かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

引用索引データべース、あれは実に良いものだ

気付けば4月も10日を過ぎました。
大学もすっかり新入学のシーズンです。
と、くれば普通は学部1年生向けに「この先の大学生活で気をつける10のこと」みたいなエントリを書くところなわけですが、今回は学部生向けではなく大学院の新入学生向けの話です。


筑波大学附属図書館の情報誌、Prismの16号に記事を寄稿させていただきました!


内容はタイトルの通り、引用索引データベースを、「まずは使ってみようぜ!」という話。
と言っても「引用索引データベースってなんじゃらほい?」という方も多そうなので、まずはその説明、特になんでこれがあると嬉しいのか、という話から始めています。


多くの大学生は、初年次・・・かどうかはともかく、4年間(あるいはそれ以上)の大学生活の中で「芋づる式」の文献探索、というものを習う機会があるのでは、と思います。
論文にせよ、図書にせよ、まともな学術文献であれば必ず末尾なり脚注なりに、その文献の中で引用したり参考にした文献のリストを付けるはずです。
そこでまず最初に自分の探したいテーマに合致した論文を1本(あるいは数本)見つけ、そこで引用されている文献をさらに辿る・・・ということを繰り返すことで、効率的かつ網羅的に文献探索ができる、というのがいわゆる芋づる式探索です。
特に全く新しいテーマに手を出すときなど、右も左もわからない状態で闇雲に文献を漁っていたら何度日が暮れるやらわかったものではないわけで。
そんなときに、いい感じのレビュー論文を1本見つけてそこから芋づる式に面白そうなものをピックアップ・・・というのは研究生活を送る上で必須の行動でしょう。
たぶん、芋づる式探索を(意識しているかはともかく)しない院生はめったにいないはず。


しかし芋づる式探索には大きな欠点もあります。
その性質上、必然的に芋づる式探索で見つかるのは起点にした文献よりも以前に出版された文献です。
当たり前の話で、自分が論文を書いたよりも後に出版される論文を引用することはタイムスリップしない限りできないわけです*1
ゆえに、最初の1本の選び方を失敗すると、芋づる式探索で過去の文献を網羅的に探索し、さあ研究に取り掛かるぞ・・・あるいは研究が終わって論文を書くぞor出すぞ、という段になって、最近出された超重要な文献を見逃していたことに気づく、なんてことが起こりえます。
あれは実に痛いものです(経験者は語る)。


そこで役に立つのが引用索引で、こいつはある論文「を」引用した論文を芋づる式と同様に辿れるようにしてくれた探索ツールです。
その誕生の経緯についてはPrismの原稿にも書きましたし、その中で参考文献に挙げた窪田輝蔵氏の著書*2に詳しいので省きますが、これを使えば過去方向だけでなく未来方向に向かっても引用文献間のつながりを辿っていけるわけで、文献探索の際には大変重宝します。


筑波大では現在トムソン・ロイター社のWeb of Scienceを契約しているほか、エルゼビア社のScopusもトライアル中で使えますし、無料のツールとしてはGoogle Scholarにも同様の機能があります。
附属図書館では4/27、5/21に「外国論文の探し方講習」としてWeb of Scienceの使い方講習をやってくれるそうですし(詳細はPrism原稿参照)、今まで使ったことがない方はこの機にぜひ引用索引データベースを使ってみてはいかがでしょうか。


・・・ということで以上、Prism原稿の宣伝+筑波大附属図書館の講習会の宣伝+引用索引データベース作成各社の宣伝でした(笑)*3
いや実際、WOSやScopusは便利な使い方が色々あるんですが、便利すぎて引用索引的な部分のありがたみが逆にあんまり強調されなくなってきたかなー・・・と思い、こんなことを書いた次第。
あと、Scopusのトライアル期限が終わった後に「やっぱ契約しないわ」となると個人的に超困る一方、だからって「Scopusと契約してWOS切るわ」と言われてもとんでもなく困るので、「筑波大生はみんなもっとWOSとScopus使おうぜ!!」と言うことを積極的にアピールしていきたいという個人的な事情もあります。
実際問題、収録範囲が違うために両データベースでひっかかる文献は相当違い、図書館情報学等と言うニッチな学問をやっている人間にはその両者の差にあたる文献群もとても大事だったりするのです。
ScopusではヒットしたけどWOSにヒットしなかった論文を引用したこともあり、逆も然り。
最近だと、『情報の科学と技術』掲載の機関リポジトリとオープンアクセス雑誌についての論文は、執筆前にWOSとScopusを駆使して文献探していたりもします*4
途上国のOAについてとかScopus使ってなかったら見つけてなかったかも知れない。


色々書きましたが、言いたいこととしては「引用索引データベースは便利だから使おうぜ!」っていうだけだったり。
具体的な使い方は、図書館の講習に行くとかなり詳しく教えてもらえます*5
他にも春先は特に図書館の講習が多いシーズンですし、よく使い方のわからないツールででもなんとなく面白そうなのがあったら、積極的に出かけていくのがいいのではないかと。
さすがに学部1年生でWOSやScopusをガンガン使うようなところはうちの大学にはないのではと思いますが(あったらごめんなさい)、院生であれば逆に英語論文読まないなんてところは少数派かと思うので、自分の分野の専門DBの他にも使えるツールを知っておくと役に立つことも多いのではないでしょうか。

*1:実際には、自分が投稿中の論文で査読を通過したものを引用したりすることもあるので、絶対にないわけではないですが。

*2:

科学を計る―ガーフィールドとインパクト・ファクター

科学を計る―ガーフィールドとインパクト・ファクター

*3:なおこの件については附属図書館からのPrismの原稿執筆依頼以外、特に誰かに頼まれて書いたわけではありませんのであしからず。

*4:『情報の科学と技術』60(4)に機関リポジトリとオープンアクセス雑誌についての論文掲載 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか

*5:トライアル中のSCOPUSの講習はないようですが・・・むしろそれはあれば自分も聞きたい。まだ使いこなせている自信がまるでないので。