かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

『ラーニング・コモンズ』フォーラム:図書館における学習教育支援の新展開(主催:東海北陸地区国立大学図書館協会)

名古屋遠征3日目。
初日*1に続きラーニング・コモンズ漬けの遠征です。


以下、例によって主観と聞き取れた範囲に基づくレビューです。



講演会:米国におけるLearning Commons事情について(井上創造先生・九州大学

  • 後日、資料をこちらで公開されるとのこと:http://rd.lib.kyushu-u.ac.jp/
  • なぜ今、ラーニング・コモンズ? しかもなぜ米国?
  • 20年後の図書館像:墓標があって砂漠が広がっているイメージ(元図書館員の声:すべてはITのせいだ…)
    • 電子ジャーナル:図書館は契約しているだけ(だからリポジトリ?)
    • リポジトリ登録もそのうち自動的にできるようになる。人はいらなくなる(実物の書籍は…?)
    • 自動書庫(でも開架でブラウジングとか…?)
    • Wall Bookshelf/仮想書架:実物大の本棚を壁に投影⇒自動書庫から取り出す(簡単に手に取れないじゃないか…)
    • 電子ペーパー:九大・服部先生とか
  • どこでも図書館=無人ということ cf)煙草屋と自動販売
    • それでも実物の本がいいという人も…
    • RFID+ICカード(そんな余裕はないところも?)
    • 労働集約型図書館:沖縄(もしくは海外)あたりでデータ/コールセンター、一宮あたりに流通センター(だからIT化なんてやめるべき?)
    • ライバルは図書館の外にいる(webサービスとか企業とか)
  • この現実を直視しないのはなぜか?
  • 図書館に自分を冷静に見つめる力はあるのか?
    • 親離れできている?
  • 図書館は配架と検索しか考えてこなかった?
    • ラーニングコモンズは新しい図書館の方向性
    • でも導入するだけでは対症療法
    • もっと広くサポートする姿勢がないと成功しない
  • UMASS Amherst校の事例
    • ここの詳細は井上先生のアップされている資料を見て
    • カウンターのあいている時間…昼から夜:授業と被らないように(min2-flyコメント:これは嬉しい!)
    • LCを入れなくても窓口のオープン時間をずらすのは検討すべき
  • 韓国の事例
    • これもスライドDLして見て
  • 九大の事例:伊都新キャンパス
    • Q-Commons:2009年度からオープン
  • 新居はいずれ古巣になる/新車はいずれ中古に/新婚もいずれ倦怠期に
  • 真新しさよりも価値の永続化を最初から考えるべき:PDCAサイクルの一環
    • IT系のPDCAにかかるスキルの紹介
  • UMASSでもCS系はLC使わない
    • 情報「逆」格差?
    • もうDigital Nativeにはサービスを提供できないのか?
  • 分析力と行動力を持つ図書館
    • 週に1日は修行?(cf:googleは週に1日の自由研究が義務)
  • 質疑
    • 大阪大の人:ラーニング・コモンズって今後増えていくと思うが、日本独自の形とかって出てくるのか? アメリカ型は魅力的だと思うがそれを日本に持ち込んで機能するのか? 独自性をどう打ち出せばいい?
      • ぜひ色々考えてほしい。たとえばヨーロッパの城と日本の城は全然違う。欧米には空間の共有意識や安全性の意識(キャンパス内でも安全じゃないとか)がある一方で、パブリック・スペースで知らない人同士でも気軽に話してたりする。
    • ?:RubyとかCMSとかの話があったが、図書館職員の条件としてどの程度あることを想定している?
      • Rubyで失敗したのは、オブジェクト指向を教えずにどこまで出来るかやってみたらRubyは出来なかった。Cake PHPだったら理解できそう。
    • PerlCGIくらいは作れる素養がある方がいい?
      • 言っちゃえばそういうことだけど、それはすぐ陳腐化する。情報技術の本質はすぐに変わること。なんでもすぐに変わり得る世界。5年後には全然違う状況になっているかもしれない。変化に対応できる人材が大事。変化が起きてもすぐにそれを吸収できる自信を持った人材が大事。

ラーニング・コモンズ見学(名古屋大学附属図書館「ラーニング・コモンズ」)

  • 什器の手配の関係でまだ見せられるものではない!
  • 見学会は中止。割愛する。
    • 会場からどよめき。そりゃあ皆気になっていたところだろうしなあ。いや自分は一昨日・昨日の風景から本当にできるのかとは思ってたけど…

ワークショップ:ラーニング・コモンズ施設の事例紹介・活用について

  • 橋本春美さん・東京女子大学:「マイライフ・マイライブラリーにつて」
    • 成果と今後の課題について
    • マイライブラリー:多様な学生ニーズに対応した空間を持つ、滞在型図書館(ハード面)
    • マイライフ:多様な学生ニーズに対応した「学生協働サポート体制」を中心とする支援
    • 学生アンケートの結果(まだ学外に出していないそうのなので詳細はメモはせず)
      • 従来の閲覧席も変わらずよく使われている、利用全体が増えていて一番使われるのは一般閲覧席(ラーニング・コモンズ的でないところ)
    • 今後の課題は「マイライフ支援」の学生への浸透と学習コンシェルジェの利用の活発化
      • 具体策も打ち始めている:図書館ガイダンスで学習コンシェルジェの顔見せ/学習コンシェルジェによるガイダンス
    • 質疑
    • 学生アシスタントには謝金は出ている?
      • ボランティアスタッフは謝金なし。サポーターは謝金出ている。コンシェルジェはTAと同じ金額。
    • アシスタントが多いように思うが、同時に働いている人数は?
      • 1日の人数は正確にはわからないが、だいたい1−2コマなので、1日に5人以上、10人未満くらい。システムサポータは1日3コマ分。予算はコマ数で立てていて、32コマ。
  • 波多江貴子さん・名古屋工業大学:「学習空間の改善と学内連携-名古屋工業大学附属図書館の事例-」
    • 図書館にラーニング・コモンズ施設はない
      • 耐震改修にあわせて学生のニーズに応えたものに
        • 様々な学習・研究スタイルへの対応
        • 多様な要求に柔軟に対応できる多目的空間
        • 長時間滞在したくなるような快適な空間
          • オッドマンつきのリクライニングチェア
          • 蓋付き飲料の販売
        • 「動」「静」のゾーニング
    • ラーニング・コモンズと呼べる施設は図書館の外に
      • 「ゆめ空間」:学生センターが入っている建物の一角
        • 学生の居場所が学内に少ない
        • 先輩のいる学習室
          • 院生22人、学部4年生5人体制(院生はTA、学部生は謝金で対応)
          • 試験期間に、問題の解き方とかについてが多い/不得手な質問は電話をかけて得意な学生を呼ぶとか/徹底的にサポート
    • 今後:シラバスの分析/学生の利用動向をとらえる…ニーズにあった学習空間
    • 質疑
    • 「動」「静」のゾーニングって改修後はどうなったの?
      • 改修前と同じように1−2Fはざわざわ、3−4Fは静か。
    • 他部署との連携のきっかけは?
      • 小ぶりな大学なのでそれほど組織間の垣根が高くない。「先輩のいる学習室」は担当が学務課なので話したらほいほい連絡とって貰えた。他のところも学生部に話したら「あとは直接どうぞ」ってなったり。いずれもまずは図書館から話を聞きに行っている。
  • 山内隆文さん・名古屋学院大学:「集いの場としてのラーニング・コモンズ」
    • 名古屋学院大学…図書館、情報教育センター、外国語教育センター、基礎教育センターを2004年に統合=学術情報センターへ
    • 2007年…名古屋キャンパス設置(それまでは瀬戸キャンパスだった)⇒・学術情報センター設置
    • 学術情報センター:3Fが図書館(自分で静かに)、4Fがラーニング・コモンズ
      • ラーニング・コモンズ・…外国語教育センター/基礎教育センター/情報教育センターの機能を有する
    • NGUのラーニング・コモンズ
      • ペットボトルOK/イベンtの実施/PC操作・修理/基礎教育センターの学習サポート/学生TA12名(うち3名留学生)
    • 利用者の2/3はラーニング・コモンズへ(図書館空間の倍)
    • 組織の統合によって誕生した施設(それってある意味ではラーニング・コモンズの最終発展形と言われる現象の方が自覚なしに先に起こったって感じか。そりゃすごいな)
  • 井上修さん・名古屋大学:「名古屋大学附属図書館ラーニング・コモンズ」
    • 「完成時にはこんな感じになりますよ」という報告
    • 名大のラーニング・コモンズの背景にある考えとかコンセプトについて
    • 施設だけでなく教材作成システムの研究開発とライティング・センターとかも構想している
    • グループラーニング・エリア…什器は全部稼働可能/壁やパーテションは全部スクリーンにもホワイトボードにもなるパネル/1週間後には完成予定
    • 多目的ラーニング・エリア(次年度以降に設置)…個人単位で資料を広げながらPCを利用できる
    • ライティング・センター…論文やレポート作成を支援する機器、ソフトウェア、論文作成マニュアル類等の図書を整備/人的サポートは総合サポートカウンターから
    • 総合サポートカウンター…IT関係、ライティング(レポートから英語論文まで)、履修登録、学習全般のアドバイス/図書館員、教員、TA、peer supporter
  • パネルディスカッション(コーディネータ:三根慎二先生・名古屋大学
    • 新図書館のラーニング・コモンズを担当している。山内さんの考えではラーニング・コモンズとは体からの発想であるとおっしゃっていたが、そのときどこまでやっていいのか? リラックスできるところとか、飲食できることということであれば飲食を全面許可してもいいし、寝るスペースを作ったり温泉作ったりマッサージしたりやってもいいんじゃないかと思う。どこまででやめたらいい?
      • 山内さん:これまでの図書館は頭だけで考えていた。それをいったん体の発想に置き換えるとラーニング・コモンズがよく理解できた。食事もできてシャワーも出来ればそれは素晴らしいが、そこまでは出来ない。学習する上で何が必要かという観点で考えればいい。仮眠ができるかは別にしてリラックスできるソファがあるといい。食事も飲み物とスナックの自販機くらいはいいんじゃないかと思うが場所を限定する必要はあるかも。
    • 改修で座席数は増えたの?>各館へ
      • 橋本さん:東京女子大は増えた。学生数の18〜19%分くらいは確保できている。
      • 波多江さん:参考図書やカード目録を整理したという例を他大学では聞くが、名工大はもう削るスペースがなくて席数は変わらなかった。増やしたかったが…どうしても学生のいるスペースは狭いので、図書館は出来るだけ広めにしたら結果的には変わらなかった。
      • 山内さん:うちは新設。学生数に対する基準は満たしている。
      • 伊藤さん:名古屋大学は座席数は増えている。今までの閲覧机に割り当てられたよりも椅子は多く使えるだろう。
    • 様々なエリアでたくさんの入館者数があるとの話だったが、自分の館は24時間やっていることもあって荷物を置きっぱなしにしたり占有したりする学生がいる。ゴミの片付けとか電気あんかや電気ストーブ持ち込まれたり(min2-flyコメント:そんだけ図書館が寒いってことでは??)。
      • 橋本さん:大きな荷物はロッカーに入れるように指導している。閲覧席の貴重品の置きっぱなしについては、入ったところに貴重品入れを用意して自由に使えるようにしている。飲み物や携帯電話の充電は注意しているが、考え方として単純に駄目というのではなく、長く滞在して欲しいなら一回外に出ろというのはおかしいと思ってリフレッシュルームへ行くように指導している。携帯電話については購買で充電できるからそこに行けと言っている(min2-flyコメント:ところでなんで持ち込みPCの電源は良くて携帯電話の充電は駄目なの? 携帯電話が一番ライフラインに近いメディアじゃん)。
      • 波多江さん:荷物の置きっぱなしはやはりある。お財布がなくなる事件もあったので館内巡回して荷物の置きっぱなしはチェックしている。飲食は蓋のできるものは持ち込み可にしているのだが、500mlの紙パックを持ち込む学生はいる。こぼれて汚れたりする(min2-flyコメント:紙パック飲料を生協で売らなければいいのでは? 大学外からの持ち込みもありそうだけど・・・)。食べ物もスナック菓子を持ち込んでたりとかする。カップ麺を放置しているとかもある。図書館内に食べるコーナーがないのはおかしいという意見もあるが、食べていいとなるといろいろなものを食べられて管理が大変になる。それは禁止にして見つけ次第食べないようお願いしている。携帯の充電も、掃除用の電源で携帯つないでたりすることもある。使わない電源にはほこりよけのカバーをつけて対策している。
      • 山内さん:マナーアップキャンペーンをやったりしている。住宅街に移転してからは近隣住民からの苦情も出てきている。学生によるごみ拾いとかをやっている。地道にやる。
      • 井上さん:館内巡回している。ラーニング・コモンズの話になると、運用が大問題でもあって、どうしようもない状態になるのかも知れないとも思う。もう少し体制を強化していくことになる。
    • (事例報告された方へ)ラーニング・コモンズのコンセプトがしっかりある印象を受けたが、どういう風に組織として話し合ったり館内で周知したりしたのか。
      • 橋本さん:東京女子大ではラーニング・コモンズということを自ら発信したことはない。入館者数が減っているとかいう事態に対する対応を模索していたということがある。もともとグループ閲覧室の利用が多かったとか、図書館内でのオフィス製品利用への希望とか、飲食の多さを禁止するだけでいいのかとか。他大学を見たりいろいろ話し合っているうちに教育的に学習機能をどうしたらいのかという話になっていき、そこで学習支援GPに図書館がやろうとしていることがあてはまるんじゃないかと考えてそれまでの構想をまとめて学生アシスタントについても議論をまとめた。幸い採用されたので、もともと徐々に進めようとしていたのをいっきに進めた。運用は運営委員会を組織してやっている。
      • 波多江さん:改修のコンセプトは課内で積み上げていった。
      • 山内さん:完成までに設計を何回かやり直している。当初の予定よりも面積的には狭くなったりもしている。その過程ではセンターの中でコンセプトを積み上げていって、最終的に建設委員会にあげる形をとっている。いくつかの組織を統合してコンセプトを詰めた。
      • 井上さん:新しい学習の場・教育の場を作ろうと言う意識が煮詰まったというか高まったのと、「今後の学術情報基盤のあり方について」という報告書の中で大学図書館についての方針が打ち出されている。それがちょうど合致すると言うことで、概算要求という形で出して見た。その後はその流れにそって計画を立てている。コンセプト的には実際のものを職員が実際に見たり、専門家の意見を聞いたりして情報を得つつ一種のコンセプトに作り上げていった。
    • TAによる教育支援してもらっているとのことだが、TAへの教育プログラムとかはなさっているのか。なさっているとしたらどれくらいの分量?
      • 橋本さん:学生アシスタントの教育は最初のアルバイトの時間で図書館員からも説明はするが、あとはマニュアルを整備してそれを学習してやってもらっている。学習コンシェルジェもマニュアルを整備して、教務委員会にも見て貰って学内的に調整したマニュアルに沿って動いている。
      • 山内さん:TAにはマニュアルを渡してある。また、TAを選定する際には指導の先生の推薦と面接を行っている。マニュアルは「どういう仕事をするか、どういう姿勢で対応するか」を細かく決めてある。TAは新入生にとっては自分の2年先のモデルとなるものなので、TAの選定には非常に神経を使っている(min2-flyコメント:うわ、じゃあ俺とかTAとして最悪だ・・・)。
      • 井上さん:学務部の方で組織作りのプログラムを持っているので、そちらでラーニング・コモンズへの配置も連携してもらいたい。
    • 井上先生:カフェを作る中で電源と水の話を井上さんがされていたが、移動式のショッピングモールにあるようなカフェなら電源さえあればできる。



・・・見学会中止は痛かったですね(苦笑)
しかし昨日、電子ジャーナルを使わせてもらいにお邪魔したときもまっさらな状態であったので、まあこういう可能性もあるかもとは思っていましたが・・・


一昨日の米澤さんのレクチャーも含めていろいろ考えてみたいところですが、さすがに疲れたので今日は帰って寝ます(苦笑)
ラーニング・コモンズ×機関リポジトリetc...=図書館の発展的消失≒「ネットの海は広大だわ」とかいう話は余裕があるときにできればいいな、とかなんとか。