かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

DRF第2回ワークショップ「機関リポジトリをデザインする-設計とコンテンツ」、動画配信


http://www.ll.chiba-u.ac.jp/~libinoc/modules/pico/index.php/content0022.html
ちょっと前の話だけど、DRF(Digital Repository Federation)の第2回ワークショップの様子(講演会と共同討議)が動画配信されていました。
以下、講演と共同討議(議事録)のレビュー。


「二股に分かれた長い尻尾」(千葉大学教授・附属図書館長 土屋俊)

日本の研究における文献需要の中で紀要が占める大きさをNACSIS-ILLのデータ解析から再確認した上で、機関リポジトリに紀要を収録して、それらを共同利用する体系が出来れば文献複写の手間を相当な割合減らすことができる、っていう講演。
REFORMの際にも出てきたNACSIS-ILL分析の話に力を注ぎすぎて、肝心の紀要と機関リポジトリに関する部分が駆け足で済まされるという・・・(苦笑)


ちなみに良く複写のやりとりが行われている紀要の一つとして「筑波大学心理学研究」の名前もあがっていました。
名誉なんだか不名誉なんだか。
不名誉か。電子版公開してるのに複写依頼が多いんだから。

「コンテンツ、コンテンツ、コンテンツ」(筑波大学教授・文部科学省学術調査官 逸村裕)

機関リポジトリにどんなコンテンツを納めようか、という話。
日本の学術情報政策についての話とかともからめてあって面白い・・・初見なら・・・REFROMや授業で見たり聴いたりした話が多いのは、さて、同じ話を何度も聞いているとみるべきか、授業で最先端のことを教えられているが故の現象であると考えるか。
まあ後者だろうな。
そもそも逸村先生の授業を聞くまで機関リポジトリの存在すらよく知らないような状況だったわけだし。

共同党議「日本の機関リポジトリをデザインする-研究者の視点から」


これは動画は見ないで議事録だけ確認。時間短縮できるならそれに越したことはない。
気になったのは2点。


・「〜(紀要に関しては)著作権に関しては『盗用されたらどうするか?』など電子化に対して慎重な意見を出す教員もいる」

いやいやいや。
紀要とは言え、世に出した論文について「盗用されたらどうする?」って、訴えなさいな。
機関リポジトリに載せて人目についたら盗用されるってことなのか?
そんなに盗用されるのが嫌なら紀要でも公開するなよ。
最初から査読付きの学術雑誌に投稿すれば良いじゃん。


・(レポートやメモなども含め、一切の生産物を収録すべき、という意見への反論を受けて)「知的な成果物なら、メモでも共有財産だと思う。本人が嫌でも、役立つことがある。隠したい気持ちもわかるが、失敗も含めすべてを見せることにも意味がある。知的な成果物なら公開すべきである」

いやいやいやいやいやいや。
それこそ、アイディアの盗用とかが横行しますからっていうか公開した時点で盗用とすら言わない?!
論文になる前のメモ類ってのは、まだ公開の段階にないものとか、元来公開する意図のないものなんだから、そんなものみまで共有することを強制したら、むしろ機関リポジトリや図書館への反発買うんじゃないかなあ・・・
俺だって今は機関リポジトリ推進派だし、論文その他、公開目的で作成した成果物についてなら機関リポジトリに掲載してもらって全然かまわないけど。
手元にあるメモ類まで「出せ」って言われたら、さすがに嫌だなあ。
っていうか一発で反対派に回りそうだなあ。



すべての事柄に言えることだけど、大切なのはバランス感覚だよね。
まあ、オープンアクセス運動におけるハーナッド氏とか、今回の共同討議内での発言者さんみたいに、過激なくらいの意見をもって旗を振る人がいないと運動の盛り上がりとかは起こらないわけだけど。
ある程度盛りあがったところから、実務レベルまで持ち込むときに必要なのは、反対派からも非難を買わないような落とし所を見つけて決着をつけることなんじゃないだろうか、とか思う昨今。