かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

テンプレートで書ける楽さと大切さ


レポートコピペ問題の問題 - Ohnoblog 2」で紹介されていた「〜児童、そして生徒のための〜自由に使える読書感想文」を見て感動しました。

 読書嫌い製造マシーン、作文嫌い人間養成ギブスである読書感想文。これのせいで読書嫌いになった人間は数知れません。君のお父さんもお母さんも、そしておじいちゃんおばあちゃんも、夏休みの宿題、読書感想文には泣かされました。

 なぜならば、読書感想文の書き方の指導といえば、「思った通りに書きなさい」の一言。センセイのご指導のを忠実に守り、思った通りに書いたら「これは感想文ではない」とクレームをつけられて再提出……。書き方は教えてくださらない、見本も示ししてくださらない、だけど文句けは一人前に言ってくださる、そう、理不尽の極み、それが読書感想文なのです。

 そこで悩める児童・生徒諸君のために、学校提出用に限り自由に使える読書感想文をホームページで公開することにしました。これをそのまま書き写すのもOK。少しアレンジして、オリジナル(もどき)の読書感想文に作りかえることもOKです。

「自由に使える読書感想文」使用条件

  • コンクール・コンテスト等の応募には使用しないこと。
  • 学校提出用に限り著作権フリー、そのまま使ってもいいし、手を加えるのもOKとします。
  • パクリ・コピペがばれても、自己責任(悪いのは自分)とし、センセイに思いっきりしかられること。
  • パクリ・コピペがばれるかどうか不安ならば使用しないこと。
  • パクリがばれそうになったら「これはオリジナルだ!」と最後まで言い張る根性を見せること。
  • 他のホームページに転載しないこと。
  • 他のホームページから読書感想文へ直リンしないこと。
  • 「読書感想文」から解放された時間で夏休みのすてきな思い出を作ること。


http://www2k.biglobe.ne.jp/~onda/より引用(2009.2.8参照)


使用条件ラストの「「読書感想文」から解放された時間で夏休みのすてきな思い出を作ること。」が格好良すぎる。
ここからのコピペが発覚した児童・生徒には是非解放された時間で作った「夏休みのすてきな思い出」についての感想文を提出して欲しいくらいに格好良い!(*結局「感想文」からは逃れられていない件)


しかし実際、世に「思ったとおりに」書く「感想文」ほど書くのが難しい上に実際には書く機会が全然ないものってのも珍しいと思います。
小・中・高と作文と言えば「あなたが体験したこと(あるいは読んだもの)とそのとき"思った"こと(あるいは"感じた"こと)について自由に書きなさい」とばかり言われて、クソ生意気なガキであったところの自分は毎度ろくでもない感想文を書いては提出していたわけですが。
あんな風に「私は〜だと思いました」とか「悲しかったです」とか「楽しかったです」とか、もうちょっと高度になって「互いに相手のために命をかけあったメロスとセリヌンティウス。彼らのような友情を果たして自分は持つことが出来るのであろうか」とか、そんな自分自身の思ったことや感じたことを自由に書いて世に出す機会なんて、小中高の作文除けばそれこそここみたいなブログか友達とのメールかTwitterくらいのもんなわけで*1
まだしも「考えたこと」や「意見」を述べさせられる小論文のような文章であれば小中高以後も書く機会は多いですが(大学のレポートの基本みたいなもんですし)、残念ながら高校で小論文を書く訓練をするのは推薦入試/後期試験等で小論文が必要とされる受験生くらいのもんで、下手すると感想文の類以外の一定以上のボリュームを持った文章は書かないままで大学入り、って可能性もなくはない(むしろ高い?)。
で、小論文の訓練をする際には徹底して「これまでの作文や感想文ではない。意見を筋道立てて表明することが重要であり・・・」とこれまでの感想文等のやり方を否定されてから入っていくわけで、おいおいじゃあこれまで自分らが書いてた作文の意味って・・・とか思ったりとかするわけです。
真っ赤に添削された原稿用紙握りしめ、「感情的過ぎる」って突っ込まれたりしながら。
「今まで思ったこと/感想を自由に表明することを教えて来て、ここ一番で『それはいらん』ってどんなだよ!」と。


さて、小論文と感想文の一番の違いは何かと言えば、小論文には(大学の試験問題等では使用する語と「〜文字以内で書きなさい」という指定しか書かれていないことが主ですが、実際には)書き方の守っておくべきテンプレートがあることです。
感想文は自由に書いてても表現力が高かったり感動的であったりすれば評価が高くなることもあるんじゃないかと思いますし、「文章自体の独創性」も場合によっては評価対象足りうるのかも知れませんが、小論文やそこから進んで大学のレポート等では中身の独創性は評価され得ても文章構造が独創的なのはマイナスにこそなれプラスには働かない。
とりあえずは「序論・本論・結論」の構造を取っておいて、それぞれの字数配分がどれくらいで、さらに個々の中身がどういう形になっているのがいい・・・と言う、問題文にはないけど受験参考書には書いてあるテンプレートがちゃんとあるのが小論文/レポートの特徴で、それを守った上でどう書くかってのがポイントになる、と。
これをさらにいっきに推し進めたものが科学論文で、そこでは(雑誌の投稿規程等で)そもそもテンプレートが明示されている(構造化抄録とか)こともあるし、明示されないまでもIntroduction、Methods(Materials)、Results、Discussionの本文構造はそう崩されることはない。
それぞれの中でどういうことを書くかもだいたい決まっていて、研究を進めて一定の結果が出ていて考察も終わっている状態であるのならば、あとはテンプレートに従って書いていけば自動的に書き上がる*2
さらに科学論文の書き方の参考書も色々あって、その中では個々の文とその組み合わせについてのテンプレートも明示されていたりする。
先日、英語に関するエントリを書いた時にトラックバックで紹介していただいた*3理科系のための英文作法―文章をなめらかにつなぐ四つの法則 (中公新書)*4なんかでもそうで、文と文をつなぐときにどうやるとわかりやすいか、と言う例が「仮説」という形でまさにテンプレートとして紹介されています。
お互いに知りたい/伝えたいのは中身であって、それを表現する文章力の有無ではない・・・とは言え、文法が間違ってたり読みにくい構造を取っている文章だと正しく中身が伝えられない、そこで一定のテンプレートに従って書かれてあれば読み手はすらすら読み進めることが出来る、と。


別に論文に限ったことじゃなく、仕事関係のメール/手紙にしたって用件の部分以外はほとんどテンプレートですし(実際テンプレ作って自動送信しているところも多いですし)、出張報告等の書類なんか書面上に既に書くべき事項や枠線なんかのテンプレートも出来ていてあとは穴埋め式に書き込むだけで出来る、と。
ついでにマークアップしておけば機械にだって楽々理解させられるくらいの代物ですよ。
新聞記事だって短くなればなるほどはっきり決まったテンプレがあるし、テレビニュースなんかもテンプレートから大きく外れるような構造は取らない。
わかりやすくするためには決まり切った構造を取る必要があるし、決まり切った構造を取るならばテンプレに当てはめてくだけでもものは書ける。
書くべき事項がわかってればジェネレータで自動生成することだってものによっては出来るわけで、冗談交じりに後輩と「卒論ジェネレータとか出来たりしてwww」とか言ってましたが、実際分野や方法論による書き方の違いによってパターンを分けていけば、部分的にジェネレータで書くことはできると思います(自分のプログラミング能力じゃ無理ですが)。


そこに文章としての「面白さ」とかがあるかと言われればないだろうと思いますが、仕事やコミュニケーションのための文章に第一に必要なのはわかりやすさであって読んでいるときの面白さではないわけですし。
「読んで面白い文章」を書くことを求められる(あくまで「求められる」。趣味等で自発的に書く人はたくさんいるはず)人なんてごくごく一部で、大半の人は相手に伝わりやすい/テンプレートに沿った文章を書くことしか求められずに日々を送っていくはずなんですが・・・なんでか小中高ではテンプレートが明示的じゃなくて「思ったとおりに書く」という、書く側にとっても面倒な上に読む側にとってもわかりにくくなりがちな(小説とか詩の読解とか。あんなのコミュニケーションとして最高難度ですよマジで)ことから入っていって、テンプレートが存在する文章についてはそれほど掘り下げずに終わっていくと言う・・・実に不思議というか、そりゃ「読書嫌い製造マシーン、作文嫌い人間養成ギブス」とか言われるのも無理はないと言うか。
読み解く際の難易度が最も高いもの(テンプレートのない小説等)を読んで、書く際の難易度が最も高い感想文を書くって、今にして思えば論文書くより難易度高いぞマジで(まあ論文の中身になる研究を実行する難易度は換算してませんが)。
しかもそれを評価するって・・・千尋の谷に突き落とすってレベルじゃねえぞ(苦笑)
それでいてテンプレートが存在するものの書き方や各種のテンプレートの紹介については全然してくれないわけで・・・ま、今ならネット上でも参考書類でもごろごろあるからそれこそテンプレートがわかれば書けるものくらい自分でやれってことなのかも知らんけど、そこまで考えて構築されているようにも思えないしなあ・・・小論文とか論文とかビジネスメールとかを書く際になって困る人が続出しているような状況を見ると、先にテンプレートもの教えといた方がいいんじゃないのとか思ったり思わなかったり。


まあそんなことを言っているこのブログにはテンプレートもへったくれもないわけですがね!
おかげで読みにくい読みにくい・・・書いてて自分でも思いますが悪いレポートの見本みたいなブログですよ全く・・・
まあレポートじゃなくてブログだからいいんだけど。
たまにはテンプレートのない文章を書きたくなることもあるんだと!
論文書くときは本当読みやすくなるよう気をつけますんでここくらいはお目こぼしを、とかなんとか。
っていうか毎度毎度

Titile

    • author name
  • Abstract
  • 1.Introduction
  • 2.Methods
  • 3.Results
  • 4.Discussion
    • Acknowledgements
  • References

みたいな形式とってるブログとか逆に嫌だし。
PLoS ONEかなんかか。


・・・あ、でもそうするともしかしてジェネレータで書けるようになる・・・?
それはちょっと楽かも・・・いやしかし・・・