共に創り、共に育てる知のインフラ:NACSIS-CATの軌跡と展望
国立情報学研究所(NII)の提供する目録所在情報サービス、NACSIS-CATの所蔵登録レコードが先日1億件の大台を突破したということで、2/6に開催された記念講演会に参加してきました!
講演会のタイトルはこのエントリのタイトルどおり、「共に創り、共に育てる知のインフラ:NACSIS-CATの軌跡と展望」です。
(すでに資料の一部は上記webでもアップされています)。
そんなわけで、以下いつものように参加メモです。
例によって自分が聞き取れた範囲の内容を、理解できた形で記述しているので聞き取りミスや誤りも含まれるかと思います。
その点ご了承いただければ幸いです。
開会の挨拶(NII所長・坂内正夫さん)
- CSIの話とか
- コンテンツとネットワークが一緒にやれていることはアメリカからも羨ましがられた
- 日本は知恵と技術でしか生きていけない
- 徒党を組んでいいものを安く作るしかない=連携力の強さ
- 連携は難しい・・・コンテンツコミュニティ以外ではいつも胃の痛くなるようなバトル
- このコミュニティが長年培ってきた気持ちの部分は「宝」
- 1億件突破は通過点。図書は1億4千万件くらいある。年に500万くらい新しいのが出る。遡及も年に500万くらい。
- この先数年でNACSIS-CATのデータがすべてのベースになる!
NACSIS-CATの歩み紹介(NII・安達淳さん)
- 登録レコードの増加について
- 所蔵レコードは1年あたり400万件ちょい、最近10年は増えていて平均600万件
- あと4,000万件入れたい。あと10年で入れたい。この調子なら6〜8年で出来る
- その後は新規レコード登録だけで済んでいく。
- 2億件になるのは相当先。そんなに入れるものはない(笑)
- NACSIS-CATの歴史
- (min2-flyコメント)詳細はあとできっとNIIが資料公開してくれるからそっちをどうぞ!
- コンテンツと同時にネットワークを立ち上げている
- 2000年にNIIが出来るまでは筑波大の茗荷谷キャンパスの中のプレハブ小屋でやっていた。床抜けないか心配だった。
- min2-fly感想
- NACSIS-CATの歩みはそのままNIIの歩みなんだなあ。1億件突破がいかに記念碑的な話であるかというのが伝わってくる。
学術情報システム構想の出発点(財団法人新国立劇場運営財団理事長・遠山敦子さん)
- NIIの前身、学術情報センター立ち上げにつながった構想に大きな役割を果たされていたのが遠山さん
- 遠山さんが関わられていたのはNACSIS-CATの歩みの以前の話、曰く「前史」あるいは「先史」の話
- 学術情報センター、システム構想時の担当課長だった
- 今から30年くらい前の話
- 昭和52年:はじめての課長職・・・情報図書館課
- それまでに学術にかかわる色々な仕事をしていた
- 「共同利用機関や附置研究所だけでなく、大学の個々の研究者にクリエイティブに仕事をしてもらう必要がある」
- 情報図書館課の仕事はばらばら・・・献体や実験動物の話まで/それで研究者の環境を整えられるか
- 当時は資料を使えるようになるまでとても時間がかかる
- 輸入してきたものを、「それぞれの図書館で」目録カードを取るまで使えない
- もっと早く出来ないか?
- 情報図書館課は当時少数精鋭、優秀な人がいた
- どうすべきかの議論がいろいろ
- アメリカにはLCのデータベースがある
- LCの情報を使って目録を作れている
- うまく利用すれば日本の研究者に迅速・的確な資料提供か出来るのでは?
- 「情報」「図書館」課:情報と図書館のどっちも扱える。どの課にも迷惑をかけないで出来る。
- 2つを1つに結びつけて解決できないか?
- ネットワークを組んで一気に解決とか
- ほぼそのときに構想ができた
- 非常に大きな事業である・・・一課じゃできない/学術審議会に検討を依頼:審議会で諮問・答申
- 諮問した時には職員の中で結論はある程度出ていた
- 審議員の中には長尾さんや藤原さんや津田さんもいたとか
- 答申の中身の話
- すぐれた研究には他の成果が利用できることが重要だが個人や単独期間の努力じゃ無理
- 切迫した/新しいものを作り出す気分・努力
- 答申後・・・
- 局内を納得させる
- 官房が当時怖い人:若気のいたりで知っていることをだーっと説明・・・「わからない」と言われる
- 「じゃあわかるようにすればいい」⇒「ポンチ絵を描いてみよう」
- 持ってって説明・・・説得に貢献
- 海外でも説明・ディスカッション
- そこまで行ったところで次の課へ
- 後ろ髪がひかれるが役人の使命
- 後任の人たちも見事にやってくれた
- 課を去って5〜6年後に学術情報センターへ
- min2-fly感想
- 謙虚な方だなあ
- 先史時代といいつつやっぱり一番大事なところに関わられているのだな
- 今自分が使っている情報基盤の基礎の基礎のところに遠山さんが関わられていた、ということで有難い限りです本当にm(_ _)m
学術情報システム:書誌ユーティリティの誕生と軌跡(お茶の水女子大学参与・雨森弘行さん)
- 学術情報センター創設から7年間関わっていた
- 遠山さんの部下としても働かれていた
- これまでにかかわってきた中で印象的なエピソードと歴史の流れの紹介
- 書誌ユーティリティとは?
- (NACSIS-CAT=学総目+図書データ)+ ILL
- 2.学総目データベースの誕生
- 大蔵省の概算要求は雨森さんが担当
- 東京大学情図研センター
- 全国の大学に海外DBを使ってサービス提供
- 学総目を移管・DB化
- 3.学術情報システム:書誌ユーティリティ構想の誕生
- の、前に・・・ILL事務にかかる料金精算制度改革(1978)
- 今の年度末にいっきに生産される形式に
- NIIになって国公私全部混ぜての料金一括精算方式に
- 目録業務のネットワーク化による合理化・標準化⇒情報提供機能を高めることがいる
- そのためには書誌ユーティリティ
- 当時はすべて課内で手作りで原案を作成
- 歴史的な学術審議会答申へ
- 実現段階で反対が(!)
- 情報の国家統制
- カタロガーの仕事が奪われる
- その後、雨森さんは横浜国立大に転出・・・答申が出ているときに自分たちに何ができるかを考える
- 第1回・第2回大学図書館研究集会開催
- 新しい学術情報システムについても取り上げる
- の、前に・・・ILL事務にかかる料金精算制度改革(1978)
- 5.書誌ユーティリティの誕生と発展
- 30年間の成果の礎・・・1980年の学術審議会答申!
- さらに遡ると・・・学総目という手段と、資源共有・相互利用の理念を実践してきた大学図書館の現場、その思いと行動
- 図書館の現場では利用するだけでなく発展的に育てていくことの大切さを仲間や若い人に伝えてほしい
NACSIS-CAT奮闘記(別府大学文学部教授・石井保廣さん)
- 地方・中小規模大学からの関わり
- NACSIS-CAT胎動期〜黎明期
- 新収洋書総合目録
- 数十館の蔵書目録
- 最長1年のタイムラグ
- 当時は目録カード作りの達人みたいな人がいた。カード作り自体が職人芸。
- そこになければILLは・・・当たるも八卦、もってそうなところに頼む。そんでダメならBL頼り。
- 新収洋書総合目録
- NACSIS-CATとの出会い
- 石井さんが東大に映ったころにちょうどNACSISに出会う
- 2分くらいレスポンスが返ってこないDB・・・メインフレームはメモリ16MB、HDD10GBでそこに90台以上の端末があったんだからまあよくやってた?
- 国際機関資料のオリジナル入力を担当・・・入れたのが入っていると快感。しかも余所にはない。ただ間違っているかもしれない(苦笑)
- 固定的なコレクションは冊子で見た方が面白い?
- フォーマット変換して冊子体の目録を作る
- 現代の話:別府大学の図書館
- コンピュータに自動で(形態素解析+ヨミ)でやらせると・・・「おおたくそういち」とかが出てくる(大宅壮一、正しくはおおやそういち)
- NACSIS-CATのオリジナルは人が入力するからいい
- ロングテールの話は書誌ユーティリティに通じるか?
- 所蔵の少ないものにこそILLの大事な部分がある?
- 死蔵していて各館で登録するのが面倒なようなものこそ伸ばしていくべき?
- 所蔵の少ないものにこそILLの大事な部分がある?
- 書誌コントロールされているものでも揺れがある?
- TRCとJPのMARCでは70-80%しか分類が一致しない
- 書誌調整が不可欠?
- お互いに高めあう機会になる
- 怖いのは重複書誌と書誌削除(ガードはかかっているのか?)
- 業務統計の話とか
- 別府大学の売りについて
- 絵本コレクションをNACSIS-CATに入れる?
- NACSIS-CATを授業で使わない理由・・・?
- カードはすべてオリジナル入力で区切りも明確、コンピュータ渡すとそっちしか見ない、だから目録の授業でNACSIS-CATは使わない
- コンピュータに自動で(形態素解析+ヨミ)でやらせると・・・「おおたくそういち」とかが出てくる(大宅壮一、正しくはおおやそういち)
- min2-fly感想
- 別府大学とか石井さんの過去の体験にまつわる話メイン。
- 作る側の次元から使ってきてた側の話へ
- これはこれで面白いかも知らん。
次世代目録所在情報サービスの方向性(東北学院大学文学部教授・佐藤義則さん)
- まずはNACSIS-CATに関連する統計等の数値情報の紹介
- 1週間に図書の所蔵登録は15万件増える
- 国公立大学は100%参加
- 実際に書誌登録しているのは2007年に471、所蔵登録は878機関
- 実質的に参加しているのは878機関
- 所蔵登録だけする機関が非常に多い
- 2000年を境に書誌レコードの登録は上がったり下がったり、所蔵レコードの登録件数はむしろ右肩下がり
- 書誌登録される時期は非常に早めになってきている
- 参加機関における図書購入が小さくなってきている(特に洋書)
- 参加機関における目録登録が減少している(?)=図書館を通さないで買っている?
- 洋書の書誌登録件数は2000年をピークに減少してきている
- 大学図書館を取り巻く環境の変化
- デジタル化の変化の例:NACSIS-ILLの処理件数の変化
- 2005年をピークに下がりだす
- 洋雑誌の複写依頼は2000年をピークに下がる。和雑誌も2006⇒2007年で減少へ。電子ジャーナル等の影響と考えられる。
- 多様なメタ・データ活用の模索
- 旧来処理の効率化と省力化の要請
- 参加館の2極化
- 20機関で書誌登録の約50%、200機関で約95%を登録
- 「参加機関は多様である」
- 今後の方向性
- NACSIS-CATの統合的な基盤上での再構築
- ERMSをNACSIS-CAT/ILLに反映する
- FRBR(RDA)対応
- RDAは今年刊行
- (min2-flyコメント)FRBRizationの自動化っつーと慶應の宮田さんとか発表されてたなまさに
- APIサービスの導入検討
- IDに対して書誌データを返すような基本的なサービスは不可欠
- 地域別・特定分野の総合目録を容易に作成・提供できる機能へ
- 目録レコードから適切なデジタル資源へ誘導できるような、永続的な識別子への対応
- 発生源入力の可能性
- 出版社、商業MARCデータの利用
- プログラムによる適切な情報源案内のためのメタデータ・データ品質向上
- 合理的な運営・・・目録作成を維持できる仕掛け?
- 参加館全体で書誌調整する必要があるか?
- 書誌を作っているところと作ってないところがあるのを前提に・・・
- 目録センター館構想:オリジナルカタロギングするところを分ける
- インセンティブモデルの導入:書誌の新規作成の貢献度をもとに見返り・負担を
- 参加機関のレベル分け
- min2-fly感想
- 個人的には一番なじみの深い話(そりゃそうだ、指導教員がREFORMプロジェクトにもSCREALにも参加しているんだから)
- 素晴らしい提案のように思うんだが、これも意見は分かれるところは分かれるだろうなっていうか特にセンター館構想は割れそうだなあ。発生源入力も。
- 人が関わらないで済むようになるのはいい方向だと思うんだけどねー。
全体感想
- 一ツ橋講堂割と大きいのにけっこういっぱいだよ! 次世代目録所在情報サービスのこともあるし、みんな注目しているんだね!
- NACSIS-CATはNIIの基礎となるところだったことがよくわかったし、その発展とともにNIIが歩んできたところでもある。NACSIS-CATの方向転換はNACSIS-CAT単独の改革にとどまらずNII全体の方針転換に関わり得ることになるのかな、とも思ったり。
- 懇親会も含めてNACSIS-CAT同窓会の様相も(笑) これだけ多くの方が関わられて今の便利なNACSIS-CATとILLがあるということで、本当にありがたい限りですm(_ _)m おかげさまで今の自分にとっては筑波にない文献はNACSIS-ILLで速攻で取り寄せて貰う、ある本を持っている大学図書館がどんだけあるか調べたければCATをひく・・・っていうのが当たり前の、その凄さを意識しないで使っているものにまでなっていますし、そのほかのサービスも含めて現在のNIIとその提供サービスの存在は研究生活にとってなくてはならないものとなっています。なかったら国内文献の入手はかなりの部分壊滅します。草創期から関わってこられた皆様のおかげあっての現在の快適な研究生活と言うことで、心から敬意を表するとともに、便利になればもっと便利さを求めたくなるという心情に素直に従って(笑)、今後さらに利便性の高いシステムへと改革・発展していくことを願いたいと思います。
- あとオリジナルグッズのバッグと定規がかわいいので大切に使いますw