かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「大峡谷のパピヨン」

茅田砂胡の「クラッシュ・ブレイズ」シリーズ最新刊。
[rakuten:book:12011012:detail]


今回は金銀黒の天使は全く出番なし。登場すらしてないんじゃないかな?
ダイアナもほとんど出番なしで、ただただ女王が大活躍。
表紙でも割と怖い顔してますが、あとがきにもあるとおり作中の挿絵ではもっと怖い顔をしてらっしゃいます(汗)


天使たちが出ないことで、なんか雰囲気が「スカーレット・ウィザード」の頃みたいで面白かった。
ありえない魔法をガンガン繰り出すのも嫌いじゃないんだけど、「デルフィニア戦記」で言ったら「コーラルの嵐」におけるリィとウォルの二人で要塞突入シーンとか、「勝利への誘い」の小舟で大型帆船に近づいてつるはしで船艇に穴ぶち開けて沈めるシーンとか。
スカーレット・ウィザード」で言ったら高層ビルから飛び降りるときに大型火器を真下に撃って衝撃を和らげる、とか。
魔法もなんも使ってないのに物理的にありえないことをやるシーンの方が、茅田作品は面白いと思ったり。
そこでいうと今回はジャスミンが飛行機乗りの本領全発揮、という感じでもう最高?


割と真面目な話をすると、茅田作品に出てくる規格外な人たちの中でも、特にジャスミンとケリーは昨今の「誰にでも使いやすく、安全にする」ことへのアンチテーゼみたいな部分があると思う。
なんでも判断してくれる人工知能(作中では「感応頭脳」あるいは「管制頭脳」)が入っていて操縦をサポートしてくれたり、危険を自動回避してくれる機体の方が操縦しやすいし、なにより安全。
でもそれだと物足りなく感じたり、自分の技量を十分に発揮できないことに苛立ちを覚える人もいるわけで。
そういう人らは、安全性や使いやすさ重視の世の中ではかえって不満を覚えることになる、みたいなのことをジャスミンとケリーを見てると感じる。
まあこの二人は規格外すぎるから置いておくにしても、オートマチック車全盛でマニュアル車好きの人は面倒くさい、とか、いろいろあるよね。


いずれは使いにくいものってほとんど駆逐されて、一部の人だけの特殊技術みたいになったりするのかねえ・・・