かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

国立国会図書館ではあの迷(名?)台詞の元ネタが調べられない、とか


最近、その中毒性の高さに当てられて下の動画をほぼ毎日見てるのですが(「今さら?」とか言うなー)。

患部で止まってすぐ溶ける〜狂気の優曇華院


で、サムネイルにもなってるけど、途中で2人のキャラが
「えー、初月(イージーモード)?」「キモーイ」「初月が許されるのは小学生までだよね」「キャハハハ」と言っているシーンが挿入されます。
こいつの元ネタはにったじゅん、というエロ漫画家の「奪!童貞。」という漫画の以下のシーン。

元々にったじゅん*1の漫画の中では女の子はむちゃくちゃ早熟、男の子は早熟な女の子に振り回されっぱなし(意図的にかなりソフトに言い換えてるよ?)がデフォなのだけど。
それにしたってこのシーンのインパクトは相当なものだったらしくネットの一部で流行、AAまでたくさん作られて、元ネタを知らない人でもこのコマだけは知ってることがある、というようなことになっているのですが*2


いや、別にエロ本談議がしたいわけじゃなくてね(min2-flyそんなにエロ本読まないし)。
この「童貞が許されるのは小学生まで」発言の元ネタが、国立国会図書館では調べられないんだよなー、とぼーっと考えただけで。


卒業研究で成年向け出版物の国立国会図書館への納本率の低さを扱っている方がいて、その方の中間発表での質疑の中でとある先生から「そもそも成年向け出版物ってアングラなものなんでしょ? それなら納本率が低くなっても当然なんじゃないの? アングラなものを表に出す必要ってなに?」みたいな質問がぶつけられていた。
いやまあ確かに、写真系の出版物とかでアングラというか実用性のみ追求されてるものについてはそういう見解もわかるのだけど*3
一方で、成年向け出版物が元ネタとなって表社会(いや2chとかその他のネットが表かは知らないけど)で流行、っていうケースもこれに限らずけっこうある気がするんだけどなー。
大衆文化、って側面から言うと日本の一部で確かに流行っていた台詞の元ネタが、図書館資料たりうるもの(図書・雑誌・新聞・視聴覚メディア・電子メディアその他もろもろ)であるにも関わらず、国会図書館にない=将来的な保存の対象となっていない、ってのはやっぱどうかと思うんだけどね。
ましてここら辺のエロ本なんて国会図書館以外に保存するところないわけだし。


ちなみにエロいものが全部国立国会図書館にないわけではない。
別に国立国会図書館側が収蔵対象から除外しているわけでもないのだけど、なぜか成年向け出版物は納本率*4が低くて、今回とりあげたにったじゅんが最近おもに活躍している三和出版でも、成年向けの資料だけは近年納本していない。
ゆえに「奪!童貞。」も入っていない、と。


・・・ついでに、その他のぱっと思いつく有名どころについてもちょいと調べてみると。

まず「D・V・D!! D・V・D!!」で有名な(はてなダイアリーのキーワードまでありやがる*5あとりKの「姉DVD」(「いけないお姉さん」に収録)。
あとりK自身の作品は数作納本されていて、続編の収録されている「姉DVD−R」の方は国会図書館でも読めるのだけど、問題のシーンがある「いけないお姉さん」の方は納本なし。



で、さらに有名どころとしては「やらないか」でおなじみ、やまじゅんこと山川純一の「くそみそテクニック」。

*画像はイメージです

こちらは雑誌「薔薇族」の漫画増刊「バラコミ」掲載ということで、本誌「薔薇族」は納本されているのだけど「バラコミ」の方は惜しくも納本されておらず。
もっとも、巻号情報未入力の資料があるらしいので、NDL-OPACにないだけで本館には実際には所蔵されている可能性もないわけではないのだけど・・・うーん、どうだろう*6
個人的にも「薔薇族」が入ってるのでヤマジュンは閲覧可能だろうと思ってたのだが、まさかの「くそみそ」抜けとは・・・
デジタル情報があふれてるからすぐにどうこうってことはないと思うけど(くそみそはカラーでネットに全部アップされてるし)、「ウホッ」とか「やらないか」とかの域までいくとさすがに元ネタをおさえておくのは必要なんじゃないかと思うんだが。
Takakazu Abe(阿部高和)は今や(なんでか知らんが)一部海外にまでその名をとどろかせているらしいし。


もちろん国立国会図書館が悪い、と言う気はまるでない(納本制度の適用について国会図書館が差をつけているわけではなく、企業側が成年向けだと納本してこないことが多い、って問題なのではないかと思うし)のだけど。
あらためて見てみると、やっぱりけっこう抜けが多い、それも重要そうなところで抜けが多いなあ。
いやまあなにが重要かなんて価値判断は国会図書館の役割ではないけど。


江戸時代の春画が現在貴重な資料となっていたりするわけだし、現在のエロ漫画が将来どんな価値を生むともわからないわけで*7
そういうのもアーカイブもしておくに越したことはないっつーかむしろしとかないといけないんじゃないかな、と思ったり。


・・・いやまあ、そうやって「アーカイブが必要」って言われてるものが多すぎて国会図書館どう考えても手が回りきらない状況なんじゃないかとも思うけどね。
それで優先順位つけられるとやっぱ成年向けは劣勢だよなあ・・・


いっそ別団体でそういうニッチなところを狙うアーカイブとか設立したら面白いだろうか?
まったくもって収入源がわからんので奇矯な篤志家でもいない限り厳しそうだが。

*1:ちなみに女性らしい

*2:min2-flyはにったじゅんを先に知ってたので初めてAAでこのシーンを見て逆に吹いた

*3:そういうものでも収蔵するあたりに国立図書館としての心意気がある気もするけど

*4:国会図書館の資料は国会図書館が買ってるわけではなく、出版社等に納本義務が課せられている

*5:D・V・D!とは - はてなキーワード

*6:ちなみに山川純一は単行本もまったく収録されていません

*7:それこそ「くそみそテクニック」とか、10年以上たってからネットの一部で再流行してるわけだし