かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

国立情報学研究所オープンハウス2007

オープンハウスについてはこちらも参照:http://www.nii.ac.jp/openhouse/h19/Program/index.shtml#Work


昨日は国立情報学研究所のオープンハウス2007に行ってきました。
お目当てはCSIワークショップ「図書館目録の将来:ユーザの視点から、図書館の視点から」(午前)と、「はじめての学術機関リポジトリ」(午後)の2つ。
前者(目録の将来)はhttp://d.hatena.ne.jp/arg/でおなじみ、ACADEMIC RESOURCE GUIDEの岡本さん、ソシオメディア | UIデザインパターン (1/2)で最近注目を集めているソシオメディア株式会社の篠原さん、他に先がけたリンクリゾルバ「きゅうとLinQ」導入などで注目を集める九州大学附属図書館の片岡さんという、図書館情報学をやっている「はてな」ユーザなら涎だらだらものの講演陣。
後者もOpen Access Japan | オープンアクセスジャパンの三根さんをはじめ、研究者総覧との連携を実装させた機関リポジトリSOAR-IRで有名な信州大学の岩井さん、最近なにかと話題でもある農林水産研究情報センターの渡部さん(パネリストとして林さん)、それに小規模大学ながらベンダ任せにせず自力でリポジトリ構築したことなどで一躍、名を知られた帯広畜産大学学術情報リポジトリの大平さんという豪華布陣で、おいおいそりゃどっちも満員御礼にもなるさねこれは、といった感じ。


「図書館目録の将来:ユーザの視点から、図書館の視点から」

まずは岡本さんから問題提起と言うことで、ユーザの拡大(Read onlyの利用者からDeveloper、Publisher=、Providerとしての利用者へ)と新たなユーザへ目録が提供できるもの(APIの公開とか)について、といった話題が。
続いて篠原さんからユーザ中心デザインのアプローチからの目録設計に関する話が。
最後に片岡さんから、九州大学附属図書館での現状(電子ジャーナルもOPACで検索できるようにしたらOPACからの検索が増えた、とか)*1と、海外での実践例(OPACを面白く=表紙・概要の追加、ファセットの表示や適合率ソート、検索式に合致した資料のRSS配信など、相互運用性=Google Book Searchでの自館所蔵検索、OPACSaaSモデル=ワシントン大でのWorldCat Localの取組など)のお話があった。


会場を交えたパネルディスカッションではmin2-flyも発言。
事前にはてなブックマークで「なんか発言します」宣言してたので岡本さんからは「会えると思ってました」って言われたり(笑)
発言内容は「API公開するだけじゃなくて、ユーザが開発したシステムが図書館システムに実装されるようなフィードバックもできるような図書館側の体制が欲しい」みたいな感じ。
これについては岡本さんからも「id:myrmecoleonさんみたいな人が表に出てこれないのはおかしい」などの意見があった一方、「若手には積極的に名乗り出て(名前や所属を明らかにして)きて欲しい」というコメントも*2


そんな感じで盛り上がった午前の後、お昼を岡本さんとご一緒させていただく。
「mymecoleonさんってどう読むんだろうね?」といった他愛もない(っていうと失礼ですねごめんなさい)話題から、若手研究者の情報発信についてなど、リアルでお会いしたのが初めてとは思えないくらい色々お話を聞かせていただいたりこちらも喋ったり。
やっぱり自分を早いうちから売り込む、って意味では実名名乗るのは重要なんだなー、と。
昨日だって岡本さんは元から実名(+顔写真)まで公開されているのでこっちは見るだけで「あ、岡本さんや」ってわかるわけだけど、あちらはmin2-flyがmin2-flyであることを名乗り上げないとわからないわけで。
ワークショップの際も、質疑で「かたつむりは電子図書館の夢をみるか、っていうブログをやってます」って言ったら、終わった後で「見たことあります」って声をかけられたりもして、ウェブの威力を強く感じたし。


・・・ただ・・・「かたつむり〜」に関しては、図書館の話題と並んで中心になっている話題が若干痛々しいので、実名公開はそれはそれで恥をさらすことにも・・・一時トラックバックが「らき☆すた」で埋まりかけたようなブログだし・・・
まあ俺の実名知ってる人なら大抵、そういう人間だってことも知ってるはずなので問題ない気もするけれど。


岡本さんにはほかにも色々な方にお引き合わせいただいたりして、本当にありがとうございましたm(_ _)m
はてな界隈にいる若手の研究者・図書館員が結集したらなにかを変えられるんじゃないか」っていうお話が印象的でした。*3



「はじめての学術機関リポジトリ

午後はまるまる、機関リポジトリ(なんのこっちゃ)!
午前以上に人の入りは多かった午後の部は、まずOAJの三根さんから最近の学術情報流通の動向について(価格高騰、電子化、OA化)紹介があった後で、それぞれのリポジトリ構築・運営しゃから事例紹介があり、のちにパネルディスカッション。
ディスカッションでは「まず講演に関して質疑をとった後、パネリストの方がたを中心にディスカッションを」・・・のはずが、質疑応答が盛り上がりすぎて最後まで行ってしまうという(苦笑)


ちょっと感じたのは、未だにリポジトリ構築のメリットというか、大学や研究者にとっての意義が浸透しているわけではないんだなあ、と。
はじまったばかりだから当たり前っちゃあ当たり前なんだが。


「国内の研究成果を海外も含む全世界に無料で発信すること」については、薬学関係の方から特許のからみとかで「なんでそんなことしなくちゃいけないの?」という辛辣なコメントもあったり。
まあ特許処理終わってないものを表にあげることはないと思うので(「特許とりたいからしばらくこの論文はアップしないで」ってことはある・・・と聞く)、知的財産権面では問題ないんじゃないかと思うが。
「研究論文は読まれてなんぼ」の世界でもあるわけだし。
むしろこの点では林さんからのコメントで、「農林水産研究情報センターで公開している農水関係の研究機関の論文を見て、農家の人がナスの越冬に成功した」っていう事例の紹介があったんだが、こちらの方が重要なんじゃないかと思う。
「国内の研究成果」というが、実際には国内の成果でも(特に自然科学系は)海外の学術雑誌に投稿する傾向が強いわけで。
そうなると、ベンダに高い金払ってまた買い戻さないといけなくなる。
大学等に所属する研究者ならまだしも、一般の、それこそ農家の人*4とかにはそういう成果を閲覧することはほとんど不可能*5になってしまうわけで、そういう事態を改善するためにも機関リポジトリ(っていうかオープンアクセス)の取組みってのが重要なんだな、と思った*6


あとは大学の説明責任とか広報(客寄せ・受験生集め)、みたいな点からも発言があるとよかったのかも知れないが・・・会場にそっち方面(大学経営陣とか)の人っていなかったんだろうか。
最後に司会の尾城さん(NIIの学術基盤推進部学術コンテンツ課長)からも言われていたことだが、今後は図書館関係だけでなく、研究者や大学経営陣のコミュニティも交えて同様の話し合いの場ができるとよいね*7




そんなこんなで、大変有意義な時間を過ごせたCSIワークショップでありました。
聞きにいってよかった・・・時間つくるために前日徹夜だったが・・・

*1:っていうか九大はすでに電子ジャーナルOPAC検索実装ですか?! うーらーやーまーしーいー。負けるなTulips。っつーか素でそれできないと探すのメンドイっす

*2:さらにそれに対して会場の林さんからコメントがあって、それをid:sinngetuさんが見ていて・・・などと知ってる人からみたからかなり面白い事態に発展。詳細はhttp://d.hatena.ne.jp/sinngetu/20070608/p1などを参照

*3:もっともmin2-flyは研究者以前にまだ学生なんだけど。しかも「こんなのが欲しい」っていうばかりで自分でシステムは組めないという・・・(汗) はやいところ本格的に研究者になって、システムを組めないなりに実証的な研究とかで貢献できるようになりたいものだ。

*4:そのほかに研究成果が即実践に結びつきうる職っていうと・・・教師、IT技術者、水産業とか林業、スポーツをやっている人、それに当然図書館員、まだまだ他にもありそうだな・・・っていうか将来的にはあらゆる職種がそうなることを求められてるとも考えられるが・・・

*5:大学まで行けばいいんだが

*6:国内雑誌で発表しろよ、という向きもあるが、如何せん日本国内の学術雑誌出版って弱いからなあ。欧米も含む世界中から注目を集めるような優れた雑誌が増えたらまた状況も変わるかとは思うが

*7:実際、NIMSのオープンセミナーの議論の白熱を見る限り、研究者の中にも学術情報流通について一言ある人って思ったよりいる気がした