かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

他人がやってるから自分もやるべきか、他人に逆らって我が道を行くべきか(著作権)


ネタ元:

2007年4月27日に開催された、文化庁文化審議会著作権委員会に設置された「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」第2回の配布資料が、文部科学省のウェブサイトで公開されました。国立国会図書館を含む関係者ヒアリングの資料も含まれています。(CA-R 5/16の記事より抜粋)


この「関係者ヒアリング」が面白い。
社団法人日本文藝家協会をはじめ、日本漫画家協会日本民間放送連盟青空文庫クリエイティブ・コモンズ・ジャパンなど、著作権問題の利害関係団体それぞれの意見がよくわかる。


期間延長問題に限って言えば、漫画家協会(代表は松本零士)みたいに著作権者側の見解のみから延長を求められても「死んでから70年も守ってもらってどうすんだよ? 50年で十分じゃね?」としか思えないが、一方で文藝家協会みたいに「死後50年だと2016年には江戸川乱歩著作権すら切れてしまう。これは日本にとっての損失だ!」っていう意見には耳を傾けるべきところも多い。


著作権絡みで言えば、アメリカがベルヌ条約よりも長い著作権者の死後70年に保護期間を延長したのには、第二次大戦以前の高い競争力を持った著作物(ジャズとかアニメとかいろいろ)がパブリック・ドメインに入るのを防ぐ思惑があるわけで。
国内よりもむしろ海外をにらんだ著作権政策なんだよな(だから中国とか、海賊版を横行させる国には本気でキレる)。


そうやって諸外国が著作権期間を延ばして少しでも国の競争力を高めようとしてる中で、日本が馬鹿正直にベルヌ条約の範囲を超えずに「死後50年」であり続けるのはどうなんだ、ってのはもっともな意見。


ただ、そういう著作物がパブリック・ドメインになるのを防いで金儲けするようなやり方自体がそもそも問題なんじゃないのか、って考え方もある。
確かに諸外国が「死後70年」にしてる中、日本だけ死後50年なのはなんか馬鹿みてる気分だが、そもそも諸外国の「死後70年」の方がある種の「ずるさ」を感じさせるやり口である。
「他人がやってるから自分も」の論理で安易に保護期間を延長するんじゃなく、「いや、そんなやり方はいかん。死後50年くらいでパブリック・ドメインに入れて、誰もが使えるようにする方が著作物の正しいあり方なのである」っていう方針を明確に打ち出して、保護期間を延長しない、っていうのもなかな「格好良い」んじゃないだろうか。


NIIのc-Japan戦略では、"c"に「Contents」や「Culture」の意味のほかに「Cool!」って意味も持たせていた。
50年後の日本を見据えて、「日本の格好良さを演出する」というときに、単にCoolなコンテンツをガンガン世界に発信して儲けていくだけでいいのか。
それとも儲けることは儲けるんだけども、一方で著作権などの問題について安易に世界に迎合しない、日本独自のCoolな姿勢みたいなのを打ち出していけるのか。


「保護したければ保護すればいいし、使いたければ使えば? でも、君らが必死こいて守ってるようなものなんか使わなくたって日本はもっといいものを作れるし、君らがどんなに僕らの過去の遺物を使ったって、僕らは君らより遙かに素晴らしいものをつくってみせるよ?」
そんな日本、超Cool。


・・・CoolはCoolだけど、実際のところ70年延長国ばっかの中で一人50年、ってなったら、やっぱ厳しいものはあるんだろうなあ・・・
華をとるべきか実をとるべきか。
考え始めると奥が深い。