かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

OCLCセミナー 2008年


ちょっと参加から日が経ちましたが、OCLC・紀伊國屋書店主催、早稲田大学図書館後援のOCLCセミナー2008年に参加してきました。

プログラム:OCLCセミナー2008年
主催:OCLC、(株)紀伊國屋書店 後援:早稲田大学図書館
一、日時:2008年2月1日(金) 14:00〜17:00
二、場所:早稲田大学国際会議場第3会議室


2/2は卒研最終発表会だったので、前日に自分は早稲田にいたことになるわけですが・・・
ま、まあ終わりよければすべてよし?


セミナーの基調講演はOCLCのPresidentにして、CEOでもあるJordan氏自らが語るOCLCの2008年戦略について。

「既にOCLCの収入の23%は海外収益」
「1998年にはWorldCatにおける非英語レコードの割合は36%だったが、2007年には47%に」
「Question Point(レファレンスサービスシステム)には現在26カ国、300万件のレファレンス記録が」

などなど、OCLCの世界的な広がりっぷりが伺える話が盛りだくさん。
他にもQuestion Pointの新サービス"Qwidget"の紹介や、WorldCatのAPI公開について(!)*1など刺激的な話が。


その他には、OCLCの坂口泉さんによる「電子ジャーナルサービスでのリンクリゾルバーの有効利用について」、紀伊國屋書店の牧野さんによる「日本語と書の電子化の動向について〜概況およびデモンストレーション〜」、OCLCのTsaiさんによる「ネットワークレファレンスの現状(Question Pointの紹介と新サービス"Qwidget"の詳細について)」などの講演が行われました。
講演を聞いてmin2-flyが感じた点はそれぞれ以下の通り。

  • WorldCat Link Manager(OCLC提供のリンクリゾルバ)

リンクリゾルバ自体は筑波大でもS・F・Xが入っているので当然知っているし使ったこともあるが、講演を聞いていて感じたのはLink Managerの方はとにかく「顧客の要望に最大限/迅速に対応する」ってことと、「日本人のデベロッパーが中にいるので、日本語にも意欲的/きめ細やかに対応できる(日本語ローカライズについて)」ってとこが売りなのかな、と。
国際企業のwebサービスって当たり前だけれど日本語対応が最大の問題になるので、その点に強い自信を見せられると非常に好印象だよね。
もっとも、ExLibris社の方の言い分も聞いてみないとS・F・Xとの優劣の判断はつかないし、最終的に各々の環境で使い比べてみないことにはなんとも・・・

すでに欧米では相当数の電子書籍が発行されていて、図書館でも普及している・・・と言うのはよく聞くところであるけれど、その中でもNetLibraryが本格的に和書の電子出版にも取り組みはじめる、という話。
2008年3月末には360タイトルを掲載予定、とのことでタイトルリストも配布されていた。
全文検索はもちろんのこと気になったところへのメモ機能等もあるとのことで、これが完全に普及したら資料汚損の問題は解決だね!*2
難点は、書籍電子化にはいつもついて回る著作権問題・・・NetLibraryの場合、出版社の協力を得た電子書籍の「販売」モデル(購入タイトルが閲覧できるようになる)なのでGoogle Book Searchみたいな訴訟沙汰はないと思うけれど、図書館にはいつもついてまわる「複写」の問題があり・・・資料はページごとにPDF化されていて、全文一括ダウンロード/印刷等は出来ない(ページ単位でのみ可能)そうな。
全くもって仕方のないこととはいえ、電子ジャーナルとかに比べると使いにくい形態であることは間違いないよなあ・・・その点は今後に期待。

  • Question Point(オンラインレファレンス・サービス)

日本だといまいち盛り上がっている感のしないオンライン/チャットレファレンスだけれど、海外ではだいぶ事情が違うようで・・・すでに合衆国では13の州が州単位でQuestion Pointを契約していているんだとか。
で、さらに新サービスとして"Qwidget"なるwidgetを提供、より簡易にオンラインレファレンスが出来るようになるということで・・・おいおい、大丈夫か日本。
オンラインレファレンスのガラパゴスになったりしたら嫌だぜ?



全体に、「OCLCやべぇーっ!」って思うと同時に、「日本大丈夫か?」という疑問もむくむくと持ちあがってきたり。
WorldCatに占める日本語レコード数も、着々と増えてはいるんだけれど、伸び率でも実数でも中国/ドイツ/オランダに負けていたり(まあ、ドイツ語とオランダ語は伸びが半端ないから仕方ないのだが)。
オンラインレファレンスの話もそうだが、内部に対するサービス提供の遅れと外部に対する情報発信の遅れがダブルで起こるとちと厳しい・・・海外サービスの日本語ローカライズと日本語コンテンツの可視性の向上は相当本腰入れてやってかないとまずいなあ、と・・・


まあもちろん、自分が良い環境を享受したい、っていう本音もあったりするわけだが。
NetLibrary参加表明出版社の中に勁草書房の名前があったのにマジ期待ー。
頼むから図書館情報学系の本(できれば新刊)も電子書籍化プリーズ。
そして附属図書館はそれを購入してくれー。

*1:ただ、プレゼンによれば「北米およびヨーロッパの10〜15くらいのデベロッパー(目録作成機関の)対象」ってなってるので、誰でも扱えるようにするわけではないらしい

*2:いや、実際にはNetLibraryは研究/学術書メインなので、資料汚損が問題にならなくなるくらい普及するとかいつの話だ、って感じなんだけれどね