かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

日本図書館情報学会 2008年春季研究集会に参加してきました


昨日は疲れて崩れ落ちるように眠ってしまったので・・・
1日遅れですが、日本図書館情報学会 2008年春季研究集会に参加してきました。

  • 2008年春季研究集会のページ

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jslis/events/spring_2008_2.html

  • 早くも出てきている参戦/観戦感想

http://d.hatena.ne.jp/mique/20080329/1206796717
日本図書館情報学会春季大会に行ってきましたー - 図書館学の門をたたく**えるえす。


今回は第3部会のトリで自分が発表、ということであまり他の方の発表を楽しむ心の余裕がなかったのですが・・・(苦笑)
その中で自分が特に面白いと思ったのは、濱田幸夫先生の「公立図書館を新規設置する市町村における取組と課題」と、長谷川豊祐さんの「大学図書館における館員数の変化と課題」などでした。


後者は大学図書館アウトソーシングなど自分の研究テーマと被る部分があり、委託の場合職員数の規模がわからない=職員構成の不透明化、という自分も研究の中で感じていた問題点等が明らかにされていて刺激的でした。


前者は、過去6年間に図書館未設置を解消した市町村(図書館のなかった市町村で、新たに図書館を設置したところ。もともと図書館があって、新たに分館等を設置した場合は除く)に質問紙調査を行った研究なのだけど。
その中で図書館設置のきっかけとして、「直接きっかけになったもの」で最も多かったのが「首長が図書館の設置を判断した、又は選挙公約であった」(回収数96館中23館、38%. 次に多いのは「自治体の地域計画・総合計画等に記載された」の12館20%)というのが非常に興味深かった。
ちなみに「議会が図書館設置の議決をした、又は議員からの働きかけ」は2館、3%でしか直接のきっかけになっていない。
「住民・団体からの要望があった、議会への陳情があったなど」は7館、12%。
図書館設置を望む住民は首長に働きかけるか、もしくは図書館設置を公約にしている首長が選ばれるよう選挙活動をすると良いよ*1


他にもこれまで内容は聞いてはいたけど発表自体は卒研着手発表以外ずっと時間が被ってみれなかったid:miqueさんの(もはや学内で伝説化しつつある)発表はじめ面白い発表が色々・・・
特に第2部会と第3部会は本当にみたい発表が被っていてばかりだったので、自分がフォローできてない部分については今後、身近な参加者の方々に聞いて回りたいと思います。


で、自分自身の発表であるところの「大学図書館アウトソーシングと組織デザイン」については・・・
まあ、詳細はいずれ『日本図書館情報学会誌』に抄録が載るし、出来ればどっかに投稿したいと思うのでそちらを参考いただくとして。
要点を簡単にまとめると以下の通り。

  1. 日本の大学図書館全部を対象に、外部委託に関する質問紙調査(「どんな業務を委託してるの?」等)したよ。半分くらい返ってきたよ。インタビュー調査も6校に対してやったよ。
  2. 半分くらいの図書館は、清掃や製本だけじゃなく整理・閲覧などの図書館固有の業務も委託してるよ。オリジナル・カタロギングでも25%以上、レファレンス・サービスでも19.5%くらい委託されてるよ。各業務の企画・立案等を委託しているところも10%前後くらいあるよ。
  3. 今まで文献でよく言われてきたような「専門性の低い業務を委託して、専任職員は専門性の高い業務へ集中する」っていう委託形態は少ないよ。一度委託し出したら業務全体に委託が波及する方が多いよ。
  4. 委託の進展には大学の類型で差があるよ。最も委託が進んでいるのは私立・大規模で教育重視型の大学。でも企画・立案や選書まで委託している大学や、全面委託をしている大学はむしろ中規模の私立・教育重視型で多いよ。
  5. アウトソーシングするなら中規模私立、教育重視型の方が他の大学より向いてるよ。
  6. でも今の大学図書館の委託はスタッフの待遇が悪くて委託の継続性も低いっていう問題があるよ。このままだとあんまり専門性の高いことを委託するのは難しいよ。


以上、すべて当日配られた要綱の内容を自分の言葉で抜粋(苦笑)
調査実施時に「学術研究目的以外にデータを使用しない」ことを明言してあるので、なんらかの形で既に発表されたこと以外は当ブログでは触れません*2
でも他人の研究はレビューしておいて自分の書かないのもなんかアンフェアな気がするので・・・このくらいで。


発表自体は特に練習時と変わらずスムーズに出来たんじゃないかと思います。
質疑応答では的確に自分の不勉強な部分を突く質問が出されてなかなかスリリングでした(苦笑)
東大の影浦峡先生の質問が一番難しかった・・・自分でもここは結論飛んでるなあ、と思ってるところをサクッと突かれたので。
そうなのですよ、自分の研究は「私立、中規模、教育重視型の大学では外部委託が進んでいて、市場もあるから、アウトソーシングに向いてるよ」って言ってるんだけど、それは「(他より進んでいる分)他の類型に属するような大学(国公立とか大規模大学とか研究型大学とか)よりは向いてるんじゃないかな?」って話であって、実際にアウトソーシングすることで(コスト削減とかはあえて抜くとして)「自前でやるよりメリットがあるのか」、ってあたりはなかなか・・・ありそうだ、ってことは言えるんだけど、「ある」と明言はできない。
そこら辺は今後考えていきたいところです。
・・・アウトプット指標(貸出数とか利用者数、レファレンス回答件数とか?)でアウトソーシングと自前を比べること自体は不可能ではないと思うんだが、比較対象が取りにくいのと、あとはアウトプット指標だけでなくアウトカムをきちんととらえようと思うと何を指標に取るのか(図書館利用者満足度?/大学入学者数?/受験者数?/教員の研究数?/各種ランキング?/外部評価?/卒業生の満足度?/その他いろいろ・・・もっと質的な評価軸もわんさか考えられるし・・・)ってあたりが格段に難しく(=面白く)なるような。
そもそも本当のところ大学図書館アウトソーシングに向いているのか、とかも。


ほかにも多くの方から今後の研究を進めていく上で重要な示唆をいただくことが出来ました。
あらためまして、質問者の皆様、並びに自分の発表を聴いていただいた皆様に心より感謝をm(_ _)m*3


・・・しかし・・・自分、学会発表は一応初陣だったのですが。
当日、会場にいた知り合いの方々に「初陣だから緊張している」と言っても指導教員の先生以外、誰にも真剣にとりあってもらえなかった(苦笑)
っていうか「あれ、デビュー戦だっけ?」って返しの多いこと。
日頃の態度のでかさがこういうところで響いてくるんだろうかorz


次は秋の研究大会なわけですが・・・次はなんかで出るのかなあ、自分。
出られるネタがあれば出たいが・・・まあ、とりあえずは今まで学会発表のために停止していた各タスクにとりかかるかー。
質疑でも言われた、「地方別の集計とかはしないの?」ってあたりもやってみたいし。
・・・そのために一番必要なのが「春休みが終わること」か「夜型の生活をやめること」だというあたりが実に低レベルで笑えてくるけれど・・・
何回か、とりかかろうとは思ったのですよ・・・?
・・・春休み中で、『日本の図書館』を所蔵している図書館が夜には閉まっちゃってて諦め続けてただけで・・・

*1:ちなみに「きっかけになったもの」(複数回答)としては住民からの要望などは34件、21%と高い。が、やはり直接のきっかけは首長の判断なので、どうやって首長にGOサイン出させるかが鍵って感じかね。

*2:完全に研究ブログならいいのかもしれないけれど、うちはそうでもないので。いずれ研究的な内容をまとめたサイト等は必要に応じ別立てする必要があるやも

*3:ここを見ていらっしゃるか否かはさておき