かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「つながるリポジトリ」(国立情報学研究所平成22年度CSI委託事業報告交流会「クラウド時代の機関リポジトリ」参加記録 part 3)


CSI委託事業報告交流会エントリ第3弾。


一日目の最後、第3セッションは「つながるリポジトリ」。
まさにつながる、コミュニティのお話がメインです。


早速ですが以下、当日のメモです。
例によってmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲の内容になっています、ご利用の際はその点ご理解願います。



「機関リポジトリの多様性」(国立情報学研究所平成22年度図書館連携作業部会WG2/北海道大学・行木孝夫先生)

  • 2009-2010年度、図書館連携作業部会の下に調査を進めてきた
    • そのうち主要なメンバーから報告書だけでなく発表もすべき、と言われてやることに
  • 2009年度のWG:サブジェクトリポジトリに関する調査
    • J-STOR, arXiv, PubMedCentral, RePEC, PLoS ONE…サブジェクトリポジトリに限らず電子ジャーナルプラットフォームも
      • PLoS ONEの場合:FEDORAを使って電子ジャーナルプラットフォームを実現/ディスカッションフォーラムがある
    • サブジェクトリポジトリ・・・多様なインタフェースの提供/研究コミュニティの中核に位置する
  • 2009年度WG:機関リポジトリに関する調査
    • 研究者への理解促進を中心に選択
    • 結局は義務化とセルフアーカイブへの理解へつながる活動
    • 電子図書館に関する総括もやっておくべき?
  • 2010年度WG:セルフアーカイブの実現・・・具体的な議論には至らず
    • ボトムアップ or トップダウン
    • 教員主導か義務化か?・・・両方必要
    • 海外の義務化事例・・・何らかの大学の運営戦略が関わる
      • ただ義務化して公開する、運営だけでない、戦略の問題
    • 義務化とセルフアーカイブは同じこと?・・・違うはず
  • CSI第二期報告書への協力
    • 慶應:XooNIps関連で理研の臼井氏へ
    • 北大、小樽の事例・・・転載による。機関リポジトリを有効に使う複数教員
    • インタビュー結果、アンケート結果をどう読む?・・・批判的に読みつつ活かせるものを活かす/鵜呑みにしない
  • 2つのWGを対比
    • セルフアーカイブ実現にあたって・・・義務化は目標ではない
      • 大学戦略を実現する手段の一つ
    • 義務化をするにしても地道な活動は必要
      • トップヘの働きかけは常に必要
    • サブジェクト×機関リポジトリ・・・サブジェクトは何故使われる?
      • 研究コミュニティに必要な機能+コミュニティの中心にある
      • 高度な情報発信機能を持つ
    • なにを入れるか?:本来は大学の生成コンテンツ全部だが・・・
      • 全部の把握は困難なので研究者とのコミュニケーションが重要になる
    • 大きければいいというわけではない・・・小樽商大 V.S. 北大
  • 最後に:OR 2011から
    • 機関リポジトリメタデータ画面に必ずついてくるフィールド名はいるのか?
    • 表現の必要性を考えるだけでも研究者が考えることを類推する手がかりになるのではないか?

リポジトリの花を咲かそう:SCPJデータベースを育てる」(筑波大学・大澤類里佐さん)

  • プロジェクトについて:SCPJ・・・Society Copyright Policies in Japan
    • SHERPA/RoMEOと同様に論文が機関リポジトリに登録できるかを調べるツール
    • 使ったことがないリポジトリ担当は・・・会場に1人のみ
  • SCPJデータベースの現況:
    • 学協会の著作権ポリシーを収集
    • 5月末時点での登録数は2,465学協会/2,894誌
    • アクセスは月平均2,800/ほとんどはac.jpドメインから
      • 専ら平日にアクセス
    • Web APIを用いてもアクセス可能/更新情報はRSSでも発信
  • 2010年度の活動概要
    • データ更新
      • 元にした学会名鑑最新版は2007.3刊行・・・更新が必要
      • SPARC Japan事務局の持つデータとSCPJの矛盾・・・再調査の必要
      • 結果・・・登録学会数増加/リポジトリ登録を認めるのはうち25.1%に微増
    • 学協会との情報共有・意見交換
      • SCPJについて検討中の学会はずっと検討中のまま/「Gray」の学会はメールや郵便ではもう応えてくれない?
      • まずは学会のことをよく知る必要がある・・・SPARC Japanとのパートナー学会のことを知るべく懇談会に参加/事務局を直接訪問、聞き取り調査を実施
      • 学会内での意思決定は大学と同じ。資料を委員会で通し、次に理事会へ通す。編集担当に聞いてもすぐには答えられない/大きな学会ほど時間がかかる/時間がない
      • 意思決定にあたる理事や編集委員の考え方は千差万別。よく知っている人もいれば全くわからない人、OAなんてとんでもないという人もいる
      • そこで・・・2,462の学協会にリーフレットを送付
    • システムの機能拡張
  • 今後の課題:
    • データ更新/データの持ち方の検討
      • リンク切れが発生しないようにする
      • 刊行元の違いや共同刊行誌のデータの持ち方
    • 学協会への働きかけ
    • クラウド化の検討

「機関リポジトリコミュニティ活性化のための情報共有」(北海道大学・鵜澤和往さん)

  • 最初に言い訳:4月に初めて担当になった・・・きちんと話せる資格があるのだろうか?
    • 自身のやってないことをやったかのように話すことは許していただきたい
    • 情報共有強化/海外への情報発信/OA weekのアドヴォカシー/海外連携を柱とした
  • 状況共有の強化:
    • DRFメーリングリストの運営
      • 6/10現在・・・700アドレスの登録、2,400件を超えるメールが流れている
    • ウェブサイト・・・2010年度に大幅追加・整理を実施/累積742,984PV(2011.3)
      • 英語版ページも作成/活動課題・イベントプログラムも英語化・発信
      • 月刊DRFの公開場所でもある
    • オープンアクセスに関する海外論文の和訳
  • 日本の活動を世界にアピール
    • 英語版webページ作成
    • 国際会議への出席・口頭発表
      • Berlin8
      • SPARC Digital Repositories Meeting 2010
      • Society for Scholarly Publishing 2010 Fall Seminar
    • 英文パンフレットの作成・配布
      • 海外769機関へ送付
      • COARからは追加で発送依頼あり
      • 海外のメーリングリスト、ニュースサイトで紹介される
      • 米国SPARC議長からSPARC運営委員ML宛にパンフレット内容を絶賛するメール
  • OA Weekにおけるアドヴォカシー活動
    • 2010.10.18- 1週間/窓口は大阪大学
    • 資料作成・送付、イベント、サイト作成等も大阪大学
  • 海外機関との連携
    • COARに継続して加盟・・・Confederation of Open Access Repositories
    • 副議長+3つのWGにメンバーが参加
  • 今後の展望:
    • 情報共有の基盤としての役割を継続・・・機関リポジトリ担当者/担当者以外への理解の増進

「近畿における機関リポジトリコミュニティ形成の支援」(神戸市外国語大学・谷本千栄さん)

  • 事業の目的:
    • 近畿地区でリポジトリ設置をすすめ、OAを推進する
    • 気軽な情報交換によるリポジトリ設置の悩みの解消
    • 顔の見える生きた担当者コミュニティ
  • 事業体制
    • 近畿の各地域の大学が参加
    • 国立・公立・私立大学が参加・・・母体が異なる機関が参加している
  • プロジェクトの概要:
    • 連続した研修会の開催による強いつながり
    • 研修会参加大学個別訪問による情報交換とフィードバック
  • 2010年度の実施内容
    • 連続研集会5回、近隣大学訪問8回、技術研修会1回
  • 質疑応答に先回りして・・・
    • なぜ近畿?:
      • 近畿は大学数が多いがリポジトリの数は少ない。大学数の多さを活かすには情報交換のできるコミュニティ
    • なぜ連続研修会?
      • 1回だけの集まりでは顔が見えない
    • 共同リポジトリ化は目指さない?
  • 研修会の内容:
    • 第1回・・・未構築機関向けの話/サーバ見積もり他
    • 第2回・・・構築済み大学のコンテンツ収集/紀要の著作権処理
    • 第3回・・・リポジトリの構築・運用について私立大学の視点から紹介/自前PDF作成のポイント
    • 第4回・・・学内広報について/学内合意形成に至るケーススタディ/研究室訪問のロールプレイ
    • 第5回・・・人文社会科学研究者の立場からのオープンアクセス/メタデータ勉強会
      • 第5回は参加者の参加の度合いが高い。連続で開催したことによって顔を合わせる機会が増えたことの成果?
      • 構築を検討中/白紙の大学も多数参加
    • 参加者の声:
      • 「顔の見える連続研修会は素晴らしい」
      • 「早くリポジトリを立ち上げたくなった」
      • 「情報が欲しい人と持っている人が気兼ねなく交流できる機会」
      • 「参加するほどに理解度も深くなる」
      • メタデータについて改善すべき部分に気づけて良かった」
      • 「コミュニティ形成は成功したと思う」ほか
  • 事業の成果
    • 近畿にコミュニティを形成!
  • これからの展望
    • リピーター/新規参加者どちらも満足できる研修会
    • より身近で気軽なコミュニティ
    • 連続研修会参加館での研修会実施
    • コミュニティを他の地域にも

「地域でつながるリポジトリ」(広島大学・濱知美さん)

  • プロジェクトの背景:
    • 平成21年度まで・・・共同リポジトリモデルの構築・普及を目的とする
    • 中小規模機関リポジトリの敷居を下げてオープンアクセスの裾野を広げる
    • 平成22年度からは・・・地域コミュニティの活性化/地域に重点を置く
      • 地域の核となる人材を育成/自立したコミュニティ活動を促進
  • 具体的な活動内容:
    • 地域ワークショップ・研修会の開催/開催補助・講師派遣
      • WS:年8回実施
      • 私立大学をターゲットとするWSも
    • 実務研修の実施
      • 既構築機関に、構築直後機関の担当者が一定期間出張、実際の業務を行いながらOJT
      • 地域の核となる人材の芽が出始めている
      • DRFとも連携
  • 国内の共同リポジトリ:運用中・・・10地区(昨年6月は8地区)/参加機関も増えている/検討中地域も増加
  • 課題と展望
    • 地域共同リポジトリはNII提供の共用リポジトリと競合するか?
      • 乗り換え希望はあるかも知れないが地域共同リポジトリの有用性も明らか
      • 地域レベルでの活発なコミュニティ形成は図書館活動活発化の契機
    • IRDBコンテンツ分析システムから共同リポジトリ構築数を抽出・・・増えている
      • 新モデルはでてきていない。安定期?
    • 残るは・・・継続的研修による担当者のスキルアップ/地域でのサポートコミュニティ形成と活性化

「機関リポジトリ担当者の人材育成」(大阪大学・前田信治さん)

  • DRFの人材育成プロジェクトと一緒にやっているが・・・
    • ここでしゃべるのは大阪大学の担当者として話す。その方が自由にしゃべれるので
  • 2010年度の活動
    • DRFワークショップも頻繁に開催/近畿のプロジェクトもある
    • DRFtech-Karuizawa・・・役に立つものがあると思う/なければ役に立つものが何か要望して欲しい
      • リポジトリと関係なしにこういう機会が図書館の研修の中に入る必要があるのではないか?
    • DRF Tech in Kagawa
      • 「ここにいるのがふさわしくない人間なのですが・・・」といって発言し始める方に、そういう人に参加してもらうためのものであることをわかってもらわなければならない
      • DRFのイベントは受付の担当者からして違う」?
      • 研修会=「あなたにわかってもらうことが私の喜び」。受付が笑顔でないのは間違っている
    • DRFtech Hamamatsu
      • 笑っていない人間はいない/1回の研修会でなんでも伝えようとすると字ばかり・ガチガチになる
      • 1回の研修会で伝えられることには限界/「あの人にだったらこれから何度でもコンタクトできる」と思ってもらうこと
    • DRFmed Nara
    • DRF7
    • DRF ARt + Music + Sports
      • 成果が論文にならない分野はどうすれば良いか?
    • DRFtech Asahikawa
      • コックの姿でリポジトリに関するテクニックの話
      • 40名を超える参加者
    • DRFtech Kumamoto
      • 50名の参加者/「知りたがっている」
    • これが「さまざまな機会の提供」
  • こころがけたこと:必ず楽しくやろう!
    • 「元気な土がなければ」「1年のことだけ考えて収穫をしていても」「肥料が買えなくなったら収穫できなくなる」

質疑応答・意見交換

  • Q. 行木先生に。MedicalのものはPubMedに英語であるが、日本語でも専門誌や情報誌に情報はある。英語論文を斜め読みできるのは研究者くらいで、日本人は英語ができない。教科書レベルからもう一段あがって、興味のあるものを見てもらう時にリポジトリは本当に役に立つ。日本語のレビューを機関リポジトリに上げてもらいたいと考えている。サブジェクトを元に、ということから今の提案をどう考えるか、また数学界ではどのような状況か、ご意見をいただきたい。
    • A. 数学についても全く同意しますが、そのようなコンテンツがどれだけ(数学分野に)あるかは把握出来ていない。一般の方がアクセスできるプラットフォームとして機関リポジトリが優れていることは非常に同意できる。筑波大の佐藤さんがされているようなアクセスログの研究でもそれを裏付けるような結果が出ていると理解している。
  • Q. まずお願い。広島大学について。私は色覚障害者なので緑色と言われるたびにどれかわからなくなる。スライドを使う際は色覚障害者に配慮を。
  • Q. 近畿における機関リポジトリについて。お声かけいただいたことがない。大学としてやっているので民博は外れたのだろうと思う。それはいいとして、研修会参加者に非常勤職員やパート等は入っている?
    • A. 非常勤職員の方は数は把握していないが、4-5人はいる。非常勤だからダメなんてことは私の目が黒いうちは言わない。心配がいらない。また、委託業者でリポジトリ業務を担当している方からも相談されたが、興味があれば誰でも来ていただきたい、と答えた。誰でもけっこう。嫌がらせをしに来たならば私が対応する、それはそれで楽しい。お声かけをしなかったことは申し訳ないが、近畿の大学でも公募の基本になったのは近畿イニシアを通じて広報を撒いた。そこで漏れたのは申し訳ないと思うが、そういうことは報告交流会で言わないで私に電話したらいい。そうしたら電話口で「はなはだ申し訳有りませんでした」と答える。
  • Q. 近畿に。大学が密集していると共同リポジトリは難しいとのことだったが、私どものところは密集していないが、WEKOを使ったリポジトリを立ち上げているところ。WEKOを使った共同リポジトリと研修会はマッチしていて使えるかと思った。そのへんのことをお聞きしたい。共同でやると一つの大学にものすごく集まって運営できないのかとも思うが。
    • A. 神戸市外大:WEKOを用いた共同リポジトリが、ホスト校の負担が一般的な共同リポジトリとどれくらい違うかがわからないので答えにくい。
    • A. 大阪大:システム的にWEKOとか、共同リポジトリ運用の労力が下がることはあると思う。だけど、共同リポジトリの命はコミュニティの形成。そこが命だと思うが、それを密集しているところでやると凄い数になって、それをまとめるのだって研修会で人を集めるだけでなくて、「ここではできてもうちではできない」というものも出てくる。あまり親身になって共同体としてやるのは困難だろう。大都市・密集しているところでの共同リポジトリの困難はそこにあるだろう。
  • それは地域の中で分けてやるんでもいいんではないか。ひとつの大学で全部をまとめるのではなくて、グループに分けるということもあるだろう。大きな都市にある小さな大学でできないところもあるだろうからそこのことも考えていただきたい。
    • コーディネータ・木下さん@京都大学:共同リポジトリの観点から広島大学から何かあれば。
    • 広島大学:今ならNIIの共用リポジトリがWEKOなので、発表の中にもあったが、共同からWEKOへの乗り換えを考えているところもあるかも。一方で地域のコミュニティも重要。もし乗り換えるなら、地域の中心となる館がみんなで一緒に引越しましょう、という方がいい。1つ1つが抜けていくのではなく。
  • Q. NIIの共用リポジトリクラウドとは何者? 皆さんご存知のようだが私が知らないので・・・
    • A. NII・森いづみさん:議論の前提なのに最終日の発表でごめんなさい。明日のパネルディスカッションで詳しく話がありますが、WEKOをWebサービスとして使っていただけることを想定しています。一大学、一WEKOを使えるようになります。
    • コーディネータ:「一WEKO」って言うんですね(笑) 単位になるんだ。


ちなみに最後の質問は物質・材料研究機構の高久さんから。
クラウド時代のリポジトリ」ということでNIIが行うクラウドによる共用リポジトリが話の前提になっている、のに1日目にはまだ出てこない・・・というのは鋭い、かつ重要なご指摘でしたね。
なんとなくわかった気になっていつつ聞いていたのですが、詳しいところは明日、2日目のパネルディスカッションで明らかになるとのこと。
そちらも楽しみに待ちたいところです。


というわけで1日目の記録は終了です。
引き伸ばしに引き伸ばした感想ですが・・・一番重要なネタが明日に回った、ということで次回まとめて!
(今日も早寝しないと明日も、明日もつくばをけっこう早い時間に出ないといけないので・・・)