2012.11.17-18にかけ、九州大学で日本図書館情報学会研究大会が開催されています!
今回は僕は特に発表はないのですが、皆さんの発表を聞くため+コミュニケーション目的で博多に来ています。
九州とはいえ日本海側なのでつくばと寒さは大差なし・・・。
で、学会自体は17日午後からなのですが。
17日の午前中にはプレイベントとして、MendeleyのCEO、ビクター・ヘニング氏を招いての講演会がありました!
Mendeleyと言えば言わずと知れた、わずか数年で一躍、文献管理業界の雄に踊りでたサービスです。
- Mendeleyのサイト
- Mendeleyにも言及している、カレントアウェアネスでの林豊さんの記事
- 最近では200万ユーザを超えたそうですよ!
その設立者のお一人がヘニング氏で、今回は17日の九州を筆頭に、19日にはつくば(物質・材料研究機構)、20日には横浜と続く講演シリーズの一つです。
「これは聞かざるを得まい!」ということで参加してきました・・・以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書取れた範囲でのメモであり、かつデモ部分については記録しにくい都合上、だいぶ記録を端折ってもいます。
ご利用の際はその点、ご理解いただければ幸いです。
事実誤認・誤字脱字等お気づきの点があれば、コメント欄等でご指摘いただけると助かります。
Social Media for academia: IT7s time to change the way we to research(Dr. Victor Henning / Co-Funder & CEO, Mendely Ltd.)
- 今日は「研究の仕方をどう変えていくか」というタイトルでお話していく
- Social mediaを使って科学/研究をどのようにもっとオープンにしていけるのか? 大学内の共同研究をどうやって行けるか
Mendeleyについて
- Mendeleyをはじめるときには大きなビジョンがあった
- ティム・バーナーズ・リーのビジョンが我々のビジョンと合致しているので紹介したい
- TEDでリーが言ったこんな言葉がある:「人類の多くの知識は研究者のコンピュータの中に保存され解放されていない。これを人類の課題解決に生かさなければいけない」
- Mendeleyも同じビジョンを持っている。知識を共有する、人類の知識を解放し共有したい、ということがビジョン
- Mendeleyの最初のアイディアについて
- 2008年。Jan, Paul, Victorの3人のPh.Dの学生がSkypeでやりとりをしていたのが始まり
- 私とJanはビジネススクールで、Paulはコンピュータサイエンスを研究していた
- Skypeでいろいろやりとりをしていた中で、やりにくさを感じることもあった
- その中で一番難しかったのが、研究上沢山の文献を読まなければいけない。おびただしい量を読まなければいけない
- どの文献をどこまでどれくらい読んだか。文献管理が非常に難しかったことをよく覚えている
- 音楽であればiTunesのようなものがある。そこに音楽ファイルを入れれば自動的にバンド名や曲の名前が付与される
- 同じように研究においても、文献を管理してくれるソフトがあってもいい、というのが発想の始まり。それを実際に開発した
実際にデモ
-
- ここは詳しくメモは取りませんがだいたいやりたいことはできる感じです
- 文献に付与したメモはコラボレーションしているグループの他のメンバーも見ることができる
- Mendeleyの中で情報共有できるグループを作ることができる
- Facebook風にグループ内のフィードが流てきたりも
- プラグインで、Word等で文献を書きながらMendeley内の文献を引用することもできる
- 参考文献リストも容易に作れるよ!
- もちろん使う引用スタイルは変更できる。クリックひとつで変更可能
- さらに今週から、書誌事項ごとにスタイル(太字とかイタリックとか)をユーザが編集できる機能も実装
- 自分にあった引用スタイルに変えることができる
ここからプレゼンテーションに戻る
Mendeleyについてその2
- Mendeleyでは各サイトからの引用情報の抽出も容易
- 50以上のDBからMendeleyにデータを簡単にインポート可能
- ChromeでもSafariでもIEでも、Import to Mendeleyのプラグインを入れればOK
- 1クリックでMendeleyにデータをインポートできる
- 主要なDBはだいたいカバー
- Web of Knowledge, ScienceDirect, Google Scholar etc…
- もう1つのMendeleyの大きな機能・・・Recommendation
- Mendeley内の文献を分析、「似たようなこんな文献がありますよ」を推薦してくれる
- Amazonの「この本を買った人は・・・」と同様の仕組み
- 自分にあったものにfocusできる
- いらない文献の時は「いらない」を指定できる。ユーザの指向を覚えて機能を改善する
- さらに・・・オンライン上で自分のCVを作ることもできる
- 自分のこれまでに書いた論文を「My publication」フォルダに入れるだけでいい
- そうすれば自分のプロフィール欄にどんな論文を書いたか入れてくれる
- 雑誌論文、本、会議発表・・・
- 受賞、助成金・・・
- もし機関リポジトリがある場合には・・・それもMendeleyに取り込むことができる
再びMendeleyの概要
- ユーザ数や現在約200万人
- 世界中に1,500人のMendeleyアドバイザ
Mendeley Institutional Editionの紹介
- Swets社と共同で、学術機関に機関版の紹介をはじめた
- Mendeley機関版ではこんなことができる:
- 機関内のメンバー全てに、Mendeley Premiumアカウントを付与
- ストレージ容量が非常に大きい
- 共有の仕方、機能がさらに増える
- 24時間以内にサポートが受けられるシステム
- recommendationエンジンにアクセスできる
- メンバーが使えるダッシュボードも特徴
- 機関全体のジャーナルコンテンツの使われ方等も見ることができる
- 機関内の研究者がどんなジャーナルを読んでいるかと、機関の購読状況の比較ができる。買っているが読まれていない雑誌の認識など
- 購読していないけれど人気のあるジャーナル等もわかる
- 私が学生をしていたとき・・・いろいろな方法で自分で雑誌にアクセスする方法を考えないといけなかった
- Googleで無料版を探したり、著者にメールしてファイルを貰ったり、友達にメールしてもらったり・・・
- 私の所属機関の図書館は、私にそういったニーズがあることは知らなかった
- Mendeley機関版を使えば、「あ、ビクターさんはこういうジャーナルを読んでいるんだ」という情報が一覧できる
- アウトプット状況も把握できる
- 自分の機関の研究者はどんなジャーナルに発表しているのか等
- スター研究者の検索も可能
- 図書館員としては、機関内の研究者とコネクトできるので、ワークフローについてサポートできることも利点
- 機関内のメンバー全てに、Mendeley Premiumアカウントを付与
- 機関版は夏に発表・・・すでに多くの機関が契約
- スタンフォード、ハーバード・・・
- アジアでは日本のAFFRC(農水)など
- 機関版のスクリーンショット公開・説明
- ここも気になった部分だけメモ(min2-fly)
- 最近いくつかの論文で指摘されていること:
- Mendeleyの登録数とトムソン・ロイターの被引用数は相関している
- トムソン・ロイターやGoogle Scholarの引用指標と似た部分があり、かつMendeleyはそれをリアルタイムでできる
- Mendeleyの特徴としては文章を挙げた瞬間に追加できること。引用が起こるには時間がかかる、1-2年かかってしまうこともある
今後のビジョン
- 300,000,000のユーザがアップロードした文献のデータベースである
このあたり、Twitterでのやり取りに集中してしまって聞き逃し・・・(汗)
最後に・・・この状況が、研究のコミュニケーション・方法を変えるのではないか?
- the scholarly kitchen(ブログ)の記事より:どうして学術出版はまだ変わらないのか?
- 雑誌論文には3つの機能があるため、なかなか変わらない
- 査読
- コンテンツのディスカバリ
- プレスティジ:発表によって権威が認められる
- Mendeleyなら上記3つはカバーできている?
- 雑誌論文には3つの機能があるため、なかなか変わらない
- Mendeleyは学術・研究を変えるものになる!
質疑
- Q. データのシェアはいいが、ある組織で購入しているジャーナルからとった論文を、購読していない相手とシェアするのは著作権上の問題がないのか?
- A. 公にはMendeley上で文献を共有することはできない。Napsterのような共有は不可能。公に共有できるのは自分が著者の論文のみ。プレプリントでもポストプリントでも、発表前であればできるのが通常。万一、出版済みで著作権に触れるものが公にされれば、それは出版者から連絡があれば削除している
- A. プライベートなグループの中でシェアすることはできる。公でない場合には、eメールやシェアポイント等と大きく変わらない。出版社と話すと、研究者はどっちみち自分が読める論文を、他の研究者と共有していることはよく認識している。問題としては、誰かがメールで論文を人に送っちゃうとトラッキングができない。Mendeleyで共有していれば、逆に言えば、出版社側は誰がどこでどういう風にシェアしているかわかるので、発行物が読まれていること、インパクトがわかる。逆に多くの出版社が提携し、様々な論文のプレビューをMendeleyに出せるようにしている。出版社/電子ジャーナルサイトへのリンクもあるので、そちらにトラフィックを流すものとしての相乗効果もある
- Q. 会場には図書館情報学者が多いと思うのでその前提で質問する。Googleを初めてみたとき、こういうものは「図書館情報学者が開発すべき」と思ったが、実際にはコンピュータサイエンティストが開発していて、「図書館あかんなあ・・・」と思った。Mendeleyの話を聞いて、「これはまさしく図書館情報学者が開発すべきシステム」と思ったが、伺うとビジネスとコンピュータサイエンティストで、「やはり図書館あかんなあ」と。そこで質問。図書館情報学はヘニングさんにはどう見える? どこが弱い? どう変えればGoogleやMendeleyを開発できる学問になる? 手短に
- A. 多くの場合、図書館ごとに、自分しか使えないインタフェースを作ってしまう。毎回、一から作らないといけなくなる。オープンリソースは既に一杯あるのでそれを使えばいいのに、一から自分の機関しか使えないものを作ってしまう。オープンソースのものを使えばMendeleyのような汎用性のあるものと統合性を持つことができると思う。一つのモデルとして、ケンブリッジ大学との共同研究の中では、今日紹介もした、Mendeleyとリポジトリの統合機能を開発した。既に存在しているツールを利用/再利用することでいいことができるのではないか。
- A. Mendeleyのアドバイスプログラムの中で、図書館を使うユーザをどう把握するかのセミナーもしている。手短ですが・・・
最後、「なんで図書館情報学者の中からこれが出てこないのか・・・!」というのは実に大きな問題意識で、いや本当、GoogleもMendeleyもLIS研究者から出てきてもよかったはずなのに・・・とは思うところです。
個別機関向け開発にとらわれすぎというご指摘はなるほどなあ、と思いますが、さてそれだけなのか・・・
また、講演の裏でTwitterでいろいろやりとりしていたのですが、Mendeley機関版は「誰が」という個人レベルで特定しての利用記録閲覧は管理者でもできないようです。ユーザはちょっと安心?
研究評価への利用については、けっこう大きな前提の変革が必要そうなので個人的には判断保留・・・確かに面白いのですが、「査読」に替わるものじゃないというか、それでいいやという業界の了解がまず必要?(査読は「(編集者あるいは著者自ら選ぶ)評価して欲しい相手」に半強制的にさせる、ものであって、「評価したい人」が自発的に評価するユーザレビューや、「結果として評価していることになる」引用等の指標とはだいぶ違う性格を持つのでは、とか)
それはそれとして、Mendeley自身はやはり便利そうで・・・以前も一度試したのですが、あらためてMendeleyデスクトップ版入れようかなあ・・・
さて学会はまだ続いております。
18日午後のシンポジウム記録もブログにアップ予定なので、そちらも乞うご期待!