かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

研究者の生産性は英語のライティング能力と強く関係する! ・・・ただしブラジルの話。


id:next49さんのエントリを起点として、大学・大学院教育を英語で行うことについての議論が起こっていますね。


確か総合研究大学院大学は受講者の中に日本語非ネイティブが含まれている場合には授業は英語で行われるはずとか(id:DIEtrichさんからの伝聞)、うちの大学でも学類/講義によっては英語開講の科目もあるし、海外からいらっしゃった先生については英語で授業を行ってもらって日本語でやりたい人は日本語で、ってんでもいいんじゃないか・・・とかいうのはさておき。


議論とは話がずれるんですが、非英語ネイティブ圏の研究者と英語能力の関係、ってことだと先日Scientometics誌のオンライン版で以下の論文が発表されていました。


内容としては研究の生産性を考える(予測する)際の入力指標として、アクティブな研究者の数とか投入する資金とか色々あるけど、英語が研究の共通語(lingua franca)となった今の世界では、特に非英語ネイティブ圏にとっては研究者の英語能力を研究の入力指標として捉えられるんじゃないか、という話。
著者はブラジル(ポルトガル語圏)の方で、実際にブラジルの研究者51,223人(博士号を持つ人)に英語能力に関しての質問紙調査(writing、readingそれぞれについて"Good skill"を持っていると思うか、まあまあか、"Poor skill"しか持ってないかを尋ねる)をやって、それと国際的な学術誌(英語)での論文発表数を照らし合わせてみた・・・という内容。
さすがにPh.D持ってる人間対象と言うことで、リーディングのスキルに関しては78%が"good reading skill"を持ってると答えた一方、writingについてはgoodと答えた人は44%強にとどまった、とか。
まあいまどき英語読めなきゃ(一部の分野を除けば)研究なんかやってられないもんな。


以下、分野を区別したりしつつおもにwriting skillについて詳しく見ていくんだけど、メインとなる英語のライティングスキルと国際誌発表数の関係については、"good skill"を持っていると答えた人の割合と論文発表数は強い正の相関関係にあり(r=0.92, p<0.01)、一方で"poor skill"しか持ってないと答えた人の割合と論文発表数はやや強い負の相関関係(r=-0.78, p<0.05)であったとか(ちなみにポルトガル語での論文発表数との相関は、good skillを持っていると答えた人の割合と論文数は相関、一方poor skillと論文数は有意な相関なし)。


つまり非常に大雑把にいうと英語ライティング能力のない奴は国際的に見て論文生産性が低い(ことが多い)!! ・・・orz
まあそもそも「国際的な学術誌」での発表数なんだからそりゃ英語のライティング能力が強く影響するのは当然だろjk・・・とは思うんだけど、こういう話って英語ネイティブ圏では当然あんま気にならないところであろうし、非英語ネイティブ圏でも感覚としては当然わかっていても研究者の英語能力のデータ収集が面倒そうなので、きちんと調査して研究がでてくるのは貴重かな、と。


また、元論文中でも触れられてるけど図書(多くは母語で書かれる)による情報流通がメインの人文学系や母語での論文発表も重要な意義を持つ社会科学系はさておき(こういう事情はブラジルも日本も共通らしい)、STM系は英語で発表しないと話がはじまらないところでもあり、論文後半では調査結果も踏まえてブラジルの今後の英語教育政策について触れられていたり。


なかなか面白い話なので日本でも誰かやってみないかな。*1
発展形として、できれば研究者自身がどう思っているかではなくなんらかのスコア(TOEFLとか)で出せると面白そうだけど・・・受けてもらうの至難だし、最後に受けた試験とかだと特に若手でまったくあてにならないしなあ・・・
国際的な論文発表数について言えば、日本は中国に抜き去られるまではドイツとトップを競ってたような国でもあり・・・世界17位というブラジルで見るのとはまた違った結果もあるかも知れない、とかなんとか。


ま、他人事のように言ってるけど自分もライティング能力は"poor"に区分されると自認しているのでそこら辺は精進しないとね!
国際英文誌発表とかまだゼロだし・・・*2


そこら辺は英語ネイティブがやっぱ少し妬ましいというか羨ましくなることもあったり。
そんな日は日本アニメ最新放送でも見て心を落ち着かせよう(研究もしくは英語の勉強しろ)。

*1:って実はすでにやられてそうだけど、NISTEPあたりで。あそこの報告書膨大でなかなかすべてには目を通す気に・・・

*2:もっとも"Library and Information Science"は和文誌だけどSSCIに採録されている雑誌なので、計算に用いるデータベースによっては「国際的な論文生産数」に1カウントされるけど