かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

日本図書館協会IT研修会 「21世紀の図書館コンピュータシステムを考える」


日本図書館協会、同情報システム研究会、Next-Lプロジェクト主催の「21世紀の図書館コンピュータ異ステムを考える」というイベントに行ってきました。


DLワークショップでも宣伝されていた、Next-Lプロトタイプの公のお披露目イベント、ってことで「こりゃ見ないとあかん」とばかりに人生で初めて日本図書館協会の建物に足を踏み入れました。
・・・会場を検索した昨日まで、日本図書館協会が個別の建物を持っていることすら知らなかった自分は本当に図書館系を名乗っていいのだろうか・・・
ちなみに建物内には「図書館退屈男」さんで紹介されていたアニメ『図書館戦争』のポスターも貼ってありました。
イベント終了後にid:milkyaが残部がないか聞いていたけれど貰えなかったそうなので、もし配布された図書館の方で「うちは貼らないからいらない!」という方がいらっしゃいましたら、min2-flyまで声をかけていただければ今ならもれなくがまじゃんぱータンブラーの外側の紙と交換させていただきます*1


戯言はさておき。
イベント本体はコーヒーブレイクをはさんで第一部、第二部の二部構成でした。
第一部は「図書館コンピュータシステムのあり方を考える」と題して常世田良さん、国際基督教大学ICU)の黒澤公人さん、さいたま市立図書館の大木隆志さんの御三方が。
第二部は「明日の図書館システムをつくる」と題してNext-Lの原田隆史先生、田辺浩介さん、小野亘さん、林賢紀さんの「Next-L 四天王」(命名:宇陀則彦先生、筑波大学大学院図書館情報メディア研究科)が発表されました。
以下、簡単にレビュー(5時間にわたるイベントの詳細を書くと死にそうなんで簡単にで請・ご容赦)。

「業者主導から図書館(協会)主導への道」(常世田さん)

「電算化はある日突然起きたわけではない」ということで、長い合理化/機械化の延長線上としての図書館システムの経過と問題点について。
日米の図書館システムの発展経過の違いの話が個人的には非常に興味深かった。
日本は貸出処理の負担軽減がなんと言っても・・・というところがあったが、米国は貸出作業の迅速化にはあまり熱心ではなく、むしろ総合目録と広域物流の構築に重点があった、とか(OCLCが代表/日本の公共図書館は現状、いずれも完璧なものはない)。
日本の図書館システムの現状の問題点はけっこういろいろな場所で聞くものが多かったが・・・いつまで「チャット/メールによるレファレンス」が課題であり続けるんだろうねこの国は・・・遠隔レファレンスについてはどうも合衆国に光年単位で取り残されている気がするな、現状。

「21世紀の図書館システムの動向」(黒澤さん)

発表タイトルからして「各ベンダの図書館システムの話(例えばExLibris社とか?)かなー、と思いきや、黒澤公人のドキュメンテーションシステムの100年(1960年-2060年)でよく取り上げられているGoogle Book Searchの話について、黒澤さんの推測・憶測を交えながら(というかGoogleから情報が出てこないのでそうせざるを得ない)軽妙な語り口で語られる・・・という非常に面白い講演(笑)
縦書き・右開きの図書が多いという世界的にも稀有な日本の図書*2Googleがどんなリアクションを示しただろうか、というあたりの話は実に面白かった・・・そうだよね、冷静に考えてクレイジーだよねこんな読み方(笑)
最近、「ドキュメンテーションシステムの100年」でも取り上げられていたGBSのデータの減少についても触れられていて、さてなんでなんでしょうね、とかなんとか・・・。
潰れるわけじゃないと思うけどなあ。
不具合のあるデータの処理か、重複データ削除だと思いたい・・・

コンピュータシステムのリプレイスの現場から(大木さん)

浦和市・大宮市・与野市(後に岩槻市)が合併してできた大自治体「さいたま市」における、合併後の図書館システム統合のいきさつ等について。
システム自体の話、というよりはその統合・リプレイスを巡る図書館と自治体行政の各種対応等の詳細記録、という感じ?
事例研究的にじっくり見ていくと面白そう。
「システム統合時に14日間の休館日をとったら、多くの苦情が寄せられた挙句3件の情報公開請求まであった」とか、なかなか今の公立図書館が市民にどれだけ配慮しないといけないかを如実に示す例となりそうな・・・今の自治体住民はなかなか手厳しいなあ。

世界で進むオープンソース図書館システムの開発とProject Next-Lの挑戦(原田先生)

ここから第二部。
四天王筆頭にして、宇陀先生をして「なんといっても原田先生の営業トークがすごい」と言わしめた原田先生による、Project Next-Lの紹介と売り込み。
やっぱりなるべく多くの人を巻き込んで、いろいろな意見を取り込んでいけるような環境の構築、ということが重要だよねー・・・そして実際、会場にShizukuの面々も皆来ていたりして、確実に巻き込まれたり意見を述べたりする人の数は増えているような。
原田先生は「どんなに遅れても来年いっぱいで完成しなければ将来はないと覚悟している、これで出来なかったら日本でオープンソースの図書館システムは出来ない!」と断言していたけれど、かなり説得力があるように感じた(もちろん、この後にある田辺さんのプロトタイプ実装を知っているから、というのも大きいか)。

Project Next-L プロトタイプ(田辺さん)

いよいよDLワークショップで飛び入りでちょっとだけ公開されていたProject Next-Lのプロトタイプシステム(すでに東京工科大の蒲田図書館で実際に運用中)が、100人くらいいる会場でお披露目。


細かい説明抜きに、まずは上のURLからプロトタイプが触れるのでとりあえず実際に使ってみてください。
図書以外の資料(Webページ)なども図書と同様に扱うことが可能(だからニコニコ動画の誰かのマイリストとかも登録してあります)、レコードページに恒久的なURL付与、ソーシャルブックマークやタグの利用可能、タグクラウドの表示、Amazon書評の表示、RSS対応、Googleカレンダーに貸出起源とかも出せる、etc、etc...ってことで「今言われているような機能は全部突っ込んだ」というのは伊達じゃない。
ちなみにサーバはpentium4で動いているそうです・・・それでこの速度なら、この規模の資料群に使う分にはもうちょいサーバ側増強すればまったく無問題そうな・・・。
今後は書誌のインポート機能強化や帳票出力、相互貸借対応など(どっちかと言うと)バックグラウンド系の機能を実装されていくとのこと。
質疑中で「夏までに!」みたいな話も出ていたけど、これならいける・・・?
http://kamata.lib.teu.ac.jp/trac/catalogからプログラムの中身とインストール方法も見られるので、興味をもたれた方はぜひいろいろいじくりまわすと楽しいのではないかと。
min2-flyはプログラムはからっきしですが、この機に研究室の資料管理をNext-Lでやったりしたら面白そうな・・・

Library Gadget(小野亘さん)

風邪をひかれている中、かけつけられたNIIの小野さんによる便利なGrasemonkey各種の紹介。

にいろいろ載っているので、Firefox使いの方はぜひお好みのGrasemonkeyを入れてみると面白いのではないかと。
自分もこの記事アップし終わったら早速、CiNii系のやつを仕事用のPCに突っ込もうかと思います。
「システムをすぐにリプレイスは出来ない、でも便利なことがしたい、と言う方におすすめ」とのことだったが、まさにその通りだと思うー。
ネックはFirefox使い以外には難しいこと?
世間的なシェアも8割がIEだと言うしなあ・・・*3
こんなに便利なのに、Grasemonkey。

OPACを強化する-次世代型サービスへ向けて-(林さん)

トリは農林水産研究情報センター(AFFRIC)の林さん(ちなみに筑波大D1)による、RSSXMLを用いてインタフェースに依存せずOPACのデータを活用する各種試みについて。
AFFRICのOPACもパーマネントリンクがある(NDLより、どころかLCより早くから!)のでそこら辺の紹介とか、PORTAからも見れますよとか、URLに検索語を入れると検索式を用いたRSS配信もできますよ、とかいろいろ。
登録レコードがPORTAで見られることの実演もされていました。
・・・ところで、OPACパーマリンクがあるってことは、もしかして検索エンジンでクロール出来るってことか・・・ってことに今更ながら気づいたので質問すると、答えは「できます」との即答。
・・・・・・それ、かなり面白くないか・・・・・・?
全部のOPACがその形式になって、クローラーぎゅんぎゅん回せば、意図して作らなくても総合目録が出来るのでは・・・・・・ここら辺はちょっとNDLやLCあたりの動向を追っておこう(いずれも最近、パーマネントリンクをOPACに付与)。


そんなこんなで非常に楽しい2時間ばかりがあっという間に過ぎ去り、質疑応答では「うちのリプレイス、4年後なんですけれど間に合いますか?」とか「うちは来年なんですけど間に合いませんよね・・・orz」といった質問も出るなど、場の期待度がかなり高いことがうかがえます。
また、図書館やデータプロバイダたる各組織、ベンダ間での協力に絡む話もかなりの反響を生んだようで、時間使い切って懇親会の時間に食い込むくらい質疑が出ていました。
昨年のキックオフミーティング時よりも図書館現場の人(特に公共系?)が多いということもあり、こいつはなかなか面白いことになりそうだ・・・
とりあえず自分も微力ながら全力で応援します、ってことで早速このエントリアップしたわけですが。


イベント後の懇親会では、普段お会いしないような自治体の方や出版社の方、OBの方や図書館員の方々(さんざん話題に挙げたNDLのOPAC担当の方や、レファレンス協同データベースの中の方、そしてレファ協ほめまくりid:nachumeさん)、他大学の方とお知り合いになることが出来、こちらも楽しかったです。
そして懇親会も終わったのち、Shizukuの面々やid:haruka-izumiさんと一緒につくばまでリターン、と・・・そこでも卒論/修論どうするんだ、とかラーニング・コモンズはどうしたもんか、とかいろいろ話したり。
全体に非常に濃い一日でした(笑)


さあ、21世紀の図書館システムを考えたあとは明日の学術誌について考えるよー、ってことで明日は第1回 SPARC Japan セミナー2008「研究成果発表の手段としての学術誌の将来」に行って来ます。
月・火連続で東京でも大丈夫、なぜなら月・火は授業がないから!
・・・まあ、この2つのイベントに出るためにわざと授業入れなかったんですけどね(爆)
これが2学期以降に響いてこないことを祈るばかり(苦笑)

*1:タンブラー本体はけっこうするので勘弁して下さい(汗)

*2:実は中国・韓国もすでに横書き・左開きの本の方が一般化してる、とかなんとか。それで両国のGBSは2006.12に開始されたが日本は2007,7まで延期することになったのではないか、というのが黒澤さんの推測

*3:でもうちのブログに来る方は4割がFirefoxだったりしますがby GoogleAnakytics