かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

近況報告と今後の予定


気付けば9/4に博士課程への合格を報告して以来*1、イベントレポートしかアップしていませんでした。
元からイベントレポートブログになりつつある気配は感じていましたが、まさか2か月もそれしか書いていなかったとは。
これは「ペプシNEXを論文とイベントレポに変える機械」*2との呼び名も仕方がないのかも(汗)


書きたいことは色々あるにはあるんですが、修士論文やら学会発表やらなんやらかんやらの用事があり、イベント会場でその場でメモ取って最初と最後にちょこちょこ書いてアップできるイベントレポートなら(イベントに参加している限り)アップしやすいのですが*3、なかなか一からエントリを書く時間が取れませんでした。


ってことで9/4のその後についてですが、9/8開催のRIMS研究集会での発表についてはすでにブログでもご報告したとおり*4
さらに9/17の日本動物学会研究大会での発表、9/26の三田図書館・情報学会での発表、全部まとめて発表資料を機関リポジトリにアップしております。


いずれも機関リポジトリアクセスログ分析(自分の修士論文のテーマでもあります)に関するもので、前二者は中でも特定のタイトル(京都大学の紀要や『Zoological Science』誌)に限定して分析して見たもの、後者はタイトルを限定せずに色々見てみた結果となっています。
最後の発表について簡単に結果をまとめると、

  • 日本語で書かれているか英語で書かれているかでアクセス数の差は少ない。日本人は日本語の、海外からの利用者は英語のコンテンツを利用し逆は少ない。
  • 日本語コンテンツへの国内からの利用は新しいものを良く使う傾向があるが、英語コンテンツへの海外からの利用、特にサーチエンジン経由のものは出版年に関わらずアクセスしている。
  • テキストデータが付与されていない(サーチエンジンから探せない)コンテンツの利用はコンテンツがある場合の何分の1にもなる。特に英語コンテンツはサーチエンジン経由の利用が大部分なので、テキスト付与を徹底する必要がある。


と言った感じです。
興味を持たれた方は上記リンク先からどうぞ。


また、先日(10/31〜11/1)の日本図書館情報学会では(すでに当ブログでも紹介しましたが)北海道大学観光学高等研究センターの山村高淑先生、同じく北海道大学大学院の岡本健さん、自分の指導教員の逸村裕先生と共同発表をさせていただきました。
こちらはまだリポジトリへの登録は申請中ですが、以下のサイトに予稿をアップさせていただいています*5


こちらもやはり機関リポジトリアクセスログ分析メインの話ですが、特にアクセス数が多い(ランキング上位に入るような文献)がどんな使われ方をしているのかを見た話です。
リポジトリ全体で見るとサーチエンジンからの利用がほとんどなのですが、ランキング上位に出てくる文献は

  • サーチエンジンから恒常的にアクセスされ続けるもの
  • マスメディア等で紹介されて一時的に多くのアクセスを得るもの


の2つに分けられる、しかしその中で北大でアクセス数現在1位の論文は・・・という話をしています。
タイトルからも抄録からもわかりにくいですが、分析対象がアニメ聖地巡礼に関するコンテンツであったこともあり、「らき☆すた」の聖地巡礼で話題になった埼玉県鷲宮町に関する論文の分析が主軸になっています。
マスメディアで取り上げられてもいないしGoogleからアクセスされているわけでもない時期に急にアクセスが伸びていたのだけれど、さてこれはなんだろう・・・と言う。
結果としては「鷲宮町自体が話題になった+2ちゃんねるはてなが増幅装置になった」と
言う、ネットでよくあるパターンでのアクセス増なのですが、そんな感じで学術的ではない文献と同じように学術文献が使われているって面白いしOAにしておけばその手の学術文献としてはあんまり予想していなかった使い方がいろいろ出てきうるんじゃないか…ってあたりが自分の興味の発端です。


あとは、これは発表中でちゃんと話しておけばよかったと後になって思ったんですが、サーチエンジン頼みではないアクセス経路として何が考えられるか=コンテンツの見せ方として、「マスメディアで取り上げられるなど話題になったものを誰かが紹介する」っていうあたりが重要なのではないかと。
それが図書館員だったか利用者だったかがアニメ聖地巡礼論文とその他の論文の違いですね。
メディアに取り上げられても今の新聞サイトなんかはリンク貼らないことが多いですし、そうなると図書館等で「メディアに取り上げられました!」って紹介ページを作っていないとアクセスは伸びません(なので、今回の分析中「サーチエンジンにより一時的にアクセスが急増した」文献はありません)。
「話題の文献を紹介する」ってのは物理的な図書館なら良くあることですが、機関リポジトリでもそれをやるのとやらないのとでは利用が全然変わって来るみたいだよ、と言う。



で、同じくサーチエンジン以外のアクセス経路からの利用についての分析・・・と言うことでは来月(12/3,4)開催のDRFIC2009で経済学分野のDB、RePEcと機関リポジトリの関係について発表してきます。


自分の発表(逸村先生と共同発表)は2日目で、日本語タイトルは『機関リポジトリにおけるワーキングペーパーの利用にRePEcが与える影響』です。
タイトル通り、RePEcからリンクされたコンテンツはどれくらい利用が増えるか、その時コンテンツの特徴(何語で書かれているか)等で利用傾向に差はあるか、そしてRePEcからのアクセスとサーチエンジンからのアクセスではどんな違いがあるのか・・・と言う話をする予定です。・・・英語で。
また、同じくDRFIC2009のポスターセッション*6では三田図書館・情報学会の発表の続きについても発表予定です。


さらに機関リポジトリアクセスログ分析関係のネタとしては、先日発行された『図書館情報メディア研究』にて「論文の被引用数と機関リポジトリにおけるダウンロード数の関係」と題した研究ノートを発表させていただきました(webでの公開はまだですが)。


中身はなかなかややこしいのですが、一言でまとめると「良く引用されていた論文が機関リポジトリで良くアクセスされるわけではない」(被引用数⇒アクセス数、という関係はない)という話をしています。
逆ではないです。
リポジトリでよく利用されたものがよく引用されるかは(アクセス数⇒被引用数)、この論文では触れていません。
「そんな被引用数が少ない論文なんか集めてどうするの?」と言った意見に対抗するであるとか、そもそも機関リポジトリの場合、オープンアクセスジャーナル等と違って出版済みの論文が収録される場合がほとんどなので、仮にアクセス数と被引用数の間に相関があったとしても「もともとよく引用されてた論文がアクセスも多かっただけじゃないの?」というような疑問が入る余地があると思うのですが、その疑問に対するカウンターとしては使える論文であると自負しておりますが、間違っても「オープンアクセスにしても被引用数は増えない」的な論文ではないです。
そちらは鋭意分析中で・・・結果が出るのは何年後かなあ・・・(若干遠い目・・・)
そもそも利用⇒引用の間に年単位のタイムラグが出るのは一般的なことであり、その関係を調査しようと思うと時間がかかるのも仕方ないかな、とかなんとか。


あともう一つ、発行物としては丸善ライブラリー・ニュースの第7・8合併号にて「研究の話」という簡素なタイトルのエッセイ(?)を寄稿させていただきました。


中身としてはこれもまた機関リポジトリアクセスログ分析の話をずっと語っています。
どんだけログ分析が好きなんでしょうね自分。
まあ好きなんですが。
そしてこの執筆陣の中で研究語るってあらためて目次を見ると無茶苦茶恐れ多いですね(汗)


以上、ほとんどが機関リポジトリアクセスログ分析の話をしている近況報告でしたが、つまるところ9〜10月はずっとアクセスログ分析とその結果発表をしていました。
修士論文に本腰を入れかつDRFIC2009の準備もする11〜12月もずっとアクセスログ分析とその結果発表をしているのではないかと思います。
イベント等には時間をやりくりして参加する予定なので、レポートも時間をやりくりしてアップしていきたいと思いますが、それ以外のエントリは今しばらくなりをひそめるかも知れません。
請御容赦。


その分、参加したイベントのレポートはなるべくちゃんと挙げようー・・・ってことでさしあたっては明日から3日間、図書館総合展に参加してくる予定です。


現在の予定としては、

  • 初日:第3会場で午後から「10年後の図書館と大学」(REFORM2)のフォーラム参加
  • 2日目:特設A会場(デジタルリポジトリ連合=DRF)のフォーラムと第5会場15:30からの「貸出履歴を利用した新しい利用者支援の展開リターンズ」に参加
  • 3日目:特設A会場「学術コンテンツのデジタル化と情報利用行動の変化:SCREAL調査の意義とこれからの大学図書館」に一日貼りつく予定

となっています。
一応、今年も期間中は横浜に泊まり込む予定で、かつネットがつながるカプセルホテルを予約したのでなるべく当日夜にはレポートをアップしていきたい所存ではありますが・・・総合展中はむしろ夜が熱い(笑)こともあり、どうなるかは未定です。


休憩中等、会場をうろうろしていると思いますので、お見かけの際には声をかけていただければ幸いです。
以上、近況報告等でした。