かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

大学図書館の「専任職員」は最小限にとどめて、外部人材の活用と組み合わせた方がいい?


予定していた研究の方向性を、他の研究内容とのからみで若干、修正することになり。
それに伴っていろいろ文献読み返していたら、以前探索した際に読み逃していた「情報館の経営戦略-大学図書館における人の問題と今後の課題-」(藤岡昭治. 現代の図書館. 1998. vol.36, no.4, p.246-255)という、京都精華大学情報館についての文献を発見した。


京都精華大学では旧来の図書館組織とAVセンター、博物館などをまとめて「情報館」という新しい組織を構築しているんだが、そこは少数(1998年当時で6人)の専任職員(一般でいうところの正規職員)と、派遣職員によって運営されている。
情報館をつくるにあたってプロジェクト側は「専任職員26人ください」と大学に言ったそうなんだが、「無理。10人でやって」と言われ、「なら6人でいいです。あとは派遣でやります」と図書館の担当側から提案したとか。


実際に働いている派遣スタッフの評判は悪くないらしく、職場の雰囲気も変わった、と藤岡さんは述べている。
で、その理由については

それでは、この人の雰囲気の違いとはいったい何なのか。それは、専任職員による権利意識や既得権意識と、スタッフにおける契約意識(緊張感と連帯感)との違い、言いかえれば、それは専任職員が"その社会でその存在が認められている"ということをアタリマエと考えていることとの違いである

と言及。
さらには図書館の職員の活性化について、

(日本の大学図書館における専任司書としての評価が、一般事務局の専任職員と比べて相対的に高くない現状では、)専任職員の人数を極力少なくし、専任職員と外部人材の活用という君合わせで図書館業務が動くように工夫すべき

とまで言っちゃっている。


なんというか、「わが意を得たり!」と思える2つめの文献に出会えた感じがする*1


大学運営とのコミットメント、って観点からすれば図書館に全く正規職員を置かないことは難しいし、図書館の経営・管理業務をやる上で、図書館での実務経験や知識があった方がいい、ってのも間違いはない。
だが、図書館の職員の大部分については、むしろ外部の人材を活用する形式にした方が専門性も士気もあがる側面があるんじゃないだろうか。
大学の正規職員の態度の悪さ、なんて学生なら誰もが感じたことがあることだろうし*2



まあそれが一般化するには今の多くの図書館運営の枠組みだと難しいが。
正規職員と非正規職員が同じ仕事やってるのに給料の差がえらいことになってたりとかね。


いっそのこと正規職員をばっさり削って、その替わり非正規職員の給料や委託時の契約金なんかをあげて、さらにできれば非正規職員のキャリアアップのシステムなんかもうまいこと整備できれば、図書館業務の大部分については「緊張感と連帯感」をもったスタッフに任せた方がサービス向上するんじゃないか、という予感。
実際、江戸川大学あたりは委託先スタッフの給料について契約企業に(昇給や最低限の確保について)注文をつけたりもして、委託スタッフの労働環境整備については一部動き出しているところもあるらしい。
その動きをさらに加速させて、いっそ図書館員の就業構造の枠組み自体を変革させるとこまでもってけたら面白いなあ・・・と思うんだが、さてどうか。
うちの先生たちの間ですら賛否が分かれそうだな。


とりあえず京都精華大のその後の動きについてはフォローしていきたい。
・・・関西か・・・実際に聞きに行くのは金と時間のからみで厳しいものがあるな・・・

*1:1つ目は江戸川大学の図書館全面委託の文献

*2:それが完全に悪いとは言わない。大学職員はもともとジェネラルなマネジメント能力が要求される仕事であって、専門性の高さやサービス精神の豊富さを求めること自体お門違いなんじゃないかと思う。窓口にいると「なんだこいつ、偉そうに」と思うような人が、一緒に仕事するとバリバリ仕事も出来るし、仕事相手への人あたりもよかったりするわけで。客商売と事務方の違いなんだよな、結局