かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

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「国立」の重み、彼らの本気-「C-Japanシンポジウム-知流社会の羅針盤-」-


昨日も書いたけど、行ってきました、C-Japanシンポジウム。

c-Japanシンポジウム- 知流社会の羅針盤 -

日 時:2007年4月11日(水)13:00-17:00
場 所:学術総合センター内 一ツ橋記念講堂
主 催:c-Japanシンポジウム実行委員会
後 援:NII 国立情報学研究所 NICT 情報通信研究機構 NHK 日本放送協会 NTT 日本電信電話株式会社


講演者の一人が最近、国立国会図書館の新館長になられた長尾真さんで、それだけでも聞きに行った価値はあったと思ったのだが(ちなみにそのことに会場入りするまで気付かなかった)。


実際のシンポジウムを聞いて、本当に聞きに行って良かったと思った。


大筋としては今までの大容量通信技術などの「量」から、コンテンツの質や技術によって実現できる社会、人の心の問題などの「質」へと転換していこう、っていうのが中心にある考え(なんじゃないかと思った)。
最初に講演された曽根原登教授いわく、

「50年後の日本を考えたとき、地理的・歴史的な要因や、少子高齢化の現状を考えれば、経済的・政治的に世界のトップ集団に居続けることは難しい。
これからはそういう物質的な価値ではなく、心の豊かさに重点を置いて「世界に尊敬される国」を目指していくことが必要だ。
そのために、ICT・情報学から貢献できることを模索していきたい


c-Japanの"c"は、
"Content"であり、
"Communication"であり、
"Culuture"であり、
そして"Cool"である。


いかに日本の「格好良さ」を演出し、実現していくか。
そのために情報学の分野からできること、そのための課題を考えていくことを宣言したい。

みたいな感じ(講演中にとったメモに基づくので言い回しの違いとかはたくさんあると思う。ゆえに引用記号を使うべきではないのかも知れないが、見づらかったのでつい。請、容赦)。


で、そんなような話の上に立脚して、主にNIIの先生方が抽象論的・目指すべき未来への戦略的な部分を講演し、それを実現するための具体的な技術や、各分野が実現のためにできることなどをNTTやNICT、東京電機大などの先生方が講演する、といったスタイルで全体が進行していった。


いや、なんていうか。
やばいわ、国立情報学研究所
本気で50年後の国の未来考えてる。
「国立」の名を冠するのは伊達じゃない。
マジで格好良いと思った。


「知流社会」(知=質に重きを置く社会)って考え方もおおむね賛成。
ただ、最後にソニーの研究者の方から企業からの視点としてコメントがあったが、「心の幸せだけでは食っていけない」のも確かなわけで、そこら辺の折り合いをうまくつけながら話を進めていく必要があるかとは思った。
もっとも、世界トップランクから落ちたからっていきなり貧窮国になるわけでもなし。
NIIの方々も言っていたが、むしろイメージとしては北欧の国々みたいに、「世界ナンバーワンではないけれど、住みやすいし、存在感のある国」を目指そう、ってことだろう(先生方は「山椒は小粒でもピリリと辛い」と称していたが)。


あとは、やはり割と「経験豊かな」先生方が多いせいか、「ネット社会・実社会融合型のセカンドライフを演出」とか、「京都人の生き方に学ぼう」みたいに、落ち着いた感じの社会(まさに「北欧型」の社会?)にしていきたい、みたいな感じがしたのが、弱冠21歳の若造としては不満と言えば不満。
確かに、京都方の落ち着いたような感じも日本の価値観かも知れないが。
秋葉原みたいな雑多な価値観も、やっぱり世界で認知されてる日本の「Cool!」さの一つなんじゃないか。
以前ドイツからきた語学の先生が言っていたが、すでにドイツの漫画市場の7割は日本から輸入された漫画が占めているという。イギリスの学校司書も「児童は日本の漫画ばかり読んでる」と嘆いているし、Youtubeでは中国人が演奏する日本のアニソンのピアノ版が流れてる。
穏やかなばかりではなく刺激を・・・というとなんだかアホっぽいが、なんつーか、そういう日本の活力みたいなものは存分に活かして、世界に存在感をアピールするのも重要だろう。


などなど、思うところもないではないが、でもやっぱりすげえよ国立情報学研究所とc-Japanシンポジウム実行委員会。
残念ながら筑波関係の人々は新入生オリエンテーションのため全然参加できていなかった様子だが・・・マジもったいない。
情報学群情報科学類、情報メディア創成学類、知識情報・図書館学類)とか、もろに関係ある内容だったのになー。
いっそオリエンテーションやめてみんなで講演聞きにくればよかったのに。
そしたらこれから自分たちが生涯をかけて取り組んでいくべき課題が一年生にも見えたんじゃないだろうか。
一年生のころって基礎が多いから割と自分がなにをしたかったか見失いがちだし。
そういうときに、今回のシンポジウムみたいな内容を思い出せれば、学習への意欲とかにつながるんじゃないかなあ・・・とか思うんだが。


・・・まあ、ただでさえ入りきらないくらい人がいたんだから、この上一年生が押し掛けるなんて不可能だったろうけどね(苦笑)
10月には「c-Japan宣言」を新書サイズにまとめて発行する予定、っていうし、一年生とかに教えるのはそれからでもいいかー。


やあ、しかし本当に聞きに行って良かった。
またなんかあったらぜひ行きたい。