かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

デュアルディグリープログラム導入:ちょ、それなんてサブジェクトライブラリアン養成システム?


5月14日付けの「筑波大学新聞」最新号*11面で、平成20年度から博士後期課程を対象に「デュアルディグリープログラム(DD)」なるものを実施することが決まった、と報じられていた。
同紙によれば、DDとは博士後期課程に在学する学生が他の研究科の博士前期(あるいは修士)課程に同時に在籍することができるというもの。
4.19に行われた教育研究評議会で承認され、来年度から実施されることになる。
「専攻分野に関連した他分野について学ぶ環境を提供することで、新領域を切り拓く研究者や高度専門職業人の育成をはかる」のが目的とのことで、履修モデルとしては「博士課程システム情報工学研究科でロボットについて研究する学生が、ベンチャーの起業を目指し、修士課程芸術研究科でロボットのデザインを学ぶ」といった例が考えられているという。
もちろん、博士と修士の両方の学位を同時にとることも制度上可能になるという。


・・・と、ここまで聞いたなら、図書館情報学者(特に大学図書館より)なら考えずにはいられないわけですよ。
それ、うまいことやれば積年の課題の一つであった「サブジェクトライブラリアン」*2の育成、それもアメリカ型の「学位を2つ持った」サブジェクトライブラリアンの育成が、夢じゃなくなるんじゃね?
今までこの「学位2つ」って設定については「アメリカには同時に2つの学位がとれる制度があって、それがない日本だと難しい」みたいな説明がなされることが多かったわけだが、DDが導入されることで事情が大幅に変わってくるわけで。
図書館情報メディア研究科で博士とりながら教育修士とるとか、逆に他の研究科で博士とりながら図情で修士とか、本当にとれるようになるわけですよ。
しかも同記事によれば「入学金や授業料は博士後期のみで徴収する方針」とのことで、願ったりかなったりじゃん!


修士-修士でDDができるようになればさらに学位2つのライブラリアンが現実味を帯びてくるわけだが、差し当たり博士-修士でも大きな一歩であることは間違いあるまい。
min2-fly自身は図書館員になる気さっぱりない(あくまで生涯一研究者・一利用者でいたい)が、「図情の学生は図書館以外の専門がない。それだと他に対抗できない」みたいなことはよく言われるわけで、機会とタイミングがあったらDDを活用してみるのもいいやも知れない。
条件は「博士後期の研究科における審査を通過し、さらに博士前期や修士の入学試験に合格したもの」だそうなので、あんまり専攻から遠い分野(自然科学とか)だと無理だが・・・
社会科学や人文科学なら、あるいは・・・*3


しかし、学群生も大学院の授業とれるシステム作ってみたり、最近の筑波大学はやる気満々だなあ。
副学長(教育)が工藤典雄先生になったから、ってだけではあるまいが・・・いやいやいや。
ここにきて「入って良かった」感が増すばかりだな筑波大学


・・・あとはそれをうまいこと社会にアピールする能力さえ身に付けてくれれば・・・(はぁ)

*1:残念ながら2006年以降、web版は更新停止中

*2:図書館員としての知識・スキルのほかに、専門主題に関する知識(たとえば医学とか、歴史学とか、工学とか)も兼ね備えることで、専門の研究者や学生に対しより高度なサービスを提供できる図書館員のこと。アメリカをはじめ欧米の大学図書館などに割と多く存在。日本だと慶應とかにはいるのか? アメリカだと大学図書館員の条件が「図書館情報学のほかにもう一個なんかの学位」であることが多いので、必然的にサブジェクトライブラリアンが生まれやすい環境があるとも言える。

*3:情報工学? 一番無理っす(汗)