かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

図書館情報学で学問バトンって一種の羞恥プレイだから


id:sakstyleからこんなん回ってきました。

最近、大学院に合格しましたね、おめでとー。
それを記念してやってみてくださいよ。
図書館情報学という、よくわからんことをやっているので、是非わかりやすく解説していただきたい。

おいおい、この狭い業界で学問バトンとか一種の羞恥プレイですよ。
しかしまあ、「頼まれたら嫌とは決して言わない」某メディア社会分野の教授メソッドに従って、ここは一つやってみるか。
もっとも、俺がやってること自体が図書館情報学の中でもごく限られた分野なので、図書館情報学自体の解説にはどう転んでもならない気もするけど。
そこら辺はノリで。

  • あなたの専門・専攻・得意教科は?

大学図書館情報専門学群
専攻は情報メディアマネジメント分野。
専門は大学図書館と学術情報流通。
得意教科は最新トピック全般(苦手教科は基礎全般)。
・・・おお、真剣に答えただけで割とけむに巻けそうだ(苦笑)


図書館情報学」自体は図書館について考える図書館学と世界大戦を機に発達してきた情報学がくっついて生まれた学問。
研究者の数だけ定義がある学問だが、自分としては「誰もが必要な情報(あるいは知識)を必要なときに容易に手に入れられるようにする」ことを目的に、「情報の生産・流通・蓄積・消費・再生産の過程について多面的に研究する」学問と捉えている。
某教授は「金の代わりに『情報』を扱う経済学みたいなもん」とか言ってたが。
ちなみに「図書館」っていうのは情報のライフサイクルの中で活動するプレイヤの代表としてその名を冠している、と解釈。


「情報メディアマネジメント」分野は、その中でも情報を扱う機関をどう経営・運営していけば良いか、ということを考える分野で、ある意味では「図書館学」と呼ばれていた学問に一番近いところではある(色々な人がいるので一概にそうとも言えないが)。


その中でmin2-flyが専門として研究しているのは主として学術情報流通。
研究者・研究機関などがどう研究成果を生産し、成果の流通・蓄積と他の研究者(あるいは同じ研究者のことも)らによる再生産がどう行われているか、を研究し、あわよくばより効率的/効果的な研究成果の流通サイクルを構築しようということ。
大学図書館はその中で重要な位置を占めるプレイヤの一つ。
もっと端的に言うと、「どうしたらもっと便利な環境で研究ができるか」を考えている。
成果が直接自分の研究環境にフィードバックされ、もっと便利になるにはどうすればいいかを考え・・・という、無限循環的な研究テーマ。
まさに私利私欲*1。ええ私はそんな人間です。いいじゃん、その結果で皆が幸せになれるなら。
そんなわけなので、全般的に今すぐ自分に役立ちそうな最新トピックに目がない反面、伝統的な図書館学には若干弱かったり。


  • あなたは、どのようなテーマに関心がありますか?

大きな枠で言うと、電子的な情報環境下における研究者の研究スタイルの変化と、大学図書館の果たすべき役割。
大学図書館については、業務分析/運営方針の見直しからより効率的/効果的なサービスができないか、とか(もっと端的に言うと、それこそはてな図書館村にいるような人たちで大学図書館界の覇権を握れないか、みたいな)。
電子情報環境については、電子ジャーナルとか機関リポジトリとか計量書誌学を用いた研究者評価とか、その他もろもろのテクニカルタームが関わってくるようなところに興味が。
っていうかここは本当テクニカルターム使わないで説明するのがメンドイのだが、ざっくばらんに言って「日々変化するネット環境にあわせた大学図書館運営にシフトしていくことが必要なんじゃねーの?」みたいなことに関心がある。


  • あなたは、なぜその専門・分野を選んだのですか?

大学図書館を選んだのは、「公共よりも大学図書館の方が進んだ取り組みがされていることが多いから、新しいものに興味があるならそっち選んだ方がいいんじゃない?」という某先生の勧めを受けて。
いや、本当正解でした。多謝。


そもそもなんで「図書館情報学」という怪しげな分野に進んだかと言えば・・・まあ諸事情あるんだが・・・一番まともな理由を述べるなら、「情報」というものに興味があったことと、既存の特定の学問にコミットメント出来なかったから。
前者についていえば、本来形のない「情報」というもので金儲けができる、その仕組み自体に興味があったし、出来れば自分もその枠組みに飛び込んでみたかった。
気取った言い方をすれば、いわゆる"knowledge based"(生産物自体でなく生産物を生み出すための知識・情報が金を生み出す)な社会・経済というものに興味があったためだが。
そもそもそれに興味を持った理由が麻城ゆうという作家の「月光界シリーズ」というライトノベルに出てくる「知識売り」という職業が楽しそうだった、というものなんだから、締まらない(苦笑)
後者についていえば、当初は某H大学の法学部受けようかとか野心的なことも考えていたんだが・・・人文・社会科学も自然科学もどれもそれなりに面白そうではあるが、だからってどっか特定の分野にいる自分があんまり想像できず。
なら、どこの分野にも収まらないわけのわからん学問とかやってみると面白いかなー、とか考えたり。


ま、全部後付けな気もするが・・・おおむね人生はノリとその場の勢いです。
筑波大学 図書館情報専門学群」という存在を知った時点で行くこと決めて、あとはなんも考えてなかったしね(笑)



  • あなたが最も影響を受けた人と、その理由を挙げてください(複数人可)。

ゼミの教授と、id:myrmecoleon
前者はゼミの教授なんだから当たり前。深く語るのは恥ずかしいので勘弁願う*2
後者はなにかとコメントしたりされたりが多いので。はてブ指数実装されたときは「ひゃっほーう!」とか思った。
書籍や論文等は著者と乖離した業績として受け取ってしまうので、あまりそこから「影響を受けた」と思うことはない気がする。
それよりは、対話的なコミュニケーションの中で受ける影響の方が多い。
まあ逆を言えばそれくらいに凄い人や凄い研究者が身近なところを闊歩してるのが図書館情報学のいいところ。


  • あなたが影響を受けた本とその理由を、何冊か挙げてみてください。


コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)

コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)

いきなり図書館情報学以外から2冊(笑)
最近、図書館経営でも「コア・コンピタンス」とか「アウトソーシング」とかって言葉がよく使われるようになってきているが、とりあえずこの2冊だけでも読んでからそれらの言葉を使えよ、と良く思う。
「読んで損はない」レベルではなく、「読まないと損」レベルの2冊。


変わりゆく大学図書館

変わりゆく大学図書館

大学図書館やるなら鉄板の書。
今やっているようなテーマに興味を持った最初のきっかけになった本。
この分野って本としてまとまってることが少ない上に内容がすぐ時代と乖離してしまうのだが、これはまだ品質保証期限のうちにあると思う。


未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)

こちらは図書館情報学をやるなら鉄板の書。
内容は公共図書館についてだが、そもそも「図書館」という言葉から想起するイメージがこの本を読んだ人と読んでいない人で全く変わってくると思う。合衆国恐るべし。
高校の学校図書館で借りて読んで、大学の書籍部で買ってまた読んだ。


  • 入門者に、その分野の「入門書」として一冊お勧めするとしたら何を薦めますか?

この質問を受けて、実は自分が図書館情報学の「入門書」とされているものをほとんど読んでいないことに気付いて絶句した(笑)
ま、まあ、生の知識をたくさん受けついているのでOK、ってことでひとつ・・・。


紹介したのは、「本」と呼べるかどうかはわからないが、文部科学省公共図書館について出した報告書。
「大好きな本に囲まれて仕事がしたい!」とかいう理由で図書館情報学志望している人は、図書館情報学の現場で図書館がどういうものとして捉えられているかを知ってから、専攻するかどうか考えなおせ、と言う意味でこいつを読んで欲しい。
とりあえず、現状の図書館情報学が一番嫌うのは「大人しくて人と話したり自分の考えを人の前で言ったりするのは苦手だけど、本を読むのが大好きだから、図書館で本に囲まれて仕事がしたい」みたいな人種なのだが、その理由が「これからの図書館像」読むと多少なりともわかるんじゃないかと思う。
ちなみに合衆国の図書館の採用要件には「対人コミュニケーション能力に優れていること」はデフォルトで含まれているから。
レファレンスみたいな表舞台じゃなく、カタロガーでも。まあ職業人なら当たり前だが。


  • あなたが考える、その専門・分野の「武器」はなんですか?

これから日本が進むであろう方向性にコミットしてること。
「図書館学」なら図書館がインターネットに取って代わられる際に滅びることも考えられたが、「図書館情報学」になったことでむしろインターネットやその他の情報化が進めば進むほど活躍の舞台が広がりつつあるのが図書館情報学
なにせほら、「情報」なら何でもやるから。

あとは学際性の高さからくる、調停者の役割とか。
どこの分野にも中途半端にしか足を突っ込んでないことで、逆にあらゆる分野の内情をある程度把握することが出来る。
ゆえに、研究資金配分や研究機関の運営方針など、各分野の研究者が自分の分野以外にあまり配慮できない局面において図書館情報学専攻がかなり活きてくる・・・と、思う。
まあ後者は科学社会学とか研究してる人でも出来るかとは思うが。


  • 他人に「君、大学では何を研究してたの?」等と聞かれた場合、なんと答えるようにしていますか?

「大学で何をどう研究したらいいかを研究してました」


  • あなたがその専門・分野に関して、一般の方に知ってもらいたいところは何ですか?

図書館で本を並べる練習とかをしているわけではありません。
図書館員になるための教育だけをしてるわけでもありません*3


  • あなたがその専門・分野に今後期待することはなんですか? あるいはあなたがその分野で達成したい目標はなんですか?

期待することは、先に掲げた目標(誰もが、必要な情報を、必要な時に、容易に手に入れられるようにすること)の実現。まあ一万年と二千年かかっても無理かも知れないが、夢は大きく行こう。
自分が達成したい目標は・・・エルゼビア、シュプリンガー、ブラックウェル&ワイリーら大手出版社やThomson(ISI)クラスを凌駕するような学術情報流通ビジネスを日本発でぶち上げること・・・の、手助け(笑)
誰かやりたいって人がいればすぐにでも手伝います。
自分がリーダーになるのは嫌。
副官最高。ビバ参謀。


  • 次に回す人たち

・・・難しい問いだな、おい・・・「希望者、ご自由に」として終わらせたい気もするが・・・

とりあえず、個人的に回答に非常に興味があるので

俺なんかより数百倍真面目な立場から、図書館情報学について語っていただきたい(明らかに無茶ぶり)。


それと、最近ブログは更新停滞気味だけど

デザイン等の方面から熱く語っていただきたい。


ぶっちゃけ、回答にめちゃめちゃ時間かかるので、時間がある時にでも。
お二方とも今そうとう忙しい時期だろうし。
ネタに困った時にでも使っていただけたら幸いー。

*1:いやもちろん、そういう話を「面白い!」と感じるから、ってのもあるんだけどね。自分に活かせるか否かに関わらず、「便利」とか「効率」って言葉が好きなんです。効率性を追求した上で、生まれた余った時間で無駄なことをやるのが至福

*2:身近にいる人から自分がいかに影響を受けたか、なんてことを本人が見る可能性のある場所で語るのは羞恥プレイを通り越して拷問だと思う。そういうことをやっていいのは卒業式と結婚式くらいのもんだろ

*3:いや、もちろん教育もしてますよ?