かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

パネルディスカッション:機関リポジトリは大学にとってキラーコンテンツになれるか?(国立情報学研究所平成21年度CSI委託事業報告交流会(コンテンツ系) D)


前エントリ:その1その2


平成21年度CSI委託事業報告交流会記録エントリ第3段。
最後は先生方5人によるパネルディスカッションです。
タイトルは思いっきり煽り気味に「機関リポジトリは大学にとってキラーコンテンツになれるか?」!!


なお、以下の記録はあくまでmin2-flyの聞きとれた/理解できた/書きとれた範囲のものであることをご了解のうえご利用いただければ幸いです。
間違い等にお気づきの際はコメント欄等でご指摘いただければー。


では、果たして機関リポジトリキラーコンテンツになれるのか?!



  • 安達先生:キラーコンテンツというよりキラーサービスと言った方がいいかもしれない。機関リポジトリは皆様の努力もあり数が増えているが、今後は外から見える、役に立つものにすることが課題。奇しくも5/27に出た総合科学技術会議の第4期科学技術基本計画の案*1の中では、「機関リポジトリの充実」、「公的資金による研究成果へのアクセスの容易化を図る」などと書かれている。また、「大学は電子ジャーナルの効率的・安定的購読ができるよう有効な対策を」、別のパラグラフには「公的資金による研究論文は可能な限り機関リポジトリに登録し、一般向けにもわかりやすい説明を」と言った記述がある。どなたがお書きになったかわからないが、総合科学技術会議の文書の中に機関リポジトリという言葉が書かれ、さらに予想もしなかったように「一般向けにもわかりやすい説明を」など、画期的なもの。オープンアクセスについての記述もある。皆様の努力により定着したこともあるのだろうが、このように国の政策に取り込まれようとする中で、例えば3年先に振り返ってみたときに「あのときこういう話があって、我々が努力したから今がある」と言えるように、近い未来をどう見るか、ということでこのパネルを進めたい。最初に、パネリストの皆さんにお考えを述べていただき、その後フロアも含めて議論する。初めに加藤先生、おナ芸します。
  • 加藤先生:数百字程度でわかりやすく、というのは我々が設置審の審査を受けるときに求められるのと同じようなこと。さて、まずはキラーコンテンツとはなんなのか、という話し合いを先ほどパネリストでした。そこでの答えは「イエス」(機関リポジトリキラーコンテンツである)、それも押しも押されもしない大学ではない大学にとってイエス。わかりやすいリポジトリの有無で方向性が決まるだろう。押しも押されもしない大学は世界向けのリポジトリを作って海外に向けた窓口になって欲しい。
    • 静岡大学での取り組みについて。大きな大学と異なり、これからスペースのためにも体系だった分散管理がいる。しかしそのための遡及入力は80%しか進んでいない、それをせめて90%にしようとしているところ。場としての図書館についてはラーニング・コモンズを作った。
    • 機関リポジトリについては、館長就任当時に図書館員の説明を受けやることを決めた。平成19年度に決めたので、最後の渡し船に乗った形。
      • そこでは「リポジトリは生き物」と言ってきた。どぎつい表現になるが、生き物である以上、水やりと草むしりをしないといけない。草むしりとは、リポジトリのクオリティを上げるために、抜くことはできないにしても順位づけをして見えやすくする努力が要ると思う。
      • 図書館のリポジトリではなく機関のリポジトリ。特に常勤スタッフには常にfor the universityと申している。そのために大学で起こっていることを講師に説明いただいている。さほど大きくない大学なのでそういうことも知っていてほしい。
    • リポジトリについて図書館員とは異なる視点から:
      • リポジトリは役にたつ。アジアからの投稿論文には日本人と欧米の査読者を選ぶ。欧米の査読者を選ぶときに、リポジトリにその著者名を放り込む。リポジトリは著者が見せたいものが放り込んであるのでその人のものが見える。そういうときにリポジトリに意味がある。そういう側面がある。
      • 若手、中堅研究者がステップアップするときに、他人の論文を評価することが、キャリアアップの材料になる。そういう意味でも見えやすくする窓としての機能が果たせるのではないか。
  • 安達先生:皆さん話したいことはたくさんあるでしょうがディスカッションの時間もあるので短めに。では上島先生。
  • 上島先生:学術リポジトリの相互連携の会と思わなかったので趣旨違いの話をするかも。できるだけ今日の話に寄せたいが。
    • 関西大学リポジトリは平成18年度に採択され、20年度に正式公開。CSIのほかに文科省の事業の予算も取ってきた。設置は学長室、学長課。いわゆる大学執行部が所管している。登録作業者は非専任で3名。
    • 研究の公開はほとんど義務化されているが、一方で教育の公開についても言われている。私たちは私立大学なので、5/28くらいに中教審から答申が出て、来年の4月からは教育も公開することに。リポジトリは研究成果だけでなく教育も公開できる。そういった意味ではリポジトリの役割は非常に大きい。
      • 実際に登録しているのは紀要、研究成果報告書、学会発表資料等のやりやすいものと、GPの成果。成果公開という意味もあるが、教育へのフィードバックも目標。
    • 今日のお話を聞くと・・・関西の他の私立はDRFに入っているのに関西大学は入っていなかった、反省して積極的に入りたい。いわゆる連携の方向性を求めたい、と今は思っている。
    • 著作権処理についてはSCPJのようなものがあると非常にやりやすい。お手製でやるよりもボトムアップで生成するということで非常に効果があると思う。
    • なぜ学長課にリポジトリを置いている?
      • 新しいものをやるときはパイロット的に学長課に置き、運用して見てから各部署に戻す。
      • 図書館とITセンターの文化の違い。ITセンターは最先端の情報環境、図書館は従来を守ろうとする。だからこそのコミュニティ形成なのだろうが、わたくしどもも実情はうまくいかない。
      • リポジトリと学内他システムとの連携、教育システムとの一体的な運用が今後の課題。システム側からすれば一元管理の実現、それを教育に用いたい。
    • 今後の展開:
      • 人材の育成について・・・図書館として、リポジトリを運用する人材育成の観点と、大学として、学位を与えたり、修士を与える仕組みも長い目で見ると必要なのではないかと考えている
      • 技術の交換、情報交換をされているとのことなので、是非そう言ったところもご一緒したい
  • 安達先生:それでは3人目、和田先生。
  • 和田先生:私が図書館長になったときにはリポジトリは既に発足していた。担当係長に言われるままに従って活動していた。その係長も異動して、私も独立して、機関リポジトリに積極的に活動しなければいけないと考えている。報告交流会も大変勉強になる。
    • 今日は2点話す。機関リポジトリは進めなければいけないと思う、その1つは小樽商科大は社会科学系の単科大学。その状況を見たとき、機関リポジトリは研究面で有用。一般的に社会科学分野の研究は日本語で、国内雑誌に研究成果を載せてそれを通じてお互いに交流する。特に紀要の役割が非常に高い。紀要論文は玉石混交だがそれを見る、とりわけ若い研究者は紀要中心。それがオープンに見られることは研究に非常に有益。しかしそのためには大学間の連携が必要だろう。また、紀要の他に社会科学では商業雑誌の論文、研究成果も活発、ここを機関リポジトリにどれだけ載せられるかがポイント。いずれにしてもメリットは大きい。ただし、今現在の状況では教員が機関リポジトリで文献を探すことは、印象だがまだまだ広まっていない。文献探索は従来型、自分で依頼したり雑誌をコピーしたり他のデータベースを使ったりする。しかしこれも過渡的な状況と思う。いつオープンになるかは予想できないが、大いに期待している。
    • もう1点は地域貢献におけるリポジトリの役割。小樽商科は地域に根差し、地域貢献を大きな使命にしている。商学系の国立大学は非常に珍しく、実学志向なので企業や官公庁の期待も高い。しかし誰がどんな研究をしているのかが外から見えないと言われる。研究者ディレクトリもあるが、研究の中身を見ないと理解できないのだろう。論文を少し見れば、全部は無理でもどんなことをしているかは理解いただけるはず。地域への情報発信、成果の提供として機関リポジトリに期待している。
    • そのためには学内事情であるが、リポジトリと地域連携部門間の連携ができていない。また、教育的にも、先生の論文を学生に読ませる、そうすると試験でいい点が取れるかもしれない、と言う方向で授業ガイドを作ろうと考えている。
  • 安達先生:ありがとうございます。それでは4人目、武田先生。
  • 武田先生:2つの立場がある。私は機関リポジトリハーベスティング、JAIRO等のシステムの研究開発について教員側からコミットする組織のまとめ役としての立場と、一研究者としての立場。その両方の目から見たい。
    • まずNIIの立場。NIIのPRを兼ねて説明すると、今、学術情報は大変なことになっている。昔は知る人ぞ知る、研究者の作ったものを研究者が使う。しかし今は大競争時代。昔からいた出版者だけでなく、Googleはじめweb企業、MS社のようなソフトウェア企業も参入。あるいは国会図書館大英図書館などの国立中央図書館。ごっちゃごっちゃに競争している。オープンアクセス、電子出版、論文検索、著者同定等いたるところで局地戦があり、連合もある。大変な事態。10年前とは様相が全く違う。web化されてみんなが参入してきた。
      • その中でNIIはいろんなサービスをしている。CiNii、KAKEN etc...今回はJAIROが話の中心だが、こういう我々のサービスを研究者視点でみるとサービスがたくさんある。機関リポジトリもその中の一つ。自分の論文を管理しないといけない、その中の1つ。全部つながっている世界で研究者は適宜使い分けをする、それらが全部つながっているのが今の形。
    • そういう視点から機関リポジトリに期待されるのは・・・
      • 学術情報流通の環の中の一つとして機能すること。単独で機能するのではなく、研究者には使うツールの一つ、見る側には見るものの一つ。そのあたりを期待したい
      • 学内システムとの連携が今、on going。研究者の負荷を減らし、大学としてまとまる
      • 学外システムとの連携もいる。Hot topicsは研究者の名前の同定とID。国内では科研費で、国際的にはORCIDが出版時にIDをつけようとしている。そこに機関リポジトリも入ってくる
    • 以上はNIIとしての立場。では一研究者としては? 私自身は人工知能、web情報学の一研究者
      • 研究者にとって、見る側としてはあまり心配はいらない。CiNiiはJAIROを通じ機関リポジトリのデータを公開し、アクセスされている。ルートさえ作れば見られる、あまり心配はない
      • むしろ問題は作る側。研究者は本当に論文を入れてくれるの?
        • 研究者は新しいルートとしての機関リポジトリの意味を理解していない。伝統的な媒体で書く、あるいはwebに載せて成果を公開している。そこに機関リポジトリが入ってくるとどうなるの?
        • 機関リポジトリにおけるオリジナルな公開物は紀要やテクニカルレポート、今まで自分のwebに置いていた未発表論文やデータ。既に発表されたものとしては学会論文等、これはセルフアーカイブやオープンアクセスにあたる。これは研究者にとってそれぞれ役割が違う。
          • データについては自由に/早く使えて、長期保存して欲しい。e-scienceの役割。
          • オリジナルな論文・資料はwebにおくとwebコンテンツの1つだがリポジトリに入れればインデックスされる。電子出版としての役割。著書もニーズが出てくるだろう。
          • 既に発表した論文公開の機能は研究者にとって非常に分かりづらい。いわば光と影、ここは影である。
        • この光と影の組み合わせで大学にとってなくてはならないものになっていくはず。
  • 安達先生:では最初に先生方、お互いにご質問などあれば。
  • 加藤先生:武田先生に。自然科学だとジャーナルの意味は論文の品質保証。機関リポジトリは正面玄関ではなくGoogleで横から入ってくる。品質保証は、e-science等を考えるとどう考える?
    • 武田先生:運営者のアイディア、考え方、ポリシー。機関リポジトリに何を置くのか。どういうシリーズを置くか、資料価値の違うものをどう置くかは大学のポリシーとして、「あそこの大学のは価値がある」と思ってもらえるか。電子出版者としての役割はそこにある。出版なんて単著だとなんの関連もないのに信頼して貰えるのは出版者による。機関リポジトリもそうなれば。
  • 安達先生:和田先生、今のところ人文社会系ではどうか? どこの誰が出しているものかも重要? Googleでヒットしたものでも価値がある?
  • 和田先生:一般的な話として、研究成果をそのまま出していることが社会科学では多く、それを紀要に出せばリポジトリに載せるしかない。善し悪しは読者の判断。
  • 安達先生:他にクリアにしたいことがあれば? 私は最初、機関リポジトリが政府にクローズアップされていると言ったが、その中では業績評価も強く出ている。それには違和感がある。研究者は「巨人の肩の上に立つ」、過去の蓄積の上に何ができるか、お互いのギフトの関係がある。その中で先生方がおっしゃる機関リポジトリについては・・・大学もそうで、大学の評価のバイアスがあるが大学の果たす役割もある。その点について何かご意見は?
  • 和田先生:大学の業績評価とは? リポジトリの有無で評価される?
  • 和田先生:それが個々の教員の業績評価に?
  • 安達先生:なる可能性がある。科研費の審査時や、一般国民が読んで評価する等。
  • 和田先生:すぐにそれに結び付くとはとても思えない。機関リポジトリは教員にお話しして出してもらうことはできても、義務付ける段階ではないだろう。
  • 安達先生:上島先生は学内の制度化にも御尽力されているようだが?
  • 上島先生:学内研究費の成果の公開は考えているが、ここにおられる先生方はみなさん学術関係の方が多い、基本的に論文と言うのは評価と言うよりもアイディアの共有の場、次のアイディアを生む場。文科省に限らず、アカウンタビリティのために出すというのも社会のルールとして仕方ないかと思うが、本来的に論文や著書は人に見てもらい、評価し合ってこそ価値を生み出す。
  • 加藤先生:関連してNIIに質問でもあるが。1つは、もちろんいくつかの大学で教員DBとリンクされているそうだが、リポジトリがどれだけのコンテンツを持っているか、数のデータを出してそれでランキングされる。そうではなく、専任教員の何%が出しているか。うちの大学では52%が出している。今年中には60%にしたい、いずれ70%へ。そういう見方からは、評価に使いたければどうぞ、と言った感じ。
  • 武田先生:世の中の流れとして客観的評価の問いには抗しがたいが、積極的に捉えればそういったことをアピールできるチャンス。特にいわゆる超有名大学はそんなことしなくたって、どこで切ったっていい数字が出てくるが、そうでないところは自分にとっていい数字を出す。そこで機関リポジトリは努力できる場と考えればいい。大学のトップへの宣伝のようだが、学長や理事会レベルでそういう形で位置づけてもらえたらいい。
  • 安達先生:今までは論文のような成果のようだが、教育系のコンテンツやe-science系のデータも大事だろう。正直に見てどちらも努力が必要と思うが、その中で一番頑張りやすいのは、多くの教員が共通する論文のようなものを頑張るべきなのか。どの辺がkeyだと思われる? 次の一手、がんばりどころは?
  • 武田先生:理工医学系は論文の世界で、このあたりはもうなるようになる。流れる。こっちの世界ではデータを如何に機関リポジトリに取り込むか、ただこれは図書館の手に余るかも。もう1つは文系の分野で、大学が出版者として機能する。機関リポジトリがそこに貢献できる。出版会のない大学は、頑張れば大学発の情報を本と同じように、黙っていてもこれから電子本の時代になるので、競争できる時代が来る。そのあたりで文系は、本を出す形でも機関リポジトリは貢献できるのでは?
  • 和田先生:そういう方法もあるのか、と思う。出版という点からリポジトリを位置づける。それは別として、先の質問の趣旨で言えば、自分の大学の状況をみるとまずは研究成果、論文の登録に力を入れるべき。小樽商科大学は上から言っても聞かない。聞いてくれないので下からなだめすかして、メリットをあげて徐々にもっていきたい。これまでの進め方は図書館職員が教員に直接会って、個人司書のようなことを前からやっていて。個々の教員と話をしながら論文の掲載をお願いして、進めていくことで当面はやっていきたいと考えているところ。論文の掲載を中心に。
  • 上島先生:やっぱり新しい方向性だと思うので、図書館、ITセンター、教育、もちろん研究も、新しい方向性を導き出す在り方が大事。武田先生のお話や加藤先生のお話で品質管理やバージョン管理、セルフアーカイビングもいいがそれでコンテンツが増えるか等のあたりを考えて行かないといけない。
  • 加藤先生:めちゃくちゃなことを言う。電子ジャーナルの特別委員会と言う大変な仕事をしている。今のお話を聞いていて思いつくのは、我が国の機関リポジトリが一気に前に進む、階段を一歩上がるには、人文社会系。自然科学系はもう次の一手が見えないが、日本語の人文社会系の国際誌を作ってそれをAmazonに載せ、それを機関リポジトリにも置けば一気に展開できるのではないか。「そうだ!」と勘違いした人はぜひ頑張って。
  • 安達先生:パネリストの雰囲気は論文のセルフアーカイブは定着した、常識になったし国の政策としても言われるようになったので、今後はバスに乗り遅れないようにあわてる人が出てくるだろう。次のコンテンツとして教育、e-science等色々あるが工夫がいる。その中で出版が大学の果たす重要な役割、とのご意見が出てきた。そこでそろそろフロアからもご質問を受けたい。
  • 大阪大学・前田さん:上島先生に。近未来を読むと言うことで、私立大学にとって近未来には何が重要で、リポジトリは何が出来る?
    • 上島先生:難しい。私立大学の場合、教育という点が避けて通れない。どなたかの数字にもあったが、(私大は)565という数がある。ステークホルダーとして、学生に対する教育コンテンツの増加は使命。しかし教育を支えるには研究がないと、いくら教えても教育コンテンツに対する考え方、教育が伝わらない。どちらもリポジトリには入れて行かないといけない。色んな技術的な問題や著作権の問題、電子ジャーナルの問題等あると思うが、そのあたり機関リポジトリだけでそれらに対応するのかと言う疑問もある。全体として、システムとして提供できればいいと考えている。
    • 安達先生:私は一番重要なのは国際化対応と思う。図書館の方はアメリカの大学は優れた教科書を電子化されているが、日本の大学はどうやって活用するかが喫緊の課題と思う。
    • 加藤先生:例えば数の上で国立大学を代表すると思うので。地元の評価を高めることが国立大学の近未来の価値。地元に行くに値する、と評価されること。
    • 和田先生:私の個人的な意見としては教育の質を維持すること。非常に厳しい、人件費も減らされ教員も減らされるが、私の大学は商学部の単科大だがリベラルアーツ的教育をしている。教員が減ってもそれを維持するのが近未来の課題。そこで附属図書館の役割は教育支援として重要な位置付けになる。それと機関リポジトリの関係は睨み切れていないが考えたい。
  • 安達先生:図らずも教育とか、大学の本当の評価を上げるために機関リポジトリを十二分に活用してそれを実現できるか、が議論で出てきた。このことについて、今日のディスカッションされてきた皆さん、一言いいたい方は?
    • 東北大学・ヤナギサワさん:機関リポジトリの位置付けについて、こういうシステムを図書館に関係するようになってから自分は学んだ。教育の重要性は40代で論文書いているときに考えもしなかった。教授になり、色々な物を経て、どうやって若者をフィールドに巻き込む、味方を増やすことを考えている。自分は機関リポジトリに色んな著者原稿、教科書レベルから研究者レベルをつなぐものとして預けている。国際化への対応だが、日本人は英語が下手。英語で論文を書いていてもネイティブではないので3〜5倍の時間がかかる。同じ情報のレベルであれば、日本語で質のいい総説論文で、いっきにアメリカの厚い教科書レベルの分野にキャッチアップできる。お願いしたいのは、各大学の先生に商業的な、あるいは学会等の総説をぜひ機関リポジトリに置けば。日本語の総説は一部でしか読まれていないが・・・それから、英語で勝負する学生を作るためのもう1つの活動としては翻訳書を出している。図書館にも混ぜてもらいたい
  • 安達先生:リポジトリに入れる論文もジャンルを考えて戦略的に、ということだと思う。私も同感。こういう場で言うのは品がないが、SPARC Japanで日本の英文雑誌をどう売り込むか、具体的にはインパクトファクターをどう上げるかを考えるとき、適切なときにレビューをのせるのは有効。ということで、私もまったく同感。最後に何かあれば?
  • 武田先生:ヤナギサワさんに。日本語の学術情報流通について。国際化はがんばるところががんばってほしい。日本語の学術情報を守るのには機関リポジトリは貢献できる。日本の学術出版は縮んでいるし、機会は減る。しかし英語でやるのはネイティブではない我々には辛い、学部教育は日本語などバイリンガルでやることになる。そこで日本語情報の維持には機関リポジトリが貢献できるのではないか。商用に載らないところで頑張れる、それが日本の学術情報を守ることになると思う。
  • 加藤先生:まとまらないが、学術情報出版として日本は全く成功していない。我々は非常に苦しんでいるわけだが、最初の話と同じところに返るが、日本のリポジトリのクオリティは高いという評価を確保すれば、ある部分から国際的な評価を受けられるだろう。
  • 安達先生:ありがとうございました。最後に司会者から、最初にのべたように総合科学技術会議のキーワードに機関リポジトリが入ったというのは、もうこの国では機関リポジトリを常識として動き出す。これは皆様の努力の成果だが、その中でリーダーとして動くことになる。フェーズが変わったということ、その中でやっていこう。



ディスカッションの中では学術出版に関してもかなり大きく扱われていましたが・・・うーん、機関リポジトリと出版については自分が参加できなかった午後のもう1つのセッションでご発表があったはずなのですが、このあたりに関連するお話もあったのでしょうか?


機関リポジトリの利用を分析する立場としては基本、それぞれに応じた方策を講じればそれぞれのコンテンツに応じた利用者が存在する、と考えているのですが、だからこそどこを重視するかってのは各機関であったり政府であったりで考えて力を入れる、ってのも重要ですよね。


以上で丸1日に渡るCSI委託事業報告交流会のうち、自分が参加できた半分の記録は終了ですー。
その後、情報交換会があって楽しくお話させていただく機会があったりもしたのですが、それはまた別の話と言うことで。


さあ、明日はSPARC Japanのセミナーだー。