リポジトリの力:リポジトリの効果と応用サービス(国立情報学研究所平成21年度CSI委託事業報告交流会(コンテンツ系) A-1 成果報告)
イベントラッシュ2日目。
昨日は大学・研究評価の話でした*1が、今日はその中で少しお話も出てきた機関リポジトリに関する国内最大級のイベントの一つ、CSI委託事業報告交流会に参加して来ました!
昨年は自分も発表サイドにまわったわけですが*2、今年は自分は聞いて記録を取る係ー、ということで割と気楽な立場だったり。
一方で、昨年までは2日間にわたって開催される代わりに1会場で行われていたのですが、今年からは1日・2会場での並行開催と言うことで、どちらも大変興味がある発表目白押しだったのですが残念ながら身体は1つしかなく・・・今回はずっと一ツ橋講堂側で記録をとっていました。
もう1会場の方はどなたかその場にいた方の記録に期待したいと思います。
なお、今回も丸一日にわたるイベントと大変長かったので、記録は3部構成に分けて順次アップしていきます。
というわけで以下、例によって例のごとくメモです。
あくまでmin2-flyの聞きとれた/理解できた/書きとれた範囲のものであり、かつ今回は2日連続で睡眠時間が4時間に届いていない影響でたまに意識飛んでいたりもするので不正確性を御理解いただければ幸いです。
また、第1部前半は会場でネット接続を試みて失敗し、PCが調子悪くなってメモが荒かったりします。
その点も御容赦願います。
では、まずは信州大学の岩井さんのご発表から!
コーディネータ:逸村裕先生、筑波大学
ダウンロードデータを次に生かす:視認度評価分析システムの現在(岩井雅史さん、信州大学)
- 背景
- 機関リポジトリのダウンロード数、検索語、アクセス元情報を提供するシステム
- システムの概要
- 実装例のデモ
- SOAR 視認度評価分析システム|信州大学学術情報オンラインシステムSOAR
- 被引用数はあまりなくてもダウンロード数は多い論文を発見できる。自分の強みが色々な角度から
- 学部単位の統計表示
- サーチエンジン経由の場合は検索キーワードもわかる
- リポジトリを見に来た人がどういうテーマを見に来たかがわかる
- 自分の研究の強み、売りの参考に
- システムの課題
- 質疑
-
- 東北大学・??さん:自分自身の思いと被引用数が関係しないのは研究者はよくわかっているので、選択肢が多いことは研究者にとっては厳粛に受け止めたい。自信を持って宣伝して欲しい。自分のイメージを壊してもらえることもいい。
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- 民博・高橋さん:デモで検索ワードクラウドの文字の大きさが違うのは意味が?
- 字が大きいワードほど検索回数が多いもの。
- 民博・高橋さん:デモで検索ワードクラウドの文字の大きさが違うのは意味が?
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- 北見工業大学・フナキさん:今までもダウンロード数は教員にお知らせしていたが、どこから来たか等を質問されたことがあった。その時は答えられなかったが、このシステムは完成時には一般のリポジトリでも利用できる環境になる?
- 無償提供モジュールは大学、学術機関で研究者総覧と組み合わせて使う場合には出す。その受付を始める。ただ、今のところは適用できるシステムが、特に研究者データベースについては制約がある。リポジトリについては多くのシステムで大丈夫だと思うが、今はDSpaceとXooNips。研究者データベースをどうするか、カスタマイズの必要性の程度がまた不透明。それについては今後もお知らせしていきたい。
- 完成を楽しみにしています。
- 北見工業大学・フナキさん:今までもダウンロード数は教員にお知らせしていたが、どこから来たか等を質問されたことがあった。その時は答えられなかったが、このシステムは完成時には一般のリポジトリでも利用できる環境になる?
研究者情報システム連携プログラム(守本瞬さん、金沢大学)
- 事業の目的:大きく2つ
- 1.著者自身による投稿をどう容易にする?
- 2.いかにして著者を同定する?
- 著者自身による投稿を如何に容易にするか
- 著者同定をどうする?
- NIIの研究者リゾルバ(http://rns.nii.ac.jp/)に、金沢大の総覧から研究者個人データをアップロードする仕組み
- ReaD(http://read.jst.go.jp/)向けに情報を飛ばすシステムを、リゾルバ向けにXML変換するものを構築
- 大学が持っている最新の情報をNIIのリゾルバにアップロード
- NIIのJAIRO(http://jairo.nii.ac.jp/)向けにjunii2とクロスウォーク
- JAIROに科研費番号を届ける仕組み
- NIIの研究者リゾルバ(http://rns.nii.ac.jp/)に、金沢大の総覧から研究者個人データをアップロードする仕組み
- これらによる将来構想
- 今後の構築
- 質疑
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- 文部科学省・首東さん:事業の目的としてデータベースに先生がデータを登録した際に本文データを登録できるとのことだが、月数件というのは業績DBに登録する中のどれくらいの比率?
- 比率としてはごくわずか。どちらかと言えば先生方は年度末にまとめてDBに入れてしまうので、それより先に図書館の毎月の呼び掛けで登録されてしまっていたり。そこで漏れていたものとか。割合で言うと1割に行っていないかと思うが、いろんな入口があれば何かの機会に登録いただけるかと思う。
- 登録数自体は増えてきている?
- 爆発的に増えたとかいうことはない。
- 文部科学省・首東さん:事業の目的としてデータベースに先生がデータを登録した際に本文データを登録できるとのことだが、月数件というのは業績DBに登録する中のどれくらいの比率?
アクセス統計の手法と効果(ROAT project)(武内八重子さん、千葉大学)
- ROAT(http://roat.l.chiba-u.ac.jp/xoops/)
- 機関リポジトリのアクセスログを一定の基準で処理、標準的なアウトプットで出力
- 分析基準はCOUNTER(http://www.projectcounter.org/code_practice.html)、出力はAwstats
- 平成21年度のシステム改修
- 海外の状況調査
- フランス、ドイツのアクセス統計プロジェクトと情報交換
- フランス・・・各機関リポジトリでログの分析
- 相互比較できる枠組みの概念形成を目的に活動しているプロジェクトと情報交換
- システムはない。分析方法や用語の使用方法の統一
- ドイツ・・・Open Access Statisticsプロジェクトでシステム構築
- 複数の基準でログを分析した結果を比較表示できるようになっている
- まだ広くは公開されていない。プロジェクト内で研究中とのこと
- イギリス・・・PIRUSプロジェクト
- 最終レポートの翻訳をROATで実施。サイトにアクセスすると翻訳したレポートが見られる
- 基準はCOUNTER準拠。COUNTER第3版の翻訳も掲載した
- 海外に対するROATの利点
- 課題
- 国際標準化の必要性
- 複数機関の著者が同じ論文をそれぞれにアップロードした場合、論文の利用としてはそれらを合計したいはずだが、どうやったらうまく行く?
- 多様な分析方法への対応
- 今後の課題
- より妥当な、利用機関のニーズにあったが、国際的な場でも使用できる統計結果を得られるように
- IPではなくCookieで個人を認証できないか、など
- より妥当な、利用機関のニーズにあったが、国際的な場でも使用できる統計結果を得られるように
- 参加機関はいつでも募集中!
- 千葉大学附属図書館:ir@office.chiba-u.jpに連絡を
- 質疑
- 東北大・ヤナギサワさん:ドイツのOASはどうして広く使われていない? 公にできないから?
- まだ公開していないせい。利用機関を募る段階にたどり着いていないよう。ROATは使って欲しいと既にアピールしているが、OASは形が出来るまで内部で試行錯誤したいらしい。
- しかしプレゼンスを高める上で、いいことばかり起きるわけではない。研究者が離反しないことはとても大事な注意事項と思うが。実は研究者が見ている世界と、情報から浮かんでくる世界は必ずしも一致しない。一致しないのは謙虚に見れば研究者にとっては変わるチャンスのはずだが、プライドが傷つけられることもあるのではないか? 情報は1人歩きするのは避けられない。そのさせ方。ドイツが注意しているのはそういうところも埋めながらやろうとしているのでは?
- 逸村先生:ドイツの場合はナチスドイツの情報政策の動きが今日にも影響、EUの中でも頑なな要件もあってログの解析も厳しい。しかしやることはやろうとしている。
- 東北大・ヤナギサワさん:ドイツのOASはどうして広く使われていない? 公にできないから?
機関リポジトリ収録文献のビジビリティ向上(野中雄司さん、北海道大学)
- AIRwayプロジェクトについて紹介
- AIRwayの詳細説明
- AIRwayの現況
- 国外機関リポジトリのメタデータフォーマット調査
- 日本を除くコンテンツ数上位300帰還をOpenDOAR(http://www.opendoar.org/)から選ぶ
- 世界中のリポジトリからのメタデータ収集は困難であることが改めて判明
- AIRwayの今後
- JEEPway
- 質疑
ZSプロジェクト:学術成果の拡大(永井裕子さん、筑波大学大学院図書館情報メディア研究科/日本動物学会事務局長)
- プロジェクトの背景
- 一昨年のDRFICでプレゼンテーション
- http://ir.library.osaka-u.ac.jp/metadb/up/DRFIC2008/Nagai.pdf
- あるジャーナルがリポジトリに入ったらどんなパフォーマンスをするかを徹底的に調べることが重要である
- 科研費を受けて発行してきたジャーナルとしても、コンテンツを抱え込むのではなくリポジトリに入れてパフォーマンスを見ることが責務と考えていた
- 『Zoological Science』が読めていなかった人にも届くといいな、と考える
- 北大、京大、筑波、関係する先生各位に御礼を申し上げたい
- 一昨年のDRFICでプレゼンテーション
- プロジェクトの概要
- 再考すべきこと
- 『Zoological Science』について
- BioOne.2*4、UniBioにより電子版を公開
- インパクトファクターが2008⇒2009で落ちたのでちょっと凹んでいる
- Eigenfactorは上がってきている
- ユーザとは?
- 当初は研究者だといいな、と思っていたが、一般人か研究者か・・・
- BioOne.2は研究者であるはず。JStageは?
- BioOne.2のオープンアクセス分に誰が来ているのか?
- 機関リポジトリユーザってなんなのか?
- 機関リポジトリは(今は)研究者に必須のツールではない
- 今後の課題
- 論文数を増加させたい。個別研究者の許諾なしでも登録できるようにする手順を踏む
- 研究者の研究活動から考える必要がある?
- 質疑
- 名古屋大学・伊藤先生:機関リポジトリが研究者に必須の道具ではないのはその通りで、研究者は保守的。また網羅性が低いので、それを研究者に使わせるのは難しい。それよりは補完しているか、論文にアクセスできなかった人を補完しているかで今は満足するしかないのでは? そこを分析しないと、今のトップの世代の研究者に手法を変えろとか使ってくれとか言っても難しい。
- 正しいご指摘だと思う。1970年生まれの人間が今年40歳になり、社会科学の世界ではここがドラスティックに変わるだろうと言われていた。今のトップの行動は変わらないだろうが、少し下の世代ではアクセスが多いことが嬉しい、とのコメントが多い。そのことは言うべき。それがちょっと年上になると受け取り方が変わる。嬉しそうではあるが、意味がよくわからないということもあるらしい。それは仕方ない。ただ、どこからかは全員がコンピュータやアクセスログとは何かを知っている時代が来ると思う。
- 名古屋大学・伊藤先生:機関リポジトリが研究者に必須の道具ではないのはその通りで、研究者は保守的。また網羅性が低いので、それを研究者に使わせるのは難しい。それよりは補完しているか、論文にアクセスできなかった人を補完しているかで今は満足するしかないのでは? そこを分析しないと、今のトップの世代の研究者に手法を変えろとか使ってくれとか言っても難しい。
質疑応答・意見交換・まとめ(コーディネータ・逸村裕先生)
- 静岡大学・杉山さん:特に岩井さんと武内さんに。某新聞社の大学ランキングで機関リポジトリについても論文数とダウンロード数のランキングがある。逸村先生もダウンロードの標準化が出来ていないと書かれていたが、どうやって信頼度を高めていったらいい? ご意見を伺いたい。
- 千葉大学・武内さん:大学ランキングの基準まで把握していないが、ROATは標準化を目指している。例えば分析する際に、各大学が個々で見るとロボット等の基準がまちまちになる。AがBより10件多い、となってもその10件に意味があるか。同じ基準で出された数字かを疑うことが重要。登録数はIRDBで今はわかる*6。ダウンロード数も同じように同じ手順で分析して比較するよう、みなさんにご活用いただいて基準を作って、そこで比較していただければ。
- 信州大学・岩井さん:武内さんと同意見。ああいった調査をする側、新聞社さんがダウンロード統計の標準化の問題への認識がない。そこに事情を知ってもらうことも、情報を広めることも今後必要。大学ランキング等のようなもの全体がそうだが、数字がどういった意味を持っているかを含めて作られるのが、そして読者に情報を出すことが必要。
- 逸村先生:編集者は標準化の問題は知っている、とのこと。昨日シンポジウムのあったTHEのランキング等も調べている人。あのデータの元は、朝日新聞社が大学に問い合わせて、大学が出してきたものは酷い代物。それを新聞社なりに編集して出せたのがあのデータ。その2年分でも全然違う。如何に、個々の大学が自分のデータに責任を持っていないか。そこから先は今の武内さんと岩井さんの議論のまま。また、大学の規模やコンテンツの種類、主題によるばらつきを踏まえて今後どうして行くか。朝日新聞がわざわざ機関リポジトリと大学図書館を並べているのは関心がある、ということでポジティブにとらえている。
- 逸村先生:岩井さんに。ダウンロード数と被引用数を並べて見る、これはZSプロジェクトでもやっているが、何か特徴的なもの、例えば引用が多くてダウンロードが多いものはわかるが、引用が少なくてもダウンロードが多い、あるいは逆の特徴って何かわかる?
- 信州・岩井さん:相関をとってもゆるい。しいて言えば、日本語の論文はダウンロードは英語論文に比べて多い。それは日本の大学で出しているので日本から見に来ているのだろうが。英語論文は大雑把に見て、引用が多いものはダウンロードが多そうな傾向はあるが、関係はよくわからない。日本語は引用数は関係ない、出版年も関係なく英語に比べてダウンロードが多い。
このセッションは自分が直接的に関係していたり扱っているテーマが多かったですね。
最後の岩井さんの質疑でダウンロード数と被引用数の相関の弱さが指摘されていますが、この点は自分のこれまでの分析でもそうだったり。
研究者の行動の変化の話についてはちょうど一昨日に発行された『カレントアウェアネス』に自分も電子リソースと研究行動に関する論文を書いていますが*7、Googleの利用が広まってくると機関リポジトリを探すということはなくても結果的に機関リポジトリコンテンツを使う、ということにはなるかも知れません。
この後、昼食&ポスターセッションを挟んで午後は口頭発表とパネルディスカッションです。
続きは次エントリにてー。
*1:被引用数による研究評価は絶対数だけでなく相対的な位置を見ることに意味がある(世界大学ランキングと研究評価の新時代:ワールドクラスの大学をめざすために 第2部「大学・研究評価の実際」参加記録) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか, Times Higher Educationとトムソン・ロイターが新しい世界大学ランキングの手法と進捗状況を説明(世界大学ランキングと研究評価の新時代:ワールドクラスの大学をめざすために 第1部「新しい試み、模索される大学評価」参加記録) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*4:An Error Occurred Setting Your User Cookie
*5:http://www.who.int/hinari/en/
*7:CA1720 - 動向レビュー:電子リソースの普及と研究活動への影響 / 佐藤 翔 | カレントアウェアネス・ポータル、詳細は別エントリにて