かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

第9回情報メディア学会研究大会参加記録(2):ポスターセッション・ライトニングトーク


承前:ナビゲータとしての情報コンシェルジュ:個別のニーズに合わせた情報提供(第9回情報メディア学会研究大会参加記録(1)) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか


ということで引き続き情報メディア学会第9回研究大会参加記録です。
今回はポスター発表者の方によるライトニングトークまとめ。
なお、シンポジウムとライトニングトークの間にはプロダクト・レビューもあったのですが、そちらは電源がもたなかったので記録取れていません(汗)
我に電源と無線LANを!!


とまあ本音はさておき、以下メモです。
例によって聞きとれた/理解できた/書きとれた範囲のものであり、かつライトニングトークはいつもそうですが時間が限られているため他のメモ以上に荒があると思います、ご利用の際はお気をつけて。
なおチェックしようがないので継承はすべて(教員の方でも)「さん」で統一させていただきます、その点ご了解願います。
ちなみに発表者はすべて第一著者の方です。



諸外国における録音図書サービスと著作権法の現状(松本圭以子さん、筑波大学

  • 日本と外国を比較して相違点を検証
  • 相違点1:公共貸与権制度
    • ヨーロッパを中心に導入
    • スウェーデン、ドイツは障害者向けサービスにも導入
    • 日本は保障金制度や障害者サービスへの制度はない
  • 相違点2:フェアユース
    • 主にアメリカで推進
    • わが国では議論中
      • 権利者の利益をいかに不当に害しないようにするか
  • 相違点3:著作権法37条3項のただし書きについて
  • 今後の課題
    • 公共貸与権制度は限定的だがある。録音図書サービスに取り入れるのか?
    • 障害者団体等がどのようにフェアユースを取り入れただし書きを改正するのか?

文学領域の古書資料流通:図書館や文学館における資料収集と古書店の販売活動(岡野裕行さん、法政大学)

公共図書館の選書における事前選定の実態分析:図書館流通センターとの関係を通して(木下朋美さん、筑波大学; 岡部晋典さん、千里金蘭大学

  • 問題意識
    • 日本の公共図書館の多くはTRCの選書ツール、見計らいやカタログを何かしらの形で使って選書している
      • TRCはどんな意図で図書館に本を送り出す?
      • TRCのカタログは公共図書館にとってどんな存在?
  • TRCについて
    • 図書館に対しMRAC、装備済み図書を売ったりする
    • 日本の公共図書館の80%はTRC MARCを購入している
    • TRCによる新刊案内・・・週によって情報量は変わるが週1,000冊程度の情報を紹介
  • TRCは何を考えているのか?
    • その中の1つ:「図書館のことを考えて、図書館が使いやすいようにMARCや新刊案内を作っている」
    • 内容紹介が100文字程度なのは長い文章は全部読めない、ぱっと見ですぐ内容がわかるように、という意図
  • 図書館側はどう捉えている?
    • 群馬県内の38の公共図書館中、37館を対象に調査
    • 「新刊案内の内容紹介の量だけじゃ選書材料として足りない」
  • 2つの調査を組み合わせると・・・TRCと図書館の間でズレ、+αの要望がある
    • TRCの意図が活かされていない場合がある

情報メディアを活用したマネジメント教育に関する一考察(関矢聡さん、遠山正朗さん、千葉工業大学

  • 目的
    • 情報メディアを活用したマネジメント教育について、従来型の教育との比較的視点から考察する
    • 特に情報メディアを活用したツールBizLAUNCHについて検討
  • 研究背景
    • 情報メディアを取り入れた教育プログラムは世界中で導入されている:今後教育の一環として導入する組織はさらに増えるだろう
  • 対象とするツール:
    • 従来型のマネジメント教育事例:MG
      • ゲーム盤を活用するシミュレーション
      • 各社、経営をスタートしひいたカードの指示に従って経営を展開する
      • 意志決定の内容としては材料仕入れ、材料販売、商品仕入れ、販売、完成投入、従業員採用、設備投資・・・
      • 各期末に資金繰表等を作成し時期戦略を立案
      • ジュニア/シニア2つのルールが存在
      • 習熟度に応じて実施できる/楽しめることが長所。幅広い層を対象にすることができる
      • 経営の効率・バランス、利益の構造等を学ぶ、経営者としての選択力を養うことが狙い
      • 楽しみつつマネジメント、会計を学べる
    • BizLAUNCHについて
      • 西暦2050年、月面上で企業を立ち上げ業績を上げることを目的とするゲーム
      • ゲーム中のイベントに対し有効な対処・意志決定を行う
      • 1人でプレイできる、情報の自動入手が特徴
      • ビジネススクールの院生相当以上が対象
      • 戦略的計画策定etcのねらい
    • 続きはポスターセッションで

教科情報担当教員の人材育成について:教員研修期間の調査から(須藤崇夫さん、埼玉県立総合教育センター; 平久江祐司さん、筑波大学

  • 背景
    • 高等学校の教科情報・・・2003年度から必修に。ほとんどすべての国民が教科として学ぶことになった
      • しかし情報機器やアプリケーションの操作に力点
      • 未履修問題
    • 教科の特殊性:担当教員
      • 情報だけでなく他の教科の免許もいる
      • 教員の多くは免許講習会で免許を取得している
    • 人材育成についての課題を明らかにするには教員研修の実態を明らかにすることが必要
  • 目的
    • 研修受講者/担当者の両面からの解明が要るが、今回は研修担当者に注目
  • 研究方法
    • 質問紙調査:教科情報の研修担当者に実施
  • 調査内容
    • 現状と課題、実施内容、教科としての内容と教科横断的情報教育の指導内容の相違等
  • 分析の枠組み
    • 研修期間の活動そのものについて/外部機関との連携について
  • 研修期間の活動の現状
    • 研修担当者はあまり充実していないと考えている、特に研修機会
    • 外部連携・・・学校の授業の変容を把握する機会が少ない
    • 研修期間のPDCAサイクル、外部連携の不十分さが課題
      • 改善のためには連携促進、評価を中心とするPDCAサイクルのシステム化、研修担当者がコーディネータの役割を担うこと等が必要

JST事業成果分析のための可視化ツールの開発(橋本定幸さん、落合圭さん、山崎雅和さん、浜中寿さん、治部眞里さん、科学技術振興機構

  • 背景
    • JSTの事業成果分析の政策的要請
      • 研究に関する状況と社会経済への波及効果について
      • 被引用回数などの研究の定量的指標を活用した調査
      • 特許、論文の質、研究者評価に活用する要請
    • JSTの研究活動への助成について、論文と論文の特許への引用状況を分析するシステムを作成
  • 分析データ
    • 論文データベースはエルゼビアのSCOPUS
    • 特許データベースはPATSTAT
    • これらに基づいてシステム作成
  • 可視化の図の作成方法
    • 論文発行年が1996-2004年の論文について、SCOPUSの雑誌分野コードの上2ケタでグループ化
      • 被引用数上位1%のみ抽出
      • その中で共被引用割合が30%以上のもののみ抽出(計算はトムソン・ロイターのリサーチ・フロント準拠)
    • オープンソースソフトで可視化
      • 共被引用割合2%以上でノード化

ドキュメンタリー映像分析の構成主義的アプローチ:サイバー空間における市民メディア分析のために(石田翼さん、東京大学

  • 2つの問題・関心
    • 差別的現実とオルタナティブメディア
      • 差別問題はいたるところに存在
      • 差別に関する市民の感度は高い一方、さまざまな差別を日常的に行う
      • ドキュメンタリーは日常的な差別現象も捉え出せるが、マスメディアは一般的な側面しかとらえない
      • 対抗するものがオルタナティブメディア
      • インターネットを使った市民による、当事者に近い視線でのメディア
        • マスメディアとは異なる
        • マスメディアそのものの問題性を浮き彫りにし、変革する
        • 当事者に近い視線で真実に近づくことは問題解決とイコールなのか?
      • 新しいメディア分析の手法・・・マス/オルタナティブでは作り手も見る者も違う?
        • エスノメソドロジーによる映像分析
          • 具体的問題に詳細に迫れる
          • 個別具体分析ばかりで他との比較等のマクロな視点からの検討ができない
        • そこにネオサイバネティクスを導入する
          • より全体的に事象を捉えられるのではないか?
          • 経験的・適応的新しい観点から捉えられるのでは?
  • まずは2つの手法を接合することが目的だが・・・
    • 経験的、適応的に差別などの現実問題を捉えることも目的

デジタル化がもたらすメディアの将来的可能性と法的問題:機器と媒体の動向、最近の話題を交えながら(金納修一さん、筑波大学

  • メディア・・・広い意味で用いられる
    • デジタル化による将来的可能性と問題点に触れたい
    • 20年も前からペーパーレスと言われるがいっこうに減らない、どころか増えている
  • 情報携帯端末
    • iPadが話題だが、あれは電子ペーパーではない。キーボードレスのPCにiBookがついているだけ
      • 電子ペーパーは高いが実用化されている。しかし持っている人間はいない、普及しない
      • 成功例もある・・・iLiad
    • SIMロックの解除・・・総務省が制限解除を要請しただけでなんの強制力もないが・・・
      • 本来独立に選べるべき電話機と回線の抱き合わせ
      • 解除したとしても事業者独自のサービスは対応していない
      • 市場開放、という意味では最初からSIMロックをかけるべきではなかった
      • 回線と機器を自由に選べるようにするには法制化で強制化するしかない状況
  • 著作権制度に関連して将来的パターンを整理
    • 個人的な見解について説明

電子メール等の情報コミュニケーションに関する問題点と教育手法に関する考察(森屋裕治さん、名古屋女子大学短期大学部

  • キーワード:電子メール
    • 学生への連絡や指導・助言でも有効に使われている
    • 学生の情報モラル、マナーの低下は気になるところ
    • 効果的に教育する方法を検討している
      • 関連資格・検定の利用可能性も考えたい
  • かつては学生への連絡は掲示板等
    • メールで非常に便利になった
    • しかし学生から見ると、便利になった=学生から使われている感じもする。教育上よくないのでは?
      • お客さんと言えばお客さんだが、教育の現場で指導・教育する必要を感じている
      • メールを利用しながら何か指導・教育できないか?
      • 情報メディアの特性も含めて、利用についても教育できれば
  • メールのマナーの重要性
    • 社会人にとってもマナー、ルールは定まっていない/経験則的
      • だれしもがトラブルや不快感、問題などを経験しているのでは?
    • ビジネスメールのマナー、作法の本も多い
      • 社会全体においても関心は高い?
    • 失敗しながら、指摘されながら、間違いながらやっている
  • 情報モラル・リテラシー教育と言うことでは・・・
    • 情報メディアを活用する教育としてメールも重要では?
    • 検定などもある。しかし秘書検定等ではメールや情報コミュニケーションは出てこない
      • 商工会議所の検定等はあるが、一定のレベルを測るものは見えていない

メディアコンテンツの理解促進に及ぼすプライミング効果とユーザー操作性の影響(行場絵里奈さん、東北大学

  • はじめに
    • デジタル絵本の研究・・・ユーザビリティ等の観点からの考察はあるが、意味論的観点も必要
    • アニメーション等のインタラクティブ性を取り入れたデジタル絵本を創作、意味論的な面から考察
  • ライミング効果
    • 先行刺激が後の刺激に影響を及ぼす効果
  • 実験
    • 意味的関連のある画像を提示すると認知の促進は起こるが、関連のないものが促進しないと考え実験
    • 2つの作品にこれらの刺激を挿入したものと挿入しなかったデジタル絵本を作って、実験群と統制群に対して提供、事後にアンケート及び自由コメントへの回答を得る
    • プライム刺激については有意差あり、そうでないものには有意差なし
    • 実験群は12名中10名がなんらかの感想を記入、統制群は12名中8名が「ぼんやりしている」、「わかりにくい」等のコメント
    • 操作性がユーザの興味喚起に影響
  • <以後、専門用語が多くて意味が取れませんでしたごめんなさい(汗)>

メディアと情動:1930年代国策映画にみる情動喚起技術について(難波阿丹さん、東京大学

  • 映画表現の五層構造、というものを提唱したい
    • 1.物語の次元(最高次)
    • 2.キャラクターおよび舞台設定
    • 3.大記号
    • 4.小記号
    • 5.肌理
  • 1930年代制作の日本の国策映画・文化映画の大衆への情動喚起力を考察する
    • 映画の物語がいかに国史を唱導するメディアに成長したか
  • 仮説:
    • 文化映画・・・国民智能の啓培と国民精神の涵養が目的であったが、実は失敗していたのではないか、というのが仮説
    • 国史を映画において語る、という欲望が基礎にながれていて、その実験がどうなされていたのか?
  • 題材:文化映画:『日出づる国』(1928)
    • 皇国史観に偏った傾向
    • 不連続にいくつもの事件がつなぎあわされている
    • 製作者は国策映画の指揮者になっていく
  • 日本の近代性は映画のナラティブにどう結実する?
    • 文化映画と前衛映画の混交
    • ナラトロジーの欠如は、技術的拙劣さのみに還元されない?

演奏する身体と意識の在り方(藤井保文さん、東京大学

  • 実際に演奏活動(ライブ、楽曲作成、CD販売等)についてどう言語化できるか?
  • 無意識の手前、あらゆる方向に集中力を向けて演奏する際の一体感
    • 個人特有ではなく他者、あるいはダンスの演者もこの感覚を共有している
    • このとき何がおきているかをネオサイバネティクス言説に基づいて考えたい
  • 身体の形骸化、語りの貧困さ
    • 理系身体論・・・視線をコンピュータで追う等。そこに一元化し、それだけで人間の身体を捉えようとする
      • AI技術やセマンティック検索技術はこうしたものに基づいている
    • 情報学・・・人間は身体と不可分であり、行為を通じセ世界を認知することを基礎づける必要がある
      • ネオサイバネティクスがこのような問題を刷新し、あらためて豊かにできるのではないか?
  • 演奏主体/演奏する個人として、内部で何が起きているか
    • 演奏する集団が有機的生命的組織、まるで生命体のように組織が動いているということをどうやって実現させられるか
    • 映像集団が観客と一緒にどうやって空間全体を一体化していくのか



その後、会場をポスター設置場所に移し、発表者の方がそれぞれポスターの前に立ってのポスターセッション兼交流会、となりました。
やあ・・・しかし去年に参加したときも思いましたが、情報メディアをキーワードに大変バラエティにとんだご発表があり、面白いですね。


ポスター発表については会場の投票で最優秀賞も決められます。
今年は木下さん、岡部さんによる「公共図書館の選書における事前選定の実態分析:図書館流通センターとの関係を通して」が34票中8票を獲得して受賞されました!
木下さん、岡部さん、おめでとうございますm(_ _)m
木下さんは今後も継続してこのテーマに取り組まれるということであり、自分としても大変興味がある(選書の話としても、TRC単体あるいはDNPグループの図書館に対するスタイルとしても)ところなので、是非精力的にご活躍されることを願っていますっ。


岡部さんは昨年の第8回研究大会での自分との発表*1に次いで2年連続の受賞ですね。
これは来年、共同発表依頼が殺到したりして・・・!!!


ほかにも古書店・図書館・文学館の関係の岡野さんのお話は自分も古書店連盟のシンポジウムに出席していたこともあって興味深かったです。
それから、JSTのお話についてはちょうど最近、関連するテーマについて調べていたことがあり、参考になりました。


学会終了後は運営に関わった方々の懇親会にお邪魔させていただき、その会が終わった後は新宿で先輩の就職祝い飲み(3次会)に参加して結局朝まで東京にいました・・・更新が遅れたのはそのあたりが原因です(汗)
さあて、自分もそろそろ他の方の発表を聞くばかりでなく自身が発表すべく準備せねば・・・!