6/25に続いて*1、2009年度第2回目のSPARC-Japanセミナーに行ってきました。
- SPARC-Japanのページ
サイエンスコミュニケータの長神さん、物材研の研究者である轟先生をお迎えした前回とは変わって、今回は大学出版局の雄・Oxford University Pressから学術書・雑誌部門のManaging DirectorであるMartin Richardsonさん、Oxford JournalsのOperations Directorというやや聞きなれないお仕事をされているPam Sutherlandさんをお招きして、学術出版/大学出版が変化する時代に合わせてどう経営していくのかをOUPの具体例を挙げながら説明いただく、出版者視点でのお話でした(会場も出版関係の方がいつも以上に多かったような?)。
大学出版局の話、それも海外の出版局の話ってときどきは聞きますが詳細に全体像をお聞きする機会はなかったこともあり、大変興味深かったです・・・その結果いつも以上にメモが長いです(汗)
自分が特に「へえー、そうなんだ!」とか「これは面白い・・・!」と思った部分は太字にしてありますが・・・あらためて見ても全部読むには長すぎる気がしますね・・・
本編は後ほどSPARC Japanのページに資料や映像が公開されるのではと思うので、そちらをご覧頂いてから、質疑で興味のある部分などを確認される、という使い方の方が良いかも知れません。
では以下、いつものようにメモ書きです。
min2-flyの聞き取れた・理解できた・書きとれた範囲での内容となっておりますので、内容の正確性等についてはその点ご注意願います。
会場にいらした方で誤りにお気づきの方はご指摘いただければ幸いですm(_ _)m
開会挨拶(林和弘さん・日本化学会)
The Evolution of Academic Publishing at Oxford University Press(Martin Richardsonさん・Managing Director, Academic Books and Journals, Oxford University Press)
-
- 100年以上前にアメリカオフィス開設
- 現在世界40カ国以上、30言語以上で出版を行う
- 売上の8割以上はイギリス以外での売上
- 100年以上前にアメリカオフィス開設
-
- Oxfordは17世紀に聖書を出版する権利を得た
- これを核にして利益を上げる、OUPの核に
- 過去1世紀で業務も変わる
- いまでは学校書籍、英語教材、音楽、ジャーナル、一般書籍、高等教育の教材を出版している
- 売上の40%は学術出版、40%は学校書籍および英語教材、20%は高等教育の教科書
- Oxfordは17世紀に聖書を出版する権利を得た
-
- OUPの現在の学術・専門書出版
- 1,300以上のモノグラフを毎年出版(アメリカの大学出版は大きなところでもせいぜい100〜200)
- ジャーナルは235タイトル
- OUPの現在の学術・専門書出版
-
- 出版局の規模分類
- 1. Giants:OUP+CUP. ここは別格
- 2. Large:カリフォルニア、シカゴ、ハーバード、ジョンズホプキンスetc..。年間収益は2,000万〜4,000万ドルの間
- 3. Meddle:ニューヨーク、インディアナetc.
- 4. Micro;小さいところは年数冊。年の売り上げは500万ドル以下のところ。
- 出版局の規模分類
-
- 昨年アメリカの著者・読者36,000人を対象に行った調査の結果・・・
- 回答者は2,365人。年齢も分野も広範に分布
- 最も使うリソース5位は専門分野によって変わるかと思ったが、分野を問わず同じような順位。電子ジャーナルと印刷された本がトップ1−2位、人文科学では印刷媒体がオンラインより上、他(社会科学、自然科学、医学)では2位。対面のミーティング・会議も4〜5位に入る(オンラインのこの時代でも)。
- 図書を探すときに使うツールは分野によってばらつく。共通にみられるのは、同僚からのリコメンデーションの重視。リコメンデーションの種類は引用、書評、直接の推薦など様々。Amazonやオンラインショップも重要な場になってきている。
- 雑誌論文の見つけ方も分野によりばらつく。他からの引用、ブラウジング、Web of Scienceなどのリソース、RSSや電子メールのアラートも重要視されている。
- e-booksは人社では4割以上が研究目的で使っている、理工系と医学では3-4割どまり。教育目的での利用はまだ少ないが、今後は増えていくのではないか。
- Podcast, ブログ、Listservsは分野を問わずかなり広く使われている。研究者の5割は研究活動の中でこれらを活用。
- ブログを使うかどうかは年齢による差があるが、60歳代でもかなり高い利用率を示している。
- e-Books等のオンラインリソースの使い方は年齢による差がない。
- 昨年アメリカの著者・読者36,000人を対象に行った調査の結果・・・
-
- OUPはオンライン化とニーズの変化にどう対応する?
- OUPのすべてのジャーナルはプリント版と同じか先にオンライン版が出るようになっている
- 2004年には最新版をオンラインで出すのに加え、アーカイブのオンライン化も開始。古くは1850年からのアーカイブ。
- 雑誌記事に加え、印刷媒体では見られないようなsupplementaryなデータもオンラインでは付け加える
- eメールやRSSでの目次配信、ブログやwikiの実験的活用
- ジャーナルのオンライン出版成功により、Oxford English Dictionary等の辞書、モノグラフのフルテキストのオンライン化も開始
- オンライン化に加えアクセスモデルの選択肢も提供。定期購読モデルのほか、個々の記事の購入モデル、最後発国への無償アクセス提供、Open Accessモデル(著者サイドでのコスト負担)の実験的採用. 現在235タイトル中の5つは完全OAモデル、90は著者が選択できるオプションがある.
- Open Accessオプションは医学・生命科学で進んでいる。今年は全体でOAオプション選択は1,000を超えるだろう. ただし専門分野での記事の割合と見比べると、普及率はむしろ2年間で下がってきている。資金提供者がOAを義務付けるケースが増えているのに不思議. 研究者自身はOAモデルでの出版が嫌い?
- アクセスモデルの多様化から、出版物の普及率(アクセスできる機関)は爆発的に増加した
- OUPはオンライン化とニーズの変化にどう対応する?
-
- 大学出版の将来について
- これから大学出版局はかなり厳しい時代。生き残るには大学からの出版局の存在理由への明確なmandateが重要になる。
- 出版局は大学の不可欠な要素ではあるが、リソースの配分は他の部局と同様にきちんと求める必要がある。
- ではなぜ大学は出版局を支援する必要があるのか?
- 出版局は大学のブランドを維持するための重要な存在。例えばOxford English Dictionaryは世界的にも非常によく知られている。
- 出版局は大学の学術コミュニティの核。著者・編集者・査読者・読者として重要な人たちが関わっている。
- 出版をすることがfunding, tenure, 昇進の中核である。本やジャーナルに成果を出すことがほとんどの分野の核。
- 小規模な学術出版の今後のあり方は?
- 大学出版の将来について
-
- 質疑
- 物理系学術誌刊行センター(IPAP)・鈴木さん:研究リソースのトップ5について。トップがオンラインジャーナルでプリントジャーナルが3位。「もうプリントは使ってない」とかあちこちで言ってる割に3位って意外。どうお考えでしょうか?
- 大変興味深い点。オンラインとプリントが同じように重要視されているかを知りたかった。OUP自身、プリントジャーナルが3位と言うのには驚いた。特に人社だけでなく理工系、医学でも3位ということ。
- 鈴木さん:回答の絶対値は? オンラインが何人に対してプリントは何人で3位?
- どういう設問をしたかと言うと、全ての設問に完全に答えてくれた人に「トップ5を挙げて」と聞いた。実はご質問にあったような分析はしていないが、専門分野を問わず一貫して順位が同じだったことに驚いたが、どれくらいの人がNo.1と思っていたかを集計しても面白いかも。
- 日本動物学会・永井さん:CUPとOUPがどっちもGiantsなのはわかるが、なんで今はCUP
- 規模的にOUPの方が大きい。理由はOUPの方が広範な書籍を出版しているから。ただ、OUPとCUPには類似点もあって、それを持っているこの2つは他のUniversity Pressとは異なる。両者だけが別格な大きな理由は他の出版局は学術書のみを出していること。研究モノグラフのみのところが大抵。
- 物理系学術誌刊行センター(IPAP)・鈴木さん:研究リソースのトップ5について。トップがオンラインジャーナルでプリントジャーナルが3位。「もうプリントは使ってない」とかあちこちで言ってる割に3位って意外。どうお考えでしょうか?
- 質疑
How Operations support OUP's business. (Pam Sutherlandさん・Operations Director, Oxford Journals, Oxford University Press)
-
- 今日の話は4つ
- 1.学術出版の抱える課題
- 2.特に大学出版局の抱える課題
- 3.OUPのOperationsの説明
- 4.学術出版の抱える課題にOperationsは如何に役に立つか
- 今日の話は4つ
-
-
- 進むオンライン化
- オンライン化のためには先行投資が必要
- Oxford Journalでは1997-2004の間は印刷版を購読していると無償でオンライン提供
- 出版サイドは追加的なオンライン機能を提供するためにさらなる投資がいる。
- 早期公開、アラートサービス、PPV、様々な機能の提供でこれまで考えもしないような形でコンテンツが使えるようになると同時に、webによってコンテンツを見つける上でも可能性が広がる。
- 学術出版は機能不全に陥っている
- コンテンツは増えるが予算は減る
- 価格高騰、コンテンツへの需要の弾力性の欠如・・・オープンアクセス出版へ(著者負担モデル)
- 出版のコスト負担が図書館から研究予算に移行する。
- 商業出版者にとってのより大きな脅威・・・機関・主題別のリポジトリが「作られてしまった」こと。
- 進むオンライン化
-
-
- 大学出版局の抱える課題
- 大学出版は規模が確保されていない。「巨大なゴリラ」OUPですら商業出版に比べればごくごく規模は小さい。図書館予算のかなりの部分は大手商業出版のBig Dealに使われてしまう。
- Dealで購読予算がかなりとられる中で、モノグラフを出す出版社はコンソーシアムとしての収入は確保したいが大規模なコンテンツは出せないという問題を抱えることに。
- 新しいスキル、サービスに対応するための投資は小さな出版局にはとても負担しきれない。
- 規模の経済が実現していない。結果、コスト削減の余力に限界がある。コスト構造を縮小出来れば収益性を上げるか、採算が取れる。あるいは価格を下げたり必要な人には無償でコンテンツを提供できる。
- 出版局としての経済的自立が求められている。
- 技術的なイノベーションや新しいモデルに合わせた変化そのものが公的部門の保守性・コンセンサスベースの経営スタイルに合致しない。
- 大学出版は規模が確保されていない。「巨大なゴリラ」OUPですら商業出版に比べればごくごく規模は小さい。図書館予算のかなりの部分は大手商業出版のBig Dealに使われてしまう。
- 大学出版局の抱える課題
-
- OUPのOperationsの説明
- 組織は10か所強の出版オフィスからなる。東京にもオフィスがある。それぞれのオフィスが出版社として機能。法務・税務・財務は英国のセントラルサポートからサポート。
- オフィスで一番大きいのはイギリスのもの。内部はELT, 教育、学術、ジャーナルの4つに分かれる。それぞれが独自の構造を持つ。以下、Oxford Journalsを例に説明。
- 編集、営業、財務、Operationsに分かれる。
- Operationsの3つの機能
- 1.カスタマーサービス。アフターセールスの問い合わせ対応。
- 2.製作・プロダクション。査読後の記事を印刷、オンライン化。
- 3.IT。Journal特有のバックオフィスシステムと、オンラインのプラットフォーム。
- いずれもコスト効率を高めること、カスタマーフォーカスであること、Oxford Journalsの品質と同じ高いクオリティの維持を目的とする。
- Operationsの長として注意すべきすること
- OUPのOperationsの説明
-
- 学術出版の抱える課題にOperationsは如何に役に立つか
- この1年でコストを15%圧縮・・・業者との関係の合理化が主要因
- たとえば食事業者を減らして相手の規模の経済を確保できるように
- フォーマットの標準化・・・業者が割安料金を提示できるように
- 2年に1回の競争入札・・・一番いい価格を維持。
- コストが下がらなくてもSpeed Upは出来る。自動化・標準化を業者とのパートナーシップで実現。原稿受け取りから出版までのスピードが短縮できる。ペースの速い分野では時間短縮は著者にとって大きな魅力。
- 自動化でヒューマンエラーも排除。
- Oxford JournalsのOperations FunctionはISOの認証も受けている
- プロセスのドキュメント化、監査、顧客からのフィードバック。投資は大きくないがサービスの品質向上とその証拠の提示が実現出来る。
- Selective Outsourcing戦略とも合致。内製するものは出版サイクルに付加価値をつけるものに限るべき。その外の機能はパートナーにアウトソースすべき。そちらの方がよりよく業務を出来、コストも割安にできる。これをきちんとやるにはパートナーシップのアプローチが重要、そのためには効果的なSupplier Management Programが重要。期待事項や期待するレベルも明確化する。
- Operations機能は新しいビジネスモデル等を実現するためのイノベーションが支援できるものでなければならない
- 例:OperationsはOxford Journals300万ページのデジタル化を12カ月で実現。
- Oxford Open Initiativeの複雑なアクセスコントロールの構築・維持
- PPVのカスタマーに向けたmicro transactionとconsortia dealの両立
- オンライン上での実験。技術の活用で比較的安価に出版者の評判や地位も向上する。技術を理解し採用できるということの確保。小さな実験を重ねることで失敗も早い段階で見つかるし、対価も安くて済む(スライドではPodcastとTwitterを表示)。
- 標準技術を使うことで安価の投資で済む。標準を使うことでコンテンツの発見・アクセス・普及・統合・再利用も可能になるし、コンテンツの品質向上や利用のレポートも可能になる。
- Oxford JournalsのページはOUP自身のページとHighWire Pressのプラットフォームの組み合わせで成る。例えば日本の読者向けのページはホスティングはOxfordが、日本語ジャーナルのホスティングはHighWire Pressがしている。
- HighWire Pressはコンテンツのホスティングプラットフォームで、多くのコンテンツが網羅されている。科学で最も引用される雑誌200のうち71をホスティング。世界で一番無料のLife Scienceの記事が集まっている場所。HighWire Pressとパートナーを組むことで独自ではできないことができる。
- HgihWire PressはStanford大学がやっているもの。価値観には通じるものがある。HighWireの技術の恩恵を受けることも、HighWire提供のその外の出版者の知識を得ることもできる。
- 選択的なアウトソーシング戦略で様々な機能を独自にやるよりはるかに安く実現。Evidence-basedなアプローチの便益も得られる。HighWireは各出版者の実験の教訓を共有できる。
- HighWireは最先端のプラットフォームでもある。今現在、コンテンツすべてをHighWire2.0のプラットフォームにコンテンツを移行している。そこには既にPNASなど質の高いコンテンツがホスティングされている。
- この1年でコストを15%圧縮・・・業者との関係の合理化が主要因
- 学術出版の抱える課題にOperationsは如何に役に立つか
-
- 質疑
- 国際日本文化研究センター・白石さん:「非営利出版のサスティナビリティ」というのが本日のテーマだが、結局のところは今後は営利をある程度は追求することが生き残る道?
- Martinさん:利益を上げていかないといけないところでは意見が重なる。出版局は投資によって変化する需要にこたえなければいけない。その財源は出版業務を通じてあげた収益か、親組織からの出資しかない。投資が行えるためには出版局がきちんと利益を上げているか、親組織がお金を出す意思があるかが必要になる。Pamさんの方が知識は詳しいから補足を。
- Pamさん:会計上、利益をどう考えるか。永井さんもおっしゃっていたが、出版活動をきちんと行うことによって利潤をあげ、コストをカバーし、投資の財源を確保することが重要になる。非営利出版者の場合、コストをカバーして余剰の利益が出たときの取り扱いをどうするかが問題になる。親組織に返すことになるところが、営利とは違うところ。
- 日本動物学会・永井さん:今の質問は大事なところ。大学出版の規模はわからないが、学会は余剰を上げるどころか会費を使って出版を行っている。余剰の話をしてみたい。
- 国際日本文化研究センター・白石さん:「非営利出版のサスティナビリティ」というのが本日のテーマだが、結局のところは今後は営利をある程度は追求することが生き残る道?
- 質疑
-
-
- IPAP・鈴木さん:著者が自主的OAを嫌うようになっているとの話があったが、過去は違った?
- Martinさん:OAオプションがあるかどうかはどのOAモデルを使うかによる。いくつかの雑誌では出版するには著者負担が求められるものもある。OUPがOAを義務化している5つの雑誌では、義務化以来、投稿数は増えていない。オプショナルでOAにするかどうか、選ぶことができる場合には選ぶauthorが増えてないこととも一致している。ですが、OUP以外にも義務化とオプションを提供しているところはあるので、全体を見ると義務化とオプションの違いが見えるかと思う。
- 永井さん:Martinさんの話は重要。OAにすることの意味をもう一度考えなければいけないこと、どのモデルを使うかということ。ただwebでオープンにしていれば使われる時代ではない。
- IPAP・鈴木さん:著者が自主的OAを嫌うようになっているとの話があったが、過去は違った?
-
-
-
- 日本化学会・林さん:図書館情報学ではOAにした論文が被引用数を稼ぐのか、あるいは別のインパクトがあるのか論争になっているが、OUPでその辺でわかっていることはある?
- Martinさん:非常に興味深くかつ論争を呼んでいる問題。OAモデルのもとで出版された論文の被引用数が上がるか否かはかなり色々分析されている。引用数が上がったことを示す、正の相関を示す調査もあれば、変わってないことを示す結果もある。被引用数の増加を示す調査によると、早期公開の影響であってOAだからではないというものもある。被引用数でインパクトを測るとなると、OAで上がるか下がるかの明確な結論は出ていない。もう一つの基準としてOAモデルによりdisseminationが高まっているかがある。これに関してはほぼ一貫して、OAの方がダウンロード件数は上がっている。OUPのデータを見ると一番人気の高いOA雑誌は6%、ダウンロード数が増えている。
- 日本化学会・林さん:図書館情報学ではOAにした論文が被引用数を稼ぐのか、あるいは別のインパクトがあるのか論争になっているが、OUPでその辺でわかっていることはある?
-
-
-
- 林さん:モノグラフを刷る数が2,000-2,500から数百に減っているとのことだが、これは専門性が高まって読者が減ったせい? そしてそれだけ減ったならe-モノグラフにしちゃった方が普及率は高まるのでは? ただ人社系では紙に拘るかとも思うが・・・
- Martinさん:モノグラフの印刷数が減った理由はいくつかある。一番大きいのは買う側の図書館にモノグラフを購入する予算が減っている。たいていのモノグラフの市場は図書館、図書館で購入予算が減ると買われるモノグラフも減る。また、すでにほとんどのモノグラフは電子化しています。
- 林さん:モノグラフを刷る数が2,000-2,500から数百に減っているとのことだが、これは専門性が高まって読者が減ったせい? そしてそれだけ減ったならe-モノグラフにしちゃった方が普及率は高まるのでは? ただ人社系では紙に拘るかとも思うが・・・
-
-
-
- NII・安達さん:Pamさんへ。プラットフォームの話が最後にあった。システムを分けることはOUPの規模で合理的な理由がある? subscriptionに合わせて設定するのは2つのシステムを渡る必要があるのではと思うが。また、HighWireには査読システムはついている? そこの出来の良さが重要と思うが、HighWireではそれが提供されていてその評価も含めていい? 逆を言えば他のプラットフォームを使う可能性はない?
- Pamさん:OUPがgeneral, contentsはHWという形式にはそれなりの理由と歴史的経緯がある。歴史的経緯については、もともとは人社はOxfordがhostingしていたが、2004からすべて
HUHWに移した。自分のところでhostingする実績はもともとあった。理由としては、Oxford JournalsとしてはHWが得意な分野とOUPが得意な分野を明確に切り分けている。HWはhosting platformとしてかなり豊富な機能を持っている。ではあるが、一部で我々の求めているものとマッチングしていない部分もあるので、そこはOUPでやるかサードパーティに任せる必要がある。その例がEditorial/ Submissionシステム。Bench pressを使っている部分とmanuscript centralを使っている部分がある。この分野はかなりの見積もり請求をして選定した。今現在の感触としては、bench pressはちょっと割高。Manuscript central と editorial 〜はどっこい、commodity化も進んでいる。どれを使うかはeditorが選べる。なぜonlineのhostingとしてHWを選んだかだが、かなりの見積もり請求をして選定した。他にもplatformの評価はしている、Ingentia他。オプションは複数あるが、今現在はHWが一番合致している。
- Pamさん:OUPがgeneral, contentsはHWという形式にはそれなりの理由と歴史的経緯がある。歴史的経緯については、もともとは人社はOxfordがhostingしていたが、2004からすべて
- NII・安達さん:Pamさんへ。プラットフォームの話が最後にあった。システムを分けることはOUPの規模で合理的な理由がある? subscriptionに合わせて設定するのは2つのシステムを渡る必要があるのではと思うが。また、HighWireには査読システムはついている? そこの出来の良さが重要と思うが、HighWireではそれが提供されていてその評価も含めていい? 逆を言えば他のプラットフォームを使う可能性はない?
-
-
-
- 安達さん:イギリスで研究者のグループが新い雑誌を発行したいとなったときに、アメリカでは通常は評価が定まらないため難しいかと思うが、イギリスで研究者グループが出そうとしたらどういう行動を取る? そのとき大学出版局は何か活動をすることがある?
- Martinさん:OUPはいくつも新しいジャーナルを出している。研究者グループのジャーナル立ち上げについてかなりの経験・知識がある。新しいジャーナルを出すときは、なぜその学会として新しい雑誌が必要だと思うのか。新い雑誌を出したいというときには出した時の将来展望を考えるように言う。特定の研究分野で将来的な展望がよさそうでなければ、その雑誌の出版はかなり嫌々というか、嫌うことになる。2つ目の事項として、その特定の分野でかなり高い品質の研究活動そのものがあるか。独自に調査をした結果、かなり質の高い研究活動があり、他に出版する場がないとなれば新たなジャーナルの立ち上げを支援することになる。3つ目の要件はビジネスとしてなりたつか。すなわち、市場として十分な規模があるものなのかどうか、十分に雑誌を維持できるだけの研究活動があるか、特に図書館からの需要があるかどうかを考える。
- 安達さん:イギリスで研究者のグループが新い雑誌を発行したいとなったときに、アメリカでは通常は評価が定まらないため難しいかと思うが、イギリスで研究者グループが出そうとしたらどういう行動を取る? そのとき大学出版局は何か活動をすることがある?
-
-
-
- 安達さん:そうして作った雑誌のパフォーマンスが悪いこともあると思うが、そう言うときの管理・サポートは何かされている?
- Martinさん:もちろんそうならないように早い段階で手を打つ、パフォーマンスが落ちる前に手を打つようにしています。ですが論文の質も高くなく、採算割れであるとなれば休刊する。
- 永井さん:英米では採算の取れない雑誌をなぜ続けるのかとはよく言われる。
- 安達さん:そうして作った雑誌のパフォーマンスが悪いこともあると思うが、そう言うときの管理・サポートは何かされている?
-
大変濃密な内容でした・・・
個人的に気になった点はいくつもありますが、ひとつはOpen Accessオプション(著者が掲載料を支払うことで論文をOA化できる)を選ぶ著者の比率が落ちているということ。
2〜3年のことなので多少の上下は誤差のうちと言う気もしますが、少なくとも「オプションを選ぶ人は増えてはいない」と言うことは助成研究や機関内の研究成果物のOA義務化を行う機関等が増えつつあること対比すると面白いですね。
多少遅くなってもいいなら自腹切るよりしばらく後にリポジトリ等に載せた方がいいや、って著者が多いんでしょうか?
もうひとつ興味深かったのは「選択的なアウトソーシング」という繰り返し出てきたキーワードについて。
この場合の「アウトソーシング」と言うのは日本(の、特に図書館界)でそう聞いたときにイメージするような、端からコスト削減ありきで委託化して委託スタッフの人件費削減で補う・・・と言った類のものではなく、自分のところよりもその業務が得意な企業があるならそことパートナーシップを組んで業務は外部化、自身は本業に専念と言う本来の意味でのアウトソーシングとして捉えるべきものと思います。
High Wireとの連携とか好例ですね。
標準化技術が多く登場してきたことともあわせて、何もかも内製するのではなく自分が標準に合わせることで外部のリソースをうまく使う・・・その際、相手にも規模の経済等の便益を図ること等で無理せずコストを下げようってのは、基本ではあるでしょうがパートナーとの関係をうまく回すこつかな、と思いました*3。
・・・しかし・・・林和弘さんのご質問時にあった、「e-モノグラフにすれば?」「すでにほとんどのモノグラフは電子化しているよ」ってやり取りは自分もびっくりしました・・・e-モノグラフを使ったことは何回かありましたが、そうかもうOUPは「ほとんど電子化している」域か・・・数歩先に行かれているなあ・・・(汗)
*1:SPARC Japanセミナー2009 第1回「研究者は発信する:多様な情報手段を用い、社会への拡がりを求めて」 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*2:ロスアラモス研究所のBollenらを中心とするMESURプロジェクトの成果物の一つ。マップ自体はこちら:PLOS ONE: Clickstream Data Yields High-Resolution Maps of Science, このマップについて説明した論文本文はこちら:Clickstream Data Yields High-Resolution Maps of Science
*3:もちろん相手方の話を聞かないと判断できないところでもありますが