かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

産総研主催「科学情報の活用に関するワークショップ」に行ってきました


標記の通り、産業技術総合研究所 評価部主催のワークショップ「科学情報の活用に関するワークショップ」に参加してきました。

プログラムの詳細は上記リンクを見ていただくとして・・・いや、それにしてもなんという豪華講師陣・・・
ワークショップの詳細についてはいつものようにメモ書きを最後につけたいと思います*1
例によって内容は自分の聞き取れた範囲、メモをする手が動いた範囲、かつ今回はThinkPadのバッテリーを最大限もたせられる範囲でしか取れていないのでその点についてはあらかじめご了承ください。


内容のメモの前に先に自分の感想を述べると、今回のWSは全体を通して「目的あっての評価」ということが全面に押し出されていたのではないかなあ、とか。
どうも研究評価って言うととりあえずランキング出して上位になったら喜んだり下位だと「もっと上に行かねば!」ってなるとは思うんですが(自分も割とそういうのに踊らされますし、ブログランキングサイト [TopHatenar]とかに一喜一憂)。
あるいは他者がつける評価にびくびくしてそこで上手く出るためにどうすればいいか・・・とかって考えがちだし、まあ常勤職を得たり助成金獲得してくるためにはそういうのに敏感に成らざるを得ないとも思うんですが、今日の話はそんな感じでどうやったらランキングの上の方に出るか・・・とかいうのとは全然違う方向で。
むしろ各種の科学情報・・・今日の話だと引用情報が大部分ですが、それを分析して得られた指標やサイエンスマップ等の情報をいかに機関の経営や研究分野の選択等に活かしていくか、そもそもその「どう使うか」の目的があって分析をするんであってそうでないと上手くいかないよ、と言うような話が全体につながっていたのかと思います。


・・・って、そういう話は相当前から出ている気もするのですが、なんか一向に浸透している気がしないのはなんでなんだぜ?
実のところみんな法人化とか説明責任とか云々とかかんぬんのためにとりあえず自己点検・自己評価をちゃんとやってるって見せたり外部評価のためのデータ提供のためにしぶしぶ研究評価とかやってるもんだからそれを自分ところで活かす気があんまりなかったり「客観的にやってます」って見せるためにビブリオメトリックス使ってるんじゃないかとか考え出すと暗澹たる気分になりますが・・・
そういう意味ではやっぱりうまくいっている実例が気になるんだけど、パネルディスカッションの最後で話題になったようにどこも自分のところの内情を積極的に外には出してくれないのでそういうグッドプラクティスもなかなか外に見えづらい、と。
あ、でも逆に言えば科学情報を上手く活用している例も(たぶん国内に?)実在する、ということなのか・・・それはかなり希望が持てそうなー。


では以下、ワークショップのメモです。




インパクトファクターを超えて:研究評価のための引用データとWeb of Science(宮入暢子さん トムソン・ロイター

  • 研究評価のための引用データ?
    • 「もともと引用データは研究評価のために作られたものではない」
      • 引用索引についての説明・・・最初の目標は各分野のコアとなる文献を集めること/情報検索の新たな手段を提供すること
      • 引用索引の画期的な部分・・・ある論文が出版された後の引用を見ることができる
      • 研究インパクトの部分は「副産物」
        • ただし当初からガーフィールドは研究評価に使われることは予期していた。著者を全員登録していたりするのはそのため。
  • インパクトファクターとは何か?
    • インパクトファクターの一人歩きが止まらない!
    • IFはもともとは収録誌選定のための社内指標
      • それ以外にも使えるんじゃないかとわかってきたから出版するようになった
    • 使い方や計算方法等についての説明
    • 「個々の論文や研究者のパフォーマンスを測る指標ではない」(あくまで雑誌の評価指標)
  • 研究評価のためのビブリオメトリックス指標
    • 「評価」について・・・詳しくはパネルで
    • 論文の評価
      • 分野を超える比較は不適切/困難
    • 研究者の評価
      • 分野を超えた比較の困難はもちろん、研究者を「分野に押し込める」のも困難
    • 研究機関の評価
      • Percent cited / Top 1% paper
    • 「似たもの同士を比較する」:分野を超えたりしない
  • 質疑
    • IFがどれだけ研究者を困らせているかご存じか? IFが1にも満たないような雑誌の論文が後にノーベル賞に結びつくこともある。ピークに達している分野は引用数が多くなるしIFも高くなる。それでもIFなのが困る。5年ウィンドウにすれば少しは良くはなるだろうが本当にオリジナルなものは5年程度で評価できない。世の中に誤解があってそれで評価されるのでおかしくなる。若い研究者が研究そのものの価値を見失わなければいけないような状況にもなる。そこらで何か・・
      • 研究者が悩んでいるのと同様に提供者としても遺憾に思っているが、自分たちの声が小さいのと・・・これは構造上の問題だと思うが、研究者はある程度引用がどう働くかは知っているはず。しかし評価のデータを使うのは研究者ではない。できるだけ簡単な、人が替っても評価できるような指標を求めているからこういうことになる。それに対する現実的な対策は研究者が正しく理解して、自分たちを支援いただけなければ難しい。研究者の主観を反映した客観データだからトムソン・ロイターはこのようなことができる。IFの現状が研究の可能性をつぶしているんだとしたらそれは遺憾なことで、ガーフィールド自身が望んでいないことでもある。IFの使われかたはトムソン・ロイターがリードしたものではなくご理解をいただきたい。

世界最大級の学術情報を戦略的に利用する:Scopusの活用事例と評価指標(清水毅志さん エルゼビア・ジャパン)

  • エルゼビアは450年間雑誌一筋。2007年にはSTM分野の論文の25%を占めていた。
    • 現在、年間2000のジャーナルを持つ=2000の編集部がある。
    • Science Directの年間ダウンロードは5億件。
      • (そのうち数十件はmin2flyによるものです。100件届くかはギリ)。
    • 出版社にとってはIFは重要な指標:エルゼビアもトムソン・ロイターの顧客。
      • 出版社ではない人にはIFをそのまま用いるのは危険。イチローを評価するときにマリナーズの成績で評価するか?
  • いろいろな指標がある
    • SCImago Journal Rank等
  • 2004.11.3 Scopusを発表
    • メインの目的は学術情報の検索
    • 実際に使っているのは研究者だけでなく、研究評価部門や管理、広報室
      • 研究評価報告や広報のための基礎資料
      • 外部資金獲得のためのアピールや、アクティブにやっている研究室への資金配分のため
      • 「客観的な数値データが必要」
    • 今、計量書誌学が非常に注目を集めている
      • 10年で「計量書誌学」を含む論文の年間発行数は1,000件以上増える。
  • h-indexの紹介
    • IQpにも言及。やっぱあれは複雑すぎる。
  • いろいろな指標を各機関で計算するのは大変
    • そこでScopus
      • いいなあScopus。筑波も契約しないかな。そしたらWOSとScopusとGoogle Scholarの比較研究に突っ込んでいけるのに。
    • 実際の比較分析例とかも提示
  • 現在は一見しただけでわかるような視覚化DBについて開発中
    • 詳細はパネルで

論文引用指標から見た大学と研究開発型独立行政法人の研究活動の動向(根岸正光さん 国立情報学研究所総合研究大学院大学

  • 大学ランキング+情報知識学会の話+SPARC Japanの話=今回の話になる?
  • ここ最近の根岸先生の分析による大学ランキング等の例示と解説
  • 独法系研究機関を大学ランキングに取り込むとどうなるかを例示
  • h-indexは大量の論文、多数の機関を対象にするには計算が大変
    • 基本的には規模に比例する指標なのでランキングとしては面白い発見がない。
    • 規模の補正が必要?
  • 「露出効率」
    • のべ引用数/案分(共著の人数で割った)論文数
      • 効率の良い共著者探しに使える?
  • 「納税者」評価
    • 国立と私立大学への交付金補助金について・・・
      • 引用力に基づいて再計算しても大して変化なし。すでに大枠では引用力に沿った配分となっている。逆を言えば、金をかけると金をかけたなりの成果が出る
  • 国立大における論文数の集中
    • 旧8帝+東工大とそれ以下の間に明らかな差がある
    • 法人化以後は上位に集中傾向が増す
  • IFは出したばかりの論文を評価するための「近似値」としては悪くない?
    • 分野による違いを正規化・調整する必要はあり
  • 押し付け、でき合いランキングを超越・脱皮
    • 他者評価を跳ね返す自己評価のために
    • それなりの手間・暇・金はかかる
  • 質疑
    • 共著による目減りは色々な機関と積極的に研究しているんだからいいことなのでは?
      • 考え方次第。ただ重複計算をするのは誤解を招く。
    • 納税者の視点として投じた金が生み出す価値、としての視点を入れるのであれば、知的資本の現在価値を出すとかできないか?
      • データの調整が難しいのでたとえばJSTでやるとか。また、企業で言うと連結決算式の話がけっこうある。会社の論文の調査もやっているがそうなるとNTTってどこまでNTTなのかとか、そこまで立ち入ると凄く手間がかかるがやる価値はある。

世界と日本の研究活動ベンチマーキング:サイエンスマップから読み解く科学動向(阪彩香さん 科学技術政策研究所科学技術基盤調査研究室)

  • 世界の論文数は増えている
  • 国際共著も年々増えている
  • 国際共著に参加する機関数・人数も年々増えている
  • しかしそれらの生産物の内容は読まないとわからない
    • 内容をなんとかアルゴリズムで簡単に描けないか?
      • サイエンスマップへ
  • サイエンスマップ
    • まずは研究者から注目を浴びているような領域を見出し、そこを俯瞰することで分析方法を確立する
    • 1.論文をグループ化して研究領域を構築する
    • 2.研究領域のマッピングによる可視化
    • 3.注目研究領域の内容分析
    • 既存の学問分野にとらわれない研究領域全体の俯瞰的な分析
    • 同一の手法で継続的に分析可能
    • 使っているのはトムソン・ロイターのEssential Science Indicators
    • 対象は被引用回数上位1%論文
  • 論文のグルーピングは共引用関係に基づく
  • 領域の大きさはマップ上では高さとして表現
  • 見えているのはあくまで論文で出版される知識の配置
    • 特許等は反映されないが物性研究等は最近は特許もよく書いているとのコメント
  • 2004年に描いたマップから2006年への変化を追う
    • 領域の分裂や融合などの関係が見える
    • 各国の論文シェア情報との重ね合わせ
  • 質疑
    • リサーチフロントから研究領域を作るときに専門家の判断を仰いでいるとのことだが・・・
      • そこは計算だけ。グルーピングしたものに名前をつけるところでだけ専門家の方につけていただいている。
    • コミュニティが存在しているところを見ているとのことならば、今後の発展が望めるところの調査にはまだサイエンスマップは適用できないのでは?
      • まだ2時点しか見られていないが、3時点目が今後の調査で見られると変わってくるのではないか。
    • 例えば極めて重要な、それまで発見されてない論文が出てきたときにこのマップはどれくらい変わるのか?(感度はどうなのか?)
      • それがどう見えるのかについてはサイエンスマップ2008をやるときに山中先生(ヒトiPS細胞)の論文がどう見えるかでわかってくるかと思う。本当に萌芽的なものが見えるのかはわからない。
        • 山中先生みたいのじゃない、もっとオリジナルなのが見えるのか? ある一つのオリジナルなアイディアが出てきた場合にどうなるのか。ある一つの分野にみんながうわと入ってくるのはわかる。
      • おっしゃる通り、萌芽的なものをどう見いだせるかは考えていきたい。
    • 領域間の相対的な距離はどう求めている?
      • 共引用関係の度数によって引力が働くように考えている。

物質・材料研究機構の科学情報戦略(谷藤幹子さん 物質・材料研究機構 科学情報室)

  • 最後に実践の話。物材機構(NIMS)がどう情報を活用しているか。
  • 情報を分解するベンチマーキング
    • 誤用を避け、強みをアピールする
    • 内部での検討・企画の資料
    • 外部への説明資料・広報
  • 情報としての意味のあるベンチマーキングに向けて
    • 日本語の生産物は海外のデータベースには収録されないケースが多い
    • 全体の成果としてのベンチマークも今後は必要
    • 韓国ではKorean Factorという自国の評価指標を開発している
      • 国内誌も含めて評価できる指標を自力で開発しているということか
  • 情報の発信について
    • NIMSとしては、図書館の時代は終わったと考えている
      • 集めた情報を活用して発信するところの支援までがライブラリーシステム
    • 研究成果の蓄積+公開+発信力
  • NIMSのeSciDocについての説明
    • 検索用のアブストの入力も可能
      • ん? 本文はサーチエンジンにはクロールさせていないのか? あるいはシステム内部での検索用?
    • 研究者個人の「見える化」!
      • 研究者のプロファイルが生成される
      • ここら辺はNIIのResearchmap.jpとかいろいろ競合してきたなあ
      • 利用統計・・・どこからどれくらいアクセスがあったか、等も見える
  • 情報流通における問題点
    • まずは機関内の情報が流れる仕組み、きっかけや利益を共用
    • それが安定して、使われるんだという動機づけが必要
    • 研究者からの支援を受けられるように・・・
      • 研究者の口をもって語るのが一番いい。
    • 評価され得る情報戦略

パネルディスカッション

  • 基調報告:科学情報の活用(大井健太さん 産業技術総合研究所 評価部)
    • アウトプットにとどまらずアウトカム(社会への貢献)も踏まえた評価
      • 研究活動の活性化・効率化を図る
      • 産総研経営判断に活用する
      • 産総研の活動を公開し、透明性の確保と理解を得ること
    • アウトプット⇒アウトカム創出への努力⇒アウトカム⇒インパク
      • 産総研のアウトカムは多様
      • アウトプットからアウトカムに至る連関の理解
  • 戦略的研究マネジメントと論文・引用データの活用(宮入さん・再登壇)
    • 正しく科学を測るためにはどういう指標が使えるのか、という質問をよく受ける
      • 戦略的なプロセスの中に位置づけないとうまくいかない
        • 現状と課題の把握、ミッションに基づく目標設定、目標達成のための評価項目抽出、評価項目について計測基準を設定
        • 目的は絞ってあるほどかなえやすい。
        • データ導入以前に組織内での周知を徹底しないとうまくいかない
        • データを取得する母体がない、取得しても整備・分析・考察する人がいないのでは仕方ない
    • データの収集範囲・・・目的に合わせた範囲設定
      • 範囲は狭い方が正確に分析できる
      • 止まった(更新されない)データの方が扱いやすい
    • 論文の評価
      • 出版後、ある一定時点で引用はピークを迎えて落ちていくのが一般的
      • 赤池先生の論文のように継続して引用回数が伸びていく論文は珍しい
      • ベースラインとの比較・・・コンテクストが必要
      • 期待値との比較・・・雑誌内の論文の平均、その分野の平均等との比較
      • リサーチフロント・・・共引用分析によるクラスタリング
    • 研究者の評価
      • 指標を見ればいいわけではなく、その意味を見る必要(例えば年間100本書いた研究者はなんでそんなに書けたのか。いくつ主要著者だったのか)
      • 引用された理由を見つけていく手がかり
    • 研究機関の評価
      • どのレベルでどれだけインパクトを出しているのか
    • 指標に基づく結果がmake senseか否かを最後に確認することが重要
    • どうして、何を測りたいのか。それを見るには何を見ればいいのか。
  • SciVal Spotlightについて(石川剛生さん エルゼビア)
    • 今月下旬に大学向けに提供されるサービスについて
    • 評価ってそもそもなんなのか?
      • だれを評価するのか?
      • どうやって評価するのか?
      • なんのために評価するのか?
      • その3つをわかった上じゃないとツールは有効に使えない。
    • SciValは・・・
      • 従来にピア・レビュー等から抜け落ちたものを評価できるツール
      • 戦略を決めた後の行動にまで活かせる
    • 開発背景
      • 1,800名の研究従事者へのインタビュー
        • 自分の強みがわからない
        • 今のトレンドがわからない
        • それを知るのに何を見ればいいのかわからない
    • 論文単位でクラスタリングしたツール
      • うまく全体像がわかるように可視化
      • Life Scienceとかの中でさらに細かい分野での存在感とかも見ることができる
    • その後の戦略に活かせるような情報
      • 新しい発見、日頃の教授陣とのコミュニケーションだけじゃ気付かないような情報など

ディスカッション

  • 産総研・岡さん:SciValを研究ユニットのようなより小さい単位に適用することはできる?
    • 石川さん:研究ユニットに属している方がどういう円に属しているかを分析していくことで・・・研究者個人を検索することで全体像は把握できるかと思うが、即ユニットに適用することは難しい。
  • 岡さん:SciValっていろいろ出てきて使い方を気をつけないと怖いと思うが?
    • 石川さん:データだけ独り歩きして使われると間違った使い方になる。グループ内での動向をバックアップ・チェックしたりする際のツールとして使って貰えれば。
  • 岡さん:何か谷藤さんからSciValにコメントがあれば
    • 谷藤さん:大変すばらしいインタフェースだと思うが、全体を俯瞰するような部署は比較的短時間で分析しないといけないので、200人いるグループを一人ずつ見ていくとかは出来ない。全体のグラフからさらっと見て、気になっているところでどういう政策に効果があるかを見るのにはいい。優れていると思う点のもう一つは、こういったデータは生データまで戻るのは体力がいることで、いかに直観的にわかるようなインタフェースかはエンドユーザからすると重要。その意味でSciValの設計思想はよくわかる。使ってみようかなと思う。
  • 岡さん:宮入さんに。これまで論文数やIFを指標として使っていたが、引用を評価の指標としては使ってこなかった。一部の研究者では引用をPRしているケースも多かったが・・・先ほどの発表だと引用数についても出し方について色々考えないといけないということ?
    • 宮入さん:繰り返しになるが、論文の引用回数だけ見て凄いか凄くないかを判断することは不可能。平均と比べたり分野内でどうかを見たり・・・基本的なことばかり繰り返して恐縮だが、そこができていないと公平な評価にならない。また、評価をする際には公平な評価とは何かを決める必要がある。例えば2人の研究者を比較するデモをした際に、1人は分野の平均から見てインパクトがあるようで、もう1人はないように見えた・・・が、2番目の人は自分の論文の引用が高すぎて分野内の平均自体を押し上げていた。そういった背景を見ないで数字だけでランキングをすることがいいことなのか。結局、数字は何かにたどりつくための手掛かりでしかない。また、数字で出てきた結果と実感があっていない場合にきちんろリジェクトできるか。
  • 岡さん:引用は分野によってピークも違うと言うが、原著論文とレビュー等でもパターンがある気がするが?
    • 宮入さん:一般的な傾向も言えるが、個別を見ると例外はものすごいいっぱいある。ずっと引用されているのは赤池先生の、モデルのモデルの論文。いわゆるメソッド論文はレビュー論文と同じようによく引用される傾向がある。「こういう論文はこう引用される」というのが研究者自身にわからなくなったからこういう(トムソンのような)ツールが必要になった一方で、やっぱり研究者自身によるレビューも必要。問題は、29回引用されている場合と30回引用されているものを異なるものとして扱う必要はない。
  • 岡さん:特許論文への引用はカウントされている?
    • 宮入さん:特許の引用分析を専門にしている人もいる。論文の引用は著者が選んでいるが、特許は出願人の引用と審査官の引用がある。それぞれがそれぞれの特性を持っている。特許の場合は前のものとの違いを示す引用も多いので、必ずしもインパクトとは言えない。だが学術文献が引用された場合には学術文献が応用されたという解釈をすることもままある。
  • 岡さん:SciValも特許との関係で何か生み出せたりはしない?
    • 石川さん:論文と特許、特許とお金の関係を特定したい需要があるのは知っているが、現在はまだ論文の分析にとどまっている。経済系の官庁との、どこの研究をすれば特許につながるかの分析は重要とは考えている。
  • 大井さん:根岸先生へ。大学ランキングって色々なところでされていて、ランキングをつけるとそれは独り歩きをすると思うが・・・わかりやすいが、危険なのでは?
    • 根岸さん:朝日新聞の大学ランキングは最初は高校生向けに出した奴。食堂のランキングとか100種類くらい並んでいて、いろんな次元から並べている。それを総合するのは難しいのであえてやっていない。
  • 岡さん:IFについて、すぐわかるから短期的に指標として使っていいのではという話があるが・・・
    • 根岸さん:評価と言うとみんな昨年度の実績を評価したいと言うが、それも引用に基づくとか言われたらIFが出回っているので・・・平均なので論文の格付け指標としては使えるかも、と。分野間の格差の問題はあるのでそこを是正しようとISIにはいってるんだがなかなかやってくれない。「分野を超えちゃダメ」と言うだけ。評価と言うのはもともと分野を超えるから評価が必要。本当の評価は分野を超えてどうやって並べるかが重要。もともと世の中は比べられないものを比べて資源配分している。新幹線とアニメと定額給付金を比べて何がいいか決めてるんだから、せっかくビブリオメトリックスがあるんだから比べればいい。
  • ??:エルゼビアのScopusって郵便番号で論文検索できないの? 産総研なら分野ごとに建物が違うので郵便番号とAISTと入れればWOSは検索できる。Scopusはできない。どうにかならない?
    • 石川さん:それができるといいとは思うが・・・はい。考えます。そういう機能ってあってよかったな、と思う? 名寄せとか所属が複雑になる印象があるが。役に立つならコストやリスクがあっても・・・
  • 所属だけなら産総研なら色々なセンターがあるからそこのものだけ探せないが、住所が一緒に探せれば個別も見られる。理研なら横浜/神戸で所属が分かれるケースもあるが、例外として・・・
  • 日本動物学会・永井さん:欧米はUsage Factorに興味があるようだが、どういう風にお考えか? 自分のUsageを上げるために自分でどんどん使うとかもあろうかと思うが・・・また、学会出版者としてはアウトプットのみにすべての評価が集中している、特に若い研究者がこの後の日本の研究を支えられるのか不安。研究者自身がどう思っているのか。研究評価を出すにあたっては前段の活動から含めて研究活動。日本動物学会はたくさんの研究者が努力をしてジャーナルを出している。Zoologyについてはかなりのアウトプットを持っていて、学会員のピアレビューに支えられている。評価をするのが厳しいのはわかっているが、宮入さんのようなお話を研究者はどう思っているのか。研究評価は何がいいのか本当はわからないままそれでも評価している。アウトプットの前段、ピアレビューの評価をなぜ考えないのか? ピアレビューがなければアウトプットはない、それを評価者はどう考えている?
    • 阪さん:若いということで。私自身ポストドクターで、同期を見ていれば任期付きなのである程度の時間の中でアウトプットを出さなければいけない。それも本数であったりIFであったり。時間が決まっている中で出さなければいけないことへのストレスもあり、早く出る成果を求める傾向もある。それを問題視するならそれにあった形での評価に変えていかなければいけないだるう。計量書誌学は学問自体動いていてまだ完成されたものではない。昨年オーストリアではWOSを使うかScopusを使うか、IFは分野を越えられるかだけでセッションがあるような。そういうものが学問のところで走っている状態。そこから何を使いたいか抽出してきて・・・創薬と一緒で、現場でツールを変えていくしかないというのが私がいま感じていること。
  • 永井さん:Usage Factorの詳細について説明(このあたり等を参照。IFと同様に一定期間に出版された論文の一定期間内での利用について分析する指標・・・として提言されていますが具体的にこの「期間」をどう設定するか等については自分が把握している範囲ではまだコンセンサスは得られていなかったような。)。日本の研究者はよくわからないがアメリカの研究者は好きらしい。なんでかよくわからないが、何か今の感じがあれば。
    • 清水さん:UFについて出版社としては、Usageは非常に重要。計量書誌学の要素として入れるべきか否か悩んでいる。電子ジャーナルについてどのくらいusageがあったのか正確な数は全部わかる。ある論文を引用するまでではないがじっくり読んだ、とかもわかる。ある論文が何回ダウンロードされて何回読まれたかは評価の重要な要素になるが、じっくり読むためのダウンロードか積読なのか間違えてクリックしたかの判断はつかない。また、ダウンロード数は電子ジャーンルの大きさやユーザ数によっても違う。出版社同士でそういう話ができる段階にも至っていないが、引用一辺倒の中でダウンロードが使えるようになったんだから使おうというのは社内では出ている。ジャーナルの評価に利用したり。ただ、それを計量書誌学の一部として発表するには越えなければならない壁がいくつもある。
  • 産総研・カワガシラさん:一応、若くはないけど若い研究者として。日本の研究体制はコーチングみたいな、指導するシステムがほとんどない。あるところにはあるがそう言った感じが非常に強い。「モチベーションあるから勝手にやれよ、出来なきゃ出て行け」みたいな。そういったところを組織的にコーチングと言うか、コンサルティングするところがあれば・・・ピアレビューの前の段階として。また、ピアレビューについてはwebのブログなんか量はたくさんあるけど質が低いので、逆に自然発生的にレビューしようという動きがある。レビューがちゃんとなされているかどうかが非常に重要。「あそこは楽だから出せばいい」みたいなのもけっこうある。「あそこは通るよ」みたいのが研究者の中にも。そこは日本の学会でもピアレビューしてコンセプトを出さないとこれからは駄目だと思う。
  • 産総研・??:宮入さんと石川さんに。評価って日本語で言うと査定的な意味が入ってくる。査定するときは正解がないとできないので人々はいろいろ探してしまう。それで客観的なものに惑わされていく。それで使われてしまうのかなと思うのだが、お2人はそもそも評価とは・・・という話をしていて驚きだった。ビブリオメトリックスは評価と言うよりは分析でしかない。それをどう戦略策定に生かすかというのが宮入さんのお話だと思う。戦略策定のためのフィードバックにはどんな評価が有効? もっと言うと、研究者は経営的にものを考えるのには慣れていないのでどこかの研究機関と組んで経営にフィードバックする例を示して貰えると・・・なにかアイディアがあれば。
    • 宮入さん:申しあげようとしていた核心部分。評価と言うよりは分析と言うところで、最初の職名はアナリストだった。実際、「分析する」という態度が一番正しい。分野自体が発展途上でみんな模索している最中。「これ」という正解が出しにくいことへのジレンマはある。実例を出してみんな納得、というのは一番なのだが戦略決定の部分はみんなプロセスを外に出したがらない。研究機関の中に入り込んでサジェスチョンする際とか、よい実践例なので外に出したい場合でもあくまで一般論にするか公刊されたレポートに基づくしかない。いい事例についてはたくさん紹介できればいいなとは思うし、日本の研究機関の中にはそうした例も多い。
    • 石川さん:おっしゃるとおり、これは分析。なんのために分析するかわからないといい分析もできないし戦略策定にもいかせない。使い方は弊社でも模索している最中。競争資金が自分たちの強い分野で獲得できているかとか、使い方も見えてきている。パートナーの方が主体的に外に出していっていただければ。ただやはりどの機関もおかれている環境は違うので、うまくいったところのやり方でそのままうまくいくとは限らない。




個々のトピックは取り上げ出すとそれぞれ1エントリレベルになってしまうのでまたの機会と言うことで。

*1:本当は箇条書きのメモは見づらいし反響も伸びないのでちゃんと編集した方がいいってのをNDLトークセッションのレポートで思い知ったのですが、さすがに5時間強の内容についてあのレベルのレポートはまとめたくないとか、トークセッションと違ってプレゼンテーションはああいう形式にしにくいとか色々あってやっぱ箇条書きのままでいきます