かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

『線文字Bの解読』

線文字Bの解読 (みすずライブラリー)

線文字Bの解読 (みすずライブラリー)


ちょっと前に、筑波大の知的コミュニティ基盤研究センター 研究談話会(2007年度ファイナル)で行われた、「未解読文書の解読可能性の判定 : 世界で最も謎に満ちた写本を例に」という安形輝先生の講演の中で未解読文書の解読に関する入門書として紹介されていた本。
講演がかなりおもしろかったので*1その日のうちに附属図書館から借りてきてしまった。
ロゼッタストーンみたいに既知の言語と並べて書かれた例が発見されているわけでもなく、多くの暗号の場合のように使用されている言語がわかっているというわけでもない未知の文字で書かれた文書をいかにして解読していくか・・・と言う話。
高校の世界史で「線文字B=ヴェントリス」とやみくもに暗記しているときにはなかった面白さがあった(もちろんところどころは難しくてわかりにくいところもあったけれど)。


もちろん一番面白いのは解読作業と解読後に徐々に見えてくるミュケナイ時代ギリシアの話なわけだが、個人的には同じくらいに線文字Bが発見され、解読の試みが行われていた頃(1900-1960年頃)の学術情報流通のあり様が描かれているのが面白かった。
今ほどには情報通信技術も発展してないし、当然インターネットもない時代に、ヴェントリスが自分の解読の課程を「研究ノート」として自腹で複写して他の研究者に配っていた、とか。
それによって解読が偶然のひらめきによるものではなく積み重ねられた研究の成果であることが明らかであった・・・と。
他には線文字Bを活字化することの難しさとか(今なら高精細画像とか使えるっていうか使ってるんだろうな)。
線文字Aなど十分な刻文がみつかってない文書は(データが足りないから)解読の試みがうまくいかない、ってあたりには「データ集めで苦労するのはいつの時代のどの分野も変わらんかあ・・・」とも思ったりして、様変わりしているであろう部分と変わらない部分のことを考えるとそれだけで時間が過ぎていく・・・


次は同じく講演で紹介されていた『ヴォイニッチ写本の謎』にとりかかりつつ、未だに半分までしか進んでいない『非営利組織のマーケティング戦略』も読み進めねば。
読みたいものがたくさんあるのはいいことだけど・・・いい加減、貸出期間を延長するにも程がある気がしてきたなあ・・・

*1:安形先生のプレゼン資料はこちら:http://www.kc.tsukuba.ac.jp/colloqium/080226.pdf