分」
- カレントの仕事はある程度誰でもできると吹いているが、面白いものに反応できるかは、自分にできても人にできるかわからない/後任にもうまく伝えられない
- 1. 企画・・・主担当は常になにが面白いか考える
-
- 2. 執筆・・・
- 形式規定がいろいろある
- 基本の型:リード文+トリガー+本題5〜6段落+〆
- これに沿って書けば凄い楽
- 「〜である」と言い切るか、「〜されている」と報告調
- 最後には参考文献
- 気をつけていること:
- 読みやすさと正確さのバランス/メッセージの明確化
- 1本の記事に10〜20時間・・・土日に読んで月火水で書く
- 2. 執筆・・・
-
- (執筆依頼(外部の場合))
- 館内・・・本人に内諾
- 館外・・・書類を出している+著作権譲渡を決済付きで
- (執筆依頼(外部の場合))
-
- 3. 校正:ドS査読またはサド査読
- 徹底的な原文との対照・・・「書いてあるか」をチェック
- 館外は特に。CA-Eがそういうメディアとの理解がないことがあるので
- 原文の持つ魅力は失わないように。伝えたいメッセージは崩さないように。執筆者のキャラを壊さないように。
- 校正にコストを書ける理由・・・「NDL」の名前で出る。脇は締めておかないと
- 校正スケジュール・・・届いたらなるべく早く目を通し、1回でも多く赤を入れる
- 3. 校正:ドS査読またはサド査読
2年間の経験を超えて
- やってきたこと:
- CA-R:2,399本
- 自薦1:佐賀県武雄市とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が〜・・・*11
- 「これ見りゃこの時点の武雄の情報はわかる」を目指す
- 政治的な薫りのする記事はカレントは避けがちだったが、それは嫌なので気合を入れて書いた。2〜3時間かかった
- 自薦2:神奈川県立図書館および県立川崎図書館の機能集約・廃止等についての検討*12
- 議会資料等をみて書いてあったことを含めて書いた
- その時点では一番詳しい、信頼のおける記事になっていたと思う
- 書いて1日半で5,000〜6,000アクセス
- 自薦3:2012年10月の著作権法改正:国立国会図書館による絶版資料の図書館等への自動公衆送信等を含んだ・・・*13
- 世間は違法ダウンロード刑罰化の話ばかりだったので、バランスをとろうとこっちをタイトルにして記事に
- 「こんだけ違法ダウンロードの話があるのにNDLは自分の話ばかりか!」と言われ帰りのバスは悔し泣き
- 自薦1:佐賀県武雄市とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が〜・・・*11
- CA-R:2,399本
- 情報発信とは?
- 「想いを込めた」と似たようなことを江上敏哲さんも述べる・・・「情報を伝えるだけじゃなくどう変化・影響したいのか」「なにかが変わる、うまれる」「変えたい、うまれてほしい」*20
- 情報発信(情報環境のデザイン)=ライブラリアンの仕事
- 出向で得たもの:いろいろあるが・・・
- 大学図書館以外の館種についても広く関心を持たざるを得なかったこと
- 広がる関心/有り難い2年間だった
- 自分はこれからどうしていきたいのか:
- 正直、出向元へのフィードバックは特に考えていなかった(汗
- 出向元=京大に何かを持ち帰ろうと思わず仕事。働くことが日本全体の役に立つと考えていた
- いつも願っていること
- 自分の強み(≒システム)を活かしたい
- 大きな仕事、影響力のある仕事をしたい
- 今職場にいる「チーム」じゃなきゃできないことをしたい
- 「ファン」を作れるサービスができたらいい
- 今いちばんあるのは「焦り」
- NDL2年間の経験がどんどん抜けている気がする
- 経験を忘れないうちに次に活かしたいがうまくいかず苦しんでいる
- その苦しみについて・依田さんから「現場は現場の人の力でしか買えられない。現場を変えられないのなら、今までお前が身につけたことはなんだったのかと、エールとして」
- 正直、出向元へのフィードバックは特に考えていなかった(汗
このあと2010から授業なので質疑はとれませんでした、ごめんなさい!!
CAの皆さんの日々の忙しさは週1で目にはしていますが、あらためてCA-Eのスケジュール感はえらいことですね・・・(汗)
そして見ればみるほど、CAポータルの4つのコンテンツを組み合わせたモデルは完成度高いなーと思ったり。
これは色々なことに応用可能なんじゃないか・・・とかそんなことを最近ちょくちょく考えています。
林さんの思いについては既にご本人もブログをあげているのでそちらも参照。
考えることは色々あるのですがそろそろ仕事なのでとりあえず今日はこのあたりまでということで。
*2:カレントアウェアネス-R | カレントアウェアネス・ポータル
*3:カレントアウェアネス-E | カレントアウェアネス・ポータル
*4:カレントアウェアネス | カレントアウェアネス・ポータル
*6:2013-07-24 ブコメを受け修正。ご指摘ありがとうございましたm(_ _)m
*7:E967 - 福井県立図書館「覚え違いタイトル集」ができるまで | カレントアウェアネス・ポータル
*8:E1127 - 「ぬいぐるみの図書館おとまり会」現場の様子と舞台裏(日本) | カレントアウェアネス・ポータル
*9:E1088 - 子どものお気に入りのぬいぐるみが図書館でお泊まり会(米国) | カレントアウェアネス・ポータル
*10:E574 - 図書館ネコ「デューイ」,その生涯を終える(米国) | カレントアウェアネス・ポータル
*11:佐賀県武雄市とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が同市図書館・歴史資料館の企画・運営に関して基本合意を締結 | カレントアウェアネス・ポータル
*12:神奈川県立図書館および県立川崎図書館の機能集約・廃止等についての検討 | カレントアウェアネス・ポータル
*13:国立国会図書館による絶版資料の図書館等への自動公衆送信等を含んだ改正著作権法が成立 | カレントアウェアネス・ポータル
*14:国際学術情報流通基盤整備事業 │ イベント情報 │ H24 │ 2012年度第6回「オープンアクセスによって図書館業務はどう変わるのか~図書館のためのオープンアクセス講座~」
*15:E1341 - オープンアクセスの未来に大学図書館の役割として残るものは | カレントアウェアネス・ポータル
*16:E1364 - 米国図書館に関するファクトデータ集2012年版を公表 | カレントアウェアネス・ポータル
*17:E1371 - “図書館で電子書籍を借りる人はよく買う人でもある” | カレントアウェアネス・ポータル
*18:E1252 - マンガ『夜明けの図書館』の作者・埜納タオさんインタビュー | カレントアウェアネス・ポータル
*19:
*20:
*21:最新はこちら:カレントアウェアネス-E No.240感想 - ささくれ