「酸素は鏡に映らない」
- 作者: 上遠野浩平
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/03/30
- メディア: 単行本
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講談社ミステリーランドレーベルっていまいちよくわからない。
児童書と一般書の中間くらいの位置づけかと思っていたんだが・・・執筆陣はいったいどういう風に選んでるんだ??
田中芳樹やはやみねかおるはわかるが、よりにもよって上遠野浩平かよw
案の上、児童書でもなんでもないし。
っつーかいつもの上遠野浩平じゃん。
ハードカバーで文字がでかくて、装丁も格好良くて読みやすいが、その分高い。
講談社BOXレーベルといい・・・「売れる」作家から少しでも利益を吸い取ろうという試みに思えてならないのは俺の偏見か?
それでも買う読者が悪いのかー?
まあ講談社への文句はさておき。
「酸素は鏡に映らない」、ちょっと前に出ていたことに先日まで気付かなかったわけだが、大阪0泊3日ツアーの際に丸善オアゾ店で存在を知り、東京駅へのお使いの際の駄賃で購入。
ミステリーランドレーベルということで、なにか違うかと言えばそんなこともなく。
「酸素」という単語からしてもうディープな読者なら推測がつくと思うんだが、例のあいつが出てくるいつもの上遠野世界です。
・・・ブギーポップ読んだことのない奴にはなにがなんだかわからないんじゃないか、この話。
特にラスト近辺とかは凶悪です。
おそらく、ミステリーランドで初めて上遠野に触れる希少な児童は置き去りにされるだろうこと間違いなし。
完全に俺みたいな大きなお友達対象じゃねえかこれじゃあ。
などなど、ミステリーランドレーベルで出すことへの疑問は多々あるのだが、一方で最近の上遠野作品としては割とスマッシュヒットだった。
やたら特殊能力を使った戦闘シーンや鬱展開が多い最近のブギー系列は一回読んだら読み返す気にならない感じだし、しづるさんは、まあ、・・・だし、ソウルドロップ系は悪くないんだけどなんか間延びした感じがあるし、事件シリーズは嫌いじゃないんだけど割とお腹いっぱい・・・と、最近の上遠野って俺の中でいまいち評価低かったんだが。
「メイズプリズンの迷宮回帰」で「あ、ちょっと戻ってきたかな?」と思ってはいたが、「酸素は鏡に映らない」はそれ以上に「おお、なんかいい感じ」って感じ。
一応、ミステリーレーベルってことでミステリーを意識したつくりとか、児童向けなのにいつもどおり全開な上遠野節とかもプラス要素ではあるんだが。
それ以上に、今回割と重要なキーになった「世界の支配者」についての考察が割としっくり来たのが良かったのかも。
やっぱ、上遠野はなにを言ってるんだかわからないなりに何を言ってるのかわかるのが味であって、本当になんにもわからなくなっちゃうと味がないよね。
あと、最近殺伐とした話が多かったり、しづるさんみたいに未来への不安要素が大きい話が多い中で、今回の作品は割と(まあ殺伐とした奴も出ては来るんだが)穏やかな感じがしたことも好印象だったのかも。
上遠野作品では今も昔も「ペパーミントの魔術師」とその前後(「パンドラ」、「歪曲王」、「夜明けのブギーポップ」)あたりが一番好きなんだが、あそこら辺って戦闘シーンもあるにはあるんだけど(っていうかめちゃめちゃあるけど)、妙に穏やかな感じというか、メインは戦闘シーンではなく会話シーンであったりモノローグであったりする気がして。
「酸素は鏡に映らない」は、割とそのころのブギーポップに近いような感じがして良かった。
うんうん、まだまだいけるじゃん、上遠野浩平。
あとはせっかくできたブギー系列に連なる話を立て直すきっかけを潰さないで次につなげて欲しいなあ・・・。
ラストの流れを大きく壊さず次につなげられれば、少なくとも「ハートレス・レッド」くらいには好きな話につながっていくんじゃないかと期待したい。