「自治体のアウトソーシング」
先月末(っつーかつい3日くらい前まで)図書館と民主主義の関係についての論議の中で「誰もが『俺定義』で語ると議論がかみあわなくなる」的な話も出ていたが。
今、その意見に心から同意したい。
勝手な「俺定義」でアウトソーシング語るな、ややこしい!
- 作者: 今井照
- 出版社/メーカー: 学陽書房
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 単行本
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内容は地方自治体の行政の委託化についての話なんだが・・・
タイトルに「アウトソーシング」ってあるから騙された。
こんなんアウトソーシング論じゃない、従来の「小さい政府と大きい政府」論を言い換えてるだけじゃないか。
ウィキペディア大先生にも書いてあるが(アウトソーシング - Wikipedia)、本来「アウトソーシング」ってのは「アウト=外部」の「ソーシング=資源活用」であって、「今やってる仕事のうち外の業者とかでもっと上手にやれる人がいるならそいつらを活用しよう」っていうような概念。
外部資源をうまいこと活用することで競争力を高めよう、っていう競争戦略なわけですよ。
ところが「自治体のアウトソーシング」の中で主張されている「市民社会への分権と市民自治による社会分権型アウトソーシング」は、基本的にはいま行政がやっている仕事の中で本当に行政がやらなきゃいけないものを切り分けて、それ以外は社会化=民間に任せるなり市民参加募るなり・・・っていうような考え方。
つまるところ「自分たちの仕事を外に出していこう」っていう論であって、「外のものをうまいこと中に取り込む」ことが本義のアウトソーシングとは似て非なるものである。
なのに「アウトソーシング」なんて言葉を使うものだから話がややこしい・・・
「行政の役割、行政機構の見直し」って言えばすむことだろうに、なんで「アウトソーシング」って言葉を使うかなあ。
それとも現在、自治体絡みで行われている「アウトソーシング」はみんなこの程度の認識でもってやってるんだろうか。
なんだかなあ・・・
「行政機構がやらなくてもいい仕事だから」くらいの意識で業務の委託化をやっているなら、(いや、別にそれはそれでもけっこうなんだが)、そんなもんはアウトソーシングじゃなくて昔からある単なる「外部委託」だろうに*1。
「行政機構がやるよりも、外部に委託した方がよりよいパフォーマンスが得られるから」っていう理由で行われるのが本義的な意味でのアウトソーシングだと声を大にして叫びたい。
せめて「行政機構がやっても外部がやってもパフォーマンスは変わらないんだけど、ある業務を委託した分、行政は別の(行政にしかできない)業務に集中できるので、結果的に自治体全体での行政サービスのパフォーマンスがあがるから」って理由で行われるのであれば納得もいくんだが・・・
ま、そもそもが競争相手が明確じゃない行政に「アウトソーシング」って概念を持ち込もうというのが難しいのかもしれないが。
・・・いや、でもちゃんと考えればできるよなあ・・・。